44発目 “肝”も大事だがそれよりも“競争”、そして・・・・・・“認識”?
午後19時も過ぎてすっかり夜のランドになった八景島シーパラダイス。
あいや、ちゃんと健全な夜の方のランドだよ?
そんなランドの南エリアにある施設裏にて。
緊張しながら辺りを見回すずんぐりした体格の男が誰かを待っていた。
「待たせたな・・・社長さんよー・・・」
漆黒のサングラスをかけている長身の男だった。
「や、約束通り一人で来た!!」
「一人で来たのは知ってるさ」
「は、早く例の物を・・・」
「焦るなよ・・・金が先だ・・・」
「ほら!これで、文句あるまい!!」
うわー、あんなモンまで用意しちゃって。やるな~あいつ。
怪しげな取引現場を目撃している丸刈り高校生。
「よし、取引成立だ!!」
「さあ、早くメモリを・・・」
「ほらよ!お前の会社の拳銃密輸の証拠のデータだ・・・」
えっと・・・・・ここで、写真は撮って置いた方が良いんだよな?
ポケットから携帯を出してカメラアプリを起動するが、取引に夢中になっていた彼は、背後から近づくもう一人の仲間に気づかなかった。
「探偵ゴッコは、そこまでだ!!!」
冷酷な目つきをした長髪のがっしりとした体格の男が鉄パイプを高く掲げて容赦なく振り下ろす。
ドカッ。
「へー、マジで後ろからお約束なことするとはな~」
しかし、高校生は倒れないどころか血も出ず、鉄パイプだけがへし折れていた。男は想像していた次の展開にはならなかったことで呆けていた。
〈?今コイツ、俺に鉄パイプ当てられたよな?なぜ平気なんだ?〉
「あ、相棒!?」
長身男がそんな二人の存在にようやく気づく。
「ぶふっ!そこは兄貴じゃないのかよ・・・・・ぐふふっ」
「て、てめぇ、何がおかしいんだ!?このデブ社長!!」
嫌な笑われ方をされたことに腹を立てた長身男は、隠し持っていたサイレンサー付きのラドムVIS wz1935を社長に向けようとするが、受け取っていたはずのアタッシュケースが手元から消えていたことに気づいた。
「あ、あれ?金はどこに・・・」
「あ~、あれ私が作った偽札。もう消しちゃった☆本物は今頃警察に届いてる頃だろうね」
「・・・・・てめぇ、何のつもりだ?ここでそんなことバラして逃げれるとでも・・・・・!」
長髪男は社長に殺害予告をするかの如く怖い目で睨みつけるが、相手の体から出るはずのない電流が走っていることに驚いた。
「とっくにもう逃げたんだよ。今の状況的に一番安全な場所・・・・・・・警察署の留置所にな」
『警察署』のところから体に電流が流れると共に“社長”の姿をしていた人物は姿も声も変わり左目を閉じて不敵な笑みを浮かべた一部白髪な高校生になっていた。
「そんじゃ、二人VS二人の対決やっちゃいますか」
「嬉しいね~、実行前に俺にあんなこと頼み込んでてちゃんと一人に加えてくれるとは。『衝撃』に加えて『重力』も無効化~」
黒づくめの男二人に向き直る一部白髪高校生の隣に呆れ口調で喋りながら立ち、
「さあて。てめーら、ボッコボッコに殴るぞ」
気を付けの姿勢のまま足首を片手で武器みたいに掴まれる丸刈り高校生。
〈〈・・・・・・・何で?〉〉
「いつかやるんじゃないかって思ってたよ・・・・・」
と小さくぼやく丸刈り高校生。
それから数時間後の神奈川警察署刑事課にて。
「課長、今日だけで20人も逮捕者が出るってなんか逆におかしくないっすか?ほとんどが外国人だし、どっかの会社の社長だったり設定がごちゃごちゃなボロボロの黒づくめの二人だったり。しかも捕まえた人が匿名で署の正面入り口に置いてったり色々変じゃないっすか」
「余計なことは考えないで。本店も明日には引き取りに来るって連絡もあるんだから、下手な詮索はしないでよ、青島君」
「自分、赤島っすよ。魚住課長」
「私は鳥住だ」
いつも通りの緩い警務を送る二人の警察官であった。
俺と剛が一仕事終えてホテルに帰ると、巴たちが待ち受けていた。
「