55発目 映写機のフォルムリールが回転すると共に、運命の大車輪は動き出す。
8月19日午前中の作戦会議後のエスペランサブリテン評議会ドームにて。
「こんな大事な作戦ミーティング時にこの俺を外に追い出すとは、何か理由があってのことなんだろ?」
「察しが良いな、うつけさんよ。トラには俺達とは違う別の任務を与えたい。千恵・濃さん・エーブ・剣・五十嵐の5名を引き連れてジュリアーノに応援要請をしにタラファルへ向かってくれ」
「あいつらにか?そりゃあ・・・俺やお前の頼みだと聞けば助けてくれるだろうけどよ。そこまで応援がいるのか?」
「戦略面ではみんなに不足は絶対にない、そこはもちろん信じてるさ。でも今度の敵は汚い手段を練っているはずなんだ。それにはどうしても空を飛ぶ援軍が不可欠だ」
「化かし作戦みたくたくさんの飛行機をボニータの遠隔操作で動かす手は?」
「あれは敵殲滅が目的であって、今回はデカい物体を地上に落下させないようにするためだけだ。飛行機やヘリコプターじゃ、安全に遂行はできない」
「デカい物体が落下しないように?“運動エネルギー弾”みたいなもんか?」
俺はちょっと考えた後に多分な、と頷く。
運動エネルギー弾とは、質量・弾頭硬度・速度などのミサイル・砲弾自身が持つ運動エネルギーによって対象を破壊する機構を持つ弾丸兵器のことである。
「そんなとんでもねぇもん所有してる敵ってどんな奴らだ?どこからそんな情報を?フランスのどこにあるってんだ?」
「あ~・・・、ある意味では所有物だな。正確な場所までは分からねぇが、そこは俺とキャプテンがなんとかする。見つけ次第ボニータに連絡させるからトラはその間に俺が創造したツポレフ3機を飛ばす。機内には特大のケーブルガンを全部で20本以上は積めとくから、ジュリアーノたちが応援を受け入れてくれたら彼らに装備させてすぐにフランス上空で待機していてくれ、いいな?」
「場所はわかってもよ、出るタイミングはどう見極めるんだ?」
「お空にたった一つでっかい何かが『ふしぎなたけのこ』の竹の如く昇ってくのが見えることで分かる。その時こそ・・・」
「“勝負の出処”ってワケだな?」
「That's light!(その通り!)」
そしてにやけながら互いの拳をぶつけてそれぞれがやるべきことがある道へ向かった。
そしてその日の午後、施設キャリアが高度3000mに達した頃。
「・・・・・何なんだ?あのフライング・ヒューマノイドの軍勢は・・・・・」
「・・・見るからに、天使と悪魔の翼をそれぞれ背中に生やした連中といったところかと・・・」
双眼鏡で突然現れたヒューマノイドを特徴をする眼鏡白衣の男。そうしている内にそいつらは大きなケーブルガンを施設キャリアのゴムの壁に撃ち込んできた。おかげでブリッジも大きく揺れて手下たちも転んだ。これではガス噴射装置が切れても施設キャリアは奴らに引っ張り上げられることで落下せずメール・ド・グラース氷河は崩壊することもない。我等の最低限の目標:BLLETSの名に泥を塗ることが達成できないということになる。そのことに気づいて苛立ちを見せる白覆面は氷で右目を隠したまま命令を下した。
「くそっ!戦闘ポッドの発射用意だ!ポッド・クルー、戦闘配置に就け!」
次々にバシュッガンッとケーブルガンを撃ち込んでいく天使・悪魔たちの姿を見てアディが聞く。
「お前の話から聞いていたが、本当にいるんだな天使と悪魔が。しかしこれも計画の内ということか?何だか狙いが正確的過ぎな気もするが・・・・・」
「そう感じるんなら単に情報源が正し過ぎたってだけだ、アディ。それよりこのゴブリン共を片付けてあのゴム覆面共を総局に引き渡さないと・・・なっ!!?」
俺が目的を言い終える前にまたデッキ上が揺れた。ケーブルガンによるものではない、キャリアの腹から多数の何かが発射されていた。ポッドだ。このキャリアには機銃を備えた戦闘用ポッドが備えられていたのだ。
「・・・・・番長、仮面はなしでって言ったけどよ。あれ撤回しても良いか?」
「っ!喜んでやらせてもらうよ!!」
俺が頼みたいことを即座に理解した奈々は顔をかきむしる仕草で仮面を被り、その場で大ジャンプしてかくし玉チームに襲いかかる戦闘ポッドの一つに張り付いてボガボガッと殴って破壊し始めた。
「この数を相手だと、ガンナー役がもう一人欲しいところだな。ってことでアディ・広子、よろしくな」
仮面のくちばしを縦に揺らすアディはゴブリンの血を拭き取ったばかりの大型ナイフを腰に収めてワルサーを右手で3度回すと、構えた瞬間本体がグロスフスMG42機関銃へと変貌していた。
「それじゃあお嬢さん、陣形を乱さずに行動しようか」
「え!?あ、はい・・・どうも」
結局この人誰?と内心疑いがあったが黒マントが味方であることは確かだと認識してミニミを構える広子。
