表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
62/63

57発目 観察は個人の好奇心により始まり、さらにその導き手となる“謎”は“永遠に謎”とは限らなくなる。



 三重県伊賀市の笠取山頂上付近。

 ここには伊賀の里をまとめ上げる服部・百地・藤林からなる『上忍三家』が住まう屋敷が建てられている。

 その屋敷の謁見の間では、三人の男性が輪を作っていた。

「里の歴史は鎌倉時代より始まる。多くの領主たちが竜攘虎搏し争う中、伊賀の民は自らを守るため現代で言うゲリラ戦に特化した技を開発していた。やがて個々の小さな集まりは融合・増大し乱世の頃には『伊賀惣国一揆』ができ、ここを治めていた守護以上の存在へと進化した。特に我らが三家がそうさせていたな」


 長髪の男の名は、百地ももち紅狼こうろう。彼の前世は1556年から1640年。

 第一次天正伊賀の乱にて織田の大軍を相手に籠城で徹底抗戦をした伊賀者。

 百地 丹波たんば


 白髪交じりな茶髪の男の名は服部はっとり正隆まさたか。彼の前世は1542年から1597年。

 同じく『上忍三家』で2代目服部半蔵を名乗り、『神君伊賀越え』に家康と同行した伊賀者。

 服部 正成まさなり

 

 現代に似合わない総髪にしている男の名は、藤林ふじばやし保司ほし

 また同じく『上忍三家』だが、意外と記録がほとんどない伊賀者。

 藤林 正保まさやす


「おい!事実とはいえ某の説明が雑なのはちょっとおかしくないか!?」と第四の壁を無視して紹介に異議を唱える総髪男。


 確かなことは、この3人が天正同時期の『上忍三家』の頭領であったこと。

 そして2090年代に生まれ変わって、彼らは再び各三家の頭領の座に就いているのだ。




「目立った歴史といえば、1579年と1581年に起きた第一次・二次天正伊賀の乱。信長とすったもんだもあったが我等は生き延び、正隆が同行した『神君伊賀越え』のおかげで権現様の恩恵を受けて伊賀の存続を秘密裏にお認めになって1600年以降も里は滅びることなく後世に引き継がれていた」

「そして500年経った今。里の人間は表では時代に合わせつつ裏ではあらゆる分野での技術を先取っている」

「そして忍びの有り様を大まかに傭兵と妖祓いの二つにした!」

「さらに21世紀後半にはナノテクノロジーを取り入れて忍具の汎用性を大きく塗り替えた!」

 仰々しく次々に立って伊賀の歴史を声に出して振り返る―が、

「―と、堅苦しいのはよそうか。お~い、ジンジャーエールのおかわりをもう一杯~」と座り込みお付きの人に好物のおかわりを頼む紅狼と、

「フフフ、Re:ハンドレッドのアムちゃん、さらに再現よくなってきておるよの~。この鎖骨の辺りが特に~」と先日予約購入したばかりの美少女フィギュアを舐めるように鑑賞する保司。

「お主ら・・・生まれ変わり補正があるとはいえ少し堕落してはいないか?天正時代のお主らが見たら絶対嘆くぞ」

 そんな二人を呆れながら指摘する正隆。

「正成、今を楽しく生きて何がおかしい?」

「趣味に生きられる時代に生まれたのだ。楽しんでも損はない!がっはっはっは!」

「・・・・・やれやれ。オタク忍者、ここに極まれし・・・」

 すっかり時代に適応して生活している頭領たちなのであった。




「改めて未来の世界で生まれて40年か。一生を終えても尚お互いまた顔を合わせることがあるとはな・・・」

「さすがに同じ顔じゃあないがな。少なくとも某こんな縦長ではなかったはずだが・・・・・」

 手鏡で自分の顔を確認する保司はあっと思い出したかのように正隆にあることを聞いた。

「ところでお主の娘は息災か?最近では例のブレッツとやらに参加してヒーロー活動なることをしていると聞いたが・・・」

「“八咫烏”の翼か、甲賀者に風魔の者と組んで傭兵活動を始めた頃からの呼び名。前年は鳴りを潜めていたらしいが今年に入って春はイギリス、夏には大坂でひと暴れした挙句国の代表に仮名とはいえ公表させていたそうではないか。いのか?。忍びの者がそんな大っぴらなことをしでかして」

