かって。
パン!
パン、パン!
待ちに待った。
体育祭の日がやって来た。
今まで。
運動に自信がなかったけど。
外村くんと。
頑張って練習した二人三脚をきっかけに。
体を動かすことが楽しくなった。
ダンスもそうだけど。
何がきっかけになるかなんて。
分からなくて。
みんなの。
何気ない一言が。
背中を押してくれたのには違いない。
サーっと。
吹き抜けたぬるい風が。
校庭に砂埃を巻き上げる。
晴れてるけど。
もくもくとした雲が。
ぎゅうぎゅう詰めになって。
空を流れていた。
私たち1組は赤組。
洋ちゃんやみーちゃんの2組が白組。
午前中。
最初の種目。
1年生のクラス対抗二人三脚。
しゃがんだ外村くんが。
私と外村くんの足をしっかり結ぶ。
「きつくない?」
「うん。大丈夫。練習の成果、見せようね」
さっと。
手を差し出すと。
外村くんは。
ゆっくりと立ち上がって。
右手を体操服のズボンでこすると。
少しあったかい手が。
私を包んだ。
私たちは。
3番目。
手を繋いだまま。
しゃがんで順番を待つ。
軽やかな音楽が。
鳴り始めて。
折からの風を受けて。
校舎にぶつかって。
音が反響してる。
「位置について。よーい、スタート!」
パン!
先頭の若林くんと坂本さんが。
掛け声を出して。
走り出す。
30メートル先にある。
ポールを回って。
スタート地点に戻ってきて。
入れ代わりで。
次のペアがスタートを切る。
わずかな差で。
白組がリード。
私たちの前のペアが走り出した。
「がんばれー!」
少しポールの折り返しでもたついていた。
「北見さん練習通り。北見さんの掛け声に合わせるから。慌てないでいこう」
「うん」
ポールを回るときだけ。
歩幅が小さくなるから。
いち、に。
の掛け声を。
いち。
だけにする。
私が外側を回るから。
外村くんは。
私のペースに合わせてくれる。
前のペアが戻ってきて……
「せーの。いち、に……」
練習の時みたいに。
風が頬を切る。
結んだ足も。
テンポよく。
つないだ手も。
リズミカルに。
あっという間に。
折り返し地点。
「いち、いち……」
思わず見た。
外村くんと。
目が合って。
自然と笑っていた。
残りは半分。
「いち、に、いち、に……」
声を重ねて。
スピードが上がって。
どくどく。
鼓動も全速力。
「行けー!」
「がんばれー!」
声援が流れて。
ゴール。
ゆっくりと歩みを止める。
じわりと汗がわいてきて。
片手で胸を押さえながら。
バクバクしてる。
呼吸を整える。
「北見さん、完璧だったね。僕ら白組抜いたみたいよ」
息を弾ませながら。
外村くんは微笑む。
「わっ。すごい!!」
私はつないだ手はそのままに。
外村くんの右手を取って。
向かい合って。
飛び跳ねる。
「外村くんありがとう」
「いや、僕の方こそ」
「はじめてだよ。こんなに運動会が楽しいの」
「ハハハ。そっか」
「うん!」
「じゃあ、あっちで応援しよう」
「うん」
走り終わったみんなのとこで。
しゃがんで待つ。
外村くんは。
足を結わいていた。
襷をほどいてくれた。
その感触が。
するりと肌を抜けていって。
終わっちゃった。
なって。
胸の辺りが。
くしゅくしゅした。
でも。
足首の内側に。
結わいていた余韻が残っていて。
そっと。
撫でていた。
パン!
レースは一進一退。
赤組のアンカーは。
西郷くんと佐倉さん。
「がんばれー。西郷くん! 佐倉さん!」
数メートル早く。
赤組がスタート。
「勝てるかな」
「うーん。白のアンカーは三並と中臣さんだからね。二人とも足早い」
洋ちゃんも。
応援したいけど……
「負けるなー! 赤組」
「そうだね……西郷! 佐倉さん! がんばれー」
赤組は折り返し。
でも。
洋ちゃんたち。
早い!
お互いの腰に手を添えて。
足並みも。
きれいに揃っている。
折り返しも。
乱れない。
逃げる赤組。
追う白組。
思わず立ち上がっていた私。
沸き上がる声援。
あっ……
ゴールテープを切ったのは。
片手を上げた洋ちゃんたち。
白組だった。
洋ちゃんは。
中臣さんに。
何かを話しかけて。
微笑む中臣さん。
んー。
かわいい。
中臣さん。
ポニーテールも。
はちまきも。
似合ってる。
洋ちゃんが手を出して。
中臣さんと握手した。
ちぇっ……
まっ。
一緒に頑張ったからね。
「みんなー。ごめん」
うなだれている西郷くん。
「私が足引っ張っちゃった」
うつむく佐倉さん。
「いや、自分がちょっと焦って。掛け声が早くなったんだ……」
「西郷も、佐倉さんも頑張ったよ」
外村くんが。
西郷くんの肩をつかむ。
「うん。頑張ったんだから、気にしない」
佐倉さんは。
はにかんで。
西郷くんは。
笑っていた。
ゴォー……
「わっ」
砂が舞い上がって。
目をつむる。
「北見さん、大丈夫?」
「へへ。目に砂が入っちゃった」
痛みと共に。
こぼれた涙。
体操服の肩口を摘まんで。
そっと。
目尻を押さえた。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




