第35話:凛華の視線。共有されるはずのない『秘密』
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阿久津君の変化に敏感な凛華が、ついに動き出します。
同じ「熱」を知ってしまったからこそ分かる、隠しきれない身体の反応。
ヒロイン同士の静かなる激突をお楽しみください。
更衣室へと続く渡り廊下。記録を塗り替えた高揚感に浸る結衣の前に、氷のような冷気を纏った影が立ち塞がった。
「……随分と、はしたない走りだったわね。田中さん」
佐藤凛華。生徒会長としての威厳を纏いながらも、その瞳には隠しきれない鋭い敵意が宿っている。
凛華の視線は、結衣の汗ばんだ首筋や、今なお微かに震える太ももを、逃さず射抜いていた。
「な、何よ佐藤さん。記録を出したんだから、褒めてくれたっていいじゃない」
「記録? そんなものの話をしているのではないわ。……あなた、阿久津君に、何をしてもらったの?」
凛華が半歩、踏み込む。
彼女の鼻腔を突いたのは、結衣の身体から立ち上る、聞き覚えのある魔力の残り香――阿久津が放つ、あの甘く濃厚な情動の匂いだ。
「っ……!」
結衣の喉が、引き攣るように鳴った。
凛華の瞳の奥に、自分と同じ『共鳴者』としての色を見たからだ。阿久津に触れられ、脳をかき乱された者同士にしか分からない、隠微な連帯感。
「彼に何をされたか、その身体が一番よく分かっているはずよ。……あの男は、私のもの。あなたの汚れた汗で、彼の純粋な共鳴を汚さないで」
「私の勝手でしょ……! それに、私の方が阿久津君を必要としてる。私の脚はもう、あいつの熱がないと……一歩も動かないんだからっ!」
売り言葉に買い言葉。結衣は自身の依存を、最悪の形で自白してしまった。
凛華の瞳が、侮蔑と——同じ毒を喰らった者への同情で、暗く濁る。
「……いいわ。どちらの依存がより深いか、近いうちに思い知ることになるでしょう」
すれ違いざま、凛華が放った冷気。
結衣は一人残され、阿久津に触れられた箇所を無意識に強く抱きしめた。
秘密を共有するはずのないライバルの出現。阿久津という「劇薬」を巡る、歪な争奪戦の幕が上がろうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
結衣の豹変から、阿久津君の関与を確信した凛華。
「私だけの阿久津君」を脅かされた彼女の独占欲が、結衣を追い詰めていきます。
この二人の火花散る展開を期待してくださる方は、評価やブックマークをお願いします!




