第70話:四つ巴。阿久津を巡る、最も静かで激しい争い
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ついに出揃った四人のヒロインによる、阿久津君の「奪い合い」。
立場も、共鳴の仕方も違う彼女たちが、自分の優位性を証明しようと必死になる様子をご覧ください。
保健室の空気は、四人の少女――そして一人の女性が放つ、異なる色の魔力によって、発火せんばかりに濃密に凝縮されていた。
中心に座らされた俺は、四方から向けられる「熱」と「冷気」と「電磁」と「慈愛」の板挟みになり、呼吸すら困難なほどのプレッシャーに晒されている。
「……阿久津君。あなたの次の『調整時間』は、当然私のものよね?」
凛華が俺の右腕を、氷のような指先で強く引き寄せた。
その瞳には、先駆者としての意地と、志乃の「口移し」発言による激しい動揺が混ざり合い、凄絶なまでの執着が渦巻いている。
「冗談言わないでよ、佐藤さん! 私の脚は、今この瞬間も阿久津君の『刻印』を求めて疼いてるんだから。次も、その次も、私に決まってる!」
結衣が反対の左腕を掴み、自身の柔らかな胸元へと強く押し当てた。
汗の引かない彼女の肢体から放たれる熱気が、俺の脳を支配しようと共鳴パスを激しく叩く。
「……無意味な争い。阿久津君の『核』に直接繋がっているのは、私だけ」
志乃がヘッドフォン越しに冷たく言い放ち、俺の膝の上に自身の細い身体を割り込ませた。
彼女は俺の唇を指でなぞり、そこに残る自身の熱を確かめるように、虚ろで、けれど独占欲に満ちた視線を二人の女王に向ける。
「あらあら。みんな、阿久津君を困らせてはダメよ? 彼の『心の摩耗』を癒やし、包み込んであげられるのは、大人の私だけでしょう?」
聖奈先生が俺の背後から両手を回し、その豊かな包容力で俺の視界を覆い隠すように抱きしめた。
ピアノを弾くため。走るため。世界をハックするため。そして、聖母で居続けるため。
四人がそれぞれの「自分を維持するための正当な理由」を盾に、俺の情動を貪り食おうと火花を散らす。
「っ、ぁ……! 落ち着け、みんな……!」
俺の困惑が、興奮と支配欲へと変換され、四人へと均等に流れ込んでいく。
その瞬間、四人の身体が同時に震え、恍惚とした表情が重なった。
それは、世界で最も贅沢で、最も逃げ場のない、狂気的な共鳴の檻。
一人の少年を巡る争いは、もはや言葉の範疇を超え、互いの依存度を競い合う背徳の深淵へと、さらに深く沈んでいった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
凛華、結衣、志乃、聖奈。
四人それぞれの「阿久津君を必要とする理由」が衝突し、保健室は至高のハーレムであり、最悪の修羅場と化しました。
この四重奏がどこへ向かうのか。続きに期待してくださる方は、評価やブックマークをお願いします!




