兆し
ベッドに伏せって。
足をバタバタさせている。
もうすぐ23時になる。
ちぇっ。
おかしいな。
洋ちゃんから。
何も連絡が来ない。
メッセージは既読がついてるし。
部活で疲れて寝ちゃったのかな。
ダンス動画は。
再生数も登録者数も増えていた。
そこに気を取られないようにね。
って。
言われたけど。
ついつい。
気になってしまう。
動画を見返していたら。
もう少し。
手や足の動きとか。
表情とか。
こうしてみた方がよかったのかな。
とか。
想ってみたりもする。
栞お姉ちゃんは。
焦らないって。
言ってくれたけど。
コメントしてくれた人の動画を見に行ったら。
同じ曲のダンスでも。
微妙に違っていて。
上手に見える。
見ていたら。
むずむずしてきて。
踊りたくなってくる。
さすがに夜遅くだから。
今からは出来ないけど。
栞お姉ちゃんの動画を見て。
勉強しようかな。
ピコン。
あっ!
私は飛び起きて。
ぺたんと座る。
ん?
西郷くんだ。
『あのさ、北見の連絡先知りたいって、何人かから言われてるんだけど、教えていいのかな?』
『ちなみに、東園にはダメ言われた。何で私の連絡先を教えなきゃ行けないんですか~って。笑』
『ダンス動画、凄かったから、その影響かもね。うちの父さんと母さんは、喜んでまだ見てるけど』
へへ。
元はと言えば。
西郷くんのお父さんとお母さんの。
一言から始まったからね。
でも。
何で私の連絡先知りたいんだろ?
分かんないけど。
みーちゃんが断ったなら……
「そうなんだ。私も教えて欲しくないかな。ごめんね」
「それから、お父さんとお母さんにありがとうって、伝えといてね」
ふう。
『分かった。でも、月曜日。覚悟しといた方がいいよ』
ん?
月曜日?
なんだろ?
あっ。
それより……
「覚悟って??」
「あのさ、今日、洋ちゃんと連絡取ったりした?」
『月曜日。学校が騒がしくなるってこと。北見や東園。それこそ時の人だからね』
『三並がどうしたの? あいつ部活でしょ?』
人差し指を唇に当てて。
斜め上を見上げる。
学校が騒がしくなって。
私とみーちゃんが……
んー。
分からない。
ふう。
画面を見つめて。
返信を打つ。
「時の人って??」
「洋ちゃん。動画見てくれたのかなって。メッセージ送ったけど、返事来ないから」
『二人は有名人になったからね』
『三並のことだから寝てんじゃない?』
有名人?
でも。
見てくれてる人。
みんなが島の人じゃないし。
「そっか。わざわざありがとう」
『ああ、三並起きてるよ。今、寝てるのか? って、メッセージ送ったら、起きてるけどって、返信来たよ』
「ありがとう。分かった。じゃあ、またね」
『ほーい』
んー。
洋ちゃん。
起きてるんだ。
もー。
素早く指を動かして。
メッセージを打ち込む。
「洋ちゃん。ダンス動画見てくれた?」
よし。
画面とにらめっこ。
ん?
1分。
また1分。
進むのは時間だけ。
あれ?
起きてるんじゃないの?
既読がつかない。
私からのメッセージ。
んー。
私のダンス。
どう想ったのか。
聞きたいのに、
あっ。
もしかして。
具合悪いのかな?
だいたい。
調子が悪いときは。
メッセージ返ってこないし。
「洋ちゃん。具合悪いの? 大丈夫? 時間がある時に動画みて、感想聞かせてね! おやすみ」
洋ちゃんも。
部活頑張ってるもんね。
スマホを枕元に置いて。
よし。
もぞもぞと。
布団に潜り込む。
明日は。
色んな動画見て。
次のダンス候補を探して。
栞お姉ちゃんの動画で。
ステップの練習しようかな。
ピコン。
ん?
手を伸ばして。
スマホを取る。
『動画見た。ちょっとびっくりした。葉月も東園もなんか別人みたいだった』
『ちょっと部活で疲れたから、もう寝る』
やっぱり。
具合悪かったんだ。
「動画見てくれてありがとう。部活お疲れ様。私もダンス頑張るからね! おやすみ」
よし。
洋ちゃん。
驚いてくれた。
内緒にしてた甲斐があった。
へへ。
明日も頑張ろ。
スマホを抱いたまま。
そっと目を閉じた。
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