53発目 サンドイッチマンの効果は今だてき面である。
とある施設内の部屋にて。
屋内だというのに黒いサングラスレンズが目立つ白い覆面を付ける男が座るデスクに10枚以上の写真を置くのは、眼鏡をかけた20代後半の白衣を着た男だった。
「こちらが、先日のハッキングで入手したBLLETSメンバーの画像写真です。さっそく顔認識で何者か照合しますか?」
「いや、それはやめておいた方がいい。連中にはパソコンを乗っ取って逆に破壊させるほどのハッカーがいるらしい。ここから下手に調べようとすれば居場所が即座にバレてしまう。それにしても興味深い。数週間前に一人一人のヒーロー共が紹介されていたが、オーク戦争の頃から活躍と聞いたからてっきり年を重ねたサーカス集団かと思ったら、若いどころか二十歳にも満たない未成年ばかりとはな」
「“皆様方”と、変わらないですがね」
「・・・・・そうだな」
白衣の男に皮肉混じりな言葉をかけられて引っかかるが気にせずまた写真鑑賞に戻った。
「それでどうします?これらの画像をコピーして、暗殺者集団に殺しを依頼しますか?」
「いや、アシュボーンの戦いを始めたくさんの犯罪グループが奴らに挑んで敗北しているが、どれも確実的過ぎる。連中の誰かは知らないがハッカーだけではない、間違いなく先読みに長けているメンバーがいる」
「というと?」
「下手に動くのも間接的に手を回すのも良くない。だが我々とて相手のことを何も知らないワケでもない。ここは出迎えの準備をするしかないだろうな。みんなに“ブリッジ”へ集まるよう伝えてくれ」
「・・・・・かしこまりました」
白衣の男が出て行くのを確認すると、白覆面の男はあるBLLETSメンバー一人の写真を手に取って呟いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり“君”なら、そういう仲間と一緒に行動するんだろうな」
8月18日、エスペランサ・ブリテンの評議会ドームにて。
今日もまた、ここで杉田義四先生による会議が行われていた。
「―であるからして、ここ最近で犯罪グループの動きが世界中のあちこちで活発化していたのは確かだ。俺達が赴いたエリアの犯罪グループは大体が検挙されて、その影響で他の犯罪グループも今は鳴りを潜めている。だが、動きが鎮まる順が一番遅かったところがフランスだった。数日前、例の旅客機ハイジャックの件で引き起こしたマルタン率いる『トロイズ・リス』が・・・・・つーかお前ら聞いてるか~?点呼取るぞ~、まずは実央!」
「はい」
「唯!」
「はい!」
「奈々!」
「はいよ~」
「ロザリア!」
「はい」
「クレア!」
「はい」
「広子!」
「はい♥」
「アイラ!」
「はい!」
「シオリ!」
「はい!」
「トラ!」
「おう」
「千恵!」
「はい」
「濃さん!」
「はい」
「・・・・・点呼する・・・必要・・・・・ある・・・のか?」
途中剛が息絶え絶えでもなんとかツッコんできたが、俺はそれを無視して続けた。
「まだまだ行くぞぉっ!!はい、剣!」
「はい」
「五十嵐!」
「はい!」
「エーブ!」
「・・・・・はい」
「リーク!」
「・・・・・・・」
「デニー!」
「・・・・・・・」
「エン!」
「はい」
「ダブルメアリー!」
「「はい・・・って略すな!!」」
「まだまだぁ!はい、菊・・・」
「いやもういいから!!何なのこの余白の多さは!!」
「近年稀に見る行数稼ぎ!!」
「威張って言えることじゃないでしょ!!」
