第75話:二律背反。癒やしながら、あなたを壊したい
いつもご愛読ありがとうございます。
今回は、聖奈先生の内に潜む「二律背反」の心理を描きます。
癒やしを与える聖母が、阿久津君という名の「毒」に救いを見出し、自ら壊されることを望む……その歪な愛の形をご覧ください。
深夜、消毒液の匂いが漂う保健室の奥。聖奈先生は、俺をベッドに押し倒したまま、その白い指先で俺の胸元を愛おしげになぞっていた。
「阿久津君……。あなたが他の子たちに『調整』を与えるたび、私の中の痛みが、激しく疼くのよ」
彼女の瞳は、聖母のような慈愛と、全てを焼き尽くすような独占欲が交互に明滅している。
聖奈先生は、俺の体に溜まった「他の少女たちの共鳴の残滓」を吸い取る。だがそれは、俺を救うためだけではない。その隙間に、自分だけの、より深く重い『支配の熱』を上書きするためだ。
「っ、はぁ……っ、先生……っ! 魔力が、吸い出されるのと逆に……何か、別の熱いのが入ってくる……っ」
俺の内に芽生えた、この完璧な女性を自分の色で染め上げ、二度と誰の前でも「先生」と呼ばせないようにしたいという、暴力的なまでの支配衝動。
その情動を、聖奈先生は「浄化」と称して、恍惚の表情で飲み込んでいく。
「そうよ……もっと。もっと私を奪って、私を壊しなさい……。私があなたを癒やしてあげるから、あなたは私を、一人の女として蹂躙しなさい……っ!」
癒やすことと、壊すこと。
矛盾する二つの欲望が、阿久津の情動という名の触媒によって溶け合い、聖奈を逃れられない依存の深淵へと引きずり込んでいく。
彼女は俺の首筋に深く歯を立て、まるで自分だけの所有物であることを刻みつけるように、その「支配の熱」を吸い尽くした。
聖母としての誇りが崩れ落ち、ただ一人の少年にのみ縋る「依存体」へと変貌した彼女の瞳には、もう後戻りできない背徳の悦びだけが宿っていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「癒やしながら、あなたを壊したい」。
聖奈先生にとって阿久津君は、唯一自分を「一人の女」に戻してくれる存在でした。
この大人の執着が、四つ巴の戦いにさらなる混沌をもたらします。
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