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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
61/63

56発目 お忍び失敗してちゃあ、まだまだ忍者とは呼べない。




 今回のサブタイでも偉そうな言葉並べてるけど、これ結構失礼だよね。しかもこの後のストーリー展開を考えると説教たれてるって感じでマジにムカつく、私が。

 そりゃあ私は正真正銘くノ一になれてないよ?自覚もしてる。でもだからってそれをサブタイで言う必要ないでしょうが、砂川!

 こんな言葉並べなくても、私だって成長が如何に必要なことかぐらい分かるっての!

 


 何?今第四の壁破りしてる私が誰かって?その答えはもうちょっと待っててね~。







 忍者・くノ一。


 それは、人に知られずに主君の命令をやり遂げる男女それぞれを指し、昭和30年代から現在までも使われている日本での呼称である。

 並外れた運動神経・体力・俊敏性・恐怖に打ち勝つ精神力、ありとあらゆる武術を体得、鋭敏な感覚、高度な思考力・科学的知識、優れた記憶力やコミュニケーション能力を身につける。まさに心・技・体を兼ね備えた人間。

 彼らの活動時期は1400年代の室町時代から1600年代の江戸時代。特に大活躍したのがその中間、戦国時代であった。当時は“忍び”と呼ぶのが一般的であった。日本本州にいる戦国武将たちの目的は誰よりも多く領土を広げて天下を取ることであった。『勝利して支配する』『下剋上する・される』『支配を拒み自害する』『最善の道を選び生き延び続ける』といった宿命が錯綜する時代に最も適応し、武将たちに起用されたのが“忍び”だ。

 特定の大名や領主に仕えた忍び:武田信玄の『もの』・伊達政宗の『くろ脛巾はばきぐみ』などの種類だけではなく、『伊賀』や『甲賀』などの戦の度に違う武将や依頼人たちに雇われる傭兵のような忍びの存在もいた。

 しかし、時代は流れ江戸時代中期ともなれば1637年に起きた島原の乱ほどの大規模な戦はなく平和であった為、忍びの活動はほとんどなくなっていく。代わりに後世に伝えようと書物に書き残す者がいたり、1806年に刊行された架空の忍者として有名な自来也が登場する『自来也説話』などの創作物の忍びが世間に広まっていた。

 やがて明治・大正・昭和に入り、忍びだった者たちはその技能を社会に活かせるよう職業選択の自由が出来た日本で様々な職に就き、それぞれの子孫が木の根のように生きた経緯が別れながら現在に至っている。

 そして創作物では猿飛佐助・霧隠才蔵などの忍者モノの作品が人気を博し、戦後には小説・時代劇・劇画などで多く登場させたことで日本で再び忍者が認知された。さらには『るろうに剣心』『NARUTO-ナルト-』、海外では『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』『G.I.ジョー』などにより世界中でも認知されるようになっていく。

 


 ―以上が2112年まで続いている史実的視点のみで見られている忍者・くノ一の概要である。




 では、その実態は・・・・・。










 8月31日水曜日、三重県伊賀市の山林西部にて。

 木の枝から他の木の枝へとを繰り返して移動している影が四つ。

 一番先頭を行く影が口を開いた。

「全く、いい加減追うのはやめて下さいっスよ~パイセンたち~」


 後を追っていた三つの影もそれぞれの木の上で立ち止まり話し始めた。

「黙れ!せっかく罠を仕掛けておいたのに!」

「俺らが確認する前に取りやがって!!」

「数十万するかもしれない俺のミヤマクワガタ返せぇ~!!」

「は!?作戦考えた俺のだろ!?」

「作ったのは俺だろ!?だから俺のだ!!」

 醜い争いをおっ始める男子を憐みながら逃げるは、黒髪セミロングで小柄な女子。

 これは3人の男子が夏休みの小遣いに虫取りで稼ごうと罠を作っていたところ、女子がその罠に飛びついていたクワガタ一匹をちょろまかし、その瞬間を罠の様子を見に来た当人たちに見られてしまい追われている、という状況なのだ。

