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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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さみだれて

ふと。

さまよった視線は。

洋ちゃんを探していた。

洋ちゃんも頑張ったもんね。

あっ。

赤組のみんなは。

座っていた中臣さんを。

囲んでいた。


ん?

閃光がほとばしった。

ざわざわしだす校庭。

音楽も風に煽られて。

音量が揺れる。

……ゴロゴロ。

遠くで。

低い雷鳴。


ピンポーン、パンポーン……

「雷注意報が発令されました。生徒及び、保護者の皆様は、校舎及び体育館に一時避難してください」

校内放送が繰り返される。

黒身を帯びた。

低い雲が。

校舎裏の山を隠し始めていた。

「1組から教室に戻って」

先生の声がして。

お尻をはたきながら。

私は立ち上がった。


洋ちゃんは……

え……?

視界に入ってきた姿に。

両手を胸に添えて。

固まった私。


洋ちゃん。

中臣さんをおんぶしてた。


なんでだろ?

胸の辺りが。

変な感じがするの。


体操服の腰辺りが引っ張られる。

「葉月ちゃん、早く行こう」

脇を見ると。

華ちゃんが。

顔の前で。

おいでおいでしていた。

「うん……」

もう一度。

洋ちゃんを探したけど。

人波で見えなかった。


中臣さん。

怪我したのかな……

でも……

「あっ、降ってきた」

華ちゃんの声に。

顔を上げる。

ポタッ。

一瞬の冷たさを連れて。

ほっぺに落ちてきた。

雨粒一つ。

手の甲で拭いながら。

華ちゃんと。

早足で校舎へ向かい始めた。

途端に。

わっ。

体のあちこちに。

冷たさが落ちてくる。

ザーッ……

地面に打ちつけるような雨。

どよめきが広がる中。

両手で頭を押さえながら。

雨の幕の中を駆け抜けた。



教室に着いた頃には。

窓の外は。

どんよりとした雲が。

蔓延ってきていて。

まるで。

黒い霧が。

世界から色を消していくようだった。


するすると。

机の隙間を縫って。

窓際の自分の席に腰を下ろす。

リュックの中から。

タオルを取り出して。

髪を拭く。

体操服も。

手も足も。

びちゃびちゃだ。


ザザーッ、ザザザーッ……

窓に雨が激しくぶつかっている。

一瞬。

真っ白になって。

「キャー!」

女子の悲鳴がして。

ゴロゴロゴロゴロ……

雷に合わせて。

ブルブルと。

窓ガラスが震える。


雷は怖くないけど。

今はまだ。

ゴロゴロだから。

でも。

時々鳴る。

大きな音は苦手。

椅子を引いて。

濡れた足を屈んで拭く。


楽しかった体育祭。

リレーの興奮は冷めてしまって。

みんな。

空模様に。

色めき立っているみたいで。

不思議な空気が漂っている。

「北見さん。雷平気なの?」

いつの間にか。

席に着いていた外村くん。

「うん。これくらいなら」

体を起こして。

座ったまま。

お尻と椅子を持ち上げて。

位置を直す。

「これくらい?」

首をひねる外村くん。

「キャー!」

ん?

私は咄嗟に。

人差し指を両耳に突っ込んで。

ぎゅっと目をつむる。

さっきより。

光が眩しかった。


少しだけ。

遠くに聞こえた。

ドン!

バリバリ……

息を吐きながら。

手を下ろして。

目を開ける。

「大丈夫?」

「ん? うん。今みたいなのは、怖いかな」

ん?

なんで。

笑ってるのかな。

外村くん。

「席変わる? 大した変わりはないか」

「ふふ。ありがとう。大丈夫」

「キャー!」

私は。

また。

耳に指を突っ込む。

バン!

バリバリ!

もう……

早く終わらないかな。

そっと。

まぶたを上げると。

外村くんは。

やっぱり。

ニコニコしてる。

「ん? なあに?」

「あ、いや、なんでもない」

首の後ろをさする外村くん。

あっ……

「くしゅん!」

「大丈夫? そうだ、これ使って。もっと髪とか拭かないと、風邪引くよ」

タオルを差し出す外村くん。

「大丈夫。外村くんこそ。びちゃびちゃだよ」

「あ、ハハハ」

その笑顔に。

閃光が走って。

私は。

また。

指で耳を塞いだ。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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