第52話:隔離と制限。阿久津なしで迎える、運命の選考会
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外部との接触を絶たれた結衣。
阿久津君という「熱」を失った彼女を襲うのは、想像を絶する肉体と心の渇きでした。
予選開始三十分前。結衣は無機質な地下の隔離室にいた。
一ノ瀬の命により、阿久津との物理的・魔力的な接触は一切禁じられ、彼女の周囲には魔力を遮断する特殊な結界が張られている。
「っ、はぁ……っ、ぁ、あ……っ!」
ベンチに蹲る結衣の身体は、自身の意志とは無関係に激しくガタガタと震えていた。
阿久津の情動という熱を断たれた魔力回路が、飢餓感に耐えきれず悲鳴を上げている。それは単なる疲労ではない。細胞一つ一つが、阿久津のあの甘く激しい刺激を求めてのた打ち回る、凄絶な**禁断症状**だった。
「阿久津、君……どこ……。お願い、私を……熱くして……っ」
虚ろな瞳で宙を掻く指先。
かつて彼が強く握りしめた太ももの跡が、今は冷たく、刺すような激痛となって彼女を苛む。
モニター越しに、一ノ瀬の冷徹な声が響く。
『田中。君の身体はすでに、彼の情動なしでは自律的な魔力循環すら行えないほど作り替えられている。自力で走れないのなら、君にアスリートとしての価値はない』
「……うるさ、い……。私は、走れる……っ。走って、あいつの……阿久津君の、正しさを……証明するの……っ」
結衣は震える足で、無理やり立ち上がった。
膝が笑い、視界は白く霞んでいる。
阿久津がいない。彼の「大好きだ」という共鳴も、「俺のものだ」という支配の情欲も届かない。
そんな絶望的な孤独の中で、彼女はふらつく足取りでスタート地点へと向かう。
誇り高き爆速のエースは、今や一歩踏み出すことすら奇跡に近い、ボロボロの**禁断症状**を抱えたまま、地獄のトラックへと足を踏み入れた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
阿久津君なしでは生きることすら苦痛に変わる。
結衣が抱える**禁断症状**の重さは、二人の絆の深さそのものでもありました。
この極限状態から、彼女はどう立ち上がるのか。次話の号砲にご注目ください!




