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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
54/63

50発目 話数や巻数が多い作品を見つけると大体こう思う、“どれだけストーリー引き伸ばしたんだろうな~”と。





『自分イギリス在住ですけど、まだ地下都市も喫茶店も行ってません。行った方はどうでしたか?良ければ感想をお聞かせ下さい』

『俺、ラミアのメイドさんとお話できちゃった♪』

『甘いな、俺はケンタウロスだけじゃなくフォーン、オーク、エルフ、ドワーフ、ミノタウロス、そしてファンタジー騎士たちと握手に写真撮ってもらった!行列でだけど・・・』

『ライドツアーも最高だった。これは本当かどうか分からないけどヴァルメアっぽい鎧騎士を見かけた気がする・・・』

『私、いつの間にか転生してナルニアに迷い込んだような気分。・・・だって、行列で熊と言葉を交わしたんですよ・・・』

『映画ファンの自分からすれば、ライドツアーがオススメですね!背負ってくれるバキリノサウルスさんたちともお話できましたし、サービスでなどの他の恐竜さんがわざわざツアーの列に沿って歩いてくれたりと迫力満点ですよ全く!』

『恐竜を“さん”呼びするの、新鮮でw』

『私なんかケンタウロス執事さんの胴体部分触らせて貰っちゃいました!スンゴイサービス!』

『頭がどうにかなりそうだった・・・CGだとか特殊メイクだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。真のファンタジーを味わったぜ・・・』

『誰かさんがポルナレフ状態でww。でもその気持ちが分かっちゃう俺もオタクだな・・・』

『いいな~俺も早く十分稼いで行きてぇ~』

『ふははははっ!悪いな、俺は先に行かせて貰うぜ!待っててね~パーンメイドちゃ~ん』




「―とまあ、ネット上ではこういう声が飛び交っているワケだ。まずは泉が立てた企画が成功して良かったと思う。俺も評議会も嬉しい限りだ」

「だが我々はこれでは終わらない。泉の夢は始まりに過ぎないのだ。いずれはライドツアーのみならず地下都市全体を地球人の誰もが訪れる日々が来るだろう。そして喫茶店に限らず、地球の国々に異種族が住むことができる未来も待っている」

 今日はエスペランサ評議会のメンバーとBULLETSのメンバーとで合同会議を始めている。

「ついては『Garden of satisfaction(満足の園)』2号店の企画も進行中だ。そして場所なんだが・・・・・」

 はい!はい!はい!はい!はい!ははい、はい!!

 アンドリューが出店先の話を切り出した矢先に会議に出席しているみんながハイ!ハイ!と手を上げた。

「エジプトに!」とデニー。

「是非!自分の故郷、アメリカに!」と正士。

「イタリアはダメ?」とペティ。

「日本!」とトラ。

「日本!」と唯。

「日本!」と好華。

「日本!」とエン。

「・・・・・まあ、自分推しの候補地を挙げるのは結構だけど、残念ながら今回2号店の候補地に最低でも日本は除外します!」

 エリの日本除外発言にみんなは強く反論した。

「え~!?何でだよ!イギリスと共同でエスペランサに協力関係にあるじゃん!それに絶対に最高の“お・も・て・な・し、おもてなし”ができるって!!」

 特にトラを始めとする日本派が激しく抗議する。

「待遇の問題じゃないんだよ、こいつはそれ依然の問題なんだ。考えてもみろ、従業員であるエスペランサの住民たちを種族問わず参加させて店を出して地球の人々に紹介も兼ねて経営するのが目的なんだ。なのに肝心の従業員への待遇が怠っちゃダメだろ?異種族でも働く者であればこの地球上の労働基準法はしっかり守る!従業員が困るような環境は良くない。言うまでもないが政府は全霊を以て彼らの為に準備してくれるだろうが、難しいのは“異種族たちの特性”に比例する“ここからの移動距離”だ」

「・・・・・あ・・・」

 俺の説明にあることを知っている者は黙り込み、知らない者は分からず首を傾げた。

「これは前例で知ってる人はいるだろうが、以前に起きていたオーク戦争中で唯一我等エスペランサの民が海外遠征した戦いがあってだな、・・・・・その際に我々ケンタウロスたちの空輸が少々困難になってな・・・」とトルード。

