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転生皇子は名探偵に憧れている  作者: 秋月 忍
通気口の怪/課題代行

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17/24

追及

遅刻です。短くてごめんなさい


 俺とレイラは出来るだけ速足で、旧校舎へと逃げ込んだ。ちなみに、イリスはわざと荷物を取り落として、俺たちから観客の視線を外してくれた。

 ナイスアシストである。

「一旦、私は教室に戻りますね」

 旧校舎の入り口で、レイラはそう言って俺から手を離した。

 二手に分かれたほうが安全という判断なのだろう。

 部活の時間のため、廊下に人影はなかった。少し用心しすぎのような気もするが、俺は一旦階段をのぼり、潜伏の術を使う。

 幸い、誰も追ってはきていないようだ。

 しばらく待ってから、人の通らない道を選んで俺は実験室へと戻った。

「おかえりー」

「お疲れさまです」

 レイラとイリスは既に戻ってきており、ロベルやジェイムズは二人から話を聞いていたようだ。

「ふぁーっ、命縮んだあ」

 手っ取り早く女装を解いて、ようやく一息をつく。

「咄嗟のこととはいえ、いろいろ申し訳ないことをいたしました」

 レイラは沈痛な面持ちで頭を下げる。

「いいや。モブー嬢のおかげで助かったよ。それからウンメー嬢もありがとう」

 実際、彼女たちがいなかったら、大ピンチだった。

「しかし、殿下って何やっても目立つねえ」

 にやにやとロベルが笑う。

「美女がそんな剣の達人みたいな事したら、注目浴びて当然だよ」

「美女かどうかは置いておいて。反射で動いてしまったのは失敗だったと思う。ただ、あのままだと怪我をしてしまうし」

 魔術で防ぐって方法もあったけれど、そうなると余計に『声』を出して詠唱が必要になる。

「不可抗力ってあるんだよなあ」

 しみじみ思う。

「もともと殿下は目立っておいででしたので、あの事がなくても視線は集めていたとは思いますよ」

 イリスがポツリと呟く。

 えっと。やっぱり怪しく見えていたということかな。

「女子はともかく、演劇部の男性部員たちは殿下の方を気にしていましたから」

「今後はあのような偵察は私にお任せください。殿下の女装が見てみたいという好奇心に負けて承諾してしまいましたけれど」

「思った以上の完成度でしたねえ」

「……好奇心」

 なるほど。それでレイラとイリスはあんなにノリノリだったわけだ。

「とりあえずは、フィーゴ・ノックウエルがダンカン・スポールディングと接点があることはわかった。一年生で役をもらえているところからみても、処世術にも長けていそうだ。もちろん太鼓持ちで役をもらえたわけではないかもしれないけれどね」

 演劇部の配役がどのように決められているのかはよくわからない。

 だが、今日見た感じではフィーゴ・ノックウエルは部内では割とうまく立ち回っているように見えた。

「私、演劇部をさぐってみます。新しい演目について取材するみたいな形で」

 イリスがこぶしを握る。

「じゃあ、俺は──」

「殿下はしばらく身をひそめて、魔術鑑識に集中なさった方がよろしい気がいたします」

 レイラは何かを案じているかのようだ。

「普段なら私は人に覚えられることはないのですけれど、殿下と一緒でしたから、ノックウエルさんに同じクラスの私だと認識された可能性があります。ジェーンについて色々聞かれるととても厄介なことになるので、そのあたりの設定を決めておきましょう」

「そんなこと聞いてくるかな?」

 見学に来た女生徒がいくら怪しくみえても、わざわざどこの誰かと確認するだろうか?

「念のためですよ」

 レイラは心配気に呟いた。



 その後、魔術鑑識の作業は終わり、おそらくだが、課題代行の描き手は五人ほどいるとわかった。ただ、本人が誰なのかは別の課題をみてみないとわからない。一年生であるという保証もなく、特定は困難だろう。

 二年生の課題である魔術カードのほうも調べる必要があると思い、ロベルとジェイムズと一緒に、カードの仕分けを始めたところだった。

 レイラが困ったという表情で実験室へと現れた。

「殿下。いろいろとややこしい話になりまして」と、いきなり切り出す。

「どうかしたの?」

「ダンカン・スポールディング令息が、ジェーンにお詫びをしたいと言って譲らないそうなのです……」

 レイラはふうっとため息を吐く。

 何度はぐらかそうとしても、フィーゴ・ノックウエルがしつこく質問をしてくるらしい。知らない人で通すには、あまりにも親密な間柄を演出しすぎていて、レイラとしてもはぐらかしきれないようだ。

「念のために決めておいた『設定』どおり、ジェーンは不幸な生い立ちのため学院生活ができるかどうか『体験入学中』だと話しておいたのですが、やたらどこのクラスにいるのかと聞かれまして……結局、ランバード先輩のように研究室にいることにいたしましたけれど」

「なんで、ダンカンがそんなに俺を捜しているのかわからない。何か怪しんでいるのだろうか」

 模造剣をふっとばした非はあるのかもしれないが、お詫びはあの場でレーナンにしてもらっている。むしろ模造剣を弁償してほしいからという理由の方がよくわかる。

「私も聞かれました」

 イリスが後ろを気にしながら実験室に入ってきた。

「私はよく知らない子だと押し通しましたけれど……」

 あの時、俺に話しかけていたところをみられていたらしい。

「殿下、早急に『売り子』を特定して、事件を解決に導きませんか? 探偵愛好会をきっかけに、彼が殿下の女装に気づかない保証はありません」

 レイラはどこか焦っているようだ。よほど、ノックウエルの追及が酷かったのだろう。

 まあ、俺としては、女装したのがバレてスキャンダルになるのはまずいとは思うけれど、ある意味仕方ないところがあるとは感じている。だが、レイラは責任を感じているのかもしれない。

「では、ノックウエルをここに招待しようか。ジェーンに会わせてやるといって、おびきよせよう」

「わかりました──」

 レイラはそっと頭を下げた。





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