へんか
頬杖をついて。
机の上にある。
写真をぼんやりと眺めている。
小学校の卒業式に撮った。
葉月とのツーショット。
それにしても。
港に迎えに来た葉月の姿。
めっちゃかわいかった。
たぶん。
あいつのお気に入りのワンピース着て。
ショートヘアの葉月。
一瞬。
目を疑ったけど。
驚くというより。
かわいいが先にきた。
「いて……」
ぼーっとして。
あごが。
手から滑った。
女子の髪型とか正直。
よく分かんないけど。
顔がすっきり見えて。
なんか。
笑顔の迫力が違うっていうか。
短くしただけなのに。
こんなに印象が変わるって。
はじめてかもな。
でも。
なんか様子が変だった。
ぼーっと。
何かを見つめたり。
上手く言えないけど。
挙動がいつもの葉月と違って。
た。
「はぁ……」
頭の後ろで。
手を組んだ。
決定的なのは。
家までの帰り道。
あいつ。
手をつないでこなかった。
まあ。
嬉しそうに。
カーヤのキーホルダーを見てからかな。
それに。
どういう心境の変化なのか。
運動苦手一直線だった葉月が。
ダンス部って。
そもそも。
運動神経はいいのに。
苦手だ。
思い込んでるだけだから。
それ自体は良いことなんだけど。
そっか。
神舞のことがあるから……
か。
ん?
まさか。
俺のために?
考えすぎかな。
いや。
そうかもな……
かわいくなったなぁ。
「はあ……」
どこを見ていても。
港での葉月の姿しか。
頭の中に出てこない。
そっか!
あいつが俺に見せたかって。
髪切った姿だったのか。
自然と頬が緩んでいく。
照れくさいけど。
後で。
似合ってるくらいは。
言ってやるか。
両手を挙げて。
伸びをする。
ほんとなら。
ゴールデンウィーク明けの週末。
部活の練習試合のとき。
葉月が来てくれたら。
好きだって。
言おうと想ってたんだけど。
ピピピッ……
スマホのアラームが鳴った。
葉月とゲームをする時間。
俺はスマホを手に取って。
メッセージを打った。
『葉月。そろそろやるか?』
葉月のことだから。
すぐに返事がくる。
最近、一緒にしてなかったから。
今日は出来る限り。
楽しんでもらうか。
……
あれ?
遅いな。
何かあったのか?
あいつのことだから。
気づかないってことはないだろ。
『俺はいつでも大丈夫』
もう一度送る。
うーん。
スマホをテーブルに置いて。
腕を組んだ。
――ピコン。
結局返事が来たのは。
約30分後。
『ごめんね。お風呂入っててた』
ん?
ミスしてる。
しかも。
嘘だ。
俺と約束した時。
あいつは風呂に入って。
いつでもゲーム出来るようにしている。
まあ、何か家であったのかもしれないか。
『了解。じゃあ今からやろう』
「うん」
小さく息を吐きながら。
一文字一文字。
しっかりと打ち込む。
「あのさ葉月」
「ショートヘア、似合ってるよ」
「それと、ダンス部頑張れよ。俺もサッカー頑張るから」
ピコン。
『ありがとう。洋ちゃん』
『じゃあ、ゲームしよう』
「オーケー」
気にしすぎなのか。
何か返信が味気ない。
感じがする。
たいがい。
嬉しい。
とか。
楽しい。
とか。
言ってくるのに。
やめやめ。
とりあえず。
今は楽しもう。
それから。
3時間。
ゲームで遊び倒した。
ゲーム内チャットのやり取りは。
普段と変わらない。
俺の考え過ぎか。
「ふー」
息を吐いて。
胸を撫で下ろす。
また。
写真に目がいく。
葉月の笑顔は。
あの頃のまま。
微笑みかけてくる。
そっか。
今度。
思い切って。
デートに誘ってみるか。
その時に……
いやでも。
デートって何するんだ。
土庄町のショッピングモールとか。
オリーブ公園って何かあったっけ?
それとも。
高松に行くか?
さすがにそれは。
お小遣いだけじゃ。
なんにも出来ないよな。
やぺ。
マジわかんね。
あいつが喜びそうなとこ。
どこだろ?
ピコン。
ん?
『洋ちゃん、楽しかった。ありがとう』
ふっ。
音声なんてないのに。
ちゃんと。
脳内再生される葉月の声。
「俺も楽しかった」
そうだ。
「葉月さ、行ってみたいところとかある?」
『ん? 行ってみたいところ? どしたの?』
え?
やべ。
質問返しかよ。
「たまには、そのどっか遊びに行こうかなって」
打ち込んだメッセージを読み返す。
違うな。
いや。
これでいいか?
!
やべっ。
送信ボタンに。
指が触れて。
行ってしまった。
メッセージ……
『洋ちゃんとなら、どこでもいいよ。ちょっともうお眠む』
『お休み、洋ちゃん』
「お休み、葉月」
ていうか?
どこでも?
いやいや。
どーする?
葉月が笑ってくれる場所……
あー。
わかんね。
わしゃわしゃと。
頭をかきむしる。
ピコン。
ん?
『遅くにごめんね。三並くんに相談があるの』
『起きてたら、返事くれるかな?』
中臣さん?
なんだろう?
「どうしたの?」
すぐに返信が飛んできた。
『良かった。起きてたんだ』
『あのね、部活で使うスニーカーとか、Tシャツとか買おうと思ってるんだ』
『その。どういうのがいいか良く分からなくて』
『買い物に一緒に行ってもらえないかな』
ふーん。
別に何でもいいと思うけど。
「普通ので大丈夫だよ」
「マネージャーだし、スパイク履く訳じゃないし」
『そうなの? でも、マネージャーでもサッカー覚えたいし、教えてほしいな』
『三並くんしか頼れる人いないんだ』
そっか。
中臣さんも。
頑張ろうとしてるんだ。
『分かったいいよ。俺で良ければ教えるよ』
『嬉しい! 良かった!』
『三並くん、いつなら都合がいい?』
えーと。
「ゴールデンウィーク期間中なら大丈夫だけど」
『じゃあ、明日は?』
「いいよ」
『ありがとう。そうしたら土庄に行きたいんだ』
『だからね、9時に、内海に着くバスに乗ってくれたら。私、そこから乗るから』
土庄?
ショッピングモール行くのかな?「分かった。大丈夫だと思うけど、乗り遅れたら連絡する」
『うん。分かった』
『じゃあ、明日ね。お休みなさい。ありがとう三並くん』
「お休み、中臣さん」
そっとスマホを置いた。
「ふぅー」
そうか。
瑞葉や中臣さんに聞いてみるか。
女子が喜びそうな所。
腕を伸ばして。
写真立てを手にした。
ショートヘアの葉月。
かわいいな。
ワンピース似合ってたし。
写真にだぶって。
映像が呼び起こされる。
首をかしげて笑う顔。
少し膨らんだ。
胸元。
裾から伸びる。
太もも……
にやけて。
顔が熱くなる。
!
違う違う。
そんなんじゃないのに。
あいつのことは。
そういうんじゃなくて。
大切なんだよ。
でも。
そういうのが。
ないわけでもなくて。
あー!
髪をかき乱す。
あっ。
しまった!
ワンピース姿で一緒に写真撮るんだった……
お読み下さりありがとうございます。
感謝しております。