「作戦自体には彼らはすごく貢献してくれたんだがどうにも移動の方が戦闘よりよっぽど苦労したというなんとも皮肉な事態が起きていた。現在異種族が住むはこの地下都市のみ。住む場所が増えない限りは当然異種族たちにとっては移動でストレスが溜まってしまい、新たな難題が生じてしまう、というワケだからここから遠い国ではどうしてもダメなんだ」とカーリン。

「そこで異種族にとって目の上のタンコブな気候変動にそれほど影響されなくかつ、エスペランサ・ブリテン・日本の気持ちを汲んで待遇を良くしてくれるのが、バル君率いるフランスってワケだ!」

 ぶほっ!!

 俺の“バル君”呼びに反応したのか、今年中に出会った奴ら全員がアイスティーを噴いた。

「ごほっごほっ、お前・・・!一国の大統領を君呼びするってどういうことだ!?」

「ああ、俺8年前にあいつと友人関係を結んでるからな。今もLUMEで時々お喋りしてるぞ~ほら」

 そう言って俺は自分の携帯でバルと並んで撮った写真を見せた。

「出たよ、とんでも人脈・・・・・」

「それじゃあ、あのアロイス大統領なら大事な異種族たちも安心して送り出せると?」とロザリア。

「その通り。あの国に行くだけなら空路・海路の他にユーロトンネルを活用しての陸路も追加できる。これにより輸送コストも別々に分かれるし、移動する異種族たちにとっても選択肢が増えるってもんだ。彼らの中には長年かまたは生まれついての地下での暮らしに慣れてしまって、空を飛んだり海を越えることに若干の恐怖を抱いてる者もなきにしもあらずだからな。それにフランスは元よりバル君もファンタジーモノ好きだから大歓迎だと思うよ」

「・・・こいつ大統領と友人関係を結んだっつーか、オタク関係結んじゃってるな」と剣。

「とどのつまり、我々エスペランサブリテンの今後しばらくの方針は、現在運営している喫茶店とライドツアーを2号店設置に向けて完全維持を続けること!では会議は一旦解散!」

 アンドリューの一言で会議が終わると、みんなはそれぞれの時間を過ごそうと会場を出ようとし始めていた。そんな彼らを呼び止める者が一人いた。俺だ。

「は~い、BULLETSメンバーはそのまま待機。それ以外の者はこの会場から出て行くように~」

 BULLETSのメンバーが席に戻り評議会のメンバーたちが出て行くのを確認してから俺は、眼鏡かけ白衣着ての教師スタイルで演壇に立って次の段階に進ませた。


「さて、ここまでの流れを読んで分かる通り、今回で俺達の物語は50発目を迎えている。こっからはエスペランサの件から外れて、俺達『BULLETS』の未来設計を主題に課外授業を始めていくことに・・・・・」

「待て待て待てって!そんなリアルな情報込みで唐突に話進めるのやめろって!つか何で授業形式!?大体漫画どころか週刊誌で連載してるわけでもないし、ましてや単行本化もしてない作品が50発目に到達したからってそんな喜ぶことでも・・・・・」

 と剛はこの作品の現状を語るが、俺の反応はこうだ。

「剛君。君馬鹿なの?俺達のような無名の作品はこういう小さなことでも喜んでなきゃ盛り上がんないんだよ。ゲームを攻略していくのと同じ要領だ。それにうちは『異世界遠征!』って一応目標の看板を掲げてるけど、それの為の準備も高校生活もやらなきゃであと3年もかかるんだぞ?そもそもこの作品が連載を始めてからダラダラ投稿期間も含めて既に実質3年経っちゃってるから、高校卒業レベルだから。典型的な冒険モノで入学して卒業だ!とか修行だ!とかの描写はあっても、“あれから何年・・・”って言って人生描写を一部端折れる手段を使わずに場面展開しなきゃだし。大体なぁっ!」

