表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/48

届く……

みーちゃんからのメッセージだった。

『はーちゃん。あなたも、かわいいでしょ! 早く一緒に踊りたいですね』

文字を目で追いながら。

緩むほっぺ。

「ありがとう。みーちゃん。そうだね。あっ。練習ね、福田の公民館使えるみたい。鏡もあるからって栞お姉ちゃんが言ってた」 

『じゃあ、そこで練習して海辺で撮影しましょうか』

「うん。いいね! 早く週末、来ないかな」

『そうですね。うちのお母さんもなんだかやる気ですよ』

「そうそう。栞お姉ちゃんが、動画投稿する時に注意することを私たちに話したいんだって」

『それは助かりますね。頼りになりますね栞さん』

「そのうちコラボしたいね。栞お姉ちゃんは、かっこいいダンスだから、そういうのも踊りたい」

『そうですね! はーちゃん、ごめんなさい、お母さんに呼ばれたので、またねです』

「分かった。またね、みーちゃん」

私はそのまま両手を伸ばす。

「ん~!」

ちょんと。

立ち上がって窓を閉めた。

「葉月~ご飯よ~」

ノンちゃんは。

お母さんの声に、

しっぽふりふり。

部屋を出ていった。

「はあい」

私もその後を追った。


お風呂に入って。

部屋に戻ると。

21時を少し回っていた。

ベッドでゴロゴロしながら。

スマホをいじってる。

ん?

あっ。

そうだ。

外村くんに返信するの忘れてた。

えーと。

「外村くん、すごいね! もうマルチ出来るようになったの」

「もしかして、ずっと『渦潮』してたの?」

「今日は遅いから、ゲーム出来るとき連絡するね」

よし。

これでいいかな。


ピコン。

外村くんかな?

え……?

あっ……

私はもぞもぞと体を起こして。

ぺたんと座る。

日置くんだ。

ちゅくんと。

弾ける鼓動。

慌てて。

胸をさする。

『北見さん、こんばんは。遅くにごめんね。一つ聞き忘れたことがあったんだ。聞いてもいいかな?』

聞きたいこと?

なんだろ?

でも――

ふふ。

もう。

聞いてるじゃん。

「日置くん、こんばんは。聞きたいことって、何ですか?」

ふぅ……


ブーッ……ブーッ……

手の中で震えるスマホ。

え?

日置くんからの着信。

あ?

Tシャツの胸元を握りしめる。

そっと。

通話ボタンを押して。

スマホを耳元に添えた。

「もしもし」

『こんばんは。良かった出てくれた』

明るい声色。

「あ、ん? どうして?」

『そりゃあ、かわいさ北見さんの声が聞けたから』

ひゃっ。

心臓が叫んでるみたいで。

かーっと。

頭に血が上ったみたいで。

ぽーっと。

顔が熱い。

「あ、あの、聞きたいことって、何ですか?」

『うん。教えて欲しいことなんだけど……』

「教える? 何をかな?」

『嫌なら断ってもいいから』

「ん……?」

『あの、北見さんの……名前を教えて欲しいなって……』

「あっ……」

『北見さん?』

「あ、はい」

『それで……どうかな?』

私は大きく息を吸う。

「……葉月です」

『はづきさん……』

ひゃっ。

肩が跳ねる。

低く。

噛みしめるような声。

『いい響きだね。北見さんの雰囲気にピッタリだね』

「そうかな……」

もう。

ずっと熱い。

じんわり汗ばんできた。

『うん。そう想う。あっ、どんな字を書くの?』

「え……!?」

声が裏返っちゃって。

スマホの通話口を塞いで。

小さく咳払いをした。


「あ、えーと。葉っぱの葉に、お月様の月」

『それで、葉月さんか。字も似合ってるね。葉月さん』

「え、あ、ありがとう」

名前を呼ばれる度に。

熱を出した時みたいに。

ぼーっとしてしまう。

『葉月さん、夏休みって部活とかあるの?』

「え、ダンス部に入るんだけど、どうなるか分からないかな」

『へぇー。ダンス部に入るんだ、神舞かまい、上手だったからね、そうか、ダンス見てみたいなぁ』

「あ、ありがとう」

ほっぺに手を添えた。

手のひらの冷たさが。

心地よくて。

少しだけだけど。

ほっとした――

気がした。


『まだ、気が早いんだけど、夏休みに、また島に行くと想うんだ。その時に遊べるかなって想ってね』

「そう……なんだ。あっ、でも……ケガは?」

『その頃には、良くなってるはずだから。どう? まだ、日にちも決められないけど』

軽やかな笑い声が耳に響く。

「うん。いいよ」

『その時にまた、神舞とかダンスとか見せて欲しいな』

「あ、うん。いいよ」

『ほんとに! じゃあ、その、一緒に写真も撮ってくれる?』

楽しそうな声に。

ほっぺが緩んでいた。

「うん。あのね、実は友達とYouTubeにダンス動画をあげる予定なんだ」

『ええーっ!! すごいね! 応援するよ! チャンネルは? いつから投稿するの?』

声のトーンが上がって。

早口にまくし立てる日置くん。

その言い方が。

おかしくて。

自然と笑っていた。

「ハハハ。もう驚き過ぎだよ」

『だって、葉月さんの姿が見れるんだよ! 僕にとって……』

尻すぼみになって。

吐息が聞こえた。

「ん? どうしたの?」

『あ、ううん。凄すぎて、嬉しくて。それ見たらリハビリも頑張れる!』

笑い声混じりの日置くん。

つられて笑う私。

「フフフ。大袈裟だよ。でも、早く良くなって、サッカー出来るようになって欲しい」

『ありがとう。葉月さんの言葉と声と、それからダンス動画見れたら、元気百万倍だよ』

「フフフ。日置くんは、面白いね」

大きく息を吸う音が聞こえた。

『そうかな? それはきっと葉月さんと話してるのが、楽しいから』

「へ?」

とくん。

優しく。

じんわりと。

何かが広がっていく。

『あ、もう遅いから、そろそろ切るけど、また、話したいな』

「え?……うん。いいよ」

『じゃあ、動画投稿したら教えて』

「うん」

『楽しみだなぁ……じゃあ、お休み葉月さん』

「はい。おやすみなさい。日置くん」

ツー、ツー……

なんでかな。

まだ。

話していたかったな……


「ふう……」

Tシャツの襟元をつかんで。

パタパタと扇ぐ。

汗かいたから。

着替えようかな。

あれ?

鼓動が収まってる。

それに……

ダンスのこと。

自分のことみたいに喜んでくれた。

へへ。

頑張ろ。

スマホを握りしめ。

下唇を食んだ。

お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