第80話:志乃の「バグ」。阿久津君以外、何もいらない
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今回は志乃の感情が臨界点を突破する、観覧車での密室劇。
無機質だった彼女が、阿久津君への執着という名の「バグ」に飲み込まれていく様子をご覧ください。
夕闇が遊園地を包み込み、光り輝く観覧車が、二人だけの密室を天高くへと運び去る。
機械音だけが微かに響く静寂の中で、志乃は阿久津の正面に座り、その瞳を真っ直ぐに射抜いていた。
「……阿久津君。私の世界は、今まで『0と1』の砂漠だった」
志乃が、首にかけたヘッドフォンをゆっくりと外した。それは、彼女にとって世界との繋がりを遮断する唯一の壁だった。
彼女は阿久津の手を取り、自身の細い首筋へと導く。そこには、激しく、痛いくらいに脈打つ心臓の鼓動があった。
「でも、今の私の脳内は……あなたの情動で、エラー(愛)ばかりが蓄積されている。……演算が止まらない。あなたが、誰かと笑うたびにシステムが焼け付いて……死にたくなるの」
感情を知らなかった人形。だが、阿久津の毒を「摂取」し続けた代償として、彼女は誰よりも鋭利で、制御不能な『独占欲』という名の感情を育ててしまった。
「……阿久津君以外、何もいらない。音楽も、陸上も、先生も……全部、ノイズ。私だけを、あなたの色で最適化し続けて……っ」
志乃は阿久津の胸に飛び込み、その唇を、魂の最深部を求めるように奪った。
粘膜接触を通じて流し込まれる、阿久津の困惑と、彼女への狂おしいほどの愛おしさ。その情動が、志乃の深部を蹂躙するように駆け抜け、彼女の視界を黄金の快楽で塗り潰していく。
「あ、ああ……っ! 来た……っ、阿久津君の熱いのが……っ! 私の中、もっと……もっと壊して。あなたのいない世界なんて、もう、計算したくない……っ!!」
観覧車の頂点。地上から切り離された絶対的な密室で、少女は自身の存在意義すべてを阿久津に明け渡した。
それは、誇り高きハッカーの敗北であり、一人の少年にのみ生かされる「依存体」としての、凄絶なまでの産声だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「阿久津君以外、何もいらない」。
志乃にとって、阿久津君の情動こそが唯一のリアリティであり、生きるためのコードとなりました。
四つ巴の関係がより狂気的な執着へと変貌する次話も、ぜひご期待ください!




