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葉隠れの蕾  作者: ぽんこつ


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13/26

整えたのに整わなくて。

ベッドの上で寝転んで。

白い天井を眺めている。

「洋介、起きてるの! フェリーの時間に遅れるわよ」

「起きてるよー」

「忘れ物ないように、早く支度してね」

「はーい」

返事はしたけど。

支度なんかとっくに出来てるし。


ゴールデンウィークを利用して。

待ちに待った東京旅行。

俺の憧れのサッカー選手が在籍する。

東京オメガの試合観戦。

チームの要。

町村隼まちむら じゅん

ポジションは中盤。

弱冠22歳でチームの要。

昨年には日本代表にも選ばれた。

将来を期待されてる選手。

来シーズンは海外に移籍するという噂も出ているほど。

そして。

来月には中学の頃からの恋人。

久美さんと結婚するんだって。

「ふぅー」


先日。

そのニュースを目にした時に。

俺の頭に浮かんだのは。

葉月の顔だった。

なんであいつなのか?

小さい頃からずっと一緒だったからなのか。

確かにあいつが試合の応援に来てくれると。

不思議と調子がよくて。

ゴールを決めた日もある。

それに……

あいつの声は必ず聞こえる。

「うーん」

体を起こして。

伸びをして。

首を左右に倒す。

視線の先。

二人の笑顔の写真が飾ってある。

小学校の卒業式の日に撮った。

笑っている葉月の顔。

それに……

あまり気にしてなかったけど。

あいつ。

なんか。

かわいくなったよな。

あー、まただ。

そんな風に考え出すと。

走ってもいないのに。

なんか胸がつかえる。

「はぁ……」

俺たちみたいな関係って。

幼馴染みってだけで。

恋人では……

ないよな。

どうなんだろ。

葉月は俺のこと。

どう想ってるのかな。

「はぁ……ったく」

パン、パン。

両手で顔を叩く。

その手をじっと見つめた。

普段はつないでいる手も。

町内ならあれだけど。

学校とか他の町で。

つないでいる所を見られたら。

恥ずかしいというか。

照れるというか。

なんか。

茶化されるのも嫌だし。

どうしたらいいのか。

よくわかんなくなって。

「ふぅ……」

そんな俺をよそに葉月はまんま変わらないし。


それに……

昨日。

あいつ。

体育の授業で。

外村とめっちゃ楽しそうに二人三脚してさ。

見たくないのに。

窓際だから。

目が行くし。

しかも。

あいつ。

運動苦手なのに。

放課後、外村と二人だけで。

練習だって。

なんだよ。

ふざけんなよ。

俺が中臣さんといた理由をやけに知りたがってたけど。

なんか。

ムカついて。

教えなかった。

中臣さんとは。

体育の授業で。

二人三脚のペアになったときに。

サッカー部のマネージャーを。

やりたいって言ってくれて。

それで。

部長の三好先輩と。

マネージャーの杉山先輩に。

放課後、相談しに行ってただけだし。


ピピピピ、ピピピピ。

スマホのアラームが鳴った。

部屋の時計を見て立ち上がる。

6時20分。

とにかく。

なんか。

わかんないんだよ。

葉月のこと。

机の上のスマホを手に取った。

さらっと画面を眺める。

!?

『ねえねえ、これからゲームしよ』

葉月からのメッセージ。

やべ。

昨日は疲れて寝たから。

気づかなかった。

「洋介、行くわよ。降りてきて」

「あ、今、行く」

スマホをポケットに突っ込んで。

リュックを背負った。

忘れ物はないか。

扉の前で振り返る。

目が行ったのは。

葉月の笑顔。

「……」

俺は。

電気を消して。

部屋を飛び出した。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

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