第21話 窮地
第20話は性描写の都合上、ノクターンノベルに短編小説として投稿しております。
「うっ……」
シュタナートは目覚める。
頭が働かない、体にもかなりの違和感がある。
昨晩の事を働かない頭で思い起こす。
イシュアと結ばれた後に急激に眠気が襲い、抗しきれず意識を失ったのだ。
イシュアの仕業と本人がそう言っていた。
そして外からは何やら喧騒が聞こえてくる。
窓を開け、外を確認すると、トリア城はイスカリア王国の軍勢に厳重に包囲されていた。
とても会談の警護に来た感じではない。
太陽の位置的に正午は過ぎている。
このような状況なのに誰も起こしに来ないのはおかしい、イシュアはどうしたのかと思い、傍らにあった刃の仕込まれている杖を手にする。
しかし体の違和感から嫌な予感がする。
シュタナートは本拠と連絡をとろうと思い、《通話》の魔術を詠唱し、実行しようとする。
しかし嫌な予感どうり、発動はしなかった。
確かめるためにに最も簡単な魔術の一つである《発火》の魔術を詠唱する、しかしそれも発動しなかった。
「これは……」
かなりの危機的な状況に思わず声が漏れる。
この状況を打破できる《転移》の魔術も藁にもすがる思で詠唱し、実行するが、当然発動しなかった。
「くっ、これもイシュアの仕業か?」
この状況を何とかするには、この城にいる魔術師団の者に頼るしかないと思い、ローブに着替えて部屋を出る。
シュタナートは頭が働かなかったのといつもとは違うように感じる体のせいで遅れたが、この城全体に魔術が展開されているのに気が付く。
一瞬、このせいで自身の魔術が封じられているとも思ったが、どうやら違うようだ。
シュタナート程の魔術師を城全体という広範囲に渡って魔術を封じるとなると、非常に強力なものとなるのだが、これはそれ程に強力なものとは感じなかった。
シュタナートはこの城に掛けられている魔術がなんなのかを自身の膨大な魔術の知識と経験から推億するため、しばし考え込む。
そして一つの魔術が思い浮かんだ。
《転移封じ》、その名の通り《転移》を阻害する魔術である。
魔術が使用出来たら簡単に確定出来るのだが、使用出来ないので推測どまりだが、まず間違いないだろう。
そもそも《転移》は高等魔術なので、かなり使い手は少なく、それ故に《転移封じ》は非常に限定された状況でしか使用されない上に、難易度もかなりのものなので、相当珍しい魔術である。
今、掛かるっている《転移封じ》はこの場にいるシュタナートの魔術が使用出来るのなら、容易に解除出来そうな水準なのでおそらくはイシュアが展開したのではなさそうだ。
彼女ならもっと強固なものとなるであろう。
しかし魔術は距離が長くなれば長くなるほど、魔力を消費し、難易度が高くなるため、他の者が例えば魔術師団の拠点等から、《転移封じ》を解除して、シュタナートの救出のために《転移》しに来ることは不可能になったであろう。
「くっ、しかし周到な事だ」
更に退路が塞がれた事に対して思わず、シュタナートは呟く。
その後、この窮地を脱出する方法を思案しつつ、城内を調べながら、下の階に降っていくが人の気配はまるでなく、多少争った跡のようなものが見受けられる。
そして一階の出入り口に面した広間に来たところで、よく見知った一人の人物に出会う。
非常に美しい赤髪金眼の若い女魔術師、イシュアであった。