「仕方ないであろう。元々某の血を受け継いでる子孫だけあって才能に溢れた娘だ。大坂はもちろん東京での活躍は権現様も絶賛なされている。もう近い将来忍びが世に認知されても文句は言えまい。7年前はちとヒヤヒヤしてしまったもんだが・・・」

「はっはっは懐かしいよのう!あの時は500年ぶりの抜け忍騒ぎで里は大慌て。お主なんか権現様に頼るほどに追い詰められておったな!!」

「まあ、今思えばあれはあれで娘の成長に欠かせない試練の一つと思えば軽いものさ」

「『散々追手を払いのけた挙句男に惚れて大人しくなって帰郷する』、・・・・・この一連を試練と言えるのか?」

「はっきり言わんでくれ。言い切った自分で自信なくすではないか・・・・・とにかくヒーロー活動に関しては娘に一切口は出しておらん。学業では例の先駆けとして江・・・いや東京の学び舎に転校させている」

「おお、遂に『外里げざと塾制じゅくせい』を進める気になったか?」

「うむ。“一般的な学び舎に通学しつつ忍術を学べる”為、何百年も経った今だからこそ出せる制度だ。一応忍びの学び舎でも一般常識は教えられているらしいが、そこのところが少々出遅れているきらいがある。それを解消する為にも作っておく必要があるからな。望月にもこの話は伝えてあるし八咫烏の足にもこれを受けてもらった。まあ二人共利害一致の上で受けたに過ぎんがな・・・ふぅ」

 その理由は知っていたが、乙女な理由だったので内容は口にせず少々疲れた表情をする現半蔵であった。

「もはや里に生まれ住む者だけが忍術を学ぶ時代ではなくなった。現に里の影響が及ばない場所で大事件が起きかけていたのだしな」

「かつての帝があのような行動を起こそうとは・・・・・妖を押さえる役割である忍びたちが気づかぬとは我等もまだまだ未熟であるな」

「それを権現様自らも参加してブレッツの策に尽力するとはいやはや恐れ入る。ブレッツらがいる限りは地球は安泰などと時々考えてしまうのう。だが現地のことは現地の者が始末をつけるべき」

「そう、我々が揃って文字通り“先祖返り”の形で生まれ変わりを果たしたのにも、何か因果関係があるのは間違いない。改めて里で生まれたからには妖が関係する里の謎を解く必要がある!」

 妖怪の中にも物を考えて悪を働く者もいる。人間を時に傷つけているとはいえ、自らが生きる糧の為にしている行為を邪魔する存在:忍者が疎ましい、然らばそいつらの本拠地を襲おう!と考えてもおかしくはない。

「他所の里では一つ一つ決して大きくはないが一件以上は必ず妖怪がおそれごとを起こしている。しかし、徳のある妖怪たちとの契約を史上初めて結んだはずの我等伊賀の里で“妖怪に襲われた記録が一度たりともない”ということこそ里の謎だと思わないか?」

 正隆の指摘に反応し二人がそれぞれの趣味の腕を止めた。

「またそれか・・・、たしかにそのことが奇妙なのは某も認める。しかし重く考えすぎではないか?妖に襲われずにいたということ自体悪いことではないであろう。この地はきっと農耕に恵まれない分伊賀の神の影響があって悪しき妖怪は立ち入ることができないでいるのだろう」

「保司・・・・・それは決して現代生まれの者が口にして良い言葉ではないぞ?」

「だって自分、天正育ちだし。それに今は進化の世紀だ。科学では証明できない事象がたくさんあると分かっている時点で神の存在も否定できぬのでは?」

「そうだとしても何でもかんでも伊賀の神のおかげとするのは些か傲慢な考えに思えるが・・・」

 二人はほんの少し言い争うがここで言っても始まらないとすぐ悟って黙った。

 最後は正成がまとめた。

「いずれにせよ、権現様が仰っていた通り妖怪の存在は世に知らされるべきだ。それは我々の存在も同時にということ。里の奇妙な謎は早急に解くに他ならない。戦国の世を生きていた我々ですら気づけなかった“何か”を、伊賀を作った祖たちが何を残したのかをな」

 








 9月2日。

 明盆高校の校門上にて。

「あ~あっぢぃ~・・・やっぱ朝から冷たいの飲んでないとやってらんないな~・・・。お偉いおっさんたちがいきなり難しそうな話をしてて何だ?って思ってるだろうけどそういう風に執筆するストーリーになってるから勘弁してね。ここで私の学校生活に戻るけど、またちょっと説明が入るから」


