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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
52/63

48発目 有名人はメンタルも鍛えてなんぼ。





 夜景がきれいに見えそうな窓があり、ブリキのバケツで作られたカカシまたは人形がいくつもある昭和年代っぽい造りな埃だらけの3LDKな部屋でヘルメットの顎の部分を外してキンキンに冷えたお茶をストローですするフォース・トルーパー。そのまま片手でテーブルに置いてる3体のフィギュア付きオルゴールのネジを巻く。タイトルはこう“レックス・コーディ・ファイブス”。巻き切ってボタンを押すとオルゴールから『クローンのテーマ』が流れ始めた。彼はその音色を聴きながらDC-15ブラスター・ライフルを構えて部屋中を俊敏に歩き回った、まるで任務を遂行中の兵士みたいに。お粗末な人形たちの頭部分に数字と一緒に書かれている赤い的に順番にブラスターの一撃を食らわせて倒していく。そして流れる曲にタイミングを合わせて部屋の中心に立たされた最後のカカシを前にしてブラスターを掲げて横に歩き、90度『左向け左!』に『撃ち方用意!』『構え!』な執行人みたいなことをした。曲が終わるのと同時に、その“0”と書かれたカカシの的にブラスターの一撃を決める。

 チョンッカンッ。

 すると、


 ドオオオォォォォン!!


 どんな仕掛けなのか突然起きた爆発と爆風で後ろの窓に向かって吹き飛ばされていく俺。

 くそー、デッドプールの奴ぅ。日本漫画で連載デビュー果たしやがって。しかもあのおいしいヒーロー:パンツマン、MCUに進出して売り出す本腰上げやがった。あ~羨ましい~。見てろよデップー、いつかは俺達の弾だって今にデカくなるぞ?メガトン級並みに。

 何で俺が昭和っぽい部屋で肉体年齢的にも精神年齢的にもガキな遊びをしてたかって?よっしゃ説明しよう!まずはそれに至る経緯から教えようか。

 その一部は1週間と3日前に遡る。

 俺はBULLETSとして仲間たちと一緒に世界を股にかけ、あの“アシュボーンの戦い”以降大人しくしてたものの力を蓄えてまだブリテンの地下都市を乗っ取ってしまおうというアホな計画を練っているゲリラ集団にテロリスト、傭兵軍団&賞金稼ぎチーム、マフィア、ギャングたちをお仕置きしてた。奴らを“不殺ころさず”で務所送りにできるのは俺達だけ。左頬に十字傷つけたりしないけど、ぶちのめしてやりますか。



 例えば、モスクワにあるビル群の内一つのビルにて。

 ここの64階では『トリィ・カーロニ(ロシア語で意味は“三つの王冠”)』と名乗るマフィアたちが、来るエスペランサ乗っ取り計画の決行の為の戦意鼓舞みたいなパーティーをやっていた。

『♪パッパッパッパッパッパッパッパ、パーランパランパンパランパランパラ~ン、パンパンパラ~ン、パンパンパラ~ン♪』

 盛り上がっていたそんな会場に設備されていたスピーカーから突然『ビゼー作曲:カルメン組曲~前奏曲』の67小節目からを一人だけで奏でる何者かの声が流れてきた。当然マフィアたちは警察の取り締まり・同業者による潰し・殺し屋か賞金稼ぎによる暗殺、色んな可能性を考えて手持ちの銃やナイフ、テーブルの下に隠してあったサブマシンガンやアサルト・ライフルを構えて周りを警戒し始めた。そしてカルメンの135小節目が終わると、

『はいどうも~、日本のお友達からたくさん武器おもちゃを爆買いしちゃった君たち~。戦いの前にやる前祝いって失敗するフラグってこと知らないのか?まあいい、同業者だった奴から君たちのこと聞いたけど、元々そんなにデカい組織じゃなかったらしいな。でも5月にエスペランサの存在を知って急に勢力を拡大したんだってな。怖いよな~人間は、未知の資源があると分かればすぐそれを我が物にしようってイキり立つんだから。ところでさっき俺が歌ったカルメン、一応録音してたからこの先獄中で良かったら聞いててくれるかな?多分君らはお断りだろうけど。さてと、そのビル内から無関係な人間の全員退避が今完了したからバラすけど、俺がいるとこ嘘偽りなく教えよっか。トップのお三方を中心にぃ南西の窓からぁ、見上~げて~ごらん♪』

