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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
53/63

49発目 帰省中だと子供は実家を遊び場のように捉えてはしゃぎ易くなることがある。



 さて、エスペランサブリテンの一般公開と同時になんで異種族で構成された店が設けられたのか一つ一つ理由を上げていこうか。

 前にも言ったがエスペランサの住人は地球で言えば難民だ。国としては成り立っているワケではないから、旅客機で飛んで行ってはい異種族の皆さんこんにちは~♪とは簡単にできない。じゃあ異種族間交流法は?ってなるよな。もちろん将来的にはそういった法案も制定されるだろうが、今まで秘匿にされてきた異世界から来た種族たちと突然交流しろと言ってもどうしても壁ができてしまう。最低でも心のな。特に地球の人々がそうだ。伝説的だった他種族たちとどう接するかどうかなんて説明なしじゃどうにもならない。だけどエスペランサの住人たちはある程度地球の知識は取り入れ、理解もしている。ならばどうするか?それは地球のスタンスで舞台を用意する、そうすれば地球の人々は緊張はすれども逃げ出すこともなく他種族たちがどのようなものかを知ることができる。その為の方法がライドツアーと喫茶店だ!

 喫茶なら接客してくれる他種族の従業員たちと間近でお話ができるし、ちょっとした質問なら受け答え可能になっている。あ、もちろんセクハラ発言は控えるように。度が過ぎたら、Get out!!

 ライドツアーでは一般公開が決まった地下都市の南半分をバキリノサウルスたちが専用の座席を背負いながら乗り込んでいくゲストたちの頭に直接都市の説明を思念魔法で伝えていく。

 この計画は何年も前から立てられていて、喫茶の従業員たちは万が一の時に備えて日本語以外にも言語を学んだり、バキリノサウルスたちは乗る人々が酔わないようこの日までに何度も安全な歩行訓練を繰り返してきた。

 5月の異種族公表でベルダンことティラノサウルスをパレードに参加させたのはこのライドツアーの為のデモンストレーションだったのだ。まずは彼らの中に地球上で生息していた恐竜がいるということを、同時にサウルスにも知識があり交流ができることを伝える為に。そして一般公開が決定し、内容が説明されても不安要素が一切なく地下都市に訪れる人々がたくさんできるように。


 2112年8月15日。

 ブリテンではこの時期はフィア王女の誕生日ということで以前は自国民ばかりで賑わっていた。

 では今年は?地下都市の一般公開と異種族がもて成す『Garden of satisfaction(満足の園)』が目的で来る自国民どころか世界中の人々が海を越えてやってきていた。クリスマス、年末年始なんて目じゃない。万国博覧会並みの盛り上がりになっていた。

 エスペランサの住人や町とか存在そのものが世のオタクたちの心に通ずるものがあるからな。特に日本人は絶対来ると信じていた。その通りで日本人の来客もチラチラだが必ず目にした。元々とんでもない数の来客が来ることを視野に入れていた運営スタッフ側も、店の規模の底上げ、店舗数の増加、バキリノサウルスたちだけじゃなくモノクロニウス・エオケラトプスにも応援を用意していた為、より多くの人々に体験・ふれあいの場を設けることができた。それでもできるのは、行列だ。

 行列はどの国だろうが面倒くさい。待っている間は退屈過ぎる。ある者は携帯で漫画アプリ、ゲームアプリをするか、持参の漫画・ゲームをしたり、世界の定義について連れの者と議論したり、とにかく何かをしていないと自分は今日、異種族とふれ合えないのではないか?などと不安感を抱いてしまう。それに今は夏、行列用の屋根を設置していても熱中症になりかねない。もちろん運営側もそこを考慮して対策を取っている。公表の際に行ったパレードに参加していた人間・ドワーフ・エルフ・聖オーク・ミノタウロス・ケンタウロス、様々な異種族が行列の警備兼無料で飲料を配給、来客たちと一緒に写真を撮るという催しも用意した。甲冑兵士たちは英語と日本語は話せるがそれ以外の言語は喋れない。他の言語はポ●トークで意思疎通をすることにした。このこととライドツアー・『Garden of satisfaction』もネット上で紹介されて世界中で話題となった。たった数日でブリテンへの入国者数が10倍に跳ね上がったとも呟かれている。



