第72話:志乃の沈黙。隠密少女が仕掛ける、夜の奇襲
いつもご愛読ありがとうございます。
今回は志乃による、深夜の奇襲。
「隠密」と「ハッキング」の能力が、阿久津君との時間を確保するためだけに使われる心理的な緊張感をお楽しみください。
深夜、自室で休息をとっていた阿久津の肌に、場違いな「静寂」が触れた。
「……システム、ハック完了。周囲の監視、すべて無効化しました」
闇の中から響いたのは、感情を排した、けれどどこか切実さを帯びた志乃の声だった。
驚いて身を起こそうとした阿久津を、彼女の静かな眼差しが射抜く。
「志乃さん……!? どうやってここに……」
「隠密のギフトは、こういう時のためにある。……他者に邪魔をされず、対話をするために。私は、独占したい」
月光に照らされた志乃の瞳には、内包する魔力が微かに明滅している。
彼女は阿久津のそばに歩み寄ると、常に身につけていたヘッドフォンを外し、真っ直ぐに視線を合わせた。
「阿久津君。……夜の時間、すべてを私に預けて。誰にも……凛華にも結衣にも、今は介入させない」
密室、深夜、二人きり。
誰の邪魔も入らないという空間が、志乃の思考を加速させる。
彼女は阿久津の手を握りしめ、その体温を確かめるように深く呼吸を繰り返した。
「阿久津君の存在を、私だけの領域に刻み込みたい。脳内の演算が、あなたの影響で……変質していく……」
かつて感情を欠いていた少女が、夜の闇の中で、一人の人間への強い執着心を露わにする。
誰にも知られてはいけない、深夜のハッキング。
志乃の沈黙の奇襲は、阿久津という存在との絆を深めるための、静謐ながらも激しい独占の儀式だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
昼間の均衡を崩し、夜の独占を試みる志乃。
彼女にとっての愛とは、相手と唯一無二の繋がりを構築することに他なりませんでした。
この夜の出来事が、翌日の関係性にどう響くのか……。
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