 マフィアたちは声の主の言う通りに3人のボスを中心に南西の窓から外を見ると、空中を滑空して見下ろす件のBULLETSのメンバー:フォース・トルーパーがジェットパックで滑空し見下ろすのが見えた。各々が持っていた武器で撃ち落とそうとしたその時、

 バタンッドカドカドカッ。

 会場の正面入り口から武装した緑のスーツを着た男たちが入ってきた。

『まあ、一人じゃないんだけど。今言ったからな?』

 元同業者でBULLETSのメンバー入り及び傘下に入ったラスティ一家のご登場だ。

「それじゃあ、激しくイッちゃおうかねぇ!!」

 自前のM60からスタンバレットをぶっ放す“”ことラスティ。

『ヤラしい言葉使っちゃらめ~。まあいいや、読者の皆、脳内BGMスタート!』

 滑空してた俺も窓から突入して、混乱中のマフィアたちをブラスターで倒していく。先頭を切り出してガンナー役を担うラスティを援護しロンも三段式警棒とFNモデル・ハイ・パワー・キャプテンで敵をボコボコにして撃つを繰り返していく。俺も背中のジェットパックは消してDC-15AブラスターからDC-15ブラスターライフルに切り変えてナイフで斬りかかってくるマフィアたちをブラスターをぐるぐると回して吹き飛ばしていった。時には飛んでくる銃弾をアーマーやブラスターで叩き落としながら防ぎ、二人と呼吸を合わせてマフィアたちを倒していった。

 これで奴らのパーティもマフィア組織も解散だな。はい制圧☆

 


 オーストラリアのとあるビーチ。

 ブリテンへ乗り出す前の最後のサマーシーズンに貸し切りビーチでバーベキューをすることで満喫中のギャングたち。

 その同じ砂浜からにゅっと顔を出す、俺(“ハードガンマン”としての)とサマーソルジャー:広子、クイックシグレ:巴。

「は~い、君たちのサマーシーズン終了のチャイムだよ~」

 ドンッドンッドンッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 アロハシャツ姿で逃げ惑いやられていくギャングたち。そいつらの中でギャングボスだけは資金を詰め込んだアタッシュケースを持って運よく逃げ出そうとしているが、海岸丘で待機していた正士による狙撃で再起不能にされた。

 Woo~これチャック・ノリスも頷くわな。




 フィリピンのとある密林。

 ここでは『タトロン・ビトゥイン(タガログ語で“三つの星”)』と名乗るゲリラ&テロリスト集団が巣くっていて、現地政府に取引を持ち掛けて国を挙げてのブリテンへの宣戦布告をしようと画策していた。そうはさせまいと俺とキーラ・ブリテン:エリ、浅緑の太刀:菊谷、バール・フラッガー:千恵、ゼロ:実央が奇襲をかけた。

 密林では地形をよく知っている犯罪集団が有利だ。ならば、各一人が誰にも気づかれずに相手を一人ずつ捕まえていくのが確実な戦法だ。木の影、木の上、茂みの影、地面の中、泥の中、色んなところに隠れ、そして近づいたゲリラ・テロリストを各々が持つ剣・刀で殴って捕獲していく。

 まあ相手にとっちゃ、知り尽くしてるはずの森に襲われて恐怖を感じてただろうけど。



 パキスタンのとある洞窟。

 ここには多くの傭兵軍団&賞金稼ぎチームが寄せ集まってできた

 これの鎮圧にはヴァルメア:クレア、ゴルボーン:スターリン、ARC(“Abominable Rabbit Catch”の略):ブラッキー、クローリン(二代目):剣が担当。というか、クレアとスターリンがただガシャンガシャンッと洞窟に逃げ込む敵を殴っては吹き飛ばしを繰り返しながら突き進むだけだし、最奥部でMk44ブッシュマスターII機関砲を準備して待ち伏せをくらっても訓練で散々弾丸を避けまくっていた成果がここで活き、攻撃に耐えるまでもなく30mm口径弾の雨を掻い潜り、機関砲を叩き壊して結局は二人だけで追い詰めたのだった。