「これはもう、パークって呼ばれてもおかしくないね・・・・」

「運営をしてるのがぬいぐるみとかじゃなく本物のモンスターだからな」

 ブリテン時間での正午に、角竜に乗ってエスペランサの風景を楽しんでいるゲストたちを評議会ドームの上から眺めるのは、箱根で晴れて恋人同士になった俺と実央だ。さり気なく自慢するなよ、だって?本当のことなんだから仕方ないダルゥォオッ!!

「・・・・・もしかしてだけど、この計画を立てたのってギラ君だったりする?」

「・・・・・いや、泉が全部考えたんだ」

「!・・・姉さんが?」

 そう。この企画が上がった当時、企画内容を作ったのが彼女だったのだ。

「あいつも未来を考えて生きてたんだ。異種族たちと交流する未来を。できればこの光景も見たかったんだろうな・・・・・」

 ちょっと悲しげになった俺を気にかけたのか、手を握ってきて彼女はこう言った。

「見えてる、そして喜んでるよ。“二人共”、でしょ?」

「・・・・・そうだな。じゃあ中に入ろう、実央に会わせてない連中もいるんだ」

「うん」



 中に入ると、中心にある4つのホログラム画面には『トニカクカワイイ』が映されていてそれを見ながらポテチを食い、キュンキュンしている評議会メンバーの姿があった。

「今度はラブコメか・・・」

「お、ようギラ!ライドツアー調子は順ちょ・・・・・」

 催しの進捗状況を聞こうとしたヘムキンは、飲んでいたストロー付きジュースのコップを思わず落としてしまう。何故なら俺が連れていた実央を見て驚いたからだ。

 彼に続いて他の代表たちも彼女に気づいて椅子から立ち上がった。

「あ・・・・・いず・・・・・おっと、違ったな。渡辺実央君・・・だったね?」

「・・・・・はい、そうです」

 実央も前に見せてもらった写真でヘムキンたちが亡き姉・泉と知り合いで彼らの心境を察して少し複雑な表情になったが、すぐに気を持ち直して挨拶をした。

「初めまして皆さん、渡辺実央です。泉姉さんがこちらでお世話になっていたことも存じております。渡辺家を代表して深く感謝しております」

「いやいやとんでもない!世話になっていたのは寧ろこっちさ!あんなにも立派な計画、長年日陰者になっていた我々では到底考えられなかったのだからね」と、慌てて訂正するケンタウロスのトルード。

 そんな中俺は、ある違和感に気づいていた。評議会のメンバーが足りなかったのだ。一般公開総指揮であるカーリンがいないのは納得だが、“彼女”がいないことには見当がつかなかった。

「なあアンドリュー、アンナがいないのは何でだ?」

「さあ?今日はまだ記録保管所の方にいると思うが・・・・・」

 記録保管所と言えばここから東の方角にある施設だ。俺もこれまでに何度かそこへ行ったことはあるが、感知能力に目覚めて以降はまだ行ってもいないし空間把握もしていない。アンドリューに聞いてアンナを感知能力で探し当てよう、そんな軽い気持ちで確認しただけだったのが、


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何故だ?


 一変、俺の頭の中は真っ白になってしまった。

「?ギラ君?」

「どうした、ギラ?」

 東の方角を向いたまま固まった俺を心配した実央とアンドリューが声をかけてくる。

「・・・・・えっとなー、悪ぃ実央急用ができたからしばらくヘムキンたちに町を紹介してもらっててくれ。そんじゃっ!」

「?急用って・・・・・ギラ君!?」




 地下都市の東側は主にエルフが造る建物が集中している。もちろん種族問わず誰もが町中を徘徊できるのだが、普段一般公開されている記録保管所は今だけ出入りを禁止されている。ついに地上の人々との交流への一歩を踏み出した歴史的な状況で、それら全てを記録しようとエルフたちが大忙し・・・・・のはずだが、そのエルフたちを取りまとめている評議員:アンナ・サターシャが“ある場所”で“ある行動”を取っていることを感知し、俺は衝動にかられるようにそこへ走っていた。