「そんじゃま、勝負に出るぞ!てめーら!!」
「「「「「Sir,yes,sir!!」」」」」
新たな指令が出されたのかゴブリンの一人が頭の装置がまた赤ランプに変わるのと同時に、
「Slay them all!(皆殺しにしろ!)」
と叫び一斉に他のゴブリンも赤ランプに変えて襲いかかってきた。
俺とクロウが斬り込み2、3匹を撃破。すぐさま低い位置から足を狙ってくるゴブリンの頭上を飛び、アディの“電気のこぎり”の標的にさせる。右からやってくる敵に気づいてMG42の銃口が火を噴きながら右90度に方向転換し、代わってアディの左をカバーするようにペティが如意棒を伸ばして横薙ぎに振り回して敵を蹴散らす。その振り回されている如意棒に飛び乗ってタタタッと素早く走り、UZI二丁を撃ちまくり範囲攻撃をさらに広げる巴。UZI使いを狙って突き刺そうとするゴブリン4匹の槍をシオリがトンファーの磁力で吸い寄せ、集まったところを抑えて一緒に引っ張られてきた敵の頭にまとめて回し蹴りをヒットさせた。ゴブリンたちは数に任せてシオリのトンファーを両方封じ込み一気に推し潰そうとするが、そこはロザリアのバイオニック・アームパンチの連発で散らされた。そして吹き飛ばされたゴブリンに追い討ちをかけるようにミニミで仕留めていく広子。
なんとか俺達の勢いを止めようと敵は攻め込んでくるが、二人のガンナー役に加えてペティの如意棒による芝刈り役にあっけなくやられていく。例え弾道と如意棒の軌道を掻い潜れた奴がいても、シオリの磁力支配により鉄分が含まれる武器に釣られ弾道に巻き込まれていく。磁力支配から逃れて接近してきてもデザートイーグルの狙い通りとアーム掴み飛ばしをするロザリアに対処されていく。
だが、ゴブリン共にとってアディらの陣形以上に厄介な竜巻が他にあったのだ、それも二つ。
俺とクロウだ。
敵をかき乱すのが目的でマグナムは引っ込めて雷龍一本で戦っていた俺は、銃撃が無い分いつも以上に相手を斬っていった。時々槍・斧・ナイフを投げてくる奴もいたが俺はそれらを避けるか掴んで投げ返すこともあった。一番気を付けていたことと言えば、“絶対に張り付かれない”ことだった。昔の敵:オークとは違い相手は背が低い。気を抜いてたら足を止められ集団攻撃を受けかねないからだ。開発者はおそらくブリッジにいたあの眼鏡白衣な男に違いない。あいつはきっと小柄なゴブリンの特性を生かしてプログラムを施したのだろう。さっきもだがまだ俺に飛びついて足を止めようとする奴もいた。なので追いつけないように走り、斬り飛ばし続けていた。
クロウの場合は、その点に関しては問題ない。いや、むしろ無敵に近い剛くらいに心配がないのだ。彼女はゴブリンの飛びつきだろうと掴みだろうと投げつけ攻撃だろうと何が何でも即座に斬ってしまうからだ。俺とは違って全て障害を剣術で解決してしまう菊也のようなやり方と似ている。だがクロウは姿がアレである為どうしても英雄な霊を連想してしまう、まあそれは今に始まったことではないが・・・・・。とにかくゴブリン共はこのように三つのハリケーンのどれかに対処しようとしても返り討ちに遭うか他のハリケーンに巻き込まれるかモタモタしてるところをやられてしまうかしかなかった。
ところで、氷河の崩壊が狙いだった白覆面含む敵の上層部は目的達成ができないと分かるとどうでるのか。怒って持てる力を全部出して俺達に襲い掛かるのかと思っていたが、そうはいかなかったらしい。
かなりの数を倒した頃、ブリッジの周りからプシューッと水蒸気のようなものが噴き出したかと思えば建物そのものがせり上がっていたのだ。感知能力で確かめると裏面に大きなノズルがたくさん突き出ている。
「っ!全員ブリッジから離れろぉっ!!」
ブリッジもポッドだったのだ。ゴムの壁で俺の感知能力から上手く隠していたらしい。おかげで今の今まで気が付かなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴッババシュッヒュオッ!!!
単なるロケット噴射じゃない。またもやガス噴射による発射だった。飛ぶ先は決めていてアルプス山脈沿いに真っ直ぐスイスへと物凄い勢いで飛び出していった。俺の警告でゴブリンを押しのけて距離を置き、何とか噴射による風圧に巻き込まれずに済んだシオリたち。だが代わりにデッキにいるほとんどの者はポッドがどこへ向かったのかを確認していなかった。発射の前に出されていた水蒸気も目晦ましの為に使われていたのでさらに厄介だった。天使・悪魔たち、それにトラたちもぶっ飛んでいくブリッジポッドとあわや接触しかけていたし、追撃はほぼ不可能に近かった。
『あたしが止める!』