「もういいから!!お前何目線でモノ語ってんの!?つかこの作品、プロローグ初っ端からその一部端折りやっちゃってるよな?お前の過去、まだまだ謎だらけなんですけど!」

「まあこの通り機関車タックルの主張は無視して、本題に入るとしようか」

「おい!誤魔化すなって!」

 剛のツッコミも虚しく、もう一つの会議は始まるのだった。

「メンバー全員が、とまでは言わないが一応ワールドツアーはお疲れさん。知ってる奴もいれば知らない奴もいると思うが、俺達が世界中の悪党たちをお仕置きしてた間、ここにいますボニータ君には例の異世界探査をまたやってもらっていた。今回は短期間であっても、より多くの情報を得る為に行ったあることが成功した。そいつは・・・」

『異世界での初の、人工衛星の打ち上げです』


「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」


「さらっととんでもないことをもう既に実行してるってどゆこと!?」

「もっともな反応だ、ヒナ。俺達の世界での20世紀後半に打ち上げられた数々の人工衛星は戻ってくるか、改良を重ねながら今も尚地球の軌道上を回り続けている。当時では打ち上げの成功だけでも喜ぶという感動があったが、今じゃ技術も進歩して人工衛星の打ち上げに何の支障もなく実行に移せる時代だ。これも人類の積み重ねでできた賜物だ。前回の探査でボニータはドローンを飛ばしてのみの方法だったが、今回は思い切って向こうの世界で人工衛星の打ち上げをしつつ、地上の調査を行わせて手に入れたデータを資料に用いて今回はここで課外授業をやろうと思う」

「夏休みだってのに遠征の為に授業受けさせられるなんてそんな理不尽な・・・・・」と奈々。

「突発的に死んで突然異世界のラスボス倒して~って頼みこんでくる神または女神の方がよっぽど理不尽だろが。とりあえずその人工衛星のおかげで向こうの正確な地図ができたワケだ、これがその惑星のホロマップだ」

 ボニータに合図してプロジェクターでその惑星のホロマップを出させた。

 その内容は至極簡単だ。以前エスペランサの民たちがかつて住んでいた場所:ひょうたん大陸を中心に全体図を見たところ、ひょうたん大陸の先に繋がっている大陸が星全体を縦に割るかのようにできているのだ。一周した後にギリギリひょうたん大陸の少し下手前で大陸は途切れているから世界を割っているワケではなかった、危ねぇ危ねぇ・・・。

「何というか・・・・・こっちと違ってシンプルな大陸ですな」とロン。

『ミッシェル様のご指摘通り、この惑星での大陸移動はあまり起きていないようです。そして地球では70%が海だと言われていますが、分析したところあっちの惑星では50%も満たないのです』

「言わば縦長に生まれちゃって分裂を嫌がってうねるだけになってしまったユーラシア大陸と言ったところだ」

「その例え方気持ち悪いのでやめてください」

濃さんの意見を無視して、俺は話を進めていく。

「実はこの大陸以外にも細やかな島はいくつかあるんだが、今回はそういうのについては言及しないから、そこんところは承知するように。では次に向こうの世界での敵、オークについてちょっと話したいことがある」

 ボニータに合図を送って、異世界のホロマップからオークに関するデータへと切り替えさせた。

「これが、みんながもう知っているエスペランサのヘムキン率いるオークたちだ。知っての通り、世界中で起きながらも秘匿されてきた戦争の為に生み出され生物兵器として暴れていた醜悪なオークたちとは違い、彼らは他の種族同様伝統を重んじ、他者と心を通わせることのできる由緒あるオークであることから“聖オーク”と公表してある。間違っても“性オーク”なんて呼んでしまって失礼のないように」

「先生、先生が一番彼らに失礼です」とロザリア。

「そしてこっちがボニータが調べた異世界にいる敵のオークだ」

 画面にそのオークの一例画像がアップされた。顔は醜く、肌は不気味な灰色、手からは鉤爪が生え、背丈は人間より若干低い、こんな感じだ。

「屈強な聖オークと比べると、まだ人間の方に近い生態系だ。ここで別の種族についても話しておこう。みんなゴブリンは知ってるよな?」

「ゴブリン?ゴブリンってあの、残忍狂暴な妖精のことかい?」とラスティ。

「世間ではよくこの生物はただオークの別名なのじゃないか?って考えられることが多いが、とりあえずあっちの世界では別々で存在しているそうだ。この映像は、ボニータが撮ってきたつい最近の映像でそれぞれ冒険者たち、軍隊と敵対しているゴブリンたちだ」