 俺が辿り着くと、そこにはブルーノ・ニカノル・ステファノが待っていた。

「「「お久しぶりです、フォースさん」」」

 このオーク3人は見た目はどうしても“醜悪な生き物”に見えてしまうが、心は本当に誠実そのものな人柄なのだ。

「お、おう久しぶりだな、3人共。・・・・・・・ここにいるってことは、アンナが今の今までしていたことも承知なのか?」

「その通りよ、ギラ」

 3人の待ってましたよ感溢れる挨拶から大体察することはできた。だが彼らが答えるより先に俺を呼び寄せた張本人が名乗り出てきた。

「おはよう、先日は剛君とのデートセッティングありがと♥」

「遂にアイツにもモテ期到来で俺も子供が成長する姿を見守る親の気持ちな感じだよって和やかに会話したいところだが今、たった数分の間でてめーらにいくつか聞きたいことができたんだけどな!」

「とっても特別な事情があるの」

「俺はその“特別な事情”とやらを全然把握できてないんだが?」

「そ、把握してもらう為にも私の執務室で話しましょう」

 保管所入口に入るように促すアンナに、俺は我慢できずすぐに知りたい情報に対しての質問をした。


「何故俺の爺様の名前を知ってるんだ?あの名前を知ってる人間はもうこの世にはいないはずだぞ」

 

「“人間”は、でしょ?でもエルフは知ってた」

「あと、自分らも」

 上手いことを言ったアンナに続いてブルーノも振り向いて言った。

「だけどなるほどね。あなたの前世、彼の孫だったワケね」




 その頃、都市の南側ではバキリノサウルスたちによるライドツアーで楽しんでいるゲストたちを別々の視点から見守るBULLETSのメンバーたちの姿がチラホラしていた。

 そんな中で一人、ツアーを見ながらマンガ肉をかじりつつギラと同じ感知能力でアンナの奇行に反応した兄の行動に注目していたアイラに気づくシオリが、姉に声をかけた。

「アイラ?どうしたの?」

「・・・・・お兄ちゃんが記録保管所に向かってる、結構動揺してるっぽい」

「何で?」

「さあ、分からない。ただアンナさんが口にしていた誰かの名前に気づくと急に彼女がいる場所に向かい始めたから何かあるんじゃないかなとは思うけど・・・・・」

「それって知ってる人?」

「ううん、聞いたこともない人の名前だった。たしか、アキラ・ナガオカって。多分日本人名なのは間違いないけど口パクだから漢字は分かんない」





 アンナの執務室に入るのは初めてじゃない。だが、以前とは違ってぐちゃぐちゃ感が凄まじかった。無理もない、今この地下都市は大きく発展する時期なのだから。そんな部屋で俺は複雑な話を彼女から聞くことになった。

「1970年よ。通路が地表まで達してから8年、私たちは地上のことを完全に把握できてないまま、地下都市も建設がまだまだな時期。でもこの記録保管所と評議会の建物だけは優先的に作られていてね。知っての通り評議会は多くの人間やドワーフたちが自分たちにとって未開の地を探る調査隊を編成して地球のあらゆる国に派遣することを決定した。その中でウォーレン・ミルという名前の人間が日本を調査する為に一団を率いて現地へ赴いてたんだけど、70年に帰還するなりすぐ私が仕切る記録保管所にやってきたの。彼はナガオカが撮った映像フィルムを渡してこう頼んできた、“アキラ・ナガオカの願いを、どうか引き継いでほしい”ってね」

「・・・・・そのウォーレンって奴に一体何があったんだ?」

「何も教えてくれなかったわ。ナガオカはある友人が持つ予知能力を使っての予言でこれから先に起きることをたくさん知っていた。ウォーレンが出会ったのは前年の1969年だったらしいけど」

