ロウガン
俺たちは盗賊退治のために、ダンジョンに潜っていた。
奥まで進み、盗賊を発見したのだが。
「助けてくれー」
賊の一人が俺にしがみついてきた。
「シルカ。どうなってるんだ?」
「私に聞かれてもな」
男は体中が傷だらけだ。服は湿っており、火傷の痕が散見される。
「治してあげるね」
シーニャが回復魔法『ヒール』を使用して傷を治した。
回復量は高い。それに迅速だ。
あっという間に、男の顔色はよくなっていく。
さすが、システィーを目指しているだけはある。
「俺よりも他の奴らを見てやってくれ」
男は湖の側を指し示した。
「なんだこれ……」
恐ろしい光景だった。
6人の男たちがみんな蜜蝋により固められているのだ。
先ほど俺が壊した壁に似ているが、偶然ではないだろう。
とりあえず、壊さなけれならない。
今回は2人にも手伝ってもらい、慎重に男たちを中から出した。
「おい。大丈夫か!」
俺は男に呼びかけながら、背中をさする。
「……ゲホ。ゴホ」
咳き込んでいる。
息はあるようなので、ひとまず安心する。
それから、シーニャが急いで回復に向かう。
数は6人。さすがに、時間がかかるだろう。
その間に、俺は事情を聞いてみる。
10日前から、彼らはここを隠れ家として利用し始めた。そこまでは順調だったのが、つい先日、ある事件が起きた。
突然、巨大な目玉のモンスターが現れて、彼らを襲ったというのだ。
「目玉のモンスター? そいつの体はどんなだった?」
「はっきりと見てねぇが、体色はオレンジ色で蝋のように溶けていた」
つまり、彼らを閉じ込めた蜜蝋でできている。
聞くだけでも、不気味なモンスターである。
「……やはりか」
「シルカ。何か心当たりがあるのか?」
「そいつは『ロウガン』という名で、『オワタ洞窟』でボスをやっていた」
ボスモンスターということか。
情報では盗賊は8人いたのだが、今は7人しかいない。
彼らの話では、仲間の一人が『ロウガン』に捕まっているのだそうだ。
「よしっ! 俺が倒そうっ!」
ボスと言えば、ダンジョンで最も強い敵だ。
しかも、ここは廃ダンジョン。
もしかしたら、ボスが強くなりすぎて、この洞窟は閉鎖されたのかもしれない。
俺が実戦経験を積むには、ちょうどいい相手だ。
「そうか。止めはしない。おまえはモンスターを倒すために来たんだ。好きなようにすればいい」
シーニャとシルカには先に『オクリー』を使って帰還してもらう。
もちろん、盗賊たちも一緒だ。
「仲間のこと、よろしく頼むよ」
「ああ。任せてくれ。なんとかする」
みんなと別れた後、俺は更にダンジョンの奥へと進んでいく。
「エネミーサーチ」
俺は透明な板を出し、『ロウガン』の位置を探す。
赤い点は、ボスだと他よりも大きく表示される。
位置は最奥だが、そこまで遠くはない。
途中のモンスターはできるだけ避けることにする。
『オワタ洞窟』にはシスティーがいないし、回復役のシーニャもいない。
戦闘には、できるだけ万全の状態で望みたい。
レベル 9
マナ 1200/2500
Pブレイクもある。
もしも危なくなったら、すぐに使うことができる。
最奥までやってきた。
そこには、蜜蝋の塊がいくつも転がっている。
ざっと数えただけでも30ぐらいだろうか。
蜜蝋の中にはモンスターが固まっている。
どうりで前に壊したときに、多くのマナを取得できたわけだ。
『マスター。見てください』
人間が蜜蝋で固められている。
服装が盗賊たちと似ている。たぶん、彼らの仲間だろう。
『生きてるんでしょうか?』
さっきの男たちも生きていたし、きっとなんとかなるだろう。
壊さないように、注意だけはしておこう。
「エネミーサーチ」
ふたたびスキルを使用して、位置を確認。
俺のいる位置は、赤い点と重なっている。
「……まあ、下から出てくるんだろうな」
俺は地面に向かって、斧槍を突きつけた。
地下からのっそりと出て来たところを、串刺しにしてやろう。
『マスター。うえーっ! うえーっ!』
「うえ……うおっ!」
真上を見ると、オレンジ色の大きなものが落ちてくるところだった。
「縮地!」
俺はすぐに、その場から避ける。
ズッシーン!と地響きをさせて、上から落ちて来たのは、モンスター。
ドロドロとした蜜蝋で、その中心部には巨大な目玉が覗き出ている。
「出やがったな、『ロウガン』」
俺はその一つ目のお化けに向けて、斧槍を構えた。