実央のストップで点呼ボケが終わると、俺は改めて会議場を見渡してメンバーの様子を確認した。名前を呼ばれても返事をしなかった、もしくは名前を呼ばれなかった者は全員鼻血を流したまま蹲ってて出血多量死寸前であった。前回のトラとロザリアのように。
「おいおいてめーら~、世間でヒーローともてはやされてるのに同人アニメDVD一本如きで骨抜きとは情けねーよ。特に生まれ変わり人間君たち~、お前ら人生の先輩だろうが。そんなんじゃいつの日か若いモンになめられっぞ」
俺が嘆きの言葉を投げていると、血の海から這い上がってきた一人の元ブリテン国王の口から弁解の言葉が出てきた。
「・・・・・まあ聞いてくれ、エロ大先生。昨日の言い出しっぺである俺が言うのもなんだが・・・」
「誰がエロ大先生だこら」
「トラやルキーラの言う通り・・・・・お前が作ったあのアニメDVDは危険だ。売り出そうものなら確実に社会現象になってしまう・・・・・ハァ」
「前回は言わなかったけどよそれ、社会現象になる前に著作権に引っかかるからな?」
「・・・・・とにかく、あんなとんでもないモノを見て平常心を保てと言うのがそもそも無理な話ですよ。そして・・・・・とりあえず自分とリークで早退する許可を貰ってもいいですか?日本に戻って愛乃たちとの関係を深めたい・・・デスっ!」
「俺は剛馬たちとの関係を深めたい・・・デスっ!」
「怠惰の魔女因子取り込むなよ。早退は認めてもいいが、お前ら二人の行先は日本じゃなくエルサレムだ。そこで懺悔でもやってろ、邪心王共」
すると血の海から這い上がって喋る者が一人、
「・・・エロ・・・大先生って・・・・・何一つ・・・間違ってない・・・だろ・・・」
「剛君。ツッコミ遅いよ」と、いつもの機能を果たしていない剛を嗜める実央。
次に、血の海からようやく顔を出して息継ぎをするかの如く、菊也が疑問を唱えた。
「それにしても・・・変ですね。僕の記憶が正しければ、実央さん以外のみんなは昨日先生が作ったエ・・・ごほんっ同人アニメDVDを注文してましたよね?なのにこうも全然平気な人がいるということは、もしかしてDVDを昨日の内に見なかったのか、またはDVDを見て動じなかったのか気になるところです。ちなみに僕は『●●の使い魔』のティ●●ルートで撃沈です」
「師匠、わざわざ撃沈内容の報告しなくていいから」と実央。
「菊也の指摘ももっともだ。なんでこうもメンバー一人一人の精神状態が整ってたり悪くなってたりするのか。そいつはみんながリビドーの発散に努めたか否かであるかによるからだ。例えばトラの場合は例によって千恵と濃さんの三人で・・・」
「「あ、それ以上言わなくていいですからー」」
一例の続きを言わせまいと当の二人が止めに入ってきた。
「このように相手がいる奴は速攻でヤッてるから今日の時点でスッキリしてるワケだ。まあそういう発散方法に辿り着かなかった脱落者もいたようだが」
「・・・・・ちょっと待って、先生。その説明でいくと、ロザリアさん以外にもスッキリしてる子がいるってどういうこと?」
実央は俺の話を聞いてて若干察しつつも念のために質問をしてきた。
「そりゃあ・・・・・そのつまり・・・ソレってことだよ・・・」
俺もさすがに自分のこととなるとはっきり言いづらく、言葉を濁しながら本質を彼女に伝えた。全てを察した実央は、衝撃の顔をしながらロザリアを含めた平気な女子たちを睨んだ。睨まれた奈々たちは一瞬戸惑いながらも揃ってテヘペロをした。すると実央は席を立ち、まるでロボットが歩くような動きでかつ動画の2倍速のように速くスタスタと歩いて、壇上にいる俺に近づいてきた。そして背後から手を回し、
「なぁんでっヤッちゃうのかなぁっ!!?」
ズガァンッ!!
