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終末 のんびり飛行紀 〜荒廃した地球で、スロー“フライ”!?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


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33/44

33.決意、地球一周の旅


「ソラヒト、起きて」


「んー、なんだよ、まだ暗いじゃんか……。

 もう一眠りさせてくれ……」


 しかし、ハルカに体を揺すられ続ける。


「ソラヒト、もうお昼前」


「……へ?」


 “お昼前”、確かにそう聞こえた。

 しかし、外はまだ薄暗い。寝ぼけているわけではない。


「五十年前を思い出すな……」


 ダーラムさんは呆然と空を眺めながら、言った。


「……んん、ダーラムさん、何が起きたんですか?」


 俺が聞くと、ダーラムさんは振り返って首を横に振った。


「俺にもわからん……が、きっとどこかで大きな噴火が起きたんだろうな」


「噴火……。ハルカ、読めるか?」


「聖なる岩があれば」


「よし、背中に乗りな」


 俺はハルカを背負い、スカイフィッシュ号のところへ走った。

 そして、積んである聖なる岩を取り出した。


「無理はすんなよ」


 そう言って、ハルカに瓶を渡した。

 ハルカは躊躇(ためら)うことなく、瓶を開けて岩に触れた。

 その瞬間、ハルカの髪が天に向かってなびいた。


「なんて、上昇気流……! 熱い……っ!」


「ハルカ、髪の毛が……」


 ハルカが瓶を閉めると、髪はストンと落ちた。


「……わからない。遠くで感じた大気の中に、私がいた」


「大丈夫かよ……?」


「うん。でも、東南アジアで、大規模な噴火が起きてる」


「じゃあ、オーストラリアには……?」


「当分、近づけない」

 

「マジ……かよ……。

 シャオリンさんたち、大丈夫かな?」


「あそこには、“感じる子供たち”がいる。

 きっと、大丈夫」


「あの子たちならみんなを導ける、か。

 俺たちは、これからどうする?」


「ここに(とど)まり続けるか、さらに西へ行くか——」


「西だな」


 俺は即答した。


「ソラヒトらしい」


 すると、ダーラムさんも外に出てきた。


「ダーラムさん。俺たち、西回りでオデッセイ島を目指すことにしました。アフリカ行って、ブラジル行って、アメリカ行って——」


「そうか。あの黒煙の方向は危険だと判断したか。

 だが、残念ながら西回りも今の季節は危険だと言っておこう」


「なんでです?」


「インドでは、夏の間は南西からモンスーンが吹き続けておる。それがヒマラヤ山脈にぶつかり、“天井”を押し上げる。

 結果、その反動でアラビア海の“天井”が下がり、海面ギリギリまで乱気流が吹き荒れとるんだ」


「……大気は、繋がっている」


 ハルカは小さい声で言った。


「じゃあ逆に言えば、ヒマラヤ山脈を越えれば西へ行けるってことですよね?」


 俺はダーラムさんをまっすぐ見た。ヒマラヤを越えるなんて、無謀だということは何となく察しがつく。

 しかし、越えなければ、他に行き場所がない。


「冗談で言って……は、ないな。ソラヒトくんの目を見たら伝わってくる。

 だが、そんなのはあまりにも現実的じゃない。諦めるんだ」


 ダーラムさんはスカイフィッシュ号を観察していた。


「それって、“このままの状態なら”って意味ですか?

 この継ぎ接ぎだらけの機体じゃ、ヒマラヤは越えられないって言いたいんですよね?」


「ああ。見た限りじゃ、その機体ではゼロパーセントだ。ヒマラヤを越えられる確率は」


「ダーラムさん。機械いじりが得意なんですよね?

 一緒に改造、手伝ってくれませんか?」


「……見せてみろ。ただし、俺が無理と判断したら、諦めてくれ」


「わかりました。お願いします……!」


 俺は深く頭を下げた。


 ◇


 それから、ダーラムさんと二人でスカイフィッシュ号の改造を始めた。

 ハルカは昼食を作ってくれている。


「まず、言っておくが、高高度では空気が薄くなる。

 つまり、エンジンの効率が落ちる。翼の揚力(ようりょく)も落ちる。

 今のこいつは、そこまでの高度を想定して作られていないからな」


「どう改造すればいいですか?」


「LABIの倉庫には、大量の部品が残されている。見にくるか?」


「……はい!」


 俺は、ダーラムさんの後を追った。


 ◇


 到着したのは、LABIの巨大な倉庫だった。

 中に入ると、空気が変わった。機械の匂いがする。

 今まで見たことがあった倉庫とは、まるでレベルが違った。


「……っ!」


 一瞬、激しい頭痛がした。

 俺はその場にしゃがみ込んだ。


「どうした? ソラヒトくん」


「いえ、なんでもないです」

 

「まあ、無理はするなよ。自分で思っている以上に長旅で疲れているはずだ」


「ありがとうございます。もう大丈夫です。

 にしても、この倉庫すごいですね」


「ここは、スペースシャトルの開発室らしいな。

 使えるものがあれば使っていい。

 まあ、別に俺の物でもないんだが」


 作業台が並んでいる。工具がある。計測機器がある。

 五十年間、ほぼ原形をとどめていた。


「すごい……、これ全部使えるんですか?」


「基本的に全部使えることは確認したが、俺にもわからん機械がたくさんあるんだ。自分で見てみるといい」


 俺は作業台の周りをぐるりと見回した。

 旧世界の工具が揃っている。素材も残っている。カーボン素材の板、軽量合金の棒、ボルトとナット。


「これだけあれば、改造できると思います」


「どうするつもりだ?」


「まず、不要な物を全部取り除いて、機体を軽くします。それと、吸気系を改良して、薄い空気でもエンジンが動けるようにする。

 翼の継ぎ接ぎも、ここで全て直してしまいます。

 継ぎ接ぎは旅の思い出でもあるので、ちょっと寂しいですけどね……」


「俺も、それがいいと思う。手伝わせてくれ」


「ありがとうございます。じゃあ、早速始めましょう!」

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