そんな中、無線で名乗りを上げたのが戦闘用ポッドにかかりっきりだった奈々だ。最後のポッドを踏み台にしつつブリッジポッドを追いかける形でジャンプした。とんでもないスピードで飛ぶ巨大な物体に一時はすぐ目の前まで近づいて掴まろうとしたが、あと2、3mちょっとという所で体が離れ始めてしまった。空中を飛んでいただけの戦闘ポッドは奈々にとってブリッジポッドに追い付くのに十分な踏み台にはならなかったようだ。失速してしまった奈々はそれでも掴もうと体を伸ばしたり、平泳ぎ・クロールなどもやったりしていた。まあ、ほとんど科学的根拠もないやり方だし結局のところ掴むこともなく彼女は逆にだんだん地球の重力に掴まって落ちていった。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」
悔しさいっぱいにそう叫びながらアルプス山脈のどこかへと落ちて行った。
そんな番長をブリッジの窓から見届けていた眼鏡白衣男が呟く。
「番長はあまり頭が良くないというのは本当のことだったのですね。正直エッジ6が敗れた時には嘘ではないかという考えが頭によぎりましたが・・・」
「私は彼女が学問に詳しくないという意味で言ったつもりだったのだがな」
「リーダー、これからどうするの?さっきここに来たフォース、あいつ囲まれてたのにすぐ私たちの存在に気づいてたわ」
「ヘルメット被ってても分かった。あいつきっと私たちの能力を理解したと思う」
覆面を被った二人の女性がカプセル容器を捲り上げて会話に参加した。ここだけの話だが、この容器は先ほどまでブリッジと繋がっていた施設キャリアを構成していたプラスチックとゴムをコントロールするのに集中する為に用意された物である。
「そうです。それに彼女たちの協力もあって低予算で築けた施設キャリアがなくなったのですよ。幸いサンプルも培養器も揃っているのでまだ増やすことはできますが構成員が減ってしまった以上、計画は遅れるかと」
「そこは我慢だ。BLLETSを憎んでいる悪党はまだまだいる。奴らと戦って逃げ延びたのは間違いなく俺達が初めてだろう、それは紛れもなく事実であり良き宣伝となる。裏社会の連中にそのことを伝えれば必ず支援してくれる者が現れ、参加するだろう。今回被害者を出させようと画策し阻まれたが、敵の味方にエスペランサ以外の種族がいるのだという確認ができたのだ。次はああいった援軍が来ても奴らにとって無駄となるよう倍以上の効果的な作戦・罠を用意すれば良い。駆け引きに勝とうが負けようが終わりというワケではない、生き残り続ければ種を撒くことはできる。そしてそれは前の戦争の黒幕にはできなかった“摂理の覆し”へと繋がるのだ」
数時間後―。
「本当に迎えに行かなくて良いのか?」
『ああ、あたし磁石は持ってるからここの場所から行く方角さえ言ってくれればあとは自分の足でみんなと合流できるからよ。教えてくれ』
「よし分かった、番長。こっちのゴブリンも丁度今一掃し終わったところだ。これから施設をアルベールヴィルのネグレス山上空へ移動させて俺達を襲った構成員を外へ放り出してからそこで破壊する。お前がいるのはキュリアスが感じたところヴァイスホルン山だそうだから向かう方角は南西だ」
『Yes,sir!』
必要なことを奈々に教えて無線を切ると、俺はゴブリンの血の海を歩くメンバーを確認した。昔馴染みのアディとクロウも加わったことで、賞金稼ぎ時代に返り討ちにして作ったオークの血の海を歩いた時の光景と重なっていた。クロウは急に歩みを止め、剣先を下に向けて一気に下ろした。
「・・・・・・・ギギ・・・・・グギャッ!」
まだ息があった一匹に止めを刺したらしい。ゴブリンが完全に死んだのを確認すると彼女は剣を鞘もない腰に収めるような仕草で消した。そして、体を覆っていた黒いオーラも消え、肌も普通の人間の女の子のものへと変わった。
「ふぅ・・・・・、みんな久しぶり」
正常になった彼女を見て、巴とペティも久しぶりと駆け寄っていく。
今更で読者の何人かは気づいてるかもしれないが、彼女は着ている忍び装束の通りくノ一である。それも風魔の里出身の。
翼=ヒナ・足=好華・爪=カカ(あだ名):香月和子、この3人がチームを組んで初めて"“八咫烏”の名がその昔ついたのだ。俺とアディ、ペティ、巴の4人と出会う前に。彼女とは好華と同じくその頃からの知り合いだ。現在はアディのお目付け役という形で彼と一緒に行動している。
「ところでフィートとウィングは?」
「あ~、えっと・・・・・二人共昔のお前と同じ状態のまま留守番してる・・・」
「「???」」
二人共ピンと来ていないようだ。当たり前だ、来なくて良い。実際エロアニメDVD見て興奮して不参加になったなんて下らない事情、この二人にはあまりしたくないからな。
ここで説明しよう!
