かられて。
そして――
午前中の最後の競技。
各学年から6人ずつが出場する。
借り物競争。
うちのクラスからは。
外村くん。
青木くん。
三村さん。
2組は。
みーちゃん。
市川さん。
小森くん。
1年生からのスタート。
最初は。
三村さんとみーちゃん。
もちろん赤組を応援してる。
けど。
みーちゃんにも。
心の中で。
頑張れって。
エールを送る。
パン!
ピストルの煙が風にさらわれて。
テンポの早い曲がかかる。
2人が並んで走り出す。
地面の紙を拾って。
みーちゃん。
ニヤリと笑う。
担当の先生に。
紙を見せる。
「白組は、かわいいもの」
「赤組は、大きいもの」
先生の声が校庭に響く。
ん?
みーちゃん。
私の方に。
駆け出してきて。
「はーちゃん、来てください」
「わっ」
腕を掴まれて。
連れ出される。
「おおーっ」
どこからとなく起こる歓声。
「みーちゃん?」
「はーちゃんは。私の借り物ですね」
かわいいもの。
「へへ」
「そういうとこも。かわいいですよぉ」
みーちゃんが先にゴール。
マイクを持った先生が。
「白組。かわいいもの、北見さん」
「赤組。大きいもの、西郷くんでしたー!」
先生の言葉に。
歓声と笑い声と拍手が混じる。
「なんか。みんなの前で。かわいいって。照れるね」
「そうですか? はーちゃんは。かわいいんですよ」
みーちゃんは。
両手を腰に当て。
にやりとしながら。
私を覗き込む。
「へ?」
「はいはい。借り物はここにいてくださいね」
私の腕を。
トントンと。
軽く叩くみーちゃん。
「はーい」
かわいいもの。
か。
みーちゃんと並んで。
ゴール地点に腰を下ろす。
「私も、みーちゃんを借り物したな」
「ふふふ。はーちゃんなら、そう言うと想いましたよ」
「どして?」
「どうしてもです」
クスクスと。
肩を揺らせて。
みーちゃんは。
笑っていた。
1年生の最後を飾るのは。
外村くんと市川さん。
スタートの合図で。
軽快に走り出す。
かがんで。
地面の紙を拾いあげて。
首を捻る。
近寄った先生が。
書かれた内容を読み上げる。
「赤組は、昨日夢に出てきた人」
「白組は、お金持ちな人」
腕を組んで。
こめかみをかいている外村くん。
そのままの姿勢で。
少しずつ駆け足になって。
こっちに近づいてきた。
ん?
私の前で。
立ち止まる。
「北見さん、いい?」
「ん? 私?」
自分を指差していた私。
「そう」
目の前に差し出された手を。
そっと握って。
お尻を浮かせると。
ぐいっと。
引っ張りあげてくれた。
「赤組、昨日、夢に出てきた人は北見さん」
先生の声に。
「ひゅーっ!」
「おおっ!?」
なぜか?
ざわざわする校庭。
「夢の中でも二人三脚してました」
外村くんが答えると。
「ハハハ」
笑いが起きる。
「白組、お金持ちな人は教頭先生」
半笑いの先生。
「おおーっ」
今までで一番。
どよめく校庭。
「教頭先生。金の腕時計着けてるから」
市川さんの声に。
苦笑いの教頭先生。
「これはね、メッキなんです。本当です!」
腕を挙げて。
ぐるぐると。
その場を回りながら。
時計を見せる。
「ハハハ」
わき起こる笑い声を。
風が巻き上げた。
ちょっと。
慌てふためく教頭先生が。
おかしくて。
かわいらしいかった。
私も借る側で参加したいなって。
ちょっぴり想った。
あっ。
「でも、すごいね」
「え? なにが?」
「夢の中でも、二人三脚してたって」
「うん。たぶん、今日が楽しみだったからかな」
「そっか。私も楽しみにしてたけど。ダンスの夢だった」
「なるほどね。北見さんはダンスに夢中だもんね」
「へへ」
「僕も、夢中なんだよね……」
伏し目がちで。
尻すぼみの小さな声の外村くん。
「ん? なにに?」
「え、いや。なんでもないよ」
首をかしげて笑う。
外村くんの顔を。
差し込んだ陽射しが。
束の間。
照らして。
過ぎ去った。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