「来た意味無いな。俺達」

「・・・・・ですね」

 と、もはや出る幕なしとで洞窟の外でボヤくブラッキーと剣。



 イタリア:サンマリノ。

 ワールドツアー途中の俺は巴と一緒に、ペティ、ヒナ、好華、クレア、スターリンと合流して懐かしの憩いの場でも繰り出そうとここへ来たんだ。

『マダム・アリーチェのバー』。

 ここはよくある賞金稼ぎや傭兵が仕事を貰いに来て酒とビリヤードを楽しむ場所だ。俺やペティたちはここで酒を注文したことないけど。さて、ここでもやってた恒例の入口でのアレ、やりますか。

 ゴンッ。

「Ouch!」

 すると、バーを仕切ってるマダム・アリーチェと店でにぎわってた客連中が真っ先に入口に注目してきた。

「フォース!?」

「それにビシャ、ペトラ、お前らもか!?」

「ようお前ら~元気にしてるか~?ジーノ、また彼女に浮気バレてないか~?セスト、仕事と彼女見つけた?ルチア、また僕の男増やしちゃった~?そしてマダム!まだまだ仕事と酒だけが恋人?」

「まだまだ仕事と酒だけが恋人よ。そういうあんたらこそ今更何の用?今やスーパーヒーローになったあんたらにとっちゃ、ここはもう行けない場所なんじゃないかい?それとも取り締まりにでも来たのかい?」

「悪い奴らぶっ倒してスッキリ~。昔とやることは変わってないさ。ただその行いが公になっただけ。だからここにいる悪党も掃除しちゃう~なんてのは冗談。せっかくのサマーシーズンだから会いに来ただけ。あと世間はスーパーヒーローだって言ってるが、俺本人はそうだとは認めていないからな」

「あんたならそう言うと思ったよ。ビシャたちも久しぶり。例の中継映像、顔はモザイクだったけどあんたらがいるってすぐ分かったよ。元気どころか全盛期って感じ?」

「久しぶり、マダム。人生で最高の瞬間をここのところ更新してばっかりよ」

「そりゃ良かったね。それで、コイツの初めては奪えた?」

「おっと、女のトークするならごゆっくり。俺はゴルボーンと一緒にあいつらのテーブルで男のトークやってくるから」

 このままだと絶対俺のプライベートを探りイジってきそうだから場所を変えよう。

「あそうだ、フォース。あんたに伝言メモだよ。つい昨日“あの二人”もここに来てね」

「あいつらが?どれどれ」

 渡されたメモの内容を理解すると、俺はちょっと嫌な気分になった。

「・・・・・はぁ、セスト~、お前にプレゼントができた。受け取れよ~」

「何だ・・・・!?」

 背中から手にしたブラスターの一撃をプレゼントする俺。

 チョンッ。

 椅子から落ちて床に倒れ込むセスト。

「残念、良い奴だと思ってたのに。セストの奴、武器密輸のパイプ役やってたらしい」

「あらまあ、最近やたら電話をかけてるのがチラホラ見えてたから彼女ができたのかと思ってたけど、取引相手イケないカノジョだったか」




 