 一方の映像は巣穴から出て冒険者パーティを一人ずつ狙って襲っているゴブリンたち、もう一方は隊列を整えている甲冑兵士たちにオークと一緒に襲い掛かるゴブリンたち、という構図になっていた。

「映像からして、ゴブリンは巣穴に住んでそこから冒険者たちを襲うか、俺達の敵であるオークたちと組んで戦う2種類の存在が伺える。オークと違うところと言えば小柄な体であることだ。ちなみにこのあとどっちの映像でもゴブリンたちはメチャクチャ退治されました」

「先生、向こうにそういう存在がいるんだってことを教えてくれるのは良いんだけどよ、それを今教えて何のメリットがあるんだ?まさか3年かけてまで敵の対策を練ろう!なんて言い出すんじゃないだろうな?」

「トラ。ゴブリンらは馬鹿だが、間抜けじゃない」

「先生、別キャラ入ってます」とヒナ。

「たしかにお前の言う通り3年後の計画の為に鍛錬ならともかく今から対策を練るのは用意周到過ぎな気もするわな。誰かさんの場合は1年以内に『レディ・パーフェクトリー、準備は完全に整った』って言うまで対策練り終わらせるだろうけど」

「だから一言余計だっつの!」と剛。

「この話を持ち出したのにはちゃんとした理由があるんだ。実はよ、こいつは俺の昔のある友人が出した予言なんだが・・・・・」

 ボニータに頼んでおいた画像を出してもらい、それがプロジェクターで映し出された。それは、シワくちゃの紙にヨレヨレでもなんとか読める日本語で書かれた文字だった。

「『異世界より先に地球がヤバい』とのことだ」

「いやお前の友人ってどっかの占い師ィィッ!?」

 真っ先にツッコんだのはやはり剛だ。

「・・・ええ、何でそう決めつけんの?お前」

「決めつけるも何も!絶対シワくちゃのババアだろ、こんな適当な予言残したの!!まさか、死んだとか?飴を喉に詰まらせて死んだのか!?」

「シワくちゃのババアじゃねーよ、シワくちゃのジジイだ。100年以上前ランコアに喰われて亡くなってる」

「結局シワくちゃ!!それ明らかに嘘だろ!ランコアなんて実在してねーだろが!!」

「先生!あたしならそこは“ヴィクサスに喰われて死んだ”って嘘をついてみたいです!」と奈々。

「お前の嘘つき願望を聞いて何になんの?」

「あたしなら“サルラックの巣穴に落ちたけど何とか生還した”で~」と好華。

「ボバ・フェットな、それ。てかジジイはもう死んでるんだってば」

 映画ネタが混じった意見が出たせいか、次第に他のメンバーたちからもボケあり意見が挙がってきた。

「“エイリアンに喰われて死んだ”で」「“メガドロンに喰われて死んだ”で」「“オピー・シー・キラーに喰われてさらにサンド・アクア・モンスターに喰われて死んだ”で」

 どれも名作映画で怪物に喰われたシーンを思い出しての意見だった。

「何これぇっ!?課外授業中に故人の死因を決めるって何なの!?あと“メガドロン”って言った奴!間違って覚えてるだろ!!あれ正しくは“メガロドン”だから!」とツッコミ&訂正ストップをかける剛。

「まあそのジジイの本当の死因が何なのかはシワくちゃに免じて置いとくとして」

「シワくちゃに免じてって何!?ホントにこれお前の友人の話なのか!?大体友人だからってその予言100%信用できるのか?」

「100%信用できる。俺がパン派かご飯派かの質問でご飯派であるとピタリと当てたからな」

「100%信用できるポイントがそんなんで良いんですか?」

 冷ややかな一言を添えてくる巴。

「とにかくその彼が最期に残してくれた伝言メモの内容がこれだ。読んで分かる通り、これは俺達が異世界遠征をやる3年経つまでの地球で何かが起こるってのを表してる。みんな突然何?って思うだろうが、この予言を裏付けるような事実が今、裏社会で起きているのがデータから読み取ったことで明らかになっている」