「っ!20世紀に能力者が!?」

 それは驚きだ。生まれ変わり人間はギリギリ20世紀に生まれていてもおかしくないとつい最近までは感じていた。実際剣の祖父:柳田昴=加藤清正が良い例だ。だが能力を持った人間がその時代に存在していたとは。

「世間では現在こそ『進化の世紀』って言ってるけど、私からすればもう1世紀前からその兆候は出てたのが分かるわね」

「その爺様の言う予知能力を使う友人って何者なんだ?」

「それも分からないわ。ただ言えるのは、ウォーレンは日本での調査とは別に恐ろしい何かを」

「爺様が?」

「ナガオカを、お爺様を覚えてる?」

「・・・・・ほとんどない。厳密に言えば爺様は父方の祖父でな。親戚間ではすごい人だったとしか聞いてないからピンと来ないんだ。だってよ、俺が物心つく頃にはもう亡くなってた。だからいまいち納得できてないんだ、爺様が俺の未来を知っていたなんて話に。それでもアンナたちが言うことが嘘とは言い切れない、アレを見てからはどうしてもな」

「そう言うってことは、例の能力で探ったのよね?“あの建物”の中身を」

 彼女の言う“あの建物”とは、俺達がいる執務室の窓から覗いてすぐ下にある昭和っぽい造りの一軒家のことだ。

「赤ん坊の頃は爺様にあやされてたって前世での両親から聞いてたが、それ以外の接点がない。はずなのに、一つ妙なことがあったんだ。俺が物心ついた当時、爺様は死んでたけど代わりに実家の庭に俺の為だけに作ってくれた遊び場があったんだ。一人シューティングゲームができるブリキのバケツで作った人形が何体もあるヤツをな。俺はよく割り箸で作ったピストルで輪ゴムを発射して遊んでたよ。だが重要なのがこれだ、それらの人形には赤いペンキでこう書かれてたんだ、『clanker』ってな」

 そう。俺が2008年から始まった『クローン・ウォーズ』シリーズ内でクローンたちが敵であるバトル・ドロイドのことを「clanker=ブリキ野郎」と呼んでいるのをいずれ好むのをあたかも知っていたかのように作られていたのだ。ただの偶然か?と前世では考えていたが、今なら分かる。知っていたのだ、俺がそれを好きになるのを。

「それよりもまず、アンナがウォーレンから受け取ったって言う爺様のフィルムを見せてくれ。次の話はそれからだ」

 70年でフィルムと言うならきっとあのデカい『フィルム缶』に入ったフィルムのことを指してるのだろう。俺はてっきり古い映写機でも出すのかと思ってたら、アンナは業務用デスクにそのまま設置されているキーボードをタップし、ホログラム映像で目当ての映像を映し出した。

〈ああ、なんだ。もう焼き直ししてたのか・・・〉

 証拠に古びたカラーに映像幅が4:3だ。ただそれとは別にあることに俺は映像に見入った。それは撮影されている場所に見覚えがあったからだ。

 俺はその昔、前世では帰省の際には爺様が昔住んでたという和式の豪邸によく寝泊りをしていた。その和室の床の間が、今映し出されている映像の背景としてしっかりと映っているのだ。しばらくすると、一人の老人が袴姿で現れ、置かれていた座布団一枚の上に正座して撮影中のカメラに向かって座り込んだ。老人が誰なのかはアンナたちは内容知っていたからこそ分かっていただろうが、俺の場合はその老人の顔を見た瞬間、間違いなく自分の祖父だと確信したのだ。幼い頃に何度か見せられた爺様の顔写真の記憶はおぼろげだったが、自分が爺様と同じくらいに老けた時期では生前の爺様を知っている親戚から言われたことだけははっきり覚えていた。

 “君は亡くなった爺様似だね”と。

 俺が髭を蓄えていた老年期の姿と瓜二つだったのだ。まるで泉と実央が双子であるように。

 爺様は映像で深々と頭を下げて自己紹介を始めた。

『初めまして、ミス:アンナ・サターシャ殿。そしていずれ地下都市に現れているであろうブルーノ殿、ニカノル殿、ステファノ殿。私はアキラ・ナガオカと申す者でございます』

