束の間の和み
お父さん、お母さんにも。
ショートヘアは好評だった。
からから。
窓を開けて。
涼やかな風を呼び込んだ。
お風呂上がりの体を。
優しく包んでくれる。
あっ。
思わず向いた視線は彼の家。
明かりはついていた。
「ふー」
息を吐いて。
桟に腰かけた。
ピコン。
机の上のスマホが呼ぶ。
あっ。
洋ちゃんかな?
手を伸ばして。
スマホを手にした。
『はーちゃん。さっきの動画の話ですけど』
『中学生が動画投稿するには親の了承が必要みたいです。私の方は大丈夫なので。おばさんに確認してみて』
『あと。チャンネルのアカウントはお母さんが作ってくれますから』
『それから、ゴールデンウィーク明けの週末。練習風景を動画で撮りませんか?』
『そこで動画第一号あげましょう』
みーちゃんから。
怒涛の連投。
「分かった。お母さんに言っとく。多分ダメとは言われないと思う。みーちゃんと一緒だし」
「週末だね。うん。いいよ。頑張る。どこでするの?」
「チャンネルの名前も考えなくちゃね!」
『はーちゃんの家の近くで、どこかありませんか? あまり人がいなくて練習出来そうなところ』
『チャンネル名は、二人のユニットの名前と同じでもいいと思いますよ』
『フロイラインの『かわいいでしょ?』練習しましょう』
わっ。
めっちゃかわいいダンスじゃん。
すごくいい!
踊れるようになりたいなぁ。
そっか。
練習場所か。
うーん。
「『かわいいでしょ?』いい! 練習場所さ、お家でもいいんじゃない?」
「それか、神社近くの公園かな」
あっ!
「海のとこで、投稿するやつ撮影しようよ」
『はーちゃんがやる気で私もワクワクしてきました』
『じゃあ、その時までにユニット名、考えましょう』
「りよーかい!」
よし。
まだ踊れないけど。
踊れた自分をイメージしたら。
にやにやしている。
ピコン。
へへ。
洋ちゃんだ。
『葉月。動画見たよ! すごいな! 神舞踊れてるじゃん! 何回も見返した』
文字を見て。
にやにやが。
ニコニコになる。
「へへ。ありがとう。それとね、私ダンス部に入ることにした」
『マジか! 俺、応援するから、頑張れ』
「試合観戦行けなくてごめんね。でも応援してるから」
『来て欲しかったけど。しょうがないよ。また来れる時来て欲しい』
「うん。それからね。洋ちゃんに見せたいものがあるんだ」
『なに?』
「洋ちゃんが、帰って来たらのお楽しみだよ」
『気になるな……』
それから。
サッカー観戦の感想を聞いて。
東京での話とかをして。
『明日の夕方には帰る』
「港に迎えに行く」
『え? いいのか?』
「うん。何時に着くの?」
『17時頃かな』
「分かった。じゃあ港で待ってるね」
「おう。じゃあ、フェリー乗ったら連絡する」
「うん。じゃあお休み」
『お休み』
ふぅ。
ふふふ。
私の神舞。
すっごく喜んでくれた。
そっと。
短くなった毛先を。
指に巻き付ける。
洋ちゃん。
びっくりするかな。
あっ。
すごくかわいい……
彼の声が頭をよぎって。
流れた視線。
机の上の。
丸めた紙切れが目に入った。
うーん。
首を振る。
洋ちゃんは。
言ってくれるかな。
早く明日にならないかな。
「やあ」
ビクッ。
背中から飛んできた声。
さらりと。
夜風が髪をさらっていった、