「おいおいフォース。コイツとトランプ中でもう少しで仕事の報酬を増やすことができたのによぉ~」

 二つの椅子でやっと座れるくらいの巨漢:ジーノ・が持っていたトランプをテーブルに叩きつけた。

「悪ぃジーノ、これも俺達の仕事だ。酒の席を悪くしたお詫びにコイツの財布ととっておきの話題を提供するよ」

 倒れたセストに手錠をかけて、ジーノに財布を渡しながら椅子に座る俺。

「何だよ、儲け話ならしばらくはお断りだぜ?この財布もそうだけど、つい昨日賞金首とっ捕まえて収入はもう十分なんだ。遊び倒すからな」

「まあ聞けよ、仕事は関係ないが、これすっごい重要だからな。(小声:フォースはもう童貞じゃない)」


「「「「「!?」」」」」

 ゴルボーンが小声で発した一言だけで、ジーノはもちろん別テーブルにいた昔馴染みの連中までもが衝撃を受けた顔になった。

「Wow~、インスタ映えしそうな神写真になるなこれ」

「お前・・・・・!何で童貞捨てちまうんだよ!!俺の金を返せ!!」

「金?俺の童貞のあるナシで何で金が・・・・・?」

 よく見ると、他の連中の間で金を渋々渡しそれを嬉々として受け取る二種類の人間がいることが分かった。

「おい、まさか俺が童貞を捨てるか捨てないかで賭けてんじゃないだろうな?」

 そう言いながら店中を見回すと、カウンターのすぐ上に俺の知らないデカい看板が掛けられていて、それにはこう書かれていた。

『Vergine di Fours(フォースの童貞)/buttar via(捨てる):€100・non gettare(捨てない):€200』

「賭けてんじゃんか!しかもあんなにデカく目立つように!なんだよ、人様の尊厳の一部を賭け材料に使うなんて、最悪の知り合い共だな!金が入用だからって友達の死を賭けてた誰かさんもどうかと思うけど」

「お前みたいな野郎は絶対捨てることができずにただモジモジしてるだけだと思っていた!なのになんで捨てちまうんだよ!そしておめでとうよぉ!」

 ボガァッ。

 そしてジーノは俺の顔をヘルメットと一緒に殴ってきた。倒れはしないものの痛いものは痛い。

「Oh・・・・・祝福ありがとう。でも俺のこと軽く見過ぎだな。昔もよく言ってたろ?『俺は女に興味ありまくりだ!』って」

「けどよお前、いつか呟いてなかったか?『誰とも抱くこともなくなりそう』って」

「あ~・・・・・言ったっけ~?そんなこと~?」

 はぐらかしているが、ジーノが言った『昔のネガティブな発言』を俺自身もちゃんと覚えている。あの頃は例の暗黒物質を抱えていた時期だったから、生きることに関しては消極的になっていたからそういう呟きもしていたのだ。

「はあ、まあ昨日受け取った報酬3分の1がなくなっただけだし、セストの合わせりゃちょっとだけ儲かってるから良しとするか。で?あいつらの誰とヤッたんだ?」

「人の情事をいちいち聞くなよ、それはペティたちのことも考えると言えない」

「それじゃあ、マダムら女たちの賭けがどうなったかを後で聞くとするか」

「・・・・・今何て言った?」

 まさか他にも賭け事が!?