「あほろげっ!!」
どこの馬の骨とも知らん奴から教え込まれたのか、彼女にジャーマンスープレックスをかけられた。結構効くね~これ。
「・・・・・このシチュエーション、ある意味でNTRモンだよな。濡れちゃったか?一応こういう展開も予想してカメラ回してるけど映像化しちゃう?」
「しないでよ!っていうか性的興奮もしないし!そしてカメラ止めて!ボニータ!」
『・・・了解しました』
「この際アイラちゃん・シオリちゃんが混ざってるのはもう当然にするけど!」
「しちゃうんだ・・・」と一言添える俺。
「つまりこういうこと!?唯さんたちのリビドー処理をあなたは一夜にして全部請け負ったと!?」
「営業はしてませ~ん。むしろ俺の方は被害者みたいなもんだったんだから。昨夜俺はなぁ、メンバー全員の注文通りにエロアニメDVDを創造しまくって疲れちゃっててよぉ」
「あ、DVDの本質認めちゃったよ」とツッコミを添える実央だが、構わず俺は全身逆さま状態のまま続ける。
「お前に頼まれたロザリアとの約束の前に借りてる部屋のベッドで寝転んだのによぉ~、気持ちよく寝始めた頃にドアノブをガリガリ引っ搔く音が聞こえてきて、“何だ?『カゲ』共が襲撃に来たか?”って早速メイス構えて感知能力で確認するとアッと驚く為五郎~、廊下にはDVDによって発情しちゃった迷える広子たちが欲情捌口を求めて狂い悶えてたんだよ」
「子羊っていうかゾンビよね。まさかバイオハザードのサバイバルミッションに失敗したとでも言うの?」
「実はそんな感じだ。窓からすたこらサッサと逃げようとも考えたんだけど、ゾンビ集団の中にロザリアの個体もいたもんで放っておけなかったんだよ」
「“個体”って呼び方やめて下さ~い」と今度はロザリアがツッコミを添えるが、これまた無視。
「んで痺れを切らしたのか規格外のゾンビ(奈々)がドアを壊して強行突破の上、羽交い絞めで拘束してきたからもう俺逃げ場失くしちゃったんだよ。仕方ないからなぁなぁで崖下に落っこちてメェ~メェ~鳴いて助けを乞う子羊たちを自前のフックを使って全員を救い出したんだよ」
「そのフック、絶対モザイクかかるやつでしょ。あと結果みんながWin♪Win♪な結末に見えて、お願いしてた私はともかくまだその辺の血の海から救出されてない彼女たちのWinが入ってないと思うけど?」
ヒナと好華が実央の指摘に反応するように、
「「・・・実央ちゃんの・・・・・言う通り。だから・・・義四先生、この後保健・・・室での保健体育の授業を・・・・・希望しま・・・す」」
血の海からシンクロナイズドスイミングで交互に顔を出すかの如く懇願してくるが、
「ボケるあたり余裕だな。保健室はここにあるらしいけど今日はお断りする。ちなみにそんな授業予定もないから諦めろ」
二人の要望を俺は却下した。
「「そ・・・ん・・な・・・」」
二人も再び溺れた。
「・・・エ・・・ロ・・・アニ・・・メ、はっき・・・り言う・・・な・・・」
「てめーは今回ツッコミ出遅れ過ぎなんだよ!もういいからさっさとアンナと“ご休憩”してこいや!!」
何かと遅れている剛に大人気なくキレてしまう俺。だがボケとツッコミは揃ってないと成立しないという考えの下で出した発言なのだ。剛のように成立していない指摘はツッコミとは言えない!断じて!
