第1節 魔術師たちの日常 2
第1節はこれで一応終わりです。
会話を早めに切り上げて、学校へ向かう事を優先したため登校時間に間に合う事が出来た3人は1年生の教室がある3階へと向かった。
ちなみに、時矢たちが通っている学校は1階が3年生。2階が2年生。3階が1年生となっていて、4階には移動教室で使用する教室がある作りになっている。
ともかく、朝礼が始まる前に教室へとたどり着く事が出来た3人は教室へと入った瞬間「あっ3人ともおはよう!」と扉の近くの席に座った少女が挨拶をしてきた。
彼女の名前は花道 薫。時矢たちのクラスメイトであり、頻繁に話しかけてくる事が多い人物だ。入学当初、彼女とは「あった事がない」はずなのだが時矢たち3人を見つけるや否や「初めまして!」っといきなり話しかけて来たのは記憶に新しい。この現象にも理由があるのだがとりあえず割愛。
薫に挨拶された3人は「花道さんおはよう。」と返すと各々の机に座るためにバラバラになった。にしても花道さんの武政を見る目がまるで王子様を見るような目をしているのは気のせいだろうか....?
そんなことをしているうちに朝礼が始まるチャイムが鳴ったので時矢は急いで椅子に座った。それと同時に教室の前の扉から一人の女の人が入ってきて教卓の後ろに立った。
彼女こそ、時矢たちのクラスの担任である黒桐 零下だ。彼女は学校一美しい女性教師と呼ばれていてその人気は生徒にとどまらず教師たちにもあるらしい。ただ時矢からしたらトラウマそのものみたいな存在でもあるのだが....。
ボーっとしながらそんなことを考えていると「気をつけ!」っと今日の日直担当の生徒の号令が聞こえたので意識を戻した。
朝の挨拶が終わると今日の日程の確認だが、別に何か特別なイベントはなかったなっと時矢は思うと自分の思考に入った。
時矢は基本、授業中だろうがなんだろうが寝るか魔道具のレシピを考えるかしかやっていない。理由はもちろん愛花が言っていた通り天才を超えて変態だからだ。時矢の作る魔道具は魔術世界においてもかなり上位に入るほどのものなのだが、四六時中そのことしか頭にないからか、下手をすると食事すら取らないなんてこともある。さらに、一度自分の思考に入ってしまうとなかなか戻ってこないので周りをかなり困らせていたりする。
普段ならこのまま昼休みが始まる4時間目の終わりまで自分の思考に潜っているのだが今日は違った。朝礼の時間が終わりに差し掛かったとき黒桐の口から苛立ちを込めた声で「あっそうそう。空原君は後で4階に来てね。」と突然名指して呼び出されたのだ。突然の呼び出しに一瞬「ん?」っとなった時矢だが次の瞬間なぜ呼び出されたのか理解して顔から血の気が引くのを感じた。
実は3日前に時矢は黒桐からとある「宿題」を出されていて、それを提出するために今日は本来なら朝礼の1時間前に学校へ来るはずだったのだがそれを見事にすっぽかしてしまったのである。
「今日は疲れそうだなぁ....。」と時矢は呟くと一人4階へ続く階段に向かった。
黒桐が待つ理科室の扉を開けた瞬間中の雰囲気が普通と違うことに気がついた。
「げっ!師匠アレ使ってるのかよ!」と時矢が絶望を含んだ小さな悲鳴をあげると、「ほら何をやっている。さっさと奥まで来い。」と口調は違うがほんの5分前に聞いていた声が聞こえてきたので仕方なく奥へと進む。
「さて、朝学校に来なかった理由を教えて貰おうか。」時矢が部屋の奥に来た途端椅子に座り足を組んだ黒桐が微笑みながら理由を尋ねてきた。いや訂正、目が笑ってない。
時矢は顔を若干引きつらせながら理由を話し始めた、「えっえーと....。魔道具作っててワスレテマシタ。」
最後の方が片言になっているが時矢は理由を話した。つまりいつもの悪いクセで自分の師匠との約束を忘れていたのだ。
「このバカ弟子が!師匠との約束を魔道具制作で忘れるとかどこの変態だ!」と少し声を張り上げ時矢に言い放った。そして、「まぁいい。時間はたっぷりあるからお話をしようかバカ弟子くん。」と続けた。
さて、会話の流れから推測できるが時矢と黒桐は師弟関係にある。つまり黒桐も魔術世界に生きる人間と言うことだ。
詳しい説明は省くが時矢が中学2年の頃突然時矢の前に現れ、「お前を魔術師にする。」と言い放ち時矢を魔術世界に引き込んだ人物である。まぁ最終的にコレが時矢の助けとなるのだが今は関係ないので割愛。
ちなみに、黒桐の雰囲気が教室にいる時とは違うのはいわゆるモードチェンジみたいな感じで教師モードと魔術師モードが存在していて、教師モードが大人しく穏やかな雰囲気で、魔術師モードは冷静だが口調が厳しくなる感じだ。素の時は魔術師モードである。
1時間みっちりお説教を受けた時矢はどこか死にそうな顔をしながら「宿題」の説明を始めた。
黒桐から出された宿題は、幾つかの拠点を回り結界の確認をする事と敵対する魔術師が街に潜んでいないかを調査する事だった。
「結界は特に異常なしでしたねー。敵対する魔術師の方も国外から使い魔を放って様子見してくるくらいで特に何もなかったですね。」一通り時矢は説明を終えるとやっと息がつけるとばかり椅子に座り込んだ。
「まぁ説明を忘れるくらいだから大した事はないなとは思っていたが忘れるのは勘弁して欲しいものだよ、全く....。」黒桐は呆れを含めた声でそう言った。
「どうせ使い魔もお前の守り手の力を見るためのものだろうな。流石にやるとは思わないが迂闊につかうなよ?」と時矢に黒桐は注意するように言った。
「わかってますよ。守り手の力はデメリットの方が大きい事は誰よりも理解してますから。それはそうといい加減それ止めてくださいよ。流石に疲れました。」そういうと時矢は机の上にある時計のようなものを指差した。
「元はお前が忘れたからだろが。まぁ流石に止めるか。」黒桐はそういうと時計?の上をカコンっと押した。
すると、理科室全体に張り巡らせていた異様な空気が晴れていった。
この時計?は時矢が作った魔道具で、使用するとある程度の空間の時間の流れを遅くするというもので、実際お説教は1時間されていたが実際のところ5分も経っていなかったのだ。
魔道具の効果が切れた事を確認すると、時矢は「じゃっ教室に戻ります。」と言い放ち理科室から逃げるようにでていった。
「はぁ。うちのバカ弟子は魔術師としてのセンスは完璧なんだがなぁ....。」理科室に黒桐の呟きだけが響いた。