戦闘中カカの体を覆っていた黒い肌とオーラは、彼女のギアの能力で出す剣:を握ることで発現していたのだ。華奢な少女の体では絶対に出ない無類のパワーに鋼鉄以上の強度を誇る装甲も形成できるが、代わりにコミュニケーションが著しく低下するというリスクがある。ちなみに俺が“同じ状態”と言ったのは、カカが昔自身が持つ剣のコントロールが上手くできておらず暴走しやすかったことを指している。
「それはともかくアルベールヴィルに着いたら地上に降ろしてくれ。そこで私とクロウはすぐにも発ちたい」
「あんたらもう行くの?」
ちょっと名残惜しく感じながら聞くペティ。
「もう少しお前たちと積もる話をしたい気持ちもあるが、氷河にいた観光客たちの騒ぎでマスコミが嗅ぎつけてくるだろう。到着した頃には撮影ドローンがすでにウヨウヨしているはず。メディアへの露出は避けるようにと決めているからな、私は。まあそういう提案をしてくれたのは彼だがな」
そう言いながら俺をチラ見するアディ。
そしてアルベールヴィルに着く頃に、キャプテンたちが氷河での決壊阻止完了を終えて合流してきた。ちょっとの間だけだったが初対面のメンバーにアディとカカの紹介をしてお互いにご苦労様ですと挨拶を交わした。直後には二人に俺が創造したパラシュートを渡して見送ることとなった。最後に俺はあることを彼に聞いてみた。
「そういやアディ。“ラーガー”は何巡目になった?」
アディは険しい表情で振り向いて答えた。
「・・・・・17に、なるな」
そんなアディをカカは彼の手を引いて一緒に地上へと降下していった。
8月19日から一週間後の杉田宅にて。
『全国の皆さん、こんばんは!夕方5時48分、ザット!の時間です。もうすぐ8月の夏も終わりに近づいています。しかし大園さん、イギリスのフィア王女のあのブローチについての話題が中々止まないもんですね~』
『そうですね~、先週のランドン首相率いるイギリス政府とバルテ大統領率いるフランス政府の協力の下で異種族が働く店『満足の園』2号店の設置を表明した際に来ていたドレスに付いていたブローチ。誕生日プレゼントだと本人は言っていましたが、贈り主は間違いなくあの“サムライキッド”でしょうね』
『最近ではフィア王女のブローチを真似て作られたブローチを身に付ける女性が増えているとのことだそうです。本日も各地の祭りなどの行事で浴衣にブローチを付ける一般人がちらほらとしているようです』
俺にとっては身近なことを話題にしているアナウンサーを部屋のホログラム映像で視聴しながら俺は一言呟いた。
「・・・留守番にされた腹いせがこれって厳しいなおい」
8月18日深夜、エロアニメDVDの影響によりバイオハザードが起こり、ロザリアどころかまたいつかみたくたくさんの相手をする羽目になったギラの宿泊部屋にて。
「・・・・・・・・・酷い絵面だな」
ベッドに寝転がり周りには“御満足な気分”でスヤスヤ眠る元迷える子羊たち=ロザリアたちがいる。夏とはいえ風邪を引いては大変、全員に一応服を着せて毛布もかけてある。
「大昔にはもっと酷い絵面があったわ、地獄絵図が」
まだ完全に寝ていなかったエリが俺の呟きに反応して起き上がり、そう言った。
「いや戦争や災害、疫病とこれを比べるのはお門違いだろ」
「私は21世紀末のことを言ってるんだけど?」
「ああそう・・・・・」
どっちにしろ俺がこの事態に肯定的でないのは変わらない。
「あのねギラ。正式な彼女ができてしっかりしようと思うのは分かるけど・・・」
「こんなのはもう“しっかりしようとしてる”とは言えないな。どっちかというと今回だけは俺が犯されたような感じだけどよ、実央に何て言えば良いのやら・・・」
元々は実央が始めろと言ったこととはいえ複数人相手をしてしまっては誠実さも甲斐性もない。頭を抱える俺を宥めるようにエリは話しかけてくる。
「その正式な彼女からロザリアと一夜を共にしてあげてって言われたんでしょ?あの子も何だかんだ言って私たちとの考えを共有してくれてるんだから。まあ今日のことに関してはジャーマンスープレックスかけるくらい多少は怒るだろうけど」
「・・・おい、まさかお前バイオハザードのフリしてたんじゃねえの?」
「その・・・便乗しようかと」
「やっぱか!って、怒る気にもなれねぇな。明日大事な作戦もあるし、これもあるからな」
そう言って俺は懐から収納ケースを出した。
「何なのそれ?」
「本当は15日の誕生日に渡そうと思ってたんだが、その日は予定外なことばかり起きててすっかり忘れてたんだ。遅れてごめんな」
エリは渡されたケースをさっそく開けてみる。中にはラピスラズリをはめ込まれた水晶のブローチが収められていた。
「この前水着選びに六本木行ったろ?そこんとこのジュエリー店で買ったのさ」
「これ・・・・・私が気に入ったのと同じね」
「ほほう!そいつは嬉しい偶然だな。ラピスラズリは運を上げて幸運を引き付ける。そして水晶は・・・・・あ~」
ちょっと度忘れをしてしまい言葉につまってようやく思い出して口に出すと、
「「“全てを清め浄化してより良い方向へ”」」
エリも察して同じ言葉を俺に合わせて言っていた。そしてお互いにっこり笑い合ったのだ。
「今回の誕生日プレゼントはそれってことでよろしくな」
「ありがとう。これで私も大衆の面前で大事な人自慢ができるわね~♪」
人間ってのはみんな相手ができるとちょっとでもいるんですよ~的なアピールをしたがるよな~。俺もそんなこと考えた時期も大昔にあったっけな・・・・・ん?
「ちょっと待て。日本の学校でとかならこの際別に良いと思う。だがまさか公共の場でやる気じゃ・・・・・」
「あら、そこは私の勝手にさせてもらうからね。だってこっちは深入りをしないよう気を遣ってるんだから」
やっぱりそのつもりだったか!やめろおぉ!・・・・・って、深入りだと?