「先公~未来夫婦漫才はいいっスから、さっさと本題に戻ってくれよ~。てかさっきから足が上向きに生えてる教壇が喋ってるようにしか見えねえし」
「は~いトラ君授業妨害ってことで議場の外に出てなさ~い。教師の心を傷つけた~」
「無理矢理な教育指導だなおい。大体これから何かを提案しようって時に俺を追い出すのか?」
「大丈夫。ボニータがまたカメラ回してリモート映像を流せば済む話だ」
「新手の“廊下立たせ”かよ!?」
本当にトラを議場から追い出させた後、俺は再び壇上に戻った。
「話を戻すが、この『トロイズ・リス』がフランスを拠点にしているギャングの一団であることはもう周知のこと。だがそのギャングたちが真っ先に行動を起こしたのは秘密裏に結託してた人間・グループ・組織がフランス国内で待機してたからだ。おそらく巨門のこじ開けに成功した暁に例の“エヴルーの霊魂”をそいつらに一斉に提供しますよ~とか上手いこと乗せたんだろうな、ゴブリンを売り捌こうとしてる連中が」
「“混乱は一国に限らず二国同時に”を狙ってたってワケか」と剣。
「ってことは、今回その売り捌こうしてる連中を一網打尽にするのが仕事か?」と奈々。
「出来ればそうしたいが、今回それが難しい」
次にボニータが俺に続いて説明をし始めた。
『オーク戦争に参戦した方なら分かると思いますが、オークを製造していた施設は既に全て取り壊されています。場所はその後も国連の監視下にあって、まずそれらが再び利用されることは不可能になっています。それ以外の製造場所に最適な場所を探してますが、いい結果は出ませんでした』
「いつもみたいに感知能力を使っての捜索はどうなんですか?」と五十嵐。
「もちろんとっくに実行済みだ。だが俺もアイラもボニータ同様、特に怪しい場所も見つけられず状況は行き詰っている。だから直接現地に行って細やかな現状把握をしようと思う。なので今から俺達はフランスへ行くことになる、各自“動ける者”は装備のチェックをするように。10分後に大艇で出発だ、以上」
壇上を下りようとすると、
「あの~、じゃあここで蹲ってるメンバーは?」
血の海に溺れてるメンバーを気にかけるエリが聞く。
「この様子を見ろよ、今日中に復活できると思うか?無理に決まってる。そもそも毎回全員参加とはいかないからな。それとエリ、お前は今回不参加で頼む。エンたちと一緒に剛たちのお守りをやるってことで国に残っててくれ」
「むぅ、昨日の“アレ”ってまさかこの為?」
「そんなつもりはない。ただ今回は貴国が大行事をやっている中での作戦だ。国際問題は起きてほしくねぇし、頼むよ姫殿下さん」
「はぁ・・・・・Sir,yes,sir.」
姫殿下呼びに若干呆れつつ了解してくれたエリだった。
そして大艇でブリテン島、ドーバー海峡、カレー上空を飛び越えること約50分後。
「どうしても行かなくちゃダメなの?正直、気まずくて嫌なんだけど・・・・・」
「ちゃんと挨拶しろよ?前の時は最後にお世話になったんだからよ」
「うぅ・・・」
操縦席のすぐ後ろに来て苦虫を食ったような顔をして目的地に対して忌避感をあらわにする巴に催促する俺は、二式大艇をパリの大統領官邸前の市立公園に着陸させた。
エリゼ宮殿。
元はフランスの貴族エヴルー伯爵のルイ・アンリ・ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュのために建てられた宮殿で、239年前から現在まではフランスの大統領官邸として使用されている。
宮殿に続く芝生エリアではフランス共和国親衛隊が花道を作ってくれていた。その先に、3年前の選挙で二度目の大統領に選ばれたアロイス・バルテ氏が待ち、俺達が近づくと両手を広げて声を上げた。
「BLLETSの諸君、フランスへようこそ」
大統領の歓迎の言葉に呼応して、さも当然のように唯・奈々・実央は深々と頭を下げるのに対し、
「ああ、そういうのは良いよ。顔を上げてくれキャプテン、番長。それとゼロ・・・そうだね?君の双子のお姉さんのことは聞いている、お悔やみを申し上げるよ」
「・・・・・恐縮です」と大統領からの追悼を受け入れる実央。
「さて、貴国の状況はいかがですかな?大統領」
