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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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3/69

微笑み

「じゃあね」

私は洋ちゃんと瑞葉ちゃんに小さく手を振る。

「おう」

「後でね」

二人は1組。

私と西郷くんは2組。

中学ではじめて。

洋ちゃんとクラスが離ればなれになった。

仕方のないことだけど。

ちょっぴりつまんない。

窓際の真ん中が私の席。

やたらと広い校庭が一望できる。

砂埃を巻き上げたその向こう。

家の屋根より高く。

鯉のぼりたちが泳いでいた――



窓の外から。

柔らかな風に乗って。

賑やかな声が聞こえてくる。

何気なく目をやると。

1組が体育祭の二人三脚の練習をしていた。

視線は洋ちゃんを探して。

すぐに見つける。

眩しそうに手をかざしている。

そばに駆け寄って来た女の子。

中臣さん……

学年で一番きれいな子。

なんか恥ずかしそうな洋ちゃん。

!

中臣さんとペアなんだ。

洋ちゃんがしゃがんで。

二人の足首にひもを巻き付けて。

あっ!

背筋が伸びる私。

手握った……

「……北見」

ビクッ!

先生の声。

「北見、続き読んで」

「あっ! はい」

ガタッ。

椅子をならして立ち上がる。

教科書を持って。

やばい。

分からない。

ん?

小さくささやく声。

右隣の机の上。

ノートの端に14ページと書かれていた。

私は咳払いをして。

教科書のページをそっとめくって。

読み上げる。

「じゃあ、次を中村……」

私は息を吐きながら。

ストンと椅子に腰かけた。

「ありがとう」

隣の外村《とむら》くんをチラリと見た。

外村くんは、教科書に視線を落としたまま。

右手でピースをした。

私はぺこりと頭を下げる。

「きゃー! わー!」

風に聞こえる、はしゃぎ声が気になって。

編み込んだ髪を訳もなく撫でている。

なんだろ。

このわしゃわしゃする気持ち。

洋ちゃんが他の女の子と手をつないだだけなのに。

なんか。

洋ちゃんでれでれしてて。

そりゃあ。

中臣さんなら私でも緊張するかもだけど。

むずむずして。

私は腿の間に両手を挟んだ。

背筋を伸ばして。

視線を投げた校庭。

すぐに見つけた洋ちゃんと中臣さん。

二人ともニコニコしてて。

ちぇっ。

私はそっぽを向いた。


それから、授業に集中できないまま。

キーンコーン、カーンコーン……

チャイムが鳴った。

私はため息を落として。

ぱんっ。

教科書を閉じた。

ぎーっ……

外村くんが席を立つ。

「あっ、さっきはありがとう」

「ああ、別にたいしたことじゃないし」

「ううん。助かった」

「あのさ……」

「ん?」

「その……なんかぼっーとしてたけど、具合悪いの?」

「ん? ううん。大丈夫だけど」

「そ、そう、じゃあ、トイレ行くから」

外村くんは首の後ろを手でさすりながら歩いていった。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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