第69話:聖奈先生の「治療」。痛みは愛で上書きして
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混乱する保健室を制したのは、他ならぬ聖母・聖奈先生でした。
少女たちには真似できない、大人の「治療」という名の独占……その背徳の深さをご覧ください。
「……そこまでよ、騒がしい小鳥さんたち」
聖奈先生の低く、通る声が保健室の喧騒を一瞬で静めた。
彼女は白衣のポケットから一本の注射器を取り出し――中身をゴミ箱へ捨てると、それを暗示するように、俺の腕を自身の柔らかい二の腕へと抱き寄せた。
「凛華ちゃん、結衣ちゃん。そんなに嫉妬という『痛み』を撒き散らして、阿久津君を困らせてはダメじゃない。志乃ちゃんも、ハッキングが過ぎるわよ?」
聖母のような微笑。だが、彼女が俺の腕に回した手の力は、逃がさないと断じるように強固だった。
聖奈先生のギフト「吸魔」が、少女たちの嫉妬でささくれ立った俺の困惑を、自身の糧として貪欲に吸い上げ始める。
「先生……! 阿久津君を離してください!」
「そうよ、先生には関係ないはずだわ!」
二人の抗議を、聖奈先生は慈愛に満ちた、けれど底知れない冷たさを孕んだ瞳で一蹴した。
「関係ない? いいえ、大ありよ。この子の『熱』がなければ、私は他人の痛みに潰されて死んでしまうもの。……阿久津君、今のあなたの心の乱れ、私が全部『治療』してあげる。痛みは……私の愛で上書きして、忘れさせてあげるから」
彼女は俺の耳元に唇を寄せ、周囲に聞こえないほどの密やかな声で囁いた。
吸い上げられた俺の負の情動が、彼女の中で「甘美な快楽」へと変換され、さらに濃厚な、支配の魔力となって俺へと還流してくる。
「っ、ふ、ぁ……! せ、先生……っ!」
少女たちには出せない、包容力という名の暴力。
俺の内に芽生えた、この完璧な聖母を徹底的に汚し、自分だけの依存体にしたいという「支配欲」。その特大の情動を、聖奈先生は恍惚とした表情で飲み干していく。
「あ、ああ……いいわ、阿久津君。もっと私を奪いなさい。そうすれば、私は永遠にあなたの『聖母』でいられる……っ」
阿久津を巡る修羅場は、聖奈という大人の参戦により、ただの争奪戦から、魂の救済を賭けた「共依存の深淵」へと、さらなる一段階を下りていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
他人の痛みを背負う聖奈先生にとって、阿久津君の「支配」こそが唯一の救い。
彼女の参戦により、四つ巴の主従関係はもはや誰にも止められない泥沼へと化していきます。
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