「!?」

 また驚いた。ブルーノたちは生い立ちに“ワケ”があってエスペランサにいる、それもたったの数年前からだ。まさかブルーノたちのことまで予知できていたとは。

『この度、ある者に大事なメッセージを送りたいという願いから、この映像を撮るに至りました。どうかお願いします。送る物を用意するのはウォーレン殿たちが引き受けてくれるのですが、そのある者に渡すべき日時が今から162年後も先になるのです。人間であるウォーレン殿たちにはどうしてもできないこと。しかしながらサターシャ殿はエルフという永遠とも言える長命種族の方と彼の口から聞きつけ、もはやあなたにしか頼めないと判断してこのメッセージを送ることにしたのです。あなた方が置かれている立ち位置も私も友人も重々承知しております。なのであなた方への配慮を考えてこのメッセージの返事も求めません。ここまでお話しても実際信じてもらえないでしょうが、私のある友人が予知したこれから先世界中で起こる出来事を複数述べていくので聞いていただきたい。先に断っておきますが、私は嘘が嫌いです』

 その後爺様は、俺達が生きる現在まで本当に起こった出来事を言い上げた。細かくまではいかないが全て本当に起きたことを言い当てていた。沖縄返還、日本と中華人民共和国による共同声明、ドルショック、石油ショック、ベトナム戦争終結、INF全廃条約、ベルリンの壁崩壊を経ての東西ドイツの統一、マルタ会談で冷戦終結、ソビエト連邦の解体後ロシア連邦へ、湾岸戦争、アメリカの同時多発テロ事件、鳥インフルエンザと新型コロナウィルスの猛威、日本の年号が昭和から平成そしていずれは令和になどなど様々な歴史を当時の70年では到底予想できないことばかり口にしている。さらには22世紀以降のことも触れていた。能力者の存在が明るみに出ること、世界の裏舞台で戦争が起こること、そしてこの地下都市『エスペランサブリテン』が地上の人々と交流する時が来ることも。

『―以上が現在我々が知っている未来の出来事です。いきなり信じてくれなんて無茶なことは言いません。しかし、ウォーレン殿からの話を聞く限り、サターシャ殿は賢明な方だと聞いております。その通りの御方ならきっと引き継いでいただけると私は確信しております。一考する時間もたっぷりありますので、あなたが正しいと思う判断を。では、正確な日時と場所をお伝えします。2112年の8月15日、イギリス時間の正午、場所はウォーレン殿たちがこれから建てるであろう一軒家周辺、そして私の名前“アキラ・ナガオカ”とはっきりと繰り返し連呼し続けて下さい。そうすれば必ず反応する一人の人間が現れます。その者はあなた方にとって地上の人間たちと交流できる仲介者の一人となっている人間です。約束の日に近づけば近づく程誰なのかは自然と分かります。彼にはこの映像で知ったこと、ウォーレン殿が建てる一軒家について、全てをお話し下さい。彼もまたすぐに納得はできないでしょうが話を聞けばきっと分かってくれるはずです。この映像で話した全てに関しては他言しないことを固く守ると誓っていただきたい。でないと予知した未来が変わる可能性が出てしまうので。ではこれにて、あなた方『エスペランサブリテン』の民たちの未来に幸があらんことを』

 映像はそこで真っ白になり、何も映っていないフィルムテープがちょっとばかり上へと巻き取られていくのが見えた後に停止した。

「分かってくれた?」

 映像を見終わった後の反応を聞こうとアンナは語り掛けてきた。

「・・・・・とりあえず、あの一軒家に入って見るとしようか」


 昭和っぽい一軒家は中身も昭和っぽかった。そして埃だらけ!まあ100年も経てばそうなるわな。部屋の中を歩き回りながらアンナたちに当時のことを聞いた。

「この建物内に立っているカカシが全部爺様が作ってくれたブリキバケツ人形と作りが全く同じなんだ。これをウォーレンたちが?」

「そうよ。でも何故それを、何の為に造ったかは正確なことまでは教えてくれずにみんなこの世を去っていったわ。生前彼らは一様にこう言ってたわ、『未来の為』って」

「自分らも彼女からこの件を聞いてあの映像を見たのはここに初めて来た3年前です。関係者だったのでこれまでにも隠すために被せていた布の中に入って窓越しで部屋を見てきましたが特に変わった点はありません。何か気づいたことは?」

