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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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33/49

誘惑!?

午前中。

土庄のショッピングモールで。

中臣さんのTシャツを買うのに付き合って。

『ムック』で。

昼飯を食べた。

中臣さんは。

熱心にサッカーのことを知ろうとしてくれて。

ルールも含めて。

ノートにメモを取っていた。


今は。

ショッピングモール近くの靴屋にいる。

中臣さんのスニーカーを買うために。

「出来るだけ、足が窮屈にならない感じのがいいよ」 

「三並くんは、何色が好きなの?」

「俺? 青かな」

「そうなんだ」

中臣さんは。

すっと。

手を伸ばして。

水色のスニーカーをつかんだ。

「これ、履いてみる」

中臣さんは。

かがんで床にスニーカーを置いた。

履いている靴を脱いで。

スニーカーに足を入れる。

とんとん。

爪先を打ち付けて。

膝を曲げて。

体をひねって。

指でスニーカーの踵を入れる。

動作が葉月とおんなじ。

「あっ」

バランスを崩した中臣さんが。

俺に向かって倒れてきた。

受け止める形になって。

中臣さんの腰の辺りを触っていた。

柔らかくて。

あったかい……

中臣さんは。

さっと。

離れて。

髪を撫でて。

うつむいた。

「ごめんなさい」

「あ、いや、大丈夫?」

俺はズボンで。

両手をさする。

中臣さんは。

小さくうなずいて。

スカートの裾をつまんでいた。

「中臣さん、どう? スニーカーの感じ、足痛かったりしない?」

「うん。これにするね」

後ろ手に胸を張る中臣さん。

その膨らみに目がいって。

「わかった……」

思わず下げた視線。

「ちょっと待ってて。会計してくる」

「あ、ああ……」

手に残る。

中臣さんの体の感触。

女子の体って。

あんなにあったかくて。

柔らかいんだよな……

ふと。

葉月が。

抱きついて来た時の感触が。

呼び起こされて……

やべっ。

耳が熱い。

なに照れてんだ……


そして。

靴屋を出たとたん立ち止まる。

ザー……。

シャワーのように。

降り注ぐ雨。

天気予報は夕方から雨だって。

「どうする?」

「あそこで、傘買おうか」

中臣さんは100メートルくらい先の

コンビニを指差した。

「あ、じゃあ俺買ってくるからここで待ってて」

「え? 私も行きます」

「え? でも、雨に濡れるよ」

「だって、三並くんだって」

「そうだけど……ち、ちょっと!」

中臣さんは。

両手を頭にかざしながら。

走り出した。

俺はその後を追っかける。

ん?

中臣さん……

足早くね。

だって俺は小学校の時。

学年で一番早かった。

全力でないにせよ。

追い付けないんだが……

ん?