「気遣い?何のことだ?」
「私への誕生日プレゼントを忘れる程大事なことがあったんでしょ?でもそっちは何があったのか言わないどころか無かったことにしてる」
「・・・・・内容は絶対に言えない」
これは誰にも言わないと決めたことだ。
「じゃあ例えるなら?」
せめてどれくらいのことなのかと聞きたがるエリ。
「例えるなら~、ああ・・・倒すべき相手が実は肉親だと知ってしまう若き反逆者、自分が取るに足らない下らんおもちゃであると分かったスペースレンジャー、立派な11歳の誕生日に自分が魔法使いで世界一の魔法魔術学校に入学を許可されたことをお知らせされる生き残った男の子・・・・・」
「あと恋をした相手がまさか生まれた時から決まっていた婚約者であることを知らずに誤解をしちゃう16年間隠され続けてたお姫様とか、彼らのようなショックをあの日に受けたって言いたいんでしょ?」
俺が映画ネタに走り出して止まらなくなるのを懸念したのか無理矢理同じような例えネタをやれやれ感でねじ込んできたエリ。
「そう、そういうこと。だから頼む、『異種族公表』の日にしでかしたリア充宣言みたいなことはやめてくれ」
「う~ん、まあ一応考えておくわ」
エリはそれだけ言い残して自分の宿泊部屋へと出て行った。それを見送ると俺は、明日の作戦についてキャプテンな唯と話し合おうと眠っている彼女に声をかけた。
「唯、明日の作戦で話したいことがあるんだ。起きてくれ」
「ん・・・・・んにゃ?早くも3回戦してくれるの?」
可愛いくも寝ぼけているとはいえバカ過ぎる発言だったので左右の頬を引っ張って目を覚まさせた。
「任務の話だからな、キャプテン~!」
「んぎぎぎぃぃ、痛い痛いやめてやめてぇ!!」
んで現在。
それにしても羨ましいな~デップー。知ってるか?あいつが主役の漫画。マーベルヒーローだから元々裏切りの神やモヤシ野郎、グリーンジャイアント、メカニック社長、腕利き殺し屋カップル、ブラックオーダーのボス(本人じゃないらしいけど)が出てきても妥当とは思ってたけど・・・。
なぁんで“平和の象徴”まで出ちゃうんだよ!ずりぃよぉぉぉぉぉ!!!(感謝の意味)
そりゃまあ!同じヒーロー漫画であり人気絶好調である以上いつかはやるんじゃないかって思ってたけど、サプライズ神コラボだなんてテロだよもうテ・ロ!!そしてますます羨ましいぃよぉぉぉぉぉ!!!(素晴らし過ぎるの意味)
『ひがむのはそこまでにして下さい。でないと集英社に適切な処置を取られてしまいますよ』
「あ~はいはい、分かってるって」
さてと、夏休みだと言うのに8月も相変わらずメチャクチャなことばかりが起きていたわけだ。今は19日のメール・ド・グラース氷河上空での戦いの後、白覆面率いる組織の情報を洗っているところだ。奴らが乗って逃走したブリッジポッドはというと、飛行していた東北東のライン上でアルプス山脈に含まれるピッツラッド山周辺で落下跡があり、そこに落ちたと考えられる。もはやブリッジと呼べる程の原型はとどめておらず、無線機・レーダー探知機などがすべて破壊された状態で現場に散乱していた。だがキャリア本体で大量に設置されていた培養器や俺が確認した二人の女性が入っていたカプセル容器が完全になくなっていた。奴らは間違いなく着陸後も生き延びていて、今後の活動に必要な機材を持ち出したのだ。きっとそこに落ちるのも計算の内だったのだろう、ピッツラッド山は下山する方角次第でスイス・オーストリア・イタリアの3国のいずれかに逃げ延びることができるのだから。もちろんボニータに各国の情報部に通告したが、奴らは見つからなかった。そもそもゴムの覆面のせいで俺とアイラでさえ顔が分からなかった以上、早期逮捕は皆無に等しかった。
『検索完了。ギラ様が3Dモデルでお作りになった頭部像に該当する人物は、フリット・レジック。アメリカの生物学者で2104年日本の大学の教壇に就任。しかし2109年、自宅に拳銃を保管していたことが発覚し有罪となり2年間服役。以後、記録はありません』
「3年前か・・・。熊堂会のファイルをもう一度見直す必要が出てきたな。白覆面の方はどうだ?」
『ギラ様が現地で撮影した画像では残念ながら特定の人物を割り出すことはできませんでした。せいぜい目の色彩・形と肌色からの特徴で検索範囲がモンゴロイドの一部に絞り込めただけです』
モンゴロイドとは、形態人類学における人種分類概念の一つで人類学者:ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハが1775年に論文上で分類した五大人種が基になった用語でもある。幅は淡黄白色から褐色までかなりあり、この中には日本も含む黄色系も入っている。ボニータが言った“モンゴロイドの一部”とはこれを指しているのだ。
「・・・・・小っちゃな証拠、これもまた一歩に過ぎないってこった。奴のネイチャー能力:氷の生成には洗練された技術感は全くなかった。経験も数えるくらいだろう、歪な形の氷がそれを物語っていた。だが能力面上、“いつでもどこでも抜ける歪な刃物を持つ歪な青年”という感じだ。そいつを何て呼ぼうか、いつまでも白覆面と呼ぶのは変な感じだ。ボニータ、候補を上げてみろ」
『エッジ・ディストルテッド』
「いや、クズだ!」
『エニィヤイバ―』
「クズだ!」
『エッジショット』
「良いな!でもカブってるからダメだな。いや待て待て、こうだ!エッジ・ディストルテッド!」
『それさっき自分が言いました』
「どうでもいい。新たな敵:エッジ・ディストー、これで呼ぼうか。ところで映像に映ってるアラーム、これ何だ?」
『インターホンです。玄関先で実央様がお待ちです。どうやらご立腹の様で』
「やっべ!時間5分も過ぎてる!!」
すっかり情報収集にふけってしまい、これから行く近場の夏祭りのことを忘れていた俺だった。
今だけは、エッジ・ディスト―だとかゴブリンとかのことは忘れよう。実央もいるし楽しむ時は楽しまなくっちゃな!