「まだ分からない。感知能力で調べたところでは人形たちが置かれている以外はお前の言う通りただ古いだけの部屋にしか思えない。だが“あること”をすれば何かが起こるんじゃないかと俺は考える」

「“あること”って?」

 問いかけるアンナとブルーノたちに、振り向き様に答えた。


「“クローン・ウォーズごっこ”だ」


 答えを聞いたアンナたちの反応はというと、

 

 これだ。➀、➁、➂。


 無。


 


「・・・・・うん、分かるよ。そういう反応するのは当然だ。俺だって客観的に言うとしたら『何で肉体年齢的にも精神年齢的にもガキな遊びが浮き上がってくんの?』って話だ。ストーリー構成にしても、『ったくこの作品どうなってんだよ~クローン・ウォーズ要素ばっか話に絡め過ぎなんだよ、押し付けすぎ~。マンダロリアンとかのネタもたまには絡めてみろや~』と読者にも厳しい批判をされても仕方ないと思うし」

「あの~、自分らはそこまで深い考えはしてませんよ?」

 とブルーノは一応俺の指摘を否定してきた。

「てゆーか『マンダロリアン』も結局スター・ウォーズだしね」とツッコミアンナ。

「まあとにかくごっこをするっていう考えが出たのは、これらの人形を見てから思いついたんだ。これを見てみろ」

 俺が指差したカカシの頭を表すブリキバケツには赤ペンキで的と数字の“6”が記されている。

「なぜ数字が?」

「人形またはカカシは全部で11体。番号は0から10まで全て揃っている。爺様は俺の為にこれらと同じカカシを自分の実家に作っていた。それも俺がどんな遊びをするかも分かった上でだ。数字に“0”と“10”の両方もあるってことはよくある暗号でとかじゃなく、カウントダウンをしてくれという意味が取れる。以上の点を踏まえると、この部屋からは俺に『ブリキバケツたちに振り分けられている番号でカウントダウンしながら撃って欲しい』というメッセージが浮かんでくる」

「な、なるほどね」

 俺が意外にも深く考察していたことに驚きを隠せないアンナ。

「ではカウントダウンが終わったら、何が起きるんでしょうか?」

「さあ?それはやって見なきゃ分からないことだ。ただこのごっこ遊びをやる際は俺一人の方が良いと思う。なぜならば一介の主人公でも一人ごっこ遊びしている様を見せるのは忍びない」

「「「「?」」」」

 言葉を濁したせいか、俺が言いたいことがすぐに分からなかった一同は首を傾げた。

「まあ・・・その、なんだ・・・・・アレだよ・・・・・」

 目を背けながらなんとか気づかせようとする俺にやっと気づいた彼女らは言った。

「「「「ああ、恥ずかしいんだ」」」」

 そうだよ、当たり前だろが。






 はい、というわけで経緯説明終わり。ここまでOK?


 改めてアーマースーツ姿で“0”と書かれたカカシの的にブラスターの一撃を決める俺。


 チョンッカンッ。


 そして、




 ドオオオォォォォン!!




 予期せぬ爆発で吹き飛ばされて後ろの窓に叩きつけられた俺。しばらくすると、外に出て待機していたアンナとブルーノたちが爆音を聞きつけて灰だらけになった部屋に押し入ってきた。

「ギラ!?大丈夫!?」

 彼女の呼びかけに答えるが如く瓦礫の中から上半身を起こして姿を現した俺は呟いた。

「これって正解?それとも不正解?どっちなんだよ、爺様」






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