「我が国民が他所の地下都市公開のおかげでドーバー海峡の彼方に消えてしまいそうで困っている。厳重警戒中で大変だ!な~んてな、嘘だよ☆」
年相応とは思えないお茶目なジョークを放ちつつ、友人同士である証に俺とハグをした。
「直接会うのは久しぶりだな、バル。でもわざわざ親衛隊で出迎えなくてもよかったんだぞ?」
「「久しぶり!バルテさん!」」
続いて妹たちも彼との再会を喜んだ。
「やあ、アイラちゃんもシオリちゃんも久しぶり。映像を見た通り元気そうで何よりだ。それにしても急にパリへ向かうって聞いたもんだから慌てたよ。少し前に『Garden of satisfaction(満足の園)』2号店の受け入れを了承したばかりだというのに。何かまだ条件が付いてくるのか?」
「ある意味では、“2号店の為の掃除の一環の先走り”とでも言っておこうか」
「掃除をするにしては人数も少ないし君以外男がいないような、いつものトラ君たちはどうし・・・・・っ!」
すると彼は、俺の影に隠れている巴に気づく。彼女も気づかれたタイミングで俯き時々目をチラチラと上げながら前に出て、「・・・・・どうも、大統領閣下」と一礼した。
「やあクイックシグレ。かなり良い傾向に人生を送れているそうだね」
「閣下、その・・・あの頃は本当に・・・」
どもる彼女の肩にバルは手を置いて囁いた。
「過去は過去、今が大事。二人が並んで立っている姿を見れただけで私はもう何も言ったりはしないよ。そして今回は“未来の安全の為”だろ?さ、中へ」
宮殿内の作戦室へと案内された俺達はさっそく情報の照らし合わせを始めた。
「ギラの話を聞いて、さっそく総局(DGSE)に指示して国内で起きた犯罪者たちの動きを調べてみたが、彼の言う通りこっちもこれといった収穫はなかったよ。略奪行為や取引現場を見ても場所・時期もバラバラだ。本当にあの“オーク”に代わる生物兵器を扱う組織がいると?」
「確固たる証拠はまだない、今の段階ではな。だが間違いなく犯罪界でエスペランサ乗っ取りを目論める何かを売り捌こうとする連中が存在している、このフランスのどこかに」
「しかし、情報量がこうも少なくてはどうにも・・・」
バルの悲観的な意見を押しのけるかのようにあるぽっと出の発言で空気が一変した。
「『この世に不確実性のことはない。すべて規則性があり、それを知っているのは神のみ』!」
唯の発言だった。
「そうだよね?ギラ」
あまりにも突然の発言と振りだったので俺でも対応が遅れてしまった。
「そ、そうだな!良い活用だな唯。因みにそれ、誰の言葉か分かるか?」
「アルベール・アインシュタインでしょ?」
「惜しい、正しくはアルベルト・アインシュタインだ。まだまだだな」
「むぅ・・・とにかくっ!相手は自分たちの動きを読まれないようにやってるけど、やっているのは結局のところ私たちと同じ人間。前のウルフルズみたく製造や取引には時間がかかるはずだから不規則に見せている交流も時間をかけてループしていくうちに極最近には規則性が生まれてるはず。ボニータ、聞こえてる?」
『いつでも聞こえてます』
「8月14日以前の過去3か月間で、フランス国内での犯罪者交流確認リストをホロマップ上に映し出してみて」
唯の指示でボニータはプロジェクターでフランスのホロマップを出し、調査されたデータを映してきた。一見フランスのあちこちでめちゃくちゃに発生しているように見える。が、
「今度は時系列順にデータを一つずつ秒単位で繰り返し映し出して。出る度にデータの場所はマークしていくように」
唯が新たに指示すると、その答えは見えてきた。
「・・・・・あ、どれも東から西に向かってるな」
「しかも、扇形よね」
奈々と広子が気づいたようにデータの場所は縦の分では不規則に起きているが横の塩梅だと東から西へを繰り返していたのだった。それも派生元が分かりやすい扇形で。
「この形だと・・・・・えっと、オール・・・リニュ・・・ロレーヌ・・・?」
「オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏な。要するに怪しいのはフランスにおけるアルプス山脈の一部周辺ってワケだ」
「ん~!言いたかったのに~!」
「っはは、直感は鋭くなったがまだまだだな。でもその意気だ」と唯の肩を叩く俺。