「ここでゲスなパイセンたちが元気になる情報~。私が取ったこのミヤマ、なんと白目で~す」


 その瞬間、木の枝にいるパイセンたちの目がギョロッとこっちに向くのを感じ取った。

 無理もない。白目のミヤマクワガタはとても希少価値があって、さっき先輩の一人が言っていた通りにその個体が数十万するというのが間違いないからだ。

「やっぱり数十万・・・」

「それさえあれば将来のこと楽に考えられる・・・」

「あわよくば彼女もゲット・・・」

 欲望は時に生き物をパワーアップさせる。今まさに彼らは、金に目が眩んで自分たちの持てる力を全てを出し切ってでもミヤマクワガタを取り返そうとしている。

 3人が懐からカシャカシャと小さい音を立てながら出したのは寸鉄、鉄拳、クナイだった。実際はどれも小さい球からボタン一つで変形してそれぞれの形になっているのだ。

「ありゃりゃ、アイテムでも刃物は危険じゃないッスか~?」

 いくら自分たちの正体が“アレ”だからって、彼らの年齢でそれを使うのは良くないんじゃ・・・という常識を言ってみるが、今のパイセンたちにはそれが通用しない状況なのだ。意味はない。

「「「いいからよこせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」

 並んで一斉に飛び掛かるパイセンたち。

〈うっわスッゲー醜悪な奇面相~。でも仕方ないか、一応相手しよっと〉

 まずは寸鉄・鉄拳の連続攻撃を、私は背を向けて受け止めた。

 それも、“ある動物の毛皮に変化させた背中”で。

「ちっ、変貌トランスか!」

 連打が終わった隙を突いて私はすぐさまバク宙しながら二人の忍具を填めた腕を掴んで地面に叩きつけた。そこへ残りの一人によるクナイの投擲を察知してジャンプ回避し、再び木の枝の上に乗る。その間にパイセン二人も即座に起きて態勢を立て直し、茂みにザザッと入って気配を消した。同じ訓練を施されている人間ならできて当然のことだ。

 投擲攻撃をしたパイセンは地面に突き刺さったクナイを拾い私を見上げた。

「最近の忍びは生まれ持った能力をどう応用するかで優劣が決まりやすい。だが俺はそんな現状が悲しく見える。忍びってのも本来スポーツアスリートのようにどれ程鍛え抜いた己の身体と技かで個々の優劣が出る存在だ。特にお前のような能力に頼って慢心する奴は!あまり気に入らない!見たところ獣の毛皮みたいだが、お前はその毛皮に絶対的な自信を持っていると見た!」

 そう言ってパイセンはクナイを真っ直ぐに投げ、いつの間にか隠し持っていた二つの六方手裏剣も右回転と左回転で投げて木々の間をすり抜けさせて私の背後まで到達させた。

 私はまずクナイを自分の鋭敏な感覚を生かして

「受け止めたか!だがしかし、手裏剣はどうだ!」

 背後から来る手裏剣を毛皮で受け止めずに垂直跳びで躱した。

「なに!?」

 ジャリリンッ!!

「「ああっ!?」」

 思った通り手裏剣をカーブさせてわざわざ背後に飛ばしたのか。理由は当てる為じゃない、その場に留めておく為だった。

 そしてさっき私がのした二人が密かに犬走りで移動し、タイミングを合わせて鎖忍器の“微塵”を絡みつかせて捕まえようと投げていた。もちろん私が手裏剣を受けずに垂直跳びをした結果、微塵はパイセン同士にそれぞれ絡まってしまい、手裏剣は運悪く微塵に当たったことで軌跡が広がり二つとも投げた本人に戻っていった。

「んうぉっ!?」

 そこは同じ忍びの人間。ギリギリで戻ってきた手裏剣をブリッジで避けた。しかし頑張っているパイセンに関心しつつも私はそんな彼の隙を逃さない。手持ちの万力鎖ばんりきぐさりをパイセンの両足に絡め引っ張り、地面に背を付けさせた。