 忍びの教育課程は高等学校での組み込みで徹底されている。現代では選択の自由があって最終的な判断は子供自身がするが、里の子供は高確率で忍びに憧れて里に属する高等学校を目指すことになる。そして試験を通過した者たちには忍びになる資格を与えられ、ご褒美でも与えるかのように次の制度が用意されている。

忍束にんそく補取ほしゅ』。

 各里に属する忍具部が高校入学生の身体情報と要望に応えて最先端の技術を施した忍び装束を提供してくれる制度である。


「まあ要するにヒーローコスチュームを作ってくれる“あの控除”みたいな素敵なシステムってこと。今じゃ進化の世紀だから能力にも合わせた装束になってるから多種多様になっちゃってるんだよね~これが。唯一変わらないと言えばどれも目立たない地味な色を使い続けてるってとこかな?」

 そこへ指導上忍の人が怒鳴ってきた。

「おい屋良!一人でエア友達との会話なんぞしてないで、早く自分の教室にいかんかー!!」

「へ~い・・・ってちょっと待った!それじゃ私が可哀想な子みたいに聞こえちゃうじゃん!」



 ―でも教師に言われたんじゃあもうちゃんと教室に行かなきゃだね・・・・・。


 そして教室。

 でさっきの続きだけど、ナノテクを大いに活用してるおかげでその昔は持ち運びが大変だった多数の忍器の所持がより簡易になってるの。

 忍器ってのはそもそも任務中正体がバレないようその存在を隠し活用できるものにする為に作られた道具。

 例えば、最初は球状か棒状の物体だけどボタン一つで変形する忍器。変形例の中で必ずあるのがクナイの形。ほとんどの忍びがこれを使う。ここから電気のこぎりやコンパス、棍棒、槌など様々な用途に使えるよう形態変化させることが可能だ。

 そしてさっき説明してた忍束補取が出てきて、能力の出現で種々雑多になりつつあるこの時世に生まれてくる見習い忍びたちでも特に障害なく装束のカスタマイズも定着できている。

 こういった里の最新鋭の装備を受け取り、それを初めてフルに活用しての授業が昨日だった。

 因みに実戦のルールはこんなだった。

 学校が所有する山林の指定されたエリア内でくじ引きで決められた組み合わせで二人が対戦。制限時間までにエリアで巧妙に隠されたたった一つのゴールから抜け出すか、万力鎖を巻き付けて相手を捕縛するかで試合が決まる、という内容だ。

 ほとんどのクラスメイトが先にゴールを見つけようと木の上を飛び回っていき、先に見つけた子が出て試合終了といった感じだった。たまに同時に見つけたことで戦闘に入ってどちらかが捕縛されることもあり、制限時間が過ぎて引き分けに終わることも。

 そんな中で真っ先に相手に攻撃を仕掛ける忍びは私ぐらいだと思っていたのは甘かったのかも。

 それは転忍者の子たちもそうだったからだ。


 五宝麻歩。

 あの子はとにかく走法に自信があるらしい。ゴールを探す最中の相手の目につく場所に敢えて現れては手裏剣・クナイなどの攻撃をし、追われる身になっては足の速さを活かして敵を撒く。これを制限時間内でタイミング良く繰り返して相手が疲弊したところで自分はじっくりとゴールを見つけて抜け出した。

 あのやり方は自分の足によほど自信がなければ実行できない方法だった。五宝は走法が得意な子と考えておこう。

 マイペースなのか一人で校内を歩き回ってるのをよく見かける。

 脇村鼠世。

 自己紹介に受けた印象通り勝気な性格なようで、力技を決めるのが多かった。特に彼女の相手だったクラスメイトの目木めきが得意としているナノテクで構成した盾を同じくナノテクで構成したオリジナルの鉄拳を使っての連撃でボコボコに仕上げたのには凄まじさを感じた。同じく防御が得意の私でもよくラッシュをやる時があるからそれの速さ比べもいつかは一興かなとは思った。

 盾を壊された目木は即座に捕縛用の万力鎖を巻き付けられ決着。

 人当たりは良い方らしく今日のちょっとの間でも何人かのクラスメイトと喋っているところが窺える。

 九十九莉拿。

 彼女は二本の忍び刀を使っていた。ナノテクじゃない本物の刀だ。テクノロジーが進んでクオリティが高い武器ばかりを使うご時世では珍しいケースだ。

 古い忍器でも使いこなすといえばあの八咫烏:ウィングを思い出すね。同じ伊賀生まれで今じゃヒーローチーム:ブレッツとして世界中で認知されているくノ一だし私も彼女が傭兵の頃からちょっと憧れている。

