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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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かわいい

家に帰って。

早速。

お母さんに買ってもらった。

服に着替える。

ちゃちゃっと。

スカートとTシャツを脱いで。

カットソーを頭から被る。

新しい服の匂いを嗅いで。

顔を出す。

やっぱり。

髪が短いから楽だった。

袖を通して。

裾を伸ばす。

うん。

さらりとした生地が。

肌に吸い付くようで。

着心地がいい。

鼻歌を口ずさんで。

ホワイトデニムのショートパンツを履く。

立ち鏡の前に。

ぴょんと飛び出した。

「うわ」

上下でちゃんと着てみると。

めちゃくちゃ可愛かった。

胸元のハートと。

ショートパンツの。

お尻の部分のハートが。

アクセントになって。

それに。

体全体がすっきりして見える。


へへへ。

みーちゃんに写真送らなきゃ。

えーと。

ポーズどうしようかな。

片手を頬に添えて。

驚いた顔で。

カシャッ。

ぎりぎり。

腿まで収まった。

ゆるゆるのほっぺのまま。

メッセージを打ち込む。

「みーちゃん。私の選んだ服だよ!」

よし。

口をすぼめて。

スマホの画面を見つめる。

おどけて。

驚く顔をした。

出来立てほやほやの私がいる。

へへ。

どうする?

洋ちゃんにも。

送っちゃおうかな……

!?

あっ。

ふと。

洋ちゃんと中臣さんの姿が思い浮かぶ。

相合い傘の二人。


ちぇっ。

頬を膨らませて。

息を吐きながら。

窓辺に近づいて。

からから……

そっと。

窓を開ける。

ふわっと。

潮風が舞い込んで。

ひやりと首筋を抜けて。

毛先がほっぺにじゃれる。


ちょこんと。

桟に腰かけて。

外を眺めた。

雨は小降りになっていて。

薄暗い空間を照らす。

外灯の明かりが滲んでいる。


あっ。

トクン。

何かが。

優しく跳ねた。

何気に流れた視線の先。

日置くんの部屋。

暗く静まりかえっている。

手にしていたスマホを。

顔の前に持ってきて。

指先を画面に近づけた時。


タッ、タッ、タッ……

足音がして。

部屋に入ってきたノンちゃん。

私の足にまとわりついて。

べろを出したまま。

うるうるな瞳で。

私を見つめている。

ぽんぽんと。

私が自分の腿を叩くと。

ぺろりと舌なめずりをして。

ぴょんと。

膝の上に乗ってきた。

クンクンしながら。

私の首を舐めてくる。

「きゃははは、くすぐったいよ、ノンちゃん」

あったかくて。

さらさらの。

背中を撫でると。

満足したのか。

しっぽふりふり丸くなった。

「ノンちゃんはいいな。なんかさ、ふわふわ? ふらふらするんだよね」

ピクッと。

耳が動く。

「せっかく、洋ちゃんが元気になったのに。もやもやするのなんでなのかな」

ムクッと。

顔を上げたノンちゃん。

鼻をクンクンして。

窓の外を見た。

「ワン!」

優しく吠える。

「葉月!」

あっ。

背中から。

追い越して行く声。

体をひねって。

見下ろす。

外灯の光の中に。

雨を避けるように。

手をかざして。

私を見上げる洋ちゃんがいた。


私が立とうとするより早く。

ノンちゃんは。

ぴょんと飛び降りて。

しっぽを振りながら。

びょこんとベッドに飛び乗った。

私はくるんと振り返る。

「お帰り、洋ちゃん」

「あっ、ああ」

あれ?

「洋ちゃん傘は?」

「ん? 見れば分かるだろ持ってないよ」

そっか。

傘持ってないからだったのか。

相合い傘……

「あっ。早く帰らないと風邪引くよ」

「あ、ああ、じゃあ」

「うん。じゃあね」

にこりと笑って。

小さく手を振ると。

洋ちゃんは。

かざしていた手を少し上げた。

そして。

一歩。

二歩。

歩きだして。

立ち止まって。

くいっと。

顔を上げた。

「葉月……」

「ん? なあに?」

「なんか、すごいな、その格好」

「へへ。どうかな?」

背筋を伸ばして。

気をつけをする。

すっと。

視線を逸らす洋ちゃん。

「なんか……葉月じゃないみたいだな……」

「ん?」

「あ、いや、じゃあ」

洋ちゃんは。

駆け出した。


タッ、タッ、タッ……

足音が路地に響いて。

水溜まりを。

ぴょんと。

跳び跳ねて。

角を曲がって消えていった。

ちぇっ。

私はカットソーの裾をつまんだ。

頬を膨らませて。

また。

桟に腰かける。

私みたいじゃないって。

どういう意味なんだろ。

喜んでくれるかなって。

想ってたのに。


かわいい……

あっ。

耳元で。

日置くんの声がよみがえって。

真っ暗な彼の部屋を見ていた。

ぱらぱら……

まばらに落ちる雨音。

ちぇっ。

洋ちゃんに。

かわいいって。

言って欲しいだけなのにな。


ピコン。

手にしていた。

スマホの画面に視線を落とした。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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