表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末 のんびり飛行紀 〜荒廃した地球で、スロー“フライ”!?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/45

34.大改造、スカイフィッシュ号


 それから、二人は黙々と作業を続けた。

 外は火山灰のせいでずっと暗く、ここには時計もない。どれくらい経ったか、もうわからなくなっていた。


「できた……、完成だ……」


 スカイフィッシュ号のトレードマークだった二枚の主翼は、三枚に増設されていた。

 一見、重たそうにも見えるが、耐久性を損なわない限界まで薄く削っていた。

 エンジンに関しては素材自体を変更し、可能な限り軽量化させている。吸気系も効率化させた。


「ソラヒトくん、これなら行けるぞ。

 もちろん、君の操縦技術に懸かってはいるがな」


「ありがとうございます。操縦なら、自信ありますから」


 その時、二人のお腹がぐぅ〜、と鳴った。


「お腹、空きましたね……あっ!!」


「そうだな、ソラヒトく……あっ!!」


 大きく目を見開いて、ダーラムさんと顔を見合わせた。


「「ハルカの……昼飯……っ!!」」


 LABIのエントランスに駆けた。


 ◇


 到着すると、ハルカは既に眠っていた。

 そして、昼飯と思しきパンと、夕飯と思しきシチューが置いてあった。

 時計を見ると、二時を指していた。

 昼の二時であることを願ったが、どう考えても夜中の二時だった……。


「ダーラムさん、俺たち、十二時間以上やってたんですか……?」


「いや、体感は三十分くらいだと思ったが……」


「いや、それは嘘でしょ……」


「まあ、無事に完成したのだから、いいだろう。

 それと、ソラヒトくん。君は“つけパン”“ひたパン”という言葉を知っているかな?」


「なんです? 唐突に」


「知らないのか、確か日本が発祥の言葉だと思ったが……、まあいい。

 “つけパン”というのは、パンをシチューに付けて食べることで、“ひたパン”というのは、浸して食べることらしい」


「そういうことでしたか。俺はいつも浸して食べてますよ」


「なるほど、“ひたパン派”か。

 ならば俺は、今宵(こよい)は“つけパン派”となろう」


「……は、はぁ……。

 好きに食べたらいいと思いますけど……」


 冷えたシチューも、美味しかった。


 ◇


 翌朝、目を覚ますと、既にハルカの姿はなかった。


「しまっ……!」


 俺はハルカより先に起きて謝ろうと思っていたのだが、ついつい寝てしまっていた。

 飛び起きると、ゆっくりと外からハルカが歩いてきた。


「ハルカ、昨日はごめ——」


「スカイフィッシュ号、カッコいい」


 ハルカはそれだけ言って、あとは何も言わなかった。

 何も言わずに、朝食の用意を始めた。


「ハルカ……」

 

 ◇


 そして、出発の時。

 ダーラムさんが見送りに来た。


「気をつけて行け。くれぐれも、無理はするなよ」


「わかってます」


「でも、ソラヒトくんと、ハルカちゃんなら、必ず越えられる」


「ありがとうございます」


 スカイフィッシュ号のエンジンが唸りを上げた。

 新しいエンジンの音は、いつもより音が軽快に聞こえた。


「ダーラムさん、帰りにまた寄ります」


「ああ、待ってる」


 機体が浮いた。

 コルカタの廃都市が後ろに流れていく。

 ガンジス川の支流が、朝日を受けて銀色に光っていた。


「ハルカ、“天井”は?」


「ここは九百メートル。ヒマラヤに近づくほど、高くなっていく」


「了解。どんどん北へ飛ぼう」


 遠くに、ヒマラヤの白い峰が見えた。

 次はあれを超えるんだ——俺は覚悟を決めた。


 ◇


 コルカタを出て、ヒマラヤの(ふもと)で一晩野宿した。


 改造したスカイフィッシュ号は、明らかに別の機体になっていた。

 主翼が二枚から三枚になり、揚力が増した。エンジンは、以前のものより力強く回る。


「なんか、操縦感が全然違うな。

 前より、空気を掴んでる感じがする。機体が俺の身体の一部みたいだ」


 眼下には、ガンジス川の支流がいくつも横切っている。水田の跡が広がっており、かつてこの地域がどれだけ豊かだったかが想像できた。


「インドって、広いんだな……」


「うん。地図帳で見るのと、全然違う」


 北に行くにつれて、地形が変わってきた。

 平野が終わり、丘が増えてくる。丘がやがて山になる。そして、前方に白い壁が現れた。


「見えたな、ヒマラヤ山脈」


 手が震えた。


「ソラヒト、大丈夫?」


 ハルカはいつものように背中に手を当ててくれた。


「ああ……、別にビビってるわけじゃないんだぜ?

 ワクワクしてるんだ、俺たちと新しいスカイフィッシュ号で、この壁に挑めることにな」


 とはいえ、“壁”というより、“世界の端”のように感じた。

 空と地面の境界を塗りつぶすように、白い峰が連なっている。雪をかぶった山頂が、どこまでも続いている。


「私たち、ここを越えられたら、この先どこへでも行ける気がする」


「確かに、ここが地球で一番高い山脈なんだもんな。

 ……ハルカ、絶対に越えようぜ」


 山脈に近づくにつれ、気流が変わった。


 平野では穏やかだった空気が、山の手前から乱れ始めた。基本的には上昇気流だが、たまに来る下降気流が厄介だった。その度に機体が揺れる。


「ハルカ、“天井”までどのくらいだ?」


「あと四百メートル。

 私たちが山に沿って高度を上げているから、相対的に“天井”が下がってきてる」


「了解。どこから侵入する?」


「周辺の谷や峠をうまく使って、少しずつ高度を上げて」


「わかった。じゃあ、あそこに見える谷に突っ込むぞ……!」


 俺はスロットルを全開にした。

 新しいエンジンが唸りを上げ、ヒマラヤ山脈に向かって突き進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