第8話:ライバルの嘲笑と、阿久津への秘密のSOS
学園の頂点に立つ凛華の前に現れた、宿敵・九条エリカ。
完璧だったはずの旋律に混じり始めた「不純な熱」を指摘され、凛華の平穏は音を立てて崩れ始めます。
学園の廊下に、甲高い高笑いが響いた。
「あら、佐藤さん。最近ずいぶんと『調子がいい』ようですけれど、何か卑しいドーピングでもされているのかしら?」
凛華の前に立ちふさがったのは、同じ一般科の有力者であり、ピアノの宿敵でもある令嬢――九条エリカだった。
彼女は取り巻きを引き連れ、凛華を品定めするように見つめる。
「……何のことかしら、九条さん。私はただ、自身の研鑽を積んでいるだけよ」
「ふふ、そうかしら? あなたの演奏、以前よりどこか……不潔な熱を孕んでいるように聞こえるの。まるで、男の情欲をそのまま音にしたような……ね」
その言葉に、凛華の肩がわずかに跳ねた。
図星を突かれた動揺からか、彼女の魔力バイオリズムが急激に不安定になり、指先が微かに震え出す。
(っ……、バイオリズムが、落ちていく……。よりによって、今……!)
阿久津が近くにいない状況で、外部からの揺さぶりを受ける。
凛華の心は瞬く間に不安に支配され、あれほど力強く溢れていた魔力が、霧散するように消えかかっていた。
「あら、図星? そんな震える指で、次の選考会に出るつもり? 恥をさらす前に辞退なさった方が身のためよ」
嘲笑を残して去っていくエリカ。
一人残された凛華は、壁に手をつき、荒い呼吸を繰り返した。
頭の中にあるのは、阿久津のことだけだ。
(阿久津君……阿久津君はどこ!? 彼がいないと、私、また……あの暗闇に戻ってしまう……!)
凛華は震える手で端末を取り出し、メッセージを打ち込んだ。
『放課後、いつもの場所で待っています。……いいえ、今すぐ、来て。お願い、助けて』
それは、もはや対等なパートナーシップなどではない。
自身の才能を維持するために、阿久津という劇薬を求める――末期的なジャンキーのような、悲鳴に近いSOSだった。
最後までありがとうございました!
ライバルに弱点を突かれ、精神的に追い詰められた凛華……。
阿久津君という「依存先」を求める彼女の必死さが、よりエロティックに響けば幸いです。
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