現地に着いたらまずかき氷!これは決めていた。キンキンに冷えたブルーハワイの味がたまらんなく美味いのだ!ちなみに実央はイチゴ味が好きだそうだ。
次のラッキーボールではどっちが多く点を取れるかちょいと勝負をしてみた。お互いにキューの引っ張り具合を調整してボールをピンに入れようとする。結果は俺が2個差で負けた。さすが実央。
次はたこ焼きだ。ここでちょっと説明するが、たこ焼きの創始者である遠藤留吉がいた会津屋では今となってはかけるのが一般的になっているソースは必要とせずたこ焼きの生地自体に味をつけていたそうだ。俺達が購入した店も同じように作っていたのでちょっと感動していた。
射撃で百戦錬磨な俺でも、懐かしの射的には手こずった。そもそも射撃上手=射的上手という理論はないからな、使う道具が根本的に違うし。一回目の成績は5発中1発だけ。ちょっとだけ納得いかないということで二回目の成績では感覚を思い出して4連続命中させた。タバコチョコやサクマドロップス、など昔懐かしの菓子を次々に手に入れていった。ただ、今回はやらずにチョコバナナを食べて待っていた実央の姿を横目に見てムフフフフフ・・・あっ、射的最後の一発外しちゃった。
そして―、
「お客さん・・・・・もう、ダメですよ・・・・・・・・・・・これ以上は・・・!」
「ぐふふふふ、まだだ。まだまだ続きますよ・・・」
「あの、もうやめてあげたら?いくらお金があるからって・・・」
いきなりの急展開!見知らぬ女性を困らせているHighな俺!な~んてのは説明通りであって別にエロイベントではない。祭りに持っていく所持金は一般的にはせいぜい2000~3000円程度。だが実のところ、俺は今日5万もの金を持ち歩いていた。勝手な推測だがこれだけでも祭りイベントで立っている全ての屋台を渡り歩きできるかもしれない。しかしそうではなく、俺が持つ理由はある屋台でやりたいことがあったのだ。祭りならば大体の確率で存在する屋台を。
〈“千本釣り”やぁ!!〉
千本釣りとは、名前の通り本当に千本あるわけではないがたくさんの紐から一本を引き、その紐につながれた商品がもらえるというくじ引き類の屋台の一つを指す名称・業界用語である。
今まさに、それを実践しているところなのだ。店で用意されている紐は全部で32本、1回100円とされている。ちょうど引き当てようという客が俺達以外にいなかったので連続引きを繰り返していたのだ。しかし俺が引っ張った紐の数はとうに30回を越えている。
「さて、残りは2本ですが。続けますか~、続けますか~、続・け・ま・す・カァ~?」
ドSスイッチが入った俺にドン引きする実央。そしてちょっと調子に乗ったのが決め手だったか、
「すいません、勘弁してください!どうせ引き当てる子なんていないだろうと当たり紐なしで高を括ってました!!店で最高の品を差し上げますので、どうか他の客には言わないで下さい!!」
店の女性店主が自白した。
「大声で言ってちゃその懇願本末転倒なんじゃ・・・・・まあ別に言いふらすつもりは毛頭なかったから良いですけどね。それだったら女性に見合う最高の品を紹介してもらえますか?」
「でしたら―」
店主がまず紹介したのがなんと、BLLETSのヒーロー:ゼロの巫女装束を再現したコスプレ衣装だった。もちろん有り得ないのだが、本人だと知りながら薦めてるのではないかと考えてしまう程ドンピシャだった。だが着せるのもまた一興かなと本人に確認を取ってみるが、首を横にブンブンされた。仕方ないので他には?と聞くと、今度は立ち型サイズのうさぎのぬいぐるみを出してきた。これには実央も了承し、譲り受けることにした。
「ぬいぐるみをプレゼントされるのって何年ぶりかしら」
「そのサイズだと、まるで子供を抱えてるみたいで微笑ましいな・・・・・おっ」
夏祭りとなるとやっぱ定番の太鼓が設置される櫓!それを囲うはスピーカーを通して奏でられる曲に合わせた盆踊りをする来客たち。ちょうど知ってる曲が流れているならばと思ったら“井矢見な音頭”だった。よし絶対踊ろう!
「よし、そのうさちゃんにリア充がどれほど憎たらしいものかを踊りながら教え込もうじゃないか」
「・・・・・あなた将来、自分の子供にまで教え込む気じゃないでしょうね?まあ踊るけど・・・」
そら皆さんもご一緒に~、パパンがシェー!パパンがシェー!
