夜のひととき
私はスマホの画面を見る。
「誰からですかね?」
みーちゃんは。
びたりと。
私にくっついて座る。
洋ちゃんだ。
騒がしさが消えて。
ほっと胸を撫で下ろす。
「フフフ」
「ん?」
みーちゃんを見ると。
ニコニコしながら。
画面を指差した。
『お待たせ葉月。東京は人も車も多すぎ』
写真が添付されていた。
何処かの街の中。
東京タワーを背景に。
ピースをしている洋ちゃん。
『明日はサッカーの試合観戦。明々後日には帰る。お土産なにがいい? なんでもいいか?』
『今日はゲームできないけど。帰ったらしような!』
「三並くん。メッセージ連投ですね。少し意外。さあさあ、なんて返すのですか?」
「え、うん」
えーと。
「待ってたよ。お土産? どーしようかな? カーヤちゃんのキーホルダーとか」
「でも、洋ちゃんが選んでくれたのでいいよ」
「そうだ。今ねみーちゃん泊まりに来てるの。それからね、外村くんも『渦潮』始めたんだって」
打ち込んでいたら。
みーちゃんのため息が。
私の手をふんわりと撫でた。
「はーちゃん。それは送らない方がいいと思いますけど」
「どして?」
「他のことのがいいかなと。せっかく三並くんとメッセージしてるんですから」
「ふーん。そうなの? 今度みんなでゲームしたいなって思ったんだけど……」
みーちゃんは。
画面を見つめたまま。
じゃあ……
「今日ね神舞をね、ちょっと踊ったら褒められたんだ。洋ちゃんがやってみたらって、去年言ってくれたでしょ?」
打ち込んで。
みーちゃんを見ると。
首をかしげている。
「だめ?」
「うーん。はーちゃんは普通でも、みんなは普通じゃないんだよね」
「ん?」
「そうですね。その三並くんが神舞やってみたらって、言ってくれて練習したんだの方が、三並くん喜ぶと思いますけど」
「そっか……」
ちょこちょことメッセージを打ち直す。
「去年、洋ちゃんが神舞やってみたらって言ったでしょ? だから、練習したんだ」
みーちゃんは。
うんうんとうなずいていた。
じゃあ。
送信。
『カーヤのキーホルダーな、探してみる』
『葉月、神舞練習してるの? マジか。俺、お前が踊るの実は見たいんだ。選考とかあるけど。応援するから頑張れ!』
『それとさ、ゴールデンウィーク明けの週末、部活の練習試合があるんだけど、観に来てくれないか?』
なんか。
久しぶりに。
洋ちゃんがいっぱいメッセージくれてる。
「うん。応援しに行く。絶対行く。神舞、見たいんだ。私も頑張ってみる。聡お姉ちゃんや栞お姉ちゃんにも教えてもらう」
『葉月なら出来るよ。葉月は、運動が苦手って思い込んでるだけなんだ。頑張れ!』
「うん。洋ちゃんとこんな風にメッセージしたの久しぶりだね」
『そうか? そうかもな』
「嬉しいし、楽しいね」
『だな。明日も遅くなるけどメッセージ送る』
「うん。待ってるね」
ふう。
そっか。
洋ちゃん。
私が神舞踊るの見たいんだ。
そうしたら……
ダンス部に入ってみようかな。
「ふふふ。はーちゃん嬉しそうですね」
「うん。なんか、昔の洋ちゃんに戻ったみたい。なんかね病気みたいなんだ」
「病気ですか?」
クッキーを頬張るみーちゃん。
「うん。聡お姉ちゃんに聞いたら、心の病気だって。そう言ってた」
私もクッキーを口に運ぶ。
美味しいな。
甘さがふんわりと。
気持ちごと包んでくれる。
「まあ、あれですね。はーちゃんの良いところが裏目に出ることもあるんですよね」
「ん?」
「三並くん。はーちゃんの大切な幼馴染みでしょ?」
「うん!」
「たぶん。三並くん、はーちゃんが想ってる以上に、はーちゃんのこと大切なんだと想いますよ」
「ん?」
クッキーをくわえながら。
首をかしげる私を。
クスクスと笑いながら。
みーちゃんは視線を外した。
「三並くん、はーちゃんが体育の授業で外村くんと仲良くしてたの。ずっと見てましたよ」
「ん?」
「まあ、三並くんも中臣さんと仲良くしてましたけどね。見たでしょはーちゃん?」
「え? ああ、うん」
そうだ。
あの時。
なんか変な気持ちになって……
あっ。
洋ちゃん。
中臣さんと放課後。
何してたんだろ?
「そういうことですよ」
「え?」
どういうこと?
ちぇっ。
全然分かんないよ。
あっ。
「ねえ、みーちゃん。私もダンス部に入ってみようと思う」
「いいですね。部活が一緒なの私も嬉しいです」
ピコン。
ん?
外村くんからメッセージだ。
くっと。
身を寄せてきた。
みーちゃん。
『ごめんね、返事くれたのに遅くなって。あのさ、ゴールデンウィーク明けの週末ってなんか予定ある?』
「あらあら。ブッキングですねぇ」
『部活の練習試合、観に来てほしいなって。それから、サッカー部のマネージャーって興味ない?』
「え!?」
「ありゃ……」
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