『皆さんが地球の各地で暗躍する犯罪組織を一斉取り締まりを行ったことは、自分も既に承知しております。武器密売に気づいたことから彼らのほとんどを侵略的行為をする前に捕らえることに成功しましたが、一つだけ辻褄が合わない問題が浮上してきたのです』

「辻褄が、合わない?」と菊也。

「奴らがこの地下都市を狙っていたのは紛れもなく事実だ。だがどうにも実行に移るには武器の所持数に対してどの組織も人員が少なかった点だ。小規模じゃないとは言い切れないが、占領するにしても各組織を束ねてもアシュボーンの戦いでやってきたゲリラ連合軍の3000にも満たない。それなのに奴らはそれぞれ必要以上の武器を注文していた。それは何故か?」

「・・・・・まさか、人員を補えるアテがあったとか?」

 俺は答えに近いところを突いている唯に『それな』ばりに指差した。

「各犯罪組織が無数の武器密売人と連絡を取っていた中で一つだけ同じ連絡先が該当するのがあったんだ。音声記録は保護ファイルでしっかりと守られていたがボニータがこじ開けてくれて何とか内容を聞き出すことに成功した。これがその音声記録だ」

 またボニータに合図を送って、その音声記録を再生させた。


『本当なんだろうな?好きに操れる兵士を金無しで提供してくれるというのは。あまりにも虫が良すぎる話なんだが』

『もちろんです。その言葉に嘘偽りはございません。私共の計画を進めるにあたってはあの地下都市の存在はどうしても邪魔なので。あなた方が代わりに占領してくれるというのであれば可能な限り“エヴルー・アーム”を提供いたします』


 音声記録を停止させて俺は解説を始めた。

「この中の発言で出てきたこの“エヴルー・アーム”ってのが鍵だ」

「エヴルー・アームって、誰かの腕って意味か?」とトラ。

「それは違うと思うわトラ。エヴルーっていうのは多分、フランス北西部にある地名よ。するとアームも英語ではなくフランス語での意味だとしたら・・・・・」

 故郷がフランスである千恵が訂正し、その流れでの考えを進ませ、最終的には、


「“エヴルーの霊魂”」


 一人考え込んでいたエリが先に答えを言い当てた。

「そ。“エヴルーの霊魂”ってのには12世紀の中世ラテン語でGobelinus(ゴベリーヌス)という名前が付いていた。そしてそのゴベリーヌスが、今定着している“ゴブリン”という名前の由来だと言われている」

 話の核に気づいた瞬間、会場にいるメンバーたちの空気が重くなった。


「あの生物兵器:オークに代わる兵器を、何者かが製造して売りさばこうと企んでいる可能性が出てきた。これからは各自、まだ俺達に尻尾を掴ませていない犯罪組織に要注意して欲しい」





 授業が終わった後は、評議会ドームの上で俺とトラ、エーブ、リークそしてデニーの5人でてっぺんを囲ってのチョパリーによる一服中だ。ちなみにトラとエーブの好みはそれぞれレモン味とコーラ味だ。

「核退治から始まってオーク退治、この前は妖怪退治、次はゴブリン退治かよ。んで3年後にはオーク・ゴブリンの両方退治を開始する。不味い料理が立て続けにやってくるのを嫌がる客の気分だな」と愚痴るトラ。

「西の薄味料理に腹を立ててたキレ性がよく言うな~」と俺の一言。

「俺の過去掘り返すのやめろって」

「少し前の“ウルフルズ”といい、今の世の悪人は何故こうも生物兵器に頼ってばかりなんでしょうね・・・・・」とエーブ。

「仕方ねぇよ。今じゃ家で大人しく生きるってのが世間90%の常識だ。悪人はいるがそいつらが人員を増やしたいと願ってもそうそう増えるもんじゃない。ならば作ってしまおうという考える悪人も出るワケだ。“野郎”がそうだったようにな」

 そう。前の戦争を引き起こした黒幕もそう考えてあの状況を作っていた。

「・・・・・だな」とリーク。

「しかしゴブリンか・・・。やっぱり製作者は前の戦争の遺産を引き継いだクチなのかい?」とデニー。

「はっきりはしないが、今はその説が有力だな。まずはそいつの正体を突き止めることが先決だな。でないと前の戦争の二の足を踏んで手遅れになる。もう地球での戦争はゴメンだよ」