 少し時間は戻ってカウンター席では、マダムとルチアら女性傭兵たちがビシャたちに質問攻めをしていた。

「それでそれで?今やスーパーヒーローになったあんたたちだけど、フォースはやっぱり童貞捨ててないのかな?」

「誰か彼への恋を諦めた子はいる?それともまだ諦めずにアタックし続けてる?」

 ビシャたちは全員で顔を見合わせた。答えに困ってしまったからだ。事実が色々と滅茶苦茶だから当然だ。とりあえずマダムの質問には答えることにしたみんな。

「あらまあ、あたしたち賭けに負けちゃったね」

「おかしいね。私たちが知ってるフォースだと、誰とも結ばれずに早死にしそうだと思ってたのに」

「中継映像を見た時はまだ生きてたんだってちょっとだけ驚いたからね~」

「まあ、彼にも色々と事情があったから・・・・・」とペティ。

〈本当に死にかけてたからね・・・・・〉と考えるビシャ。

「でも今の調子だと生気が溢れてる感じがして逆にイキってるね?一体誰が彼の初めてを奪ったんだい?」

「ここにいない誰かだよ」とフィート。

「ありゃ?・・・・・もしかしてそれって、フォースが昔想いを寄せていたっていう女?」

「違う、別の女」と少々不満気に言うウィング。

「じゃあつまり、ここにいるみんなは全員敗北者?」

「そうとも言えれば、そうとも言えない」とフィート。

「「???」」

 面倒になりそうなのでペティは全てを話した。フォースには私たちを含め10人以上の女性に好意を持たれていて、童貞を捨てた日にここにいる仲間ともシたことも。

「しばらく見ないうちに絶倫男にぃッ!?」

「男を上げ過ぎたね~あのアーマー君」

「ていうか、あんたたちももう経験しちゃったんだ・・・・・」

「絶対ペティで童貞捨てるって賭けてたんだけどな~」

「あたしはウィングちゃん」

「私はフィートちゃん」

「残念だね、この賭け誰も勝者ナシだわ」

 女性たちの間では、マダムの宣言で暗い空気が流れてしまった。これは酷い。私たちの色恋沙汰で賭け事が行われていたとは。

「つまり、ヴァルメアちゃんの騎士道も遂に穢されたってわけだね~」

「おい!たしかに私は彼と男女関係を結んだが、そんなんで私の騎士道は屈っしたりしないぞ!」

「はいはいそういうのは良いからエロメア、今の発言でますます板に嵌ってきてるよ」

「エロ・・・メア・・・・うぅ・・・」

 二つ名にエロを組み合わされて甲冑の中でショックを受けるヴァルメア。 

「やるわねアイツ、何だか31人目の僕にしたくなってきたかも」

 あれ、もっとヤバい奴がここにいた?

「ルチアさん、私の記憶が正しければ男の僕7人って昔言ってなかった?」とビシャ。

「昔はね。今じゃ30人になってるわ」

 ・・・・・この世界でも持ってる奴は持ってるんだね。


「よしお前ら~、この地球のゴミをあるべき場所に持ってくぞ~」

 男サイドに女サイド、どちらもある程度トークを終わらせた後、俺の呼びかけで席を立っていった。

「もうちょっとゆっくりしていけば~?せっかくのサマーシーズンなんだし、何ならウチの宿使ってフィートたちと休憩しちゃえば良いのに、ふふっ♥」

「お膳立てどうもマダム、だが生憎俺達は忙しい身でな。この後もロンドンに向けて出発しなきゃだし。これ、“あいつ”に渡しといてくれ」

 折りたたまれた赤い紙をマダムに渡すと、俺はまだ気絶してるセストを俵担ぎで運び、ゴルボーンたちを連れて店を出ようとした。

「ってことはやっぱりあんたら今度の15日、イギリスに行くのかい?」とルチア。

「その通り。だから俺達にはサマーシーズン的なイベントは一部先送りにしているわけだ。水着イベントはもう迎えたけど」

「お~いフォース、良かったらロコモのサイン色紙貰ってきてくれねぇか~?俺彼のファンなんだ~」とジーノ。

「あ~はいはい、あいつが燃料補給で休憩中に遭遇したら言っておくよ。お前のファン1号はボツ案キャラだったってな」

 そう言い残して俺達はバーを後にした。


「おっと、一応読者の皆には言うけど、喋りとか全部日本語で執筆されてても実際は英語で喋ってるんだからな?俺達。OK?」

「カメラ目線はいいから早く行くわよ」

 冷たいな~巴は。



 さて、この小説を読み込んでくれてる読者の皆なら分かるよな?復習しちゃうぞ~。

 まずは、31発目で俺がメイド喫茶『Agata Eden』で実央にこっそりと教えていた『8月にブリテンで異種族のみで構成した喫茶店をやる』こと。

 次に46発目でしれっとブリテンの首相が発表した『地下都市:エスペランサの一部が公開決定』という世界的一大ニュースが駆け巡っていたこと。

 来る8月15日は、“キーラ・ブリテン”でもあり“エリ・ブーリン”でもあるフィア王女の誕生日だ。

 そして最後にあの“ブリテンの奇跡”事件の三日間に含まれる日、世界中がこの時期にブリテンに注目しないわけがない。事実、そんなお祭り騒ぎでワイワイしてる国を滅茶苦茶にした上に占領してしまえばその組織は世界に自分たちの存在を見せつけ歴史の表舞台に出ることができる、そう思い込んで準備していた各犯罪グループたちがいるんだ。5月にBULLETSがデビューしたように。だから俺達はそいつらの存在をいち早く気づいて地球の部分的掃除を目的にワールドツアーしてたわけだ。



 そんなこんなで俺達はイタリアに立ち寄った翌日、フランスを拠点とする『トロイズ・リス(フランス語で意味は“三つのユリ”)』と名乗るギャングの一団を追ってロンドンに着いた。“三つの”って名前つけるの犯罪界で流行ってるのか?まあとにかく、こいつらを率いてたマルタンって奴は面倒だったよ。なんせブリテン行きの旅客機をハイジャックしてそのままエスペランサの巨門に突っ込む!な~んて厄介な作戦を実行までしてたもんだからな。なんとか飛行中の旅客機に追いついて侵入し、好華の弦で拘束、敵の武器はスターリンとクレアがガッチャンガッチャンと壊していき無力化、最後の手段として積んでいた爆弾もヒナの亜空間で処理、後はパイロットを解放し南へUターンさせて本来数時間前に到着するはずだったロンドン空港に着陸させた。そこでは旅客機に乗る前の人々+報道や放送、連絡を聞いて駆け付けてきた大勢のBULETTSファンが空港に集まりつつあったのだ。おかげで空港は少々パニック状態になってる。そんな光景を着陸後の旅客機の窓から見る俺達。

