表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末 のんびり飛行紀 〜荒廃した地球で、スロー“フライ”!?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/27

09.東京の巨大植物


「植物なんて調べて、どうするの?」


 ハルカが質問をした。

 

「記録する。どんな植物が、どのくらいの速さで育っているか。何が新しく生えてきて、何が消えていったか。ずっと記録してる。それが楽しくてね」


 ミドリさんは、草地を見渡しながら語った。


「私ね、二十年前に静岡の方から歩いてきたんだけど、東京に来てビックリ! こんなに巨大な植物がびっしりだったんだもの」


「確かに、俺もさっき気になりました。

 植物って、五十年でここまで育つものなんですか?

 廃ビルの壁に(つた)がびっしり絡まって、道路の割れ目から木が生えて——こんなに早く育つのって、おかしいですよね?」


 ハルカも少し考えている様子だった。


「……私も、ずっと気になってた」


「ハルカもか」


「うん。福島でも思ってた。東京ほどじゃないけど、廃線路の枕木から小さい木が生えてたり、コンクリートの建物が草に飲まれてたり。

 五十年にしては、育ちすぎな気がする。

 野菜だって、順調に育ちすぎだと思う」


「あなたたちは、福島から来たのね。あ、座って話しましょうか」

 

 ミドリさんは草地の端に座った。俺とハルカも並んで座った。

 対岸に並んでいる廃ビルの壁には、無数の蔦が絡まっていた。


「あなたたち、お昼ご飯は食べた?」


「いえ、まだ」


 ハルカが首を振った。


「じゃあ、一緒に食べましょう。話しながら」


 ミドリさんは、背負っていた袋から包みを取り出した。


「大したものじゃないけど、この辺で採れたものだから」


 包みを開くと、根菜と乾燥させた豆が出てきた。


「これ、何の根菜?」


 ハルカはその根菜を手に取った。


「それはゴボウよ。この辺に群生してたの。あとこっちはカラスノエンドウの豆。小さいけど、ちゃんと食べられる」


「カラスノエンドウ——雑草だって図書館の本で読んだ」


「雑草と食べられる植物の境界線は、人間が勝手に決めたものよ。

 さあ、食べてみて!」


 ミドリさんは笑顔でカラスノエンドウを差し出した。


 俺は勧められるままに、一粒食べた。

 小さいが、しっかりと豆の味がした。


「あ、うまい……。うまいぞ、ハルカ」


 ハルカも一口(かじ)った。


「美味しい……」


「でしょ? この辺に生えてるものを食べれば、一人でも十分生きていける」


「これなら、茹でたらもっと美味しいかも」


 ハルカはそう言って、スカイフィッシュ号から調理道具を取り出した。

 川の水をアルミ鍋で汲み、コンロに火をつけた。持ってきたタイムと塩を加えて、ミドリさんの根菜と豆を一緒に茹でる。しばらくすると、香りが立ってきた。


「わあ……いい匂いね。ハルカちゃん、それは何を入れたの?」


「タイム。福島の集落で育てていて、旅に持ってきてる。

 根菜の土っぽい香りとタイムの清涼感が、互いの良さを引き立ててくれそうな気がして」


「あなた、料理が得意なのね」


「この“終末世界”は、食材の種類が少ないから。

 一つの食材でいろんな食べ方をしたくて」


「まあ、素敵な考え方ね」

 

 そして、料理が出来上がった。

 三人で食べながら、ミドリさんが話し始めた。


「東京の植物って、静岡と比べてサイズが明らかにおかしいのよね。

 それで、調べ始めた。植物の成長を測定して、土を採取して、できる範囲で分析した。

 私はね、東京の植物の巨大化には、三つ理由があると考えたのよ」


 ミドリさんは、三本の指を立てた。


「三つ……ですか……」


「ええ。まず一つ目は、隕石衝突の冬を生き延びた植物は、特別に強いということ。

 隕石衝突後の地球は、きっと極端な寒さと日照不足になったと思うの。で、それに強い遺伝子を持っていた植物が生き残ったんだと思う」


「つまり、今の地球に生えてる植物は、全部タフなやつらってことですか?」


 俺は体を前に乗り出し、聞いた。

 

「そのはずよ。そして二つ目は、二酸化炭素の濃度ね。

 静岡の土にも、東京の土にも、火山の連鎖噴火が起きていた形跡があったわ。火山灰の地層ってやつね。

 きっと、隕石の衝突の影響で、地球内部のマントルの対流が活発化した。それで、大気中の二酸化炭素が増えたはずよ。

 植物は光合成で二酸化炭素を使うから、結果、それが増えれば成長は速くなると考えられるわ」


「皮肉な話ですね。人間が起こした災害が、植物には恵みになったってわけですから……」


「自然って、そういうものよ。

 人間の都合と、植物の都合は、別のものだから」


 ミドリさんは蔦に覆われた廃ビルを見ながら、静かに言った。


「最後は、なんですか?」


「最後——三つ目は、オデッセイ由来の成分よ」


「オデッセイ由来の……?」


 ミドリさんが三つ目に挙げたのは、予想もしていなかった言葉だった。

 まさかこんなところで、オデッセイという言葉を聞くことになるとは思わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