思いがけずに
夕食とお風呂を済ませて。
部屋の真ん中のテーブルを囲んで。
みーちゃんとお菓子パーティー中。
「どうしたんですか? はーちゃん?」
「ん? どうもしないよ」
「嘘ですねぇ。さっきからずっとスマホを気にしてますよ」
「そうかな?」
「おやおや。誰からの連絡を待ってるの?」
「へへ、洋ちゃん今日から旅行に行っちゃったんだけど、夜メッセージするからって」
「あらあら。いいですね」
ピコン。
来た!
ほっぺが緩んで。
口を結んで。
ささっと。
スマホを手にした。
「ふふふ。はーちゃんかわいい」
「へ? 何が?」
「なんでもないですよ。で。三並くんはなんて送ってきたのですか?」
「えーと……」
あっ。
『こんばんは。ちょっと聞きたいことがあって。大丈夫な時に返信して』
外村くんだ。
「ん? はーちゃんどうしました?」
「あ、洋ちゃんじゃなくて。外村くんだった」
「外村くん? ひょっとして。昨日の体育の授業でペアを組んだ子ですか?」
「うん。ん? なんでみーちゃん知ってるの?」
「教室から見えましたから。フフフ」
「なあに?」
「はーちゃん。楽しげでしたよ」
「そう? でも確かに楽しかったんだよね。ほら私、運動苦手でしょ?」
「で。返事はしないのですか?」
「あっ、でも……」
「私はいいですよ。そばで見てますから」
「え?」
みーちゃんは。
のそのそと。
はいはいをして。
私の隣にくっついた。
一緒のシャンプーの香りがする。
「ふんふん。聞きたいことですか? なんですかね?」
みーちゃんは。
私の手を掴んで。
スマホの画面を自分に向けた。
「じゃあ、返すよ」
「どうぞ」
えーと……
「こんばんは。聞きたいことってなあに?」
「返事。すぐ来ますかね? まっ。クッキーでも食べましょう」
星形のクッキーを一つ。
つまんだみーちゃん。
なんか愉しそう。
私もクッキー食べる。
ん!
サクサクして。
でも。
中はしっとりして。
「おいしい!」
「フフフ。ですよね。東京の有名なケーキ屋さんのクッキーです」
「へー。そうなんだ。ありがとうみーちゃん」
「お礼はいいですよ。返事来ませんね」
するすると立ち上がったみーちゃん。
からから……
窓を開けた。
「うーん。風が気持ちいいですね」
両手を挙げて。
腰をくねらせているみーちゃん。
「こんばんは」
!
あの男の子の声。
また。
心臓が騒がしくなる。
そっと。
足を前にして。
膝を抱える。
「こんばんは」
みーちゃんが返事をする。
「君はあの子の友達? 僕は日置勇太。ふーん。この島はかわいい女の子ばかりだね」
「ふーん。そうですかぁ?」
「あ、いや、その……あの子はいるの?」
「あの子? 誰ですかね?」
「その家の、髪が長くて、踊りが上手で……かわいい子」
びくんって。
肩が揺れた。
ぎゅっと肩を寄せて。
丸くなる。
「今、お風呂に入ってますよ。そのかわいい子」
「あ、そうなんだ」
「あなたはどこの人ですか?」
「僕は東京の八王子というとこに住んでて。ここは父さんの田舎なんだ」
「ふーん。じゃあ、おやすみなさい」
「え? ああ」
からから……
「あらあら。はーちゃんどうしたんですか?」
「え!? あははは」
「ふーん。はーちゃんも大変ですね」
「?」
「フフフ」
後ろ手に組んで。
腰を屈めて。
微笑むみーちゃん。
ピコン。
スマホが鳴った。
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