「ハイジャック事件の後なのにこんな盛り上がりがあっていいのだろうか?犠牲者ゼロを一番に喜びたいのはむしろこっちなんだけどな」

「でもああいうの、嫌いじゃないんだろ?」とスターリン。

「嫌いじゃあない。喜びを歓声に変えてくれてるファンにも感謝したいくらいだ。でも昔はこういうのは隠れてやってきたことだから、なんというか・・・・・こう・・・・・」

「むず痒い?」と補足好華。

「そう!むず痒い!あの大衆の前に立ったら俺どうにかなっちゃいそう」

「異種族公表の時の勢いは何だったんだ?」とクレア。

「あれは若気の至りだ!」

「119歳が何言ってんだ!」とツッコミスターリン。

「じゃあギャングたちを警察に引き渡したらすぐロンドン塔にトンズラする?」とヒナ。

「トンズラする」

 とりあえず今は落ち着きたい。



 ところ変わってロンドン塔の一室。

「はあ、やっぱ人目に付くのって気乗りしないな。ああいうのを素でやってのけてるトニー・スタークとかは本当にメンタルすごいよな。彼見た目も心も“アイアンマン”だよ」

「俺もアイアンマン好きだけどよ、いちいち昔のスーパーヒーローで例えるのはそろそろやめたらどうだ?メンタル強い人間なら、お前の周りにもいっぱいいるだろ。元明治維新の志士だった内匠首相とか『黄金のスピーチ』をした経歴があるフィア姫殿下が」

 仕事ばかりだった旅の疲れをと城の一室を借りて、俺は着物、スターリンは床にゴロンと寝転がって休んでいた。

「スターリン、スーパーヒーローに昔も今もない。どこの誰でも良い、とにかく人の心の支えになれてる特殊な奴、それがスーパーヒーローだ。そして今の時代は地球上の全人類がそれになり得る可能性を持っている」

「じゃあお前だって現在進行形で誰かの心の支えになってるだろうからスーパーヒーローで良いんじゃないのか?」

「イイんだよ俺は。そもそもそれになりたいと思ってこの仕事をやってるわけじゃないんだから。例え世界中のみんながスーパーヒーローになる未来だと決まっていたとしても、俺は絶対にスーパーヒーローと名乗りたくない」

「スーパーヒーローっぽいことしてるのにスーパーヒーローであることを否定する男か。やっぱりお前は変わってるよな」

「笑えるか?」

「いや、でも見ていて楽しいさ。3年後、お前がどんな感じで異世界を冒険するのか見物だな」

「おい、冒険ってのは日常生活よりも隣り合わせな死の恐怖に怯えながらも立ち向かう所業のことをそう呼ぶんだ。お前だってそれに参加するんだ、まだ軽く見てないか?訓練課題また増やすぞ」

「他人の訓練を増やすことよりも自分のこと考えたらどうだ?15日の準備を手伝うんだろ」

「ああ、そうだったな」



 地下都市・エスペランサの巨門付近では、ドワーフ・ミノタウロス・セントール・聖オークなどのパワーに自信のある種族たちと事務作業を担当する人間や獣人族・エルフたちが一般公開する際に訪れる人々を迎える為に建てられた施設内で準備を着々と進めていた。その中には一足先に手伝いをするよう課題を与えられてブリテンに来ていた剛・唯・奈々がいた。

「よ~うお前ら~、どうだ調子は~?」

「「「疲れはしないけど、気乗りしない・・・・・」」」

 だらけ切った声で答える3人。

 ・・・・・まず遊びじゃないからな。

「もちろん取り仕切ってるカ―リンさんの指示通り手伝いはできてるんだけど、なんというか場違い感がするよ」

「俺達、手伝ってるのに妙な疎外感があるんだよ。最近戦いこそが仕事だと思ってやってたけどよ、これが普通の仕事ってやつなのか?」

 この3人には労働の何たるかを体験してもらおうということで今回の手伝いをさせているわけだが、どうやら各々思い描いてた労働とは違ってたらしい。まあ就職する人間は大体そう考えるのが普通だ。

