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側近の誤算-後



いつの間にか立ち上がっていた勇者は、私の目の前に来ていました。そして右手を持ち上げられ、唇を寄せられました。

えっと、なんかこれ見たことありますね。人間の貴族史で読んだことあります。

確か手の甲へのキスは敬愛。騎士が姫に一生の忠誠を誓うとかそんなんだった気が…。

って、は?


「お前に俺の一生を捧げよう。結婚してくれ。」

「…へ?」

「なあ魔王。その和平とやらは人間と魔族が結ばれればいいのだろう?」

「………え?ああ、そうだが…」

「ならば、こいつと結婚する。それなら、祖国にすぐにでも和平条約を結ぶよう取り図ろう。」

「な……っ」


絶句、です。私も魔王様も口をぽかんと開けて言葉を失いました。

なんてことを言いだすのでしょう、この人間は。

魔王様をさしおいて、よりによってこの私と、け、結婚ですって!?

嘘です!ありえません!性質の悪い冗談です!条約の計画書にも私の人生設計図にも載ってませんよそんな事項うう!!

ショックでみるみる顔色を失くした私を取り残したまま、じゃあそういうことで、と私の手を引こうとする勇者。

ちょ、ちょ、ちょーっと待った!


「待って下さい!わ、私、そんなこと…!」

「ん?何だ?」


何だ、じゃありませんよ!何だじゃ!

なんですかこの人、頭の神経切れてるんじゃないですか?

言葉を発さない魔物相手でもこんなに話し合いに苦戦したことありませんよっ!


「そもそも私!下級魔族ですよ!?魔力なんか貴方よりも低いくらいだし、交渉の価値なんて…!」

「ああ、そうだな。その魔力量なら人間界でも十分暮らせるだろう。」

「そ、そういうことじゃなくてっ!」

「交渉の価値?…魔王の側近であるお前が無価値な訳がないだろう。むしろ下級魔族であるに関わらずそんな高位についているということは、魔王にかなり近しい者だ。そうだろう?」

「……っ!!」


私はついに黙りました。

どうして人のことを勝手に決め付けにかかるのでしょう、この勇者は!

や、実際その通りですけど!魔王様とは昔からの腐れ縁と言う名の幼馴染みですけど!?

勇者はむむ、としかめ面をした私を満足そうにのぞき込み、ニヤリと笑いました。

…よく分かりませんがこれが俗に言う『いけめん』とやらでしょうか。ヒトの美醜にはとんと疎い私には理解できませんね、こんな何を考えているのか分からなさそうな顔のどこがいいのでしょう?

そんな風に勇者をdisって(侮辱して)おりましたら、


「なら、何の問題もない。結婚式は人間界…俺の祖国でいいか?お前が望むなら魔界であげてもいいが…」

「え!」


なんとなく、彼の中で話がトントン拍子どころかアクセル全開暴走車並みのスピードで決まってきたようです。こら待ちなさい!そこの馬鹿、止まりなさい!


「だ、だから私は了承してませn「エルファニア!どういうことだ、これは!!」


あわわ、ついに魔王様まで参戦してきました!目をつり上げ、凄まじい量の魔力を膨れ上がらせています!ひいいいっ!


「エルファニア、と言うのか。いい名だな。…エルフィ、と呼んでもいいか?」


しかし勇者(ばか)はそんな魔王様などお構いなしのようで。

エルフィ、と呼びながら甘く私のことを見つめてきます。

ちょ、空気読んで空気!


「エルフィ、愛してる…」

「え、ええ!?ちょ、ちょっと――んむっ!」


わーっ!?なんか口合わせてきましたよコイツ気持ち悪いぃ!

え、これが人間の愛情表現なんですか?馬鹿言ってんじゃないですよ気色悪い!

うわああ中に舌入って来たあああ、サブイボ出てきたあああ!

のしかかってきた体を押し返そうにも屈強な彼の体は重くて硬くてびくともしません。

むしろ、それぞれの手を握りこまれて封じられる始末。

え、強っ!力、強っ!?


「うわーやりますね、勇者。」

「そっち方面は淡白かと思ってたんだけどぉ、ああいうのがタイプだったんだねー。」

「~~!!」


私が酸欠で喘いでいる中、僧侶と魔法使いがそう話しあっています。

ひゅーひゅーじゃありませんよ、古いヤジ飛ばしてないで仲間なら勇者の暴行を止めて下さいってば!


「こら、こっち見ろエルフィ。」

「っく、」


そして貴方は本当にやりたい放題ですね!?私が非力だからっていいようにして!

くっ、彼の仲間たちも使えなさそうですし、ここは唯一魔族の仲間である魔王様に助けを…!

かなり怒り心頭の御様子ですが、幼いころから一緒だった私たちです、話せば分かってくれるはずです!


「…ぷはっ!ま、魔王様!助けてくださ…」

「認めん……」

「へ?」

「お前が勇者の嫁になることなど、余は認めんからな!その前に、この手で滅してくれるわっ!」


――話せば分かるどころか、話す前に抹殺されそうという驚愕の事実です。

あれ?魔王様、私たちの数十年来の友情は!?

というかその魔法放ったら、本当に私、塵ひとつ残らず消え去りますよおお!?

い、いやあああ!殲滅とかやめてええ!!


「妻が滅されては困るな。逃げるぞ、エルフィ。」

「ええええ!?」


貴方も貴方で、何言ってるんですかKY勇者ああああっ!?


「逃がすか!」

「遅い。」


言うが早いか、勇者は私を抱いたまま、ぱりーんとでかい窓ガラスを破壊して、城の結界の外に出ました。そしてすぐさま転移魔法を発動させ、何処かに飛んで行ってしまったのです。

魔王の攻撃を避けて。仲間を置き去りにして。勝手に私も連れて。

そう、わ・た・し・も・連れて!

仲間よりも敵である下っ端魔族なんて連れていくなんて正気ですか、この人間は!?

…滅茶苦茶です。もう滅茶苦茶ですって、これええ!!


「ここまで来れば大丈夫か」

「な、な、な…!」


わなわなと震える私。

当然ですっ!こんな、こんなことになるなんて誤算もいい所です!


何で私は勇者なんぞと結婚しなければならない流れになってるんですか!?

何で勇者は魔王様でなく私を選ぶんですか!?

というか、すでに人間界まで来てしまったじゃありませんか!

こんなことなら、魔物と人間が喧嘩してくれていた方がまだマシでしたよぉ!


……もう、こうなれば。



「幸せになろうな、エルフィ。」

「断固拒否します!!」



とろりと甘い眼差しでこちらを見る勇者に、私は即座に言い返しました。


私は!絶対に!ぜっっったいに勇者の手から逃げ出してみせます!!

そして、魔王様にも勇者にも、誰にも干渉されない所で隠居生活をするのです!


思い通りになんか、なりませんからねーー!!(泣)





続く……のか?

一応考えたのがここまでだったので、ここで止めます。

気が向いたら続編書くかも。

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