整えたのに整わなくて。
ベッドの上で寝転んで。
白い天井を眺めている。
「洋介、起きてるの! フェリーの時間に遅れるわよ」
「起きてるよー」
「忘れ物ないように、早く支度してね」
「はーい」
返事はしたけど。
支度なんかとっくに出来てるし。
ゴールデンウィークを利用して。
待ちに待った東京旅行。
俺の憧れのサッカー選手が在籍する。
東京オメガの試合観戦。
チームの要。
町村隼。
ポジションは中盤。
弱冠22歳でチームの要。
昨年には日本代表にも選ばれた。
将来を期待されてる選手。
来シーズンは海外に移籍するという噂も出ているほど。
そして。
来月には中学の頃からの恋人。
久美さんと結婚するんだって。
「ふぅー」
先日。
そのニュースを目にした時に。
俺の頭に浮かんだのは。
葉月の顔だった。
なんであいつなのか?
小さい頃からずっと一緒だったからなのか。
確かにあいつが試合の応援に来てくれると。
不思議と調子がよくて。
ゴールを決めた日もある。
それに……
あいつの声は必ず聞こえる。
「うーん」
体を起こして。
伸びをして。
首を左右に倒す。
視線の先。
二人の笑顔の写真が飾ってある。
小学校の卒業式の日に撮った。
笑っている葉月の顔。
それに……
あまり気にしてなかったけど。
あいつ。
なんか。
かわいくなったよな。
あー、まただ。
そんな風に考え出すと。
走ってもいないのに。
なんか胸がつかえる。
「はぁ……」
俺たちみたいな関係って。
幼馴染みってだけで。
恋人では……
ないよな。
どうなんだろ。
葉月は俺のこと。
どう想ってるのかな。
「はぁ……ったく」
パン、パン。
両手で顔を叩く。
その手をじっと見つめた。
普段はつないでいる手も。
町内ならあれだけど。
学校とか他の町で。
つないでいる所を見られたら。
恥ずかしいというか。
照れるというか。
なんか。
茶化されるのも嫌だし。
どうしたらいいのか。
よくわかんなくなって。
「ふぅ……」
そんな俺をよそに葉月はまんま変わらないし。
それに……
昨日。
あいつ。
体育の授業で。
外村とめっちゃ楽しそうに二人三脚してさ。
見たくないのに。
窓際だから。
目が行くし。
しかも。
あいつ。
運動苦手なのに。
放課後、外村と二人だけで。
練習だって。
なんだよ。
ふざけんなよ。
俺が中臣さんといた理由をやけに知りたがってたけど。
なんか。
ムカついて。
教えなかった。
中臣さんとは。
体育の授業で。
二人三脚のペアになったときに。
サッカー部のマネージャーを。
やりたいって言ってくれて。
それで。
部長の三好先輩と。
マネージャーの杉山先輩に。
放課後、相談しに行ってただけだし。
ピピピピ、ピピピピ。
スマホのアラームが鳴った。
部屋の時計を見て立ち上がる。
6時20分。
とにかく。
なんか。
わかんないんだよ。
葉月のこと。
机の上のスマホを手に取った。
さらっと画面を眺める。
!?
『ねえねえ、これからゲームしよ』
葉月からのメッセージ。
やべ。
昨日は疲れて寝たから。
気づかなかった。
「洋介、行くわよ。降りてきて」
「あ、今、行く」
スマホをポケットに突っ込んで。
リュックを背負った。
忘れ物はないか。
扉の前で振り返る。
目が行ったのは。
葉月の笑顔。
「……」
俺は。
電気を消して。
部屋を飛び出した。
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