届く……
みーちゃんからのメッセージだった。
『はーちゃん。あなたも、かわいいでしょ! 早く一緒に踊りたいですね』
文字を目で追いながら。
緩むほっぺ。
「ありがとう。みーちゃん。そうだね。あっ。練習ね、福田の公民館使えるみたい。鏡もあるからって栞お姉ちゃんが言ってた」
『じゃあ、そこで練習して海辺で撮影しましょうか』
「うん。いいね! 早く週末、来ないかな」
『そうですね。うちのお母さんもなんだかやる気ですよ』
「そうそう。栞お姉ちゃんが、動画投稿する時に注意することを私たちに話したいんだって」
『それは助かりますね。頼りになりますね栞さん』
「そのうちコラボしたいね。栞お姉ちゃんは、かっこいいダンスだから、そういうのも踊りたい」
『そうですね! はーちゃん、ごめんなさい、お母さんに呼ばれたので、またねです』
「分かった。またね、みーちゃん」
私はそのまま両手を伸ばす。
「ん~!」
ちょんと。
立ち上がって窓を閉めた。
「葉月~ご飯よ~」
ノンちゃんは。
お母さんの声に、
しっぽふりふり。
部屋を出ていった。
「はあい」
私もその後を追った。
お風呂に入って。
部屋に戻ると。
21時を少し回っていた。
ベッドでゴロゴロしながら。
スマホをいじってる。
ん?
あっ。
そうだ。
外村くんに返信するの忘れてた。
えーと。
「外村くん、すごいね! もうマルチ出来るようになったの」
「もしかして、ずっと『渦潮』してたの?」
「今日は遅いから、ゲーム出来るとき連絡するね」
よし。
これでいいかな。
ピコン。
外村くんかな?
え……?
あっ……
私はもぞもぞと体を起こして。
ぺたんと座る。
日置くんだ。
ちゅくんと。
弾ける鼓動。
慌てて。
胸をさする。
『北見さん、こんばんは。遅くにごめんね。一つ聞き忘れたことがあったんだ。聞いてもいいかな?』
聞きたいこと?
なんだろ?
でも――
ふふ。
もう。
聞いてるじゃん。
「日置くん、こんばんは。聞きたいことって、何ですか?」
ふぅ……
ブーッ……ブーッ……
手の中で震えるスマホ。
え?
日置くんからの着信。
あ?
Tシャツの胸元を握りしめる。
そっと。
通話ボタンを押して。
スマホを耳元に添えた。
「もしもし」
『こんばんは。良かった出てくれた』
明るい声色。
「あ、ん? どうして?」
『そりゃあ、かわいさ北見さんの声が聞けたから』
ひゃっ。
心臓が叫んでるみたいで。
かーっと。
頭に血が上ったみたいで。
ぽーっと。
顔が熱い。
「あ、あの、聞きたいことって、何ですか?」
『うん。教えて欲しいことなんだけど……』
「教える? 何をかな?」
『嫌なら断ってもいいから』
「ん……?」
『あの、北見さんの……名前を教えて欲しいなって……』
「あっ……」
『北見さん?』
「あ、はい」
『それで……どうかな?』
私は大きく息を吸う。
「……葉月です」
『はづきさん……』
ひゃっ。
肩が跳ねる。
低く。
噛みしめるような声。
『いい響きだね。北見さんの雰囲気にピッタリだね』
「そうかな……」
もう。
ずっと熱い。
じんわり汗ばんできた。
『うん。そう想う。あっ、どんな字を書くの?』
「え……!?」
声が裏返っちゃって。
スマホの通話口を塞いで。
小さく咳払いをした。
「あ、えーと。葉っぱの葉に、お月様の月」
『それで、葉月さんか。字も似合ってるね。葉月さん』
「え、あ、ありがとう」
名前を呼ばれる度に。
熱を出した時みたいに。
ぼーっとしてしまう。
『葉月さん、夏休みって部活とかあるの?』
「え、ダンス部に入るんだけど、どうなるか分からないかな」
『へぇー。ダンス部に入るんだ、神舞、上手だったからね、そうか、ダンス見てみたいなぁ』
「あ、ありがとう」
ほっぺに手を添えた。
手のひらの冷たさが。
心地よくて。
少しだけだけど。
ほっとした――
気がした。
『まだ、気が早いんだけど、夏休みに、また島に行くと想うんだ。その時に遊べるかなって想ってね』
「そう……なんだ。あっ、でも……ケガは?」
『その頃には、良くなってるはずだから。どう? まだ、日にちも決められないけど』
軽やかな笑い声が耳に響く。
「うん。いいよ」
『その時にまた、神舞とかダンスとか見せて欲しいな』
「あ、うん。いいよ」
『ほんとに! じゃあ、その、一緒に写真も撮ってくれる?』
楽しそうな声に。
ほっぺが緩んでいた。
「うん。あのね、実は友達とYouTubeにダンス動画をあげる予定なんだ」
『ええーっ!! すごいね! 応援するよ! チャンネルは? いつから投稿するの?』
声のトーンが上がって。
早口にまくし立てる日置くん。
その言い方が。
おかしくて。
自然と笑っていた。
「ハハハ。もう驚き過ぎだよ」
『だって、葉月さんの姿が見れるんだよ! 僕にとって……』
尻すぼみになって。
吐息が聞こえた。
「ん? どうしたの?」
『あ、ううん。凄すぎて、嬉しくて。それ見たらリハビリも頑張れる!』
笑い声混じりの日置くん。
つられて笑う私。
「フフフ。大袈裟だよ。でも、早く良くなって、サッカー出来るようになって欲しい」
『ありがとう。葉月さんの言葉と声と、それからダンス動画見れたら、元気百万倍だよ』
「フフフ。日置くんは、面白いね」
大きく息を吸う音が聞こえた。
『そうかな? それはきっと葉月さんと話してるのが、楽しいから』
「へ?」
とくん。
優しく。
じんわりと。
何かが広がっていく。
『あ、もう遅いから、そろそろ切るけど、また、話したいな』
「え?……うん。いいよ」
『じゃあ、動画投稿したら教えて』
「うん」
『楽しみだなぁ……じゃあ、お休み葉月さん』
「はい。おやすみなさい。日置くん」
ツー、ツー……
なんでかな。
まだ。
話していたかったな……
「ふう……」
Tシャツの襟元をつかんで。
パタパタと扇ぐ。
汗かいたから。
着替えようかな。
あれ?
鼓動が収まってる。
それに……
ダンスのこと。
自分のことみたいに喜んでくれた。
へへ。
頑張ろ。
スマホを握りしめ。
下唇を食んだ。
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