前を行く中臣さん。

水溜まりを。

ぴょんとジャンプして。

ミニスカートが……

一瞬。

視線が釘付けになった。


先にコンビニに入った中臣さん。

胸元に手を添えて。

息を整えている。

濡れた髪の毛先から。

滴が白い肌に落ちて。

Tシャツの中に流れていく。

やべっ。

服が透けてて。

目をそむけた。

くーっと。

耳が熱い。

「はい、これで拭いて」

「え、あ、中臣さん。先に拭きなよ、俺は平気だから」

「タオルもう一つあるから」

そう言って。

ショルダーバッグの中から。

ハンドタオルを取り出した。

ふーん。

女子はすごいな。

「じゃあ、ありがとう」

ざっと。

髪と顔と腕を拭いた。

「ありがとう」

タオルを返したら。

中臣さんは。

俺を見て。

「もう、全然拭けてない」

背伸びして。

俺の頭にタオルを被せて。

わさわさと拭き始めた。

「ちょ、ちょっと……」

「じっとしてて」

なんか。

いい匂いが近くて。 

やべっ。

目の前に。

中臣さんの胸が……

また。

耳が熱い。

「あっ」

一瞬。

中臣さんの手が止まって。

すぐに動き出す。

「これで大丈夫」

「ああ、ありがとう」

「三並くんが、風邪引いたら困るからね」

後ろ手に俺を覗き込んで。

目が合うと。

中臣さんは。

ハッと。

体を引いて。

うつむいた。


それから。

傘を一つ買った。

二つ買おうとしたら。

「バス停までで、大丈夫だから」

安直に納得した俺。

そして。

俺が傘を差して。

相合い傘で。

バス停まで歩く。

これ。

よく葉月と学校帰ったりしてたな……

そうだ。

「あのさ、女子ってどういうところ行ったらうれしいの?」

「え?」

「あ、いや、どーなのかなって」

「……人によって、違うと思うけど」

「そっか。そうだな」

「どうして?」

うつむき加減に。

上目遣いの中臣さん。

「ん? いや何でもない……それより、中臣さん、足早いよね?」

「え?」

「いや、さっき、追い付けなかった」

「バレエやってたからかな。足は早い方かも」

「へぇ、バレエか。ん? バレエは止めちゃったの?」

「ああ、うん。そのサッカー部のマネージャーに興味があって」

「そっか。そうだ、ならさ体育祭の、クラス対抗リレー出たらいいのに」

「え? えーと、じゃあ、三並くんも出るなら、やってみようかな」

「え? 俺も?」

「だって。早いんでしょ?」

「じゃあ、頑張ってみるか」

そうだな。

小学校のリレーでも。

俺のこと葉月は応援してくれてたし。

部活の試合でいいとこ見せられないし。


バス停に着くと。

すぐにバスが来た。

自然と。

通学で使う一番後ろの席に腰かけた。

中臣さんに。

窓側を譲ると。

「ありがとう」

にっこり笑った。

バスが動き出す。

ん?

何気に横を見ると。

中臣さんが。

口に両手をあて。

あくびをしていた。

俺の視線に気づくと。

申し訳なさそうに。

肩を寄せて。

うつむいた。

「ごめんなさい」

「ん? 何が」

きょとんした。

中臣さん。


ピコン。

「あっ。ちょっとごめん」

ポケットからスマホを取り出して画面を見た。

葉月だ。

『わかった』

ん?

これだけか?

首を捻りながら。

スマホをポケットにしまった。

「三並くん、今日はありがとう。服も靴も買えたし。サッカーも教えてくれて」

「ん? いや、いいよ。あっ、眠かったら寝てもいいよ」

首を振る中臣さん。

「そんな、勿体ないことできないよ」

「何が勿体ないの?」

「内緒」

肩をすくめて。

横目でチラッと。

俺を見上げた。

「ああ、そうだ、さっきの話の続き聞かせて、好きな選手の話」

「あ、えーと……」

それから。

海外のサッカー選手の話をして。

中臣さんは。

相づちを打って。

聞いてくれていた。

ん?

甘い匂いを吸い込んだ。

!?

急に。

中臣さんが凭れかかってきた。

「中……臣……」

これ。

どーする?

すー、すー……

寝てる。

よな。

起こす?

体を直すか?

直したら起きるよな。

横を向いた時。

たるんだ服の胸元に。

目が行って……

クリーム色の。

下着が見えた。

ぽーっと。

凝視してしまって。

ごくり。

唾を飲み込んだ。

リボンが付いてて……

やべっ。

鼻の下が伸びていた。

変な汗が出てきて。

正面を向いて。

固まる俺。


バスがゆっくりと停まって。

客が乗り込んで来た。

瀬田町か。

中臣さんの住む内海町まで。

後30分くらい。

バスが発車する。

ガクッ。

中臣さんの頭が動いて。

しゅっと。

体を直して。

顔を伏せたまま。

右手で髪を撫でた。

「ごめんなさい」

「あ、いや全然」

「せっかく、話してくれたのに寝ちゃうなんて」

「いいよ。いつでも話すし」

「優しいね。三並くん」

「そっかな……?」

「そうだ、外国のチャンピオンズなんとかって言ってたよね?」

「チャンピオンズカップのこと。でも、家さ『ウォウウォウ』に入ってないから、試合観れないんだよね」

「あっ。私の家、入ってるよ」

「そうなの? いいなぁ」

「あ、あの、三並くんまだ時間あるかな」

「ん? ああどうしたの?」

「これから、家来る? その試合観れると思う」

「え……!?」

お読み下さりありがとうございます。

感触しております。

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