さて、こういったイベントに俺と実央以外の知り合いが来ないはずもなく、実は杉田ガールズは俺達が食べ歩きしている先でちらほらと陰ながら見ていたのだ。ついでに剛、剣、五十嵐も。そして盆踊りを始めた俺達を見つける彼らも、
「おい、リア充がリア充全否定な歌詞の音頭を踊ってるぞ」と金魚すくいで金魚を貰ったばかりの剛。
「いつまで経ってもギラにとってはリア充そのものが嫌いってことなんだろうな」とイカ焼きを咥える剣。
「クロスレヴェリの魔王みたいなことやってるね」と水風船をポンポンしながらあっけらかんと言うヒナ。
「ふふっ、あの子ったら。ぬいぐるみと一緒に踊ってるわね」
わた飴を食べるエリの微笑ましい一言でみんなもうんうんと和む。
「まあ、曲に乗って踊るのは楽しいもんな。あたしたちも踊ろうぜ!!」
「「「「おう!!!」」」」
最後のりんご飴の一欠片をガリガリ食べた上での奈々の一声で全員盆踊りに参加していった。
8月15日の午後。
爺様が例の建物の真下に埋められていた物が爆発で浮き彫りになった。俺はそれらをアンナが管理する記録保管所の一室を借りて調べていた。まずはフィルム缶が二個あった。今の時代にまでフィルムを使う映写機はもはやほとんど存在しない。あるとすれば世界中の博物館か物好きなコレクターが所有するかだろう。異種族たちの記録保管所にもそんな都合よくあるワケがない。だが爺様はきっと俺の好みを知っていたように創造能力があることも知っていたのだろう、映写機を簡単に出せると。缶に番号が割り振られていたので①番を流しながら、他の書物も見ることにした。
『初めまして、ミス:アンナ・サターシャ殿。そしていずれ地下宮殿に現れているであろうブルーノ殿、ニカノル殿、ステファノ殿。私はアキラ・ナガオカと申す者でございます。・・・いや宮殿、都市の方が良いかな?・・・・・・・私はアキラ・ナガオカと申す者、この度ある者に大事なメッセージを送りたいという願いから、映像を撮るに至るりっ・・・・・噛んだ・・・』
撮っていたのはどうやらアンナへ向けてのメッセージの練習だった。何でこんなのが?って気にもなったが一応最後まで流しておくことにした。
置物も並べてはみたが、次の九つの動物を象った像であることだけが分かった。
鹿・ラクダ・ウサギ・ヘビ・サメ・魚・鷲・トラ・牛。
だが分からない、今の段階ではこれらが何を意味するのかが分からない。
『以上が現在我々が知っている将来の出来事です・・・しまった“将来”は合ってないし・・・・・足の感覚がなくなってきたな・・・』
置物たちとにらめっこしても分からないものは分からない。音声もフィルムの回転音しか聞こえないし、疲れた。
一杯の冷えた麦茶を飲んで休みを取ると、次の瞬間だった。
『キョウゴ』
少しの間の沈黙を破るかのように発せられたそのフィルム音声に俺は反応した。スクリーンを見ると爺様は改まって胡坐をかいて座りカメラに向き直っていた。
〈何年ぶりだろうな、誰かに呼び捨てで呼ばれるのは・・・・・〉
爺様の死後117年越えのメッセージは続く。
『この映像を142年後に見ているということは、お前はもう杉田義羅として生きているのだろうな。お前にこれからのことを伝えるには幼過ぎるし信じられないだろうから、エスペランサブリテンのミス・サターシャ殿へのメッセージ同様、“時代に適応したお前”に伝わるようにフィルムで残すことにした。このフィルムと一緒に埋められているであろう書物や置物も含めてそれらは地球の為だけではない、お前が友人たちの為にと画策している『異世界遠征』の助けとなるはずだ。わしはこれらを盟友:ヨミユキと共に予知探究していた先で見つけたのだ。まずはこのフィルムを見ている8月15日以降のすぐに起こる出来事を話そう―』
それから11日後の今。
みんなで踊りに躍ったその後、あとはラムネでも飲みながら解散しようと思ってたところ、で放っておけない奴が騒いでいた。
「あのミセス外国人さん、これ以上飲まれては困ります!他のお客さんのご迷惑になるので!」
「誰が“ミセス”だい!この体見てちゃ分からないだろうけど、あたいはまだ独身だよ!しかも生娘だし・・・・・・・あ~悲しいぃぃぃぃぃ、もう一杯!!」
「だからもうダメですってば!っていうか服!今にも零れそうですからやめて下さい!!」
ラスティだった。星条旗柄の浴衣とは。さすがはアメリカ人、なんとまあ派手な浴衣を着こなせるものだ。しかも店員の指摘通りあちこちが着崩れして無自覚にもアブない視線を集めていた。
「あれって・・・泣き上戸ってことなのかしら?」
「・・・前世の大学のサークルで飲み会やった時に酒で酔い潰れたり陽気になる先輩後輩は結構見たことあるし少し前にも見たんだが、泣き上戸な奴は初めてだな」
しかし、このままでは破廉恥罪で御用達になってしまう。今や彼女もBLLETSのメンバーだ。そんな奴が警察の世話になってしまうなんてとんでもない。文春砲待ったなしだ。
「おいラスティ、店の迷惑になるな。さあ俺達もちょうど帰るし、一緒に帰るぞ~」
「あらギラ。今夜こそあたいと夜の町に繰り出してくれるってのかい~?それとも今夜もまたお預けだったらうわあぁぁぁぁん!!」
酔い+哀という組み合わせは正直どう対処すれば良いのか分からん。まあ適当に引っ張って行くか。
「すいません、うちの知り合いがご迷惑をおかけしまして~」
泣き上戸だろうが笑い上戸だろうがどちらにしても他人に迷惑をかける酔っ払いは然るべき処置をするべきであると俺は考える。よってラスティの足をズルズルと引っ張ることにした。せいぜい大人の女性パンツを他人に見られて恥ずかしがるがいい。しかしここで店を立ち去ろうとする俺だったが、介入する前から酔っ払った彼女を見ていた取り巻きが突然目玉に血管を浮かべる程スンゴく凝視していた。何だ?ここにいる連中にとって生パンツがそんなにスンゴイ代物なのか?あれ、実央も驚いてる?それともラスティが穿くパンツがとんでもなくエロエロだとかか?
「っは!?ちょっとギラ、こいつは・・・!」と酔いで少し遅れて気づき恥ずかしがるラスティ。
周囲がざわつく程らしいのでどんなパンツなのかと俺も振り向いてみた。
〈お~浴衣めくれてるねぇ~ほんで・・・・・あり?〉
俺や取り巻きたちの視線の先には、今では浴衣の下にあって当然のパンツが“なかった”のだ。
「な、何で穿いてねぇんだ!!?」
「いやあの、浴衣って本来下着を穿かない物だからその仕来りに従おうと・・・・・」
たしかにそりゃまあ本当ですけども!アカン、これは度が過ぎてる!俺が破廉恥罪になってまう・・・はっ!!数メートル先に警棒を持った巡回警備員二人が!逃げろぉっ!!
