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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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3/7

微笑み

「じゃあね」

私は洋ちゃんと瑞葉ちゃんに小さく手を振る。

「おう」

「後でね」

二人は1組。

私と西郷くんは2組。

中学ではじめて。

洋ちゃんとクラスが離ればなれになった。

仕方のないことだけど。

ちょっぴりつまんない。

窓際の真ん中が私の席。

やたらと広い校庭が一望できる。

砂埃を巻き上げたその向こう。

家の屋根より高く。

鯉のぼりたちが泳いでいた――



窓の外から。

柔らかな風に乗って。

賑やかな声が聞こえてくる。

何気なく目をやると。

1組が体育祭の二人三脚の練習をしていた。

視線は洋ちゃんを探して。

すぐに見つける。

眩しそうに手をかざしている。

そばに駆け寄って来た女の子。

中臣さん……

学年で一番きれいな子。

なんか恥ずかしそうな洋ちゃん。

中臣さんとペアなんだ。

洋ちゃんがしゃがんで。

二人の足首にひもを巻き付けて。

あっ!

背筋が伸びる私。

手握った……

「……北見」

ビクッ!

先生の声。

「北見、続き読んで」

「あっ! はい」

ガタッ。

椅子をならして立ち上がる。

教科書を持って。

やばい。

分からない。

ん?

小さくささやく声。

右隣の机の上。

ノートの端に14ページと書かれていた。

私は咳払いをして。

教科書のページをそっとめくって。

読み上げる。

「じゃあ、次を中村……」

私は息を吐きながら。

ストンと椅子に腰かけた。

「ありがとう」

隣の外村とむらくんをチラリと見た。

外村くんは、教科書に視線を落としたまま。

右手でピースをした。

私はぺこりと頭を下げる。

「きゃー! わー!」

風に聞こえる、はしゃぎ声が気になって。

編み込んだ髪を訳もなく撫でている。

なんだろ。

このわしゃわしゃする気持ち。

洋ちゃんが他の女の子と手をつないだだけなのに。

なんか。

洋ちゃんでれでれしてて。

そりゃあ。

中臣さんなら私でも緊張するかもだけど。

むずむずして。

私は腿の間に両手を挟んだ。

背筋を伸ばして。

視線を投げた校庭。

すぐに見つけた洋ちゃんと中臣さん。

二人ともニコニコしてて。

ちぇっ。

私はそっぽを向いた。


それから、授業に集中できないまま。

キーンコーン、カーンコーン……

チャイムが鳴った。

私はため息を落として。

ぱんっ。

教科書を閉じた。

ぎーっ……

外村くんが席を立つ。

「あっ、さっきはありがとう」

「ああ、別にたいしたことじゃないし」

「ううん。助かった」

「あのさ……」

「ん?」

「その……なんかぼっーとしてたけど、具合悪いの?」

「ん? ううん。大丈夫だけど」

「そ、そう、じゃあ、トイレ行くから」

外村くんは首の後ろを手でさすりながら歩いていった。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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