かさかさ
「葉月どうしたの?」
「え? うん。あ、早く服着たいなって」
かさかさ。
紙袋をぎゅっとする。
「娘ながら、似合ってるし、かわいいと思うよ葉月」
「あ、ありがとう」
「ん? どーした?」
「あ、さっき洋ちゃんがいたような気がして」
「洋介? だったら乗せて帰ったのに」
「あ、でも友達と一緒だった……」
友達。
なのかな?
「フフフ。そっか、じゃあ連絡してみ洋介に、さっき見かけたよって」 「え!? いいよ。邪魔しちゃうでしょ」
「フフフ。そんな気を使うとはね洋介に。まあ、送ってみな、びっくりすると思うよ」
「どして?」
「まあ、やってみな。洋介どこどこで見かけたよって」
私はポケットからスマホを取り出した。
あっ。
洋ちゃん。
みーちゃん。
外村くん。
それぞれからメッセージが来てた。
口を結んで。
まずは……
『葉月、体育祭の振り替え休日。予定ある? なかったら空けといて』
この時に。
どこか行くのかな?
小さく息を吐いて。
両手でポチポチと返信を打つ。
「分かった。さっき土庄のショッピングモールで見かけたよ」
これでいいのかな……
びっくりするのかな?
ふう。
文字を消して……
「分かった」
私はそれだけ送った。
次は。
みーちゃん。
『はーちゃん。私もダンス用の服買いましたよ』
あっ。
画像もついてる。
「わっ、みーちゃんかわいい」
オレンジのカットソーを着て。
オリーブ色のホットパンツを履いて。
両手を顔の脇に添えて。
ほっぺを膨らませて。
『かわいいでしょ?』
のダンスのポーズ。
少し体が前のめりになって。
車が止まる。
信号待ちみたい。
「瑞葉がどうしたの?」
「ほら」
私はお母さんに向かって。
スマホの画面を見せた。
「あら、瑞葉もかわいいね。二人とも、もうアイドルだね」
唇をかんで。
微笑むと。
お母さんは。
笑いながら。
ハンドルを握る。
体が後ろに引っ張られて。
景色が動き出した。
よし。
スマホの画面の上で。
指先も軽やかに動く。
「みーちゃん。まさに。かわいいでしょ! めっちゃ似合ってる!」
「私も服買ったよ。今車の中だから、家に着いたら。服着たの送るから見て」
早く家に着かないかな。
車は瀬田町を走っている。
まだまだだ。
ピコン。
『はーちゃん、ありがとう。上手な返しですね。でも、ヤバイですね。早く一緒に踊ってみたいです』
『私。いいこと思いついたんです。『渦潮』のキャラクターのコスプレしませんか? 衣装はお母さんが作ってくれるので』
わぁ。
楽しそう!
「コスプレやりたい! カーヤちゃんになりたい!」
「みーちゃんは、ダリアちゃんだね! ヤバイ想像しただけで楽しい!」
『今度、家に遊びに来た時に、はーちゃんの体のサイズを計らせて下さい』
「うん。じゃあ、また、あとでね」
かさかさ。
抱えた紙袋。
緩むほっぺ。
きっかけは。
西郷くんのお父さんとお母さん。
その何気ない一言。
二人で服を着て踊ってるとこ。
コスプレをした姿。
想像しただけで。
むずむずしてくる。
頑張りたいし。
頑張る。
かさかさ。
気持ちは少しずつ膨らんでいく。
ふぅ。
あとは。
外村くん。
『北見さん、『渦潮』マルチ出来るようになったよ。一緒に出来そうなとき、教えてくれたら嬉しいな』
!
すごいな外村くん。
でも。
おかしくて。
クスッと笑う。
だって。
絶対『渦潮』にハマってる。
今日の夜は……
洋ちゃんと。
ゲーム出来るかな……
あっ。
相合い傘……
ほっぺを膨らませて。
長く息を吐いた。
「外村くん、すごいね! もうそこまでレベル上げたんだ!」
「マルチ出来る時は、連絡するね」
ふと横を見る。
車は内海町を走っていた。
相変わらず。
水滴だらけの窓ガラス。
まだ。
夕方じゃないのに。
外灯がついている。
無意識に腕に力が入って。
かさかさ。
紙袋が苦しそうだった。
早く。
家に着かないかな。
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