抱えてるもの
明るさはあるけれど。
空一面。
白と灰色が混ざったような。
低い雲が蓋をしている。
午後から雨の予報みたい。
そんな中。
今日はお母さんと。
島の西側にある土庄町までお買い物。
土庄町は島で一番栄えてるから、
ショッピングモールや洋服屋さんとか。
ご飯を食べるところも沢山ある。
月に一度のちょっとしたお出掛け。
お母さんが運転する車で。
約一時間の道のり。
私は助手席で。
スマホに映し出される。
『フロイライン』動画を観ながら。
手振りだけ。
ダンスの練習。
表情も豊かで。
かわいいポーズが沢山ある。
特にサビのところが気に入ってる。
指でハートを作ったり。
両手でピースしながら。
それを頭に指先をつけて。
目をつむり。
微笑みながら。
舌を横に出したり。
手や頭はかなり動かす。
これに。
本来はステップがつく。
上体だけの動きでも。
汗をかいてくる。
「はあ……」
Tシャツの胸元をつかんで。
パタパタとあおぐ。
「なかなか、いいんじゃない」
「そう?」
「そうそう、栞ちゃん、YouTubeやってるでしょ? 相談してみたら?」
「うん。朝ねちょっと相談したら、アドバイスしてくれた。ダンスのことも、色々教えてもらう約束したよ」
「へえー。お母さんなんか嬉しいな、葉月がそうやって自分からやってみたいって思って、行動するの」
「へへ。そうかな?」
「お母さん、応援するよ」
「ありがとう」
そうだ。
あのお願い聞いてみようか。
「お母さん。あのね、洋服買いたいんだ。Tシャツとショーパンツ。安いのでいいから」
「さてはダンスで使うの?」
「うん。栞お姉ちゃんが、動きが見える服のがいいって。スカートよりもパンツとかの方が」
「なるほどね」
「それで。みーちゃんがオレンジで私が白をイメージカラーにしようってなったんだ」
「うわ。本格的。じゃあ、先に買い物済ませて。お昼食べたあと、服見に行こう」
「お母さん、ありがとう」
車は坂道をのぼる。
道路脇の木々の合間。
相変わらずの曇り空。
でも。
心は爽やかな風が吹いて、
ほかほかな陽気。
そうだ。
昨日は眠くて。
やりとり終えちゃったけど。
洋ちゃんが。
どっか行こうって言ってたな。
うーん。
どこがいいのかな。
大体。
今までは。
お互いの家か。
海か。
山か。
公園とか。
だいたい福田の町内。
それ以外の場所で。
一緒に遊んだ記憶がない。
まあ。
洋ちゃんと一緒なら。
昨日返信したように。
どこでもいいんだけどね。
へへ。
それと。
YouTubeに動画を投稿することは。
まだ秘密にしてる。
洋ちゃんを驚かせようと想って。
投稿するときに言おうか。
その前に。
洋ちゃんにだけ動画を送ろうかな。
とか迷ってる。
スマホをそっと抱きしめた。
ゆっくりと車は右折して。
大きな駐車場に入っていった。
色々服屋さんを見て回って。
迷いに迷った挙げ句。
購入したのは。
白地の半袖のカットソーと。
ホワイトデニムのショートパンツ。
少し値段が高かったけど。
「お母さんからのプレゼントね」
って。
私は何にもしてないのに。
買ってくれた。
二つとも。
とてもかわいくて。
気に入ってる。
カットソーは。
首元と袖と裾に。
オレンジのラインが入ってて。
胸元に二個の淡いピンクのハートのリングが描かれてる。
体にぴったりフィットして。
さらさらして着心地もいい。
ホワイトデニムのショートパンツは。
裾が短めで。
後ろのポケットの所に。
カットソーと同じような。
ピンクの刺繍のハートがあるの。
紙袋を胸に抱えて。
背伸びするように歩く。
「あら、降ってきたわね」
「ほんとだ」
ショッピングモールの自動ドアが開くと。
ザー……
雨音が飛んできて。
空気が肌にまとわりつく。
お母さんが差してくれた傘に入って。
車のそばまで歩く。
雨は強くて。
傘やアスファルトで跳び跳ねる。
助手席に乗り込んで。
ほっぺがゆるゆるになる。
今すぐにでも。
着替えて踊ってみたい気分。
ワイバーが。
リズムよく。
右に左に。
前が見えるようになって。
車が動き出した。
ゆっくりと駐車場を出かかった時。
ん!?
洋ちゃん……
すぐに振り返ったけど。
車が角を曲がって。
見えなかった。
かさかさ。
ぎゅっと。
紙袋を抱きしめて。
胸の辺りが。
わしゃわしゃする。
洋ちゃん。
中臣さんと一緒だった。
仲良しなんだ。
ちぇっ。
口を尖らせる。
だって。
ずっと。
私としてた。
相合い傘だった……
ぼんやりと。
窓ガラスに映る私の顔は。
水滴だらけだった。
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感謝しております。