「俺もだ。今はゆっくりと千恵と濃で毎夜をズッコンバッコン過ごしたいな」とトラ・・・・・っておいこら。

「あのお殿様~、俺そんなピンクなこと1ミリも考えてなかったんだけど?」

 このヤリチンが・・・真面目な話してたのに空気変えやがった。

「いいじゃん別によ~。大体お前だってこの前晴れて実央ちゃんと彼氏彼女になれたんだろ?つまり、ようやく公然と●●●●できるわけだな!」

「はいはいそうですね~。だからこの話はここまでにして・・・・・」

 話が脱線する前に切り上げようとしたところで、ある問いかけが出てきた。

 

「ところでギラ。ぶっちゃけ唯さんたちとの2回目はヤッたんですか?」

 ぽんっ。

 咥えてたチョパリーを思わず噴き出すも、自分で創造した食べ物だったのでなんとか下に落ちる前に引き戻した。

「ってちょっと待ってええええええええ!!?」

 正士リンカーンの口からとんでもないセリフが出てきたんで俺は慌てて彼にストップをかけた。

「え、何がですか?」

「何がじゃねえよ!!お前自分のイメージ考えて喋れよ!!正体を知っている分、内心ドキドキだわ!」

「そんなこと言われても今の自分はただの日本人少年ですよ?過去の経歴が偉人だとか言われてても、所詮それはまた別の話でしょう?大体自分の過去をモデルにしたキャラクターがワンピースで出ちゃってるんですから、自分一人がはっちゃけても誰も困りませんよ」

「少なくとも歴史大好きな俺が困るわ!」

「しかしこの状況を執筆している作者が一番・・・・・」

「ダメダメダメ!リアル情報込みの喋りでもやっていいことと悪いことがあるんだから!そこは言い過ぎだから!」

「だって自分、常に正直者ですし」

「どこを正直にしてんの!?とりあえず止まってくんない?」

「まあまあギラ。正士の言い分ももっともだろ。正式な彼女が決まったと言っても他の女をそっちのけにするのは良くないぞ。じゃないとギャルゲーみたく好感度が下がっていつか愛想尽かされちゃうかもよ?」とトラ。

「また、僕みたく相手がすぐいなくなられたらそれこそ幸せを手から逃してしまうだろう?」

「うぐ・・・・・お前に言われるとすごく説得力あるな・・・」

 歴史に詳しくない読者のみんなは知らないだろうが、デニーの前世:サラディンには子供がいないのだ。結婚して奥さんを大事に想っていたが、彼はエジプトとシリアの長という忙しい身。さらに当時キリスト教徒に奪われていたエルサレム奪還を目標に軍事力を高めていた大変な中で、奥さんが病に倒れて1186年に早くに亡くしてしまったからだ。デニーの過去を知っている者であるからこそ、彼の言葉は俺に響きやすいのである。

「もうスク●イの呪縛から解き放たれろよ。もっとこう、イチャつけよ。読者から『イチャイチャすんなよ!』って言われるくらいにさぁ。せっかくタイプの違う女がたくさんいるんだから一人ずつ楽しみなって」

「ゲームだって前提で話すのやめてくんない?それに俺の場合気づいたら攻略済みで達成感ゼロなんだけど」

 ウザく絡んでくるトラたちに俺がウンザリしていると、


「んじゃ急で真面目なこと聞くが、あのふざけた予言のメモ、お前が書いたんだろ?」


 本人の言う通り急に真面目な声の調子で俺が適当に作ったメモについて問いただしてきた。

「自分もそう感じました。“地球で何かが起こる”というのは嘘じゃないでしょうけどあのメモの字、汚く書いてましたけどギラの字では?」と正士。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「黙るってことはそうなんだな?」とリーク。

「言えないというならそれでも構わないよ。聞いたにせよ、どの道僕らは君を信じて付いて行くだけさ」とデニー。

「・・・・・あんがと」

 今更だが流石は偉人達。鋭い洞察力だよ、全く。だが俺は心の中ではもう決めていた。


 爺様の件は誰にも話さない、と。





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