「あんたら良いチームワークって感じでとても良かったっスよ、感心感心。なんつって☆それでもミヤマは渡さないっスけど~!!」

 そして、最近覚えたプロレス技:ランニング・ボディ・プレスを決めて最後の一人を倒した。

「うげっ!?」



 はいど~も~、読者の皆さんさっきぶり~。

 パイセンの上で寝ながらだけどまずはさっきの答えと称して自己紹介から行くっス。

 私は屋良やら絢百あゆ明盆めいぼん高等学校に今年入ったばかりの一年っス!

 ところで皆さん、こう思ってるっスか?『あれ?忍者の概要説明があると思ったら全然知らないキャラたちがクワガタ取り合ってるし、前回の主人公失踪予告からのすぐ主人公不在状態ってどゆこと?まさか読む作品間違えた?』

 もちろんこれは『BULLETSブレッツ』で間違いないっスよ。それに私はたしかにこの小説で今回初登場ッスよ。主人公失踪とか不在だとか正直どうでも良いけど、今後はしばらくここ“伊賀の里”を焦点に当ててストーリー進めるってんでその主役に自分が選ばれたってことらしいっスよ~。

 さてと、これでしばらくは金に困りそうもないから、帰りにかき氷でも食べよっかな~。



 起き上がって町に戻ろうとしたところ私はあることを思い出そうとして伸びているパイセンに向かって振り返った。

「あ、そうそう。楼備ろうびパイセン、さっき能力持ちどうのこうの言ってましたけど、口調からして進化の世紀あるあるな妬みなのは分かるっス。でももしそれが侮蔑だった場合、今度相対する時は容赦しないっスよ」

 最後は声を低くして言葉を発していた。

 





 ここの土地は、外観こそ一般的な市町村と変わりない、現代では当たり前なことである。

 ただし、それは“ほぼその通り”なだけである。

 伊賀・名張市には、国の法律には触れてしまい人道に逸れてしまいかねない教育があり、それを施す教育施設を結界で偽装し社会から隠されている。一般人には存在も気づかれることのない妖怪の学び舎:竹千代学園を覆っているのと同じ結界がここにも張られているのだ。

 そして、ここを含めた特定の地域に住む者は他の地区及び日本の都道府県民・・・いや、世界中から隠している秘密を抱えている。

 その秘密は大まかに三つある!

 一つ、自らが現代に生きる忍者・くノ一であること!

 二つ、忍びが社会の裏舞台で活動しているのと同時に妖怪が実在しているということ!

 三つ、忍びであっても現代に適応できるようになる為の特別な教育機関が複数存在すること!

 伊賀・名張市の人口だけでも合わせて約16万人。つまり、約16万人以上がこの三つの秘密を世界中の影で共有している人間であることになる!

 忍者・くノ一、彼らの存在意義は現代では傭兵・暗殺をする影の者だけじゃなく、同じ人間を太古から織り成す害悪:妖怪から救う守り手もある。


 彼らは、今日も明日も忍びながら活動する!そして、新しい世代も残すことも絶やすこともない!

 




 だもんで翌日の9月1日木曜日。

 明盆高校、一年水組の教室にて。

「お前なぁ~、始業式の日に早々俺の教室で怒鳴られて何かと思ったら、楼備の奴からミヤマクワガタを奪っただぁ~?・・・・・・・・ナイス!」

 典型的な叱りをするのではなく鬱陶しい同級生:楼備ろうび久之助ひさのすけにしてやったり感で突然私の教室に来るなり褒めているこの人は、私の指南役を務めている3年生の青野あおの居太郎こたろうさんだ。