家路はラスティを担いだ俺と実央だけになった。金魚を急いで持ち帰った剛を除いた他のみんなはもうちょっとだけ祭りを楽しむとのこと。
「サディズムはもうすっかり慣れたけど、うっかりしてるとシャレにならなくなるわよ。やっぱり先人は敬うべきよ」
サディズム慣れちゃいけません。でもやっちゃってる俺も言えない。
「俺にとっちゃ地球人はほとんど後人なんだけどな。だがお前の言う通りサディズムはしばらく鳴りを潜めるべきだな」
「先人って言えば気になってたんだけど、この前のアディっていう人」
・・・・・ここ一週間誰かが聞いてくるんじゃないかなーとは思っていたが、頭の良い実央が先に聞いてくるか―。
「ギラ君はともかく巴さんたちとの連携が特に嚙み合ってた感じからすると賞金稼ぎ時代からの付き合いなのは間違いないよね。そして戦い慣れしてるところから見てペティさんやロザリアさんと同じ境遇かトラさんや千恵さんみたいな生まれ変わり人間の二つの可能性が考えられるし。もし後者だとしたら使っていた装備から連想して、彼ってまさか・・・・・」
「それ以上の詮索はやめてくれよ~、ちょいとあいつの正体は世間的にも厄介だしな」
そう。それもあってアディにはひっそりと生きることを薦めたのだ。
「・・・・・わかったわ。それでラスティさんはどうするの?やっぱり新拠点に帰す?」
それは俺も考えていた。もう俺の家路についてるしラスティの新拠点である教会はここから反対方向だ。今更回れ右は面倒だ。
「どうせウチには余裕があるんだ。今夜は泊まらせるさ」
「・・・・・そう。ムスっ」
ん?なんか不満あり気だな。
「いや、ね?そりゃあもういつ相手してもおかしくないけど、そろそろっていうか~ご無沙汰だし・・・・・ごにょごにょ」
・・・・・嘘だろ。前はここまでヤっちゃお♥みたいな思考全くしない真面目っ子だったのに。あ、歪ませたの俺か。それに俺がこのままラスティを送り狼するのではと妬いているのだろう。その点で言えばかわゆいの~。だからというワケでもないが、ここは俺がフォローしてやるとするか。
「実央。この前のお返しに彼氏である俺からのお願いだ。今の正直な気持ちを述べよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラスティさんとあなたとで3Pしたい」
「随分と汚れた正直さだな!?」
世界中にいるゼロ教徒が泣くぞ。
再び15日のフィルム視聴時。
『―このようにして敵対組織はお前が率いるチームに汚点を付けようとしている。対策はきっちりしておくようにな。8月中に起きることは以上であり、このフィルムで喋ることもここまでだ。もう一つのフィルム缶には9月以降に起きることを記録してある。その中にわしらがやり残してしまった仕事が関係している』
フィルムはそこで真っ白になった。
一体爺様はさっき言っていた盟友のヨミユキとどこまで未来を予知してんだ?だが爺様の言う通り運動エネルギー爆撃を模倣した作戦が実行されるとしたらその前になんとかする方法は考えなくちゃな。このことは19日のその時になるまでは誰にも言わない方が良いな。じゃなきゃ予知が変わる可能性がある。よし、それはそれとして次のフィルムも見よう。爺様の言う“やり残してしまった仕事”ってのが気になるな。俺がそう考えてもう一つのフィルム缶に手を伸ばしたその時、スクリーンにまた爺様が座っている映像が映ったのだった。
『次のフィルムに行く前に一つ言っておこう。“杉田義羅”という男は、9月初旬から人知れず失踪する』
「What!!?」
そしてまた現在。
このメッセージについての理由はもう一つのフィルムを見たことで後に納得することにはなるが、これまた誰にも言わないようにしておこう。
と、当時はそう決めたが実央にだけは今のうちに伝えておくことにした。
「あそうそう。俺、9月初旬から人知れず失踪するらしい」
軽い感じで驚かないように努めたが、
「What!!?」
・・・・・長らく海外にいた弊害かもしくは俺の影響なのか、とにかく彼女は結局驚いてしまった。
どうも!毎回読んで下さっている読者の皆さん、ありがとうございます!
一区切りの一話の執筆にほぼ一か月かかってすいませんでした。正直のところ5月は結構タラタラしてました。駄菓子のタイトルを借りるとしたら、「タラタラしてんじゃね~よ!(自分が)」です、はい。
『バッド・バッチ』が配信されたことで夢中になってしまったもので、挙句に某動画での字幕にフォースを注いじゃいました(笑)。
それはともかく、今後の予定でお知らせしたいことがあります!
『暁のブリテン』同様『BULLETS』の世界線と同じ作品、『第二次大坂夏の陣(仮題)』を執筆することを決定しました!
内容は時系列的に47発目と48発目の間に起きた出来事を描くストーリー、つまり47.5発目ということになります。1発2発といくのが決まっているのに.5発目と考えるのはおかしいですがとにかく47.5発目です。
本編執筆一緒に進めるので執筆状況にもよりますが、7月上旬か下旬辺りに投稿します。
こちらの作品も気になりましたら是非読んでみて下さい!
それでは!まだまだコロナにも負けずに執筆を続けていきます!弾丸の如く!