「それはお前らも他の種族たちもお互いに遠慮してるからさ」

「「「遠慮???」」」

「よく考えてみろよ、今回ブリテンに来て唯と奈々は異種族に会うのはまだ二度目、剛に至ってはエルフのように外見が人間とあまり違和感がない者を除いた種族と直接会うのは初めてだ。そしてお前ら3人は世間ではスーパーヒーローとして名が通っている。あっちも肩書きを知っているからこそ唯たちに対してはまだ近寄りがたい印象なんだ。上司の言う事をしっかり聞いてても、ずっと知り合い同士だけで固まってたらやるべきことはできていても効率は上がらない。大人がやる普通の仕事でも同じことだ。同じ職場で働いてるあまり接点がなかった同僚とも連携して業務に取り組まないと効率は低下する一方だ。意識を統一できてこそ、立派な社会人になれるってもんだ。これは戦士である依然に文明人として学ぶべきことの一つだ」

「お、おう。あたし鬼なんだけどな・・・・・」

「鬼だろうが人間だろうが関係ねえぞ~、同じ文明社会に住んでる者は皆文明人だ。それはちゃんと自覚しろよ~」

「・・・・・見た目は同年代、中身は年長者。人生の先輩だって分かると妙に説得力があるよな、お前。シワないのによ・・・・・」

「やっぱスーパーの社員を長年やってただけはあるんだな~」

 ははは~、言いたい放題だな。事実だけど・・・・・。







 評議会が位置するドーム状大理石の建物から東の壁は『エスペランサブリテン』の中でも特別な場所の一つである。そこは断崖をくりぬいた施設になっているのだ。世界遺産で例えるならメサ・ベルデが地下にあるパターンだ。

 記録保管所。

 エスペランサの住人がこの世界にやって来てから162年、彼らが地球のことについて調べ上げたデータ、同時に自分たちがいた世界の資料、自分らが覚えている歴史全てを結集させている重要な場所だ。施設の管理を任されているのは、住人の中でも永遠の命を保つ種族・エルフだ。

「『Garden of satisfaction(満足の園)』人員の配置、テーブル・椅子の数、内装の造り、売上帳簿類の書記、全て記録済みです」

「ご苦労様。それじゃあ後はブルーノたちが整理してくれるから。あなたたちも部屋で休んできなさい」

 指示された通りに持ってきた資料を置いて部屋を後にするエルフたちを見届けると、

「はあ~やっと終わったわね~」

 15日に行われる一般公開に向けての準備に関する記録資料の確認を終わらせ、椅子の背もたれに寄りかかって一時の休みを取るアンナ・サターシャ。

「なんだかワクワクしますよね!我々の都市に地上の人間たちが訪れるというのは!」

「我々もいつか、存在を認められる日が来ることを楽しみにしております!」

「でもまずはエスペランサの方々がっ!地上の人々と距離を詰めるのが最優先ですもんね!」

 喋っているのは、アンナの代わりに資料とデータ媒体などを棚に持ち上げて押し込んだりPCで整理・保存・コピーしている3人のオークだ。名前はそれぞれブルーノ、ニカノル、ステファノ。

「それもそうだけど、私たちにとっては別の意味で大事な日だからね・・・・・」

 アンナの一言でその場にいる全員が真剣な面持ちになった。

「・・・・・例の件、遂にやるのですね?」とブルーノ。

「ええ、全て彼の予言通りになっているもの。やるべきだわ」

 そう言ってアンナは、窓の外のすぐ下にある町の造りに合わない古い一軒家を眺めていた。


(あなたのお願い、ちゃんと果たすからね。ミスター・ナガオカ)









 だいぶ遅れましたが、あけましておめでとうございます!

 今年も時代の嵐にも負けずに、執筆を続けたいと思います!

 ちょっと余談ですが、スターウォーズゲームのオープンワールド系が制作されることが発表されました!自分としては、プリクエル時代を題材にと希望してます!!



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