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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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25/26

風と星と……

「北見さん」

また。

うるさくなる心臓。

胸に手を添えて。

ゆっくりと立ち上がって。

お辞儀をした。

「僕、北見さんと友達になりたいんだ。ここに知り合いいないし。明日には東京帰っちゃうけど」

「初めて、父さんの田舎に来たんだ」

手すりに捕まって。

空を見上げた彼。

「知ってるかな。東京ってこんなに多くの星が見えないんだよ」

「そう、なんだ」

私は見慣れた星空を見上げる。

家の明かりがあるから少ないけど。

電気を消せば。

沢山見えるし。

神社に行ったら。

満点の星たちが見える。

「知らないことってあるんだなって。そこにあるのに、気づけないことって。そこに気付けたから、島に来て良かったって思える」

「難しい……」

苦笑いして。

首をかしげる。

「ハハハ……」

笑いだした彼。

「ごめん。やっと、笑ってくれたから」

「あっ」

両手で口を覆う。

「じゃあ、お休み。北見さんと出会えて良かった。いい想い出が出来たよ」

彼は窓に手をかけた。

からから。

「あ、あの」

「ん?」

「部屋の電気消してみて」

「ん?」

首をひねる彼。

私はちょこちょこと。

部屋の扉まで駆け寄って。

電気のスイッチを切った。


大きく息を吐いて。

小走りに窓際に戻る。

両手を胸に添えたまま。

「あの、やってみて」

声をふりしぼる。

「分かった」

彼は微笑みを残して。

部屋に引っ込む。

明かりが消えて。

外灯と家々のかすかな光だけが。

道路をぼんやりと照らしている。

暗くなった窓辺に。

彼の姿が現れた。

私は片手で空を指差した。

彼はうなずいて。

また。

手すりを握って。

あごをゆっくりと上げる。

薄明かりの中でも。

その表情が変わっていくのが分かった。

「すげー……」

唇を噛んで。

私も見上げた。

さっきよりは断然多くの星たちが。

見てくれてありがとう。

喜んでいるみたいに。

きらきらと揺れている。

「これ、真っ暗な所行ったら、もっと見えたりする?」

「うん。神社とか山の上とか行ったら。星だらけだよ」

「へえー。そうなんだ。神社ってそこの神社?」

「うん」

「じゃあ、ちょっと行ってみるよ」

「え? 今から?」

クスクスと笑い声が聞こえて。

「だって、明日には東京帰るって言ったでしょ?」

胸のスマホをチラリと見た。

20時51分。

さすがに外に出るのお母さんやお父さんに怒られるよね。

「北見さん、ありがとう。じゃあ、お休み」

からから。

彼は暗闇の中に消えた。


がらがら。

扉の開く音がして。

彼が出て来た。

「お休み、北見さん、ありがとう」

「あ、いえ、気をつけて。イノシシとか出るかもしれないから」

「大丈夫、これでもサッカー部のエースだから、逃げ足は早い。じゃあ、お休み」

「あ、お休みなさい」

彼は小さく敬礼をして。

その手を高らかに振って。

走り出す。

小さく手を振り返した私。

タン、タン……

軽やかな足音が。

徐々に小さくなって。

路地の奥の闇へと紛れた。

大丈夫かな……

見上げた空の星たちは。

空一面に。

変わらない揺らぎを。

降らせていた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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