表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末 のんびり飛行紀 〜荒廃した地球で、スロー“フライ”!?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/34

23.リゾートホテルに住む人々


 俺はウミさんに案内されて、リゾートホテルの中に入った。


「ウミさんは、ここに住んでるんですか?」

 

「ええ、そうよ。ここはリゾートホテルを改築して作られた集合住宅で、二十人くらい暮らしているわ」


「すっげぇ……、設備も整ってますね」

 

 中を見渡すと、太陽光発電の設備があった。

 海水(かいすい)淡水(たんすい)()装置も動いており、蛇口を捻ると水が出た。

 エリクシル燃料も生産している。

 これまで立ち寄った集落の中で、一番インフラが整っていた。


「リゾートホテルって、もともと設備が充実してたからね。非常用の設備とか、うまく利用して暮らしているわ。

 太陽光パネルは屋上にそのままあったし、海水淡水化装置はホテルの地下に残ってた。

 最初は動かすのに苦労したけど、今は普通に使えてる」


「すごいな。俺、海水淡水化装置って見たことないです」


「見てみる?」


「いいんですか!?」


「もちろんよ!」


 ◇


 ウミさんが地下に案内してくれた。

 電気を付けると、現れたのは大きなタンクとパイプが並んでいる装置だった。

 というか、しれっと付けた電気すら、俺にとっては衝撃的だった。


「海水を取り込んで、特殊な膜で濾過(ろか)して、塩を除いて飲み水にする。電気さえあれば動くわ」


「太陽光で電気を作って、その電気で海水を飲み水にしているんですね……」


「そう。電気は大事。人間の生活の基本は、昔も今も、結局は電気なのよね」


「太陽光発電って、沖縄は日差しが強いから効率いいんですか?」


「そうなのよ。日照時間が長いから、かなりの量の発電ができる。エリクシル燃料も、余るくらい作れるわ」


「後で補給させてもらえますか?

 俺たちの飛行機も、エリクシル燃料で動くんです」


「もちろんよ! 明日の朝に用意するわね」


「ありがとうございます!」


 ◇


 ロビーに戻ると、集落の女性たちが夕飯をこしらえて待っていた。


「これって、もしかして、お肉?」


 ハルカが目を見開いた。


「そうよ。これは豚肉を使ったチャンプルー。

 私たちも、普段から食べているわけではないけど、今日は珍しくお客さんが来たからね!」


 ウミさんは、えっへんと胸を張って答えた。


「こんなに貴重なもの、いいの?」


「もちろんよ! これでハルカちゃんが元気になってくれれば、私たちは嬉しいわ」


「……ありがとう。

 そういえば、チャンプルーって、なに?」


「チャンプルーはね、お肉やお野菜やお豆腐なんかを混ぜこぜにして炒めた料理よ」


「彩りが、きれい」


「そうでしょ? ほら、冷めちゃう前に、おあがり!」


「いただきます」


 俺も一礼して、チャンプルーを食べた。


「う……、うっまぁぁぁ!!

 俺、肉って初めて食べた! こんなにうまいんだな!!」


「私も、初めて。本当に美味しい」


 二人は、とにかくガツガツ食べた。


「あらあら、お腹が空いてたのね。

 まだまだあるから、落ち着いて食べなさい」


「げほっげほっ、すみません。

 こんなに美味しいもの、食べたことなくて」

 

「ところで、あなたたちはこれからどうするの?

 また福島に帰るの?」


「いえ、東シナ海に出て、フィリピンとオーストラリアを経由して、オデッセイ島を目指します」


 ウミさんが少し表情を変えた。眉間(みけん)(しわ)が寄っている。


「オデッセイ島……。

 十五年前にも、ここからオデッセイ島を目指して、外国に出た飛行機乗りがいたわ。

 それっきり、連絡はないけど……」


 俺は、はっとした。


「それ、俺の父さんかもしれないです。

 父さんはオデッセイ島を目指して、帰ってきてないんです。

 どうなったかを確かめるために、俺たちは飛んでいるんです」


 ウミさんは俺を見た。しばらく黙っていた。


「お父さんの名前、なんていうの?」


大空(おおぞら)蒼太(そうた)といいます」


「……ソラヒトくん、少し待ってて」


 ウミさんは立ち上がり、奥の部屋へ向かって走った。

 そして、しばらくして戻ってきた。

 手には、古びた箱を持っていた。

 

「十五年前ね、ここに一人の飛行機乗り——あなたのお父さんが来たの。

 その人が『もし福島から飛行機乗りが来たら渡してほしい』と言って、これを預けていったのよ」


 俺は箱を受け取った。手が少し震えた。


「……開けてもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


 箱を開けると、中には封筒が一通入っていた。

 封を開けると、手書きの文字が並んでいた。


『軌変隊が残した記録が、オデッセイ島にあるという情報を掴んだ。彼らが最後まで諦めなかったという記録も見た。俺は、それらが本当かどうか、自分の目で確かめたい。

 お前がこれを読んでいるなら、同じ気持ちのはずだ。

 俺が帰れなかった時は、お前が代わりに確かめてくれ。そして、真実を世界に伝えてくれ』

 

 しばらく動けなかった。

 部屋には、波の音だけが響いていた。


「ソラヒト」とハルカが小声で言った。


「大丈夫だ、大丈夫。

 ただ、父さんもここまで来てたんだって、思ったら——」


 声が少し(かす)れていた。それ以上は言わなかった。


「ソウタさん、面白い人だったわよ。

 当時まだ子供だった私に、すごく楽しそうに飛行機の話をしてくれたのを覚えているわ」


 とウミさんは言った。


「ソラヒトくんの顔を見た時、もしかしたら、と思ったわ。

 あの時のソウタさんと同じ顔をしてたから」


 俺は封筒を大切に折りたたんで、胸のポケットにしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