 ウィングはどうなのかは知らないけど、訓練の為で手加減してたのかそれとも手の内を見せないようにしているのか、どちらにせよ脇村の連撃とは対照的に一瞬で決める部類だった。

 性格的には豪快なイメージが通ることで有名な風魔の出身とは思えない程冷静沈着な子だ。一人になりたい立ちなのか誰とも喋らない様子が目立っている。


 

 あの3人を簡単に言い換えるとしたら順にこうだ。


 熊若(神足の忍者として有名)の再来、ライト級かフェザー級のボクサー、二刀流の瞬殺剣士。





 他の学校がどうなっているとかは知らないけど、明盆高校の教室には必ずゴミ箱が置かれている。ある日、そのゴミ箱の端にとある紙が中途半端に掛けられていた。

 右・・・いや、左端に“阿児”という文字が目に入った。最初は多分クラスメイトの阿児あこ杉人すぎと君が捨てたのだろうと私は考えていた。放っておいても良かったけど、この後偶然にも私が歩くところにゴミ箱から落ちて滑ってころりんなんていうのは嫌だったのでちゃんと押し込もうと近づいたのだ。

 そしてその紙の内容が目に入った瞬間、私は不気味な感覚を味わった。

〈こ、これって・・・・・!?〉

 その紙には、この水組のクラスメイトの何人かのデータが書かれていたのだった!特に戦闘スタイルを細かく!今後の戦闘訓練の為の対策なら納得もするが、それなら今ここに捨てているのは変だし明らかに異常だ。これはもう放っておくわけにはいかなくなってしまった。

 この後ちょっと嫌だったが、他にも同じような紙が紛れてないか人目を盗みながらゴミ箱を漁ってみた。



 午前授業の後は昼休み。

 私はこの時間、ゴミ箱で見つけた紙類を昼食を取りながら改めて調べることにした。

 まず、同じような紙類は全部で3枚あった。一枚につき12人ずつデータが書き記されていた。

 3枚目には、

『屋良絢百:トランス能力を持っているがそれ以上に鍛え上げた身体能力をも駆使して戦うタイプと見た。手裏剣・クナイ・剣撃ではあの背中の毛皮からダメージを与えることは不可能と見る』

 という内容の欄もあった。

〈うっそ!?私のことまで書いてる・・・・・〉

 最初に阿児君が捨てた紙かと考えたがどうやらそうとは限らないらしい。それどころか誰が捨てたのかも分からないのだ。

 その理由は二つある。

 一つ、これらの紙には“水組全員分のデータ”が書き記されているから。

 二つ、シャープペンシルで書かれているのは確かだが日本人が使う普通の筆記体じゃなく、書籍・広告とかで使われるゴシック体で書かれていたからだ、まるでコピー機で複写したみたいに!

 これを書いた奴は誰に見られても書いたのが誰だか分からないように施している。じゃあクラスメイト以外の人間がこれを?違う、だったらここにわざわざ捨てる必要はない。また、ここまで書き記しておいてゴミ箱に捨てる理由もないはず・・・・・もう覚えたから?

〈・・・・・・・今思えば、ゴミ箱に掛けてたのもわざとらしかったような・・・まさか、誰かに拾って欲しかったから?〉

 そう考えれば少しは納得する。だがそれはそれで理由が分からなくなる。結局何の目的があってこんなことを?

 いや待てよ?そういえばこのデータ、昨日の皆の戦闘を見た限りでの分しかない。一学期からいた子ならこれ以上のデータを書き記しているはず!

 例の一つとして出席番号15番の寺瀬てらせ建治けんじ君。彼は爆薬の知識に長けていて、一学期の授業で指導役の上忍たちの立ち合いの下、宝禄火矢(忍びの手榴弾)を手製で見事完成させていた。私よりも速くに。

 こういった才能は戦闘訓練にも役立つはずだからその対策データに組み込むのは必定なのにその出来事に関しての記述が寺瀬君の欄に全くないということは、二学期から転忍してきてそれを知らないあの3人が怪しいということ!

 でもこれって、何かを暗示してゴミ箱に入れたってこと?自分はお前たちのことを常に見ているんだぞ的な警告?

 だったらそっちが忍びなら私だって忍び。相手が誰なのかも調べ返してやろうじゃないの!





 今日この時より私は、五宝・脇村・九十九3人の行動を観察することにした。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