「居太郎さん・・・・・私もミヤマで小遣い稼げたけど、流石にそれをナイス!の一言を添えるのはどうかと思うっスよ~?」

「良いんだよ。あいつのせいで夏休み中の三日間からくり屋敷の一つに置いてけぼり食らったんだからな」

「・・・・・それはそれで騙すのがうまい忍者なればこそのことっスよね?」

「あーはいはいそうだよな。とにかく二学期からは一学期以上の訓練があるからな、明日から気を引き締めて行くぞ~」

「うい~っス」

 気のない返事で居太郎さんを見送ってるけど、私も他の同期たちと同じように内心ドキドキワクワクがあるのは自覚している。

 なぜなら一学期は忍者の基礎:心・技・体を押さえる為だけの授業だった反面、二学期からは待ちに待った戦闘訓練ができるのだから。

 つまり、みんな闘争本能を剝き出しにしたいと願う危ない世代ってワケ。

「さぁてみんな久しぶり~!二学期に入って暴れることに期待を膨らませてるところだけど、その前にまずは休み明け恒例の転忍者てんにんじゃたちの紹介よ」

 担任の照野てるの先生が生徒たちの心境を見抜きながら教室に入るなり、自然な流れで総合学習時間を始めた。

 彼女の言う転忍者とは、『雑賀さいか』『鉢屋はちや』など他の里に住む人間が別の里で忍術を学びに行けるというシステムを里間での取り決めで制定された後に移動する者に付けられた名前だ。忍か・・・ゲフンゲフンこれは言っちゃダメだね。とにかく忍者の世界も今ではこのようにグローバル化がすっかり進んでいる。

「それじゃあ転忍者の3人、姿を現しなさい」

 先生の呼びかけに応えて一人は天井裏から、また一人は既にクラスメイトの誰かと同じ姿になって紛れ込んで座っていたところから立ち上がり、そして引き戸を二本の忍び刀でダイヤモンド状にスパッと切ってから派手に入室したりともうメチャクチャだ。

 このように転忍者は他の里の学び舎に通うことになると決まって特殊な演出で入るという伝統ができてしまっている。しかしこれでもまだ昔よりはマシであったと居太郎さんは少し前に言っていた。

 ある時はカッコよく登場しようと煙幕弾を使ったせいで教室が一時ボヤ騒ぎになったり、手裏剣術で文字を作って決めようとここぞとばかりに失敗して教師に当ててしまったりと毎年どこかの里で必ず大事になっていたそうだ。

 あと転忍者が一度に3人っていうのはそう珍しくない。他所の一般的な学校では転校生がクラスに3人も入るのは珍しいが、それは日本に学校施設が高校だけでも4万以上ある物差しで測った場合で言えること。忍びの学び舎は数える程しかない。だから他の里で学びたいことがある場合だけでも一度に5人か7人という時がたくさんあるのだ。

 ましてや伊賀と甲賀の里は京都に近く、学校制度がなく読み書きができない人間が圧倒的に多かった大昔から文字が読める教養ある人間がたくさんいる。里出身の忍びの間では学び舎として最高はどこと言えば間違いなくこの二つのどちらかを上げている。これによってここに何十人転忍者が押し寄せてもおかしくはないのである。

 まず天井裏から出てきたお団子一つ髪型な子が最初に挨拶をした。

「三ツ者から来た五宝ごほう麻歩まほです。よろしくお願いです!」とペコリ。

 次に変装していてそれを一瞬の内にどう解いたのか分からない三つ編みの子が。

「黒脛巾組から来た、脇村わきむら鼠世そよだ。よろしく」とサムズアップ。

 最後は茶髪で髪を首の後ろ辺りでまとめた子が。

「風魔から来ました九十九つくも莉拿れいなです。どうぞよろしくお願いします」と丁寧にお辞儀。

 このケースはちょっと意外だった。

 3人共女の子だったからだ。

 


〈・・・・・大まかに言えば東から来た子たち、か〉



 何の術が得意だとか、心・技・体のどれが抜きん出ているのか、能力持ちなのかそうでないか、たくさん気になるものだ。

 






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