始まりの朝
ふわふわとした。
心地よい感じ。
ぬくぬくな布団の中で。
寝返りを打つ。
人の気配がして。
ゆっくりとまぶたを上げる。
横向きの。
みーちゃんの顔が見えた。
ベッドサイドで。
両手で頬杖をついている。
「おはよう。はーちゃん」
私の鼻を。
優しくつまむみーちゃん。
「ん。おはようみーちゃん。早いね」
「フフフ。もう9時になりますよ」
「ふゅん。そっか」
昨日の夜は。
なんだかんだ遅くまで。
おしゃべりをしていたから。
まだ。
少し眠い。
気持ちよくて。
布団にくるまる。
「はーちゃん。起きて下さい。午後から美容院ですし、『渦潮』のイベント一緒にやるんですよね」
「うん。あと5分だけ……」
「仕方ありませんねぇ。そうだ。はーちゃん、寝言言ってましたよ」
ん?
みーちゃんは。
にこりと笑う。
「どんな寝言?」
「フフフ、内緒です。あっ。三並くんにメッセージ送らなくていいんですか?」
あっ。
私は布団をはいで。
体を起こす。
えーと。
枕元のスマホを手に取って。
ぺたんと座り直す。
髪を払って。
両手でメッセージを打ち込む。
ん?
いつの間にか。
みーちゃんが隣にいた。
「洋ちゃん、ごめんね。サッカーの試合の日、予定があって行けないんだ」
「お詫びの気持ちだけど、動画送るから見てね!」
メッセージを送って。
口をすぼめた。
試合観たいけどごめんね。
動画喜んでくれたらいいな。
「さっ、顔洗ってきてくださいね」
みーちゃんは。
にこにこしながら立ち上がって。
ぴょんと。
ベッドから飛び降りて。
部屋に差し込む。
まぶしい光の中で。
着替え始めた。
――それから。
美容院までの時間。
みーちゃんとゲームをして過ごした。
やっぱり。
傍で一緒に話ながら。
ゲームをするのは楽しくて。
時間が瞬く間に溶けていった。
空が少し黄色味を帯びてきた頃。
私たちはバスに揺られて。
内海町にある美容院にやって来た。
西郷くんは。
友達と出掛けてていなかった。
みーちゃんと並んで髪を切る。
みーちゃんは西郷くんのお父さんが担当。
私は西郷くんのお母さん。
私がおばさんに。
スマホの画面を見せて。
お姉さんみたいな。
ショートボブで。
そう告げると。
「へえー。思い切ったね。おばさんの腕の見せ所だね」
おばさんは。
腰に手を当てて。
ハサミをかざして見せた。
しゃき、しゃき。
ハサミがリズムを刻む度。
パラパラと。
髪が落ちていく。
「葉月ちゃん、初めてだよね短くするの」
おばさんは。
私の髪を触りながら。
鏡を見た。
「はい。みーちゃんと同じダンス部に入るんで。みーちゃんが短くするって聞いて。私もしてみようって」
「二人は、本当に仲が良いな。もういっそのこと姉妹になったらいい」
おじさんの。
なんでもない一言に。
「ハハハ」
と、私が笑って。
「フフフ」
と、みーちゃんも笑う。
「どう? 葉月ちゃん?」
おばさんは。
左右の髪の毛先を。
そっと指先で揃える。
私の両肩に手を添えて。
鏡越しに顔を並べて微笑んだ。
「なんか、私じゃないみたい」
「まあ、見慣れないかもね。でも、似合ってるよ。キョンキョンみたいでかわいい」
「きょんきょん?」
「ああ、おばさん達が若い頃のアイドルのニックネームね」
「そうか、そっちがキョンキョンなら、こっちは美奈子ちゃんだな」
おじさんの声に顔を向ける。
「わあ。みーちゃんかわいい。闇の女神ダリアちゃんみたい」
「はーちゃん。ありがとう。でも、褒めすぎですよ。おじさん、美奈子ちゃんって誰ですか?」
「ハハハ、そうだよな。キョンキョンと同じアイドルだよ。歌も踊りも上手だったよ」
「へー。そうなんですか」
「そうしたら、二人でさ、覚えたダンスを栞ちゃんみたいに動画あげたら面白いかもね」
「島のアイドルになれるかもな、おじさんが、二人のファン一号だな」
なんか。
楽しそうな。
おじさんとおばさん。
私はみーちゃんと。
微笑み合う。
アイドルか……
ふっと。
笑いが。
また。
込み上げて。
肩をすくめていた。
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感謝しております。




