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終末 のんびり飛行紀 〜荒廃した地球で、スロー“フライ”!?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


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20/27

20.熊本のカルデラ集落


 集落は、カルデラの底の一角にあった。


 二十名ほどが暮らしている。畑が広く、野菜が豊富に育っていた。

 火山灰が積もった土壌は、栄養が豊富で農業に向いているらしく、東京で見た廃ビルの野草とは全然違う——力強い緑色をしていた。


「野菜、すごく立派」


 とハルカが言った。


「火山灰のおかげです。火山灰が積もると、土が豊かになる。この辺りの畑は、特に育ちがいい。

 それに温泉もあるし、地熱も利用できる。ここで生きてる人間は、火山と付き合いが上手なんです」


 集落の中心に、見慣れない装置があった。

 地面に埋められた金属製の箱の中に、板状の石らしきものが入っている。

 その板の表面には、びっしりと苔が生えていた。

 隣には、いつも苔を掃除しているらしき道具が置いてある。


「あの苔まみれの板は何ですか?」


 俺はその板を指差し、ダイチくんに聞いた。


「え? 知らないんですか?

 あれが、燃料を作るエリクシル触媒ですよ」


「あれがそうだったのか……!

 福島の集落では俺の爺ちゃんが管理してたから、見たことなかったんです。

 てか、苔がすごいですね」


「いやぁ、それが厄介なんですよね。

 この触媒、放っておくとすぐ苔まみれになるんです。

 毎日掃除しないと、どんどん機能が落ちていく……」


 ダイチくんは苦笑した。


「なんで、苔が生えるの?」


 ハルカが聞いた。


「わかりません。この触媒の周りは、何故か植物が育ちやすいんですよ」

 

「植物が、育ちやすい……」


 ハルカは小さく呟いた。何か気になっている様子だ。


「じゃあ、触媒の手入れ、手伝いますよ!

 こっちは機械が得意なんでね!」


 俺はそう言って、グッドサインをした。

 

「助かります。それと、燃料の補給は明日の朝でもいいですか? 先約がいたのを忘れていました」

 

「全然構いませんよ。今から飛んでも、すぐ夜になっちゃいますし。

 その間、何か手伝えることがあれば、なんでも言ってください!」


「よかったです。では、今晩は僕の家に泊まってください。歓迎しますよ」


「いいんですか? ありがとうございます!」


「それと、今から畑を見に行くんですけど、一緒に来ますか?

 今朝から、少し様子が変なんです」


「変って……?」


「地面の様子がおかしいんです。噴火の前触れかもしれない」


 ダイチくんは、真剣な顔をした。


 ◇


 畑に着くと、ダイチくんはしゃがみ込んだ。

 手のひらを地面に当てて、目を閉じた。


 俺はハルカに小声で「何してんだろ?」と聞いた。ハルカは「いいから見てて」と小声で返した。


 しばらくして、ダイチくんが立ち上がった。


「やっぱり、地面がそわそわしています」


「そわそわって、何です?」


 と聞いた。もしかしたら、ダイチくんにも、ハルカやミオと同じ感知能力があるのかもしれない。


「うまく説明できないですけど、地面が落ち着いてない感じがします。

 振動が、いつもと違う。細かい揺れが、地の底の方から上がってきている……」


「それが、噴火の前兆なんですか?」


「根拠はありませんが、僕はそう感じます。

 ただ、朝に感じた波動が、今は移動していました」

 

 ダイチくんは、南の方角を向いた。真剣な顔になった。


「あっちの方へ行ったんですか?」


「はい。南の方向へ、ものすごく大きなエネルギーが移動しています。

 海を越えた向こうで、巨大な噴火が起きそうな気がします」


「海を越えた向こうで?」


「四日以内に、必ず大噴火が起きます。

 それまでは、日本にとどまっていた方がいい。噴火の衝撃で、海上の気流が乱れます」


 ダイチくんは、俺を真っ直ぐに見た。


「四日間、ここで待てってことですか?」


「いえ、沖縄でも大丈夫ですよ。もともと行く予定だと言ってましたよね?

 ただ、その先へ進むのは四日後以降にしてほしいです」


 俺はハルカを見た。ハルカは小さく頷いた。


「わかりました。信じます」


「ありがとうございます。

 とにかく、この辺りが大きく噴火する可能性は低くなっていたので、一安心です。

 戻りましょうか、そろそろ夕飯の時間です」


 ◇


 集落に戻ると、夕飯の準備が始まっていた。


 地面に穴が掘ってある。深さは三十センチほど。

 葉で包んだ食材が入れられており、蒸気が上がっていた。


「ここの集落、地面で料理をするの?」


 とハルカが聞いた。


「はい。これは地熱蒸しと言います。

 地下の熱で蒸し焼きにする——この辺りは地面が熱いから、穴を掘るだけでかまどになるんです」


「地球が、かまどになってくれてる……」


「そう。それに、エリクシル燃料を作る熱も、地熱から来ていますし、本当に大地の恵みには感謝しています」


 ダイチくんがエリクシル触媒の方を向いた。

 

「エリクシル燃料って、どうやって作られてるんですか?

 仕組みをちゃんと知らなくて」


 俺は単純に疑問だった。

 今まではトビオ爺に任せっきりだったから、仕組みを知っておきたいと思った。

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