「・・・・・じゃあ気を取り直して!アルプス周辺を探すなら北東と南西の二手に分かれた方が効率が良いね。北東チームはギラが、南西チームは私が指揮するってことで」
「あと真夏でも現地は高山ばかりだから-10度の場所が多い。俺が後で防寒具の用意をするから、各自誰一人取り忘れのないように。でないと作戦中に風邪をひくことになる、いいな?よし、かかれ!」
みんなが了解して二式大艇へ戻る中、実央だけは唯との連携に疑念を抱いて聞いてきた。
「さっきの、いつ打ち合わせしたの?」
「・・・・・昨日の事後」
「ソデスカ~」
実央に先に行って待つよう言い残したあと、俺はバルと共に彼の執務室に入った。
「―それで、例のモノは届いてるか?」
「もちろんだ。ちゃんと預かってるよ、ほら」
そう言うとバルはデスクから赤紙で折られた折り鶴を出し、俺に渡してきた。
「君から頼まれた時は簡単に受け入れたが、執務室にフワッと置かれていて正直怖かったぞ。送り主に興味をそそるが、こういう場合日本では“知らぬが仏”と言うのだろ?それにフランスのことを同じ“仏”と表記するらしいしこれぞ!って感じだな、っはは」
「はいはい上手いよ~。だから本当にバルは送り主のことを知らない方がいいからな~」
「そっか。だがその折り鶴、一体何の情報なんだ?」
「コイツは、さっきキャプテンが導き出した行先の“答え合わせ”だよ」
俺はそう言って折り鶴を広げた。中身にはこう書かれていた。
『Neither the thunder light nor the wilderness lion achieved BC218 and AD1800.(“雷光”と“荒野のライオン”、どちらもBC218とAD1800を達成せず。)』
「・・・・・絞り込み、OKだな。じゃあ行ってくるよ」
折り紙をポケットにしまい、大艇に戻ろうとする俺を引き留めるようにバルはあることを聞いてきた。
「ところで、気になったんだが他のメンバーとは一体どういう関係なんだ?さっきの作戦室だけでもどの子もみんな何度も君を見つめていたようだが・・・・・」
「サテ、ナンデデショウネ~」
〈・・・・・答えてやるもんか〉
「何故急に片言?じゃあ最後に一言、渡辺実央君・・・だよな?彼女聞いた通り、泉にそっくりだったな」
昔彼女と会った時のことを思い出して懐かしみを感じながらも笑顔で感想を述べる大統領に、
「・・・・・・・ああ、だろ?」
俺も笑顔で返した。
エイギール・デグレイシャーズの西斜面周辺地点にて。
唯が率いる南西チームがここら一帯を調べている。その構成は、アイラ、実央、クレア、スターリン。
こっちのチームは空中を自在に飛べるメンバーで構成して、いざという時には北東チームの援護に駆けつけられるよう指示してあるのだ。ただ、調査の方はなんともうまくいってないようだ。
一方、俺が率いるその北東チームの構成は、奈々、広子、シオリ、巴、ペティ、ロザリア。
奈々はともかく、潜入作戦に特化した編成になっている。
「結局そのアーマーなのね。てっきりギャラクティック・マリーンかもしくはクローン・コールド・アサルト・トルーパーのアーマーを着るんじゃないかってハラハラしてたよ」
モンブラン周辺を調べる最中、広子がそんな指摘をしてきた。
「まああれらのアーマーは雪や灰とかの危険因子を使用者から守って視覚も確保する目的で作られてるからな。俺の場合はノーマルでもそれらの機能を全て備えるよう創造してるからな」
そう。だから俺はどんな季節、気候でも関係なくこのオリジナルのアーマーを着続けることができたのだ。3年前の賞金稼ぎ時代でも。
「・・・・・そうやって改良ばっかやってると、どっかからスーパーレーザーが降ってくるんじゃない?」
「おほほっ、身に覚えがある指摘だな」
「なら言い直すわ、誰かからどぎつい交渉を持ち掛けられるわよ」
「・・・・・それは初めてだな」
こんなやり取りがあっても、北東チーム同様調査はやはりうまくいかない。途中いくつかの放牧一家と接触してこの辺りで変わったことはないかなどの聞き込みもやったがこれも面立った収穫はなかった。
そして、メール・ド・グラース氷河にて捜索中。
『熱反応、無線、信号、ドローン反応も全てなしです。ここまで来て何もないとなると、残念ながら唯様の推察に間違いがあったとしか言えません』
