明日は……
赤い光の正体は救急車だった。
サイレンも鳴らさずに。
家の前を通り過ぎて行った。
町内には。
お年寄りが多いから。
時々。
救急車がやって来る。
ピコン。
ベッドの上でスマホが鳴った。
ひゅるりと。
入り込んできた風に。
身震いをして。
窓を閉めながら。
暗いままの。
彼の部屋を。
目の端で捉えていた。
そろそろとベッドに上がって。
布団をかけて。
横になる。
そして。
スマホを手に取った。
あっ。
みーちゃんからだ。
両手でスマホを包んで。
文字を追う。
『はーちゃん。天才です。『はみんぐ』とってもいい名前です。これに決めましょう』
『名前を見た瞬間。思わず声出ちゃいましたよ』
むにゅむにゅと。
ほっぺが緩む。
「へへ。みーちゃん、ありがとう。ねえねえ。どんな声出したの?」
『え? そこ知りたがりますか?』
「知りたがる」
『内緒にできますか? 三並くんにも?』
「うんうん。約束するから教えて」
『やばーい! かわいい!』
「うは。みーちゃん、かわいい」
『そうですか? ちょっと自分で引きましたけど』
「ハハハハ」
思わず笑ってしまう。
こういう。
ちょっと。
急に我に返っちゃう。
みーちゃん。
かわいいんだよね。
「みーちゃんのそういうとこ好き」
『ありがとう。はーちゃんは、私のダメなとこも、好きでいてくれますからね』
『でも、本当に『はみんぐ』は、いい名前です。早く動画撮りたくなりましたよ』
うんうん。
私もだよ。
「そだね。私も早く一緒に踊りたい」
『その意気です。はーちゃん。頑張りましょうね』
「うん。頑張りたい」
『じゃあ、もう寝ますね。お休みなさい』
「うん。お休みなさい」
「んーっ」
両手を伸ばして。
そのままスマホを置いた。
ほっぺが痛い。
両手で軽くマッサージ。
明日は少し練習しよ。
ダンスの基本ステップは。
小学校で習ったけど。
運動が苦手だったから。
あまり前向きに取り組まなかった。
「ふわぁ」
あくびが出て。
目をパチパチする。
そろそろ。
寝ようかな。
ピコン。
ん?
頭の上で呼ぶスマホ。
もう一度。
両手を伸ばして。
がさがさして。
ん。
指先に触れたスマホを掴む。
誰だろ?
『遅くにごめんね。試合の件ごめんね。急だったから逆に悪かったなって』
外村くんだ。
『それから、『渦潮』もうちょっとで、マルチプレイ出来るようになるから。その時はよろしくね』
『あとさ、また、誘ってもいいかな? 今度は前もって』
『遅いから返信はいつでもいいよ。連投ごめんね。お休み!』
え?
もうマルチ出来るレベルになるの。
すごい!
早いな。
ふふ。
外村くん。
さては。
今日一日ゲームやってたんだね。
ところで。
また誘っても?
何の誘いかな?
「ふぁ……」
小さなあくび。
目尻の涙を指で拭う。
明日。
返信忘れないようにしないとね。
むにゃむにゃと。
口を動かして。
目が閉じる。
明日は洋ちゃんが帰って……
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