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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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39/49

余波

日が延びても。

西側に山が連なる福田の町は。

夕暮れが早いような気がする。

日陰の町並みを。

家の窓の桟に腰かけて。

ぼんやりと眺めている。

動画投稿の時間まで。

あと。

少し。

自然と。

何度も。

視線が向く。

斜向かいの家。

2階の窓は。

閉まったまま。


「ワン」

ノンちゃんが。

私の足元で。

舌を出しながら。

お座りをして。

こっちを見つめていた。

私は。

自分の膝をポンポンとたたく。

ノンちゃんは。

ぴょこんと。

飛び乗って。

私の顔を。

ペロペロと舐める。

「はいはい、ノンちゃん。くすぐったいよ」

ノンちゃんの頭と背中を撫でると。

鼻を鳴らして。

丸まった。

あったかさが。

腿にじんわりと広がる。


ピコン。

ん?

ノンちゃんを押さえて。

少し屈んで。

腕を伸ばして。

机の上のスマホを手に取った。

外村くんからだ。

『ダンス動画見たよ! 北見さんも東園さんも上手過ぎてびっくりした!』

『チャンネル登録もしたし、グッドボタンも押した! コメントもしたからね! トムトムが僕だから』

『また、見てくる!!』

わっ。

「動画見てくれて、ありがとう。後でコメント見とくね、トムトムって、かわいい名前」

よし。

にんまりな私。


ピコン。

あっ。

スマホの画面に映し出された名前に。

スッと。

背筋が伸びる。

『葉月さん、こんにちは。めちゃくちゃダンス上手い! 一緒に踊ってる、みずはさんとも息ピッタリだね』

『繰り返し見てる。この曲も好きになる。ありがとう、知らせてくれて!』

なんか。

くすぐったいような。

気がして。

胸をさする。

えーと。

「日置くん、ありがとう。何度も見てるの?」

『もう3回見たよ! やばいね。ずっとリピート出来る。あのさ、後で電話してもいい?』

ひゃっ。

そっと指を動かす。

「うん。いいよ」

『21時頃でも平気?』

「うん。じゃあ、お風呂入って待ってる」

『分かった、じゃあ後でね』

「うん。じゃあね」

いつの間にか。

騒がしくなった鼓動が。

耳のそばで響いていた。

「ふぅ……」

息を真上に吹き出して。

前髪を揺らした。

まだ。

21時まで。

時間あるもんね。


そうだ。

スマホの画面を操作して。

YouTubeの画面を開く。

わっ。

再生数。

300回も回ってる。

登録者も24人に増えてる。

チャンネルは。

みーちゃんのお母さんが作ってくれたアカウントだから。

24人の内。

私とお母さんとお父さん。

みーちゃんとみーちゃんのお父さん。

栞お姉ちゃんと聡お姉ちゃん。

西郷くんとそのご両親。

10人は初期から登録されていたから。

14人増えたことになる。


えーと。

トムトムだっけ。

外村くんのコメントを探す。

あった。

『二人とも、ダンス上手で、服もおしゃれで、かわいい!! これからも、応援してます』

わっ。

おしゃれだって服。

かわいいって。

頬がゆるゆる。

他のコメントも目に入る。

『なんだ、この子たち、かわいいんだが』

『二人の服も、二人もかわいい。ダンス歴0歳なのね。頑張れ!』

『かわいいでしょ。かわいいですね。これは』


ん?

西郷パパ?

西郷くんのお父さんだ。

『ファン一号、コメントも一番! 二人とも頑張れ!!』

「ハハ……」

私の声に。

耳をピクリと動かすノンちゃん。

「ノンちゃん。私たちのダンスを喜んでくれる人がいるのって、不思議だね」

「ワン」

「次のダンスも頑張ろう」

「ワン」

ムクッと。

頭を上げたノンちゃん、

「ノンちゃんをも踊ってみるー?」

両手でノンちゃんの顔を挟んで。

顔を近づけた。

ノンちゃんの温かい舌が。

私の顎を舐め回した。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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