たしかに、この地方に来てからかれこれ4時間は経っている。こうも手がかりなしだと地域圏自体を変えるべきなんじゃないかと考えてもおかしくはない。だがまだ結論づけるのは良くない。“アイツ”が寄越してくれる情報に間違いがあったことはないのだ。そう考えて周りを見回すと、俺はあることに気づいた。
「どうかした?」
ペティは“何か”を見つけた俺にいち早く気づき声をかけたが俺は構わず、その“何か”に向かって東の方へ歩き始めた。あとの6人も付いて行った。
これは余談だが、フランスで最大の氷河として知られるここは絶景スポットとしても有名なのである。だからやって来ている人も多く、俺達が歩いている姿も観賞地からしっかりと確認でき、「あれ?誰かいるぞ?」「本当だ。警察呼ぶか?」などの観光客の会話も感知能力で気づいていた。それは置いといて、広子たちに俺が気づいたことの説明を始めた。
「氷河ってのは当地の温度に一年を通してそれほど違いが出るわけじゃないが、氷自体はどうしても減ったり増えたりしている。温暖化の影響を受けていない現在だと残る氷の量がここ数年夏の時期に年々増えているのは確かだが、この辺り一帯に氷が溜まっているのはどうも不自然だ」
目的である一帯に溜まった氷を前にして、俺はある物を創造した。
“アイスドリル”。
主に氷上での釣りをする為に使われる道具だ。普通なら1、2mの厚さの氷を相手に使う道具だが、今相手にしている氷は『氷河の氷』。それにメール・ド・グラース氷河は深さ300mだそうだ。この不自然な氷はそれ以下だとしても20m以上は絶対にあるはずだ。
「奈々。俺が抑えるからドリルを回してくれ、静かにな」
「あいよ」
アイスドリルを先に5段階伸ばしてから氷に刺して抑え、奈々が持ち前のパワーで言われた通り静かにしつつ早く回し始めた。
「実央に先んじて初めての共同作業だな、旦那♥」
「集中しろ、番長」
「へへっ」
そして、ドリルをさらに何段階か伸ばしながら回すこと15分後、
ゴツっ。
「っ!何かに当たったぞ?」
「ドリルを引き抜こう」
アイスドリルを引き抜いてライトを照らして穴の底を覗くと、黒い何かが見えた。きっと俺やアイラでも見つけられなかった理由がこれなのかもしれない。引き抜いたアイスドリルを手にし、これと同じ長さの『虫の目レンズ』を装着したカメラを創造して穴に突っ込んだ。
「どうだ?ボニータ」
『まだ確認の段階ですが、樹脂か何かでできている壁があります。明らかに自然のモノではありません』
「「「「「「「ビンゴ・・・!」」」」」」」
全員が揃ってその一言に限ったことに笑いつつも俺は、一応敵の無線傍受を見越してアイラのみに伝えられる連絡手段を使って確認をした。
【ピーピー!こちらクローン・ウォーズ・サンドイッチマン、対象の組織がいると思われる施設をメール・ド・グラース氷河にて発見。座標はN45.913056、E6.937500。これよりこっちのチームでステルス作戦に変更して中を調べる。追って指示があるまで、モンブランにて待機を】
【・・・・・了解。でもその名乗り方はやめてよ、トルーパー】
アイラの返事にニヤつきながら、巴たちに振り返って任務の再始動を指示した。
「よし、始めるか」
ギラがアイスドリルを氷の表面に刺した頃。
そこから斜め約40度下、約1000m先にいる白覆面の男は、
「・・・・・ノックもしない失礼なお客さんが来たようだな」
どういうワケか敵が接近するのを察知していた。
ここでちょっとしたこぼれ話を漏らしちゃいます。
前回、番外編4を投稿した後の出来事なんですが、その時期に発売されてたジャンプ2021年17号を購入・朗読しました。
自分の率直な感想はこうでした。
〈What!?・・・・・え、・・・・・・・・・・・大丈夫かな?BLLETS・・・・・〉
正直複雑な思いを感じました。あくまで読んだ時だけのことですが。あとどの作品を読んで何を感じたかはどうしてもネタバレになっちゃうので言えません。
ジャンプを読んでかつこの作品が分かる人ならその通りで、分からない人でもし気になるのでしたら電子版を購入もしくは画像検索すればきっと分かると思います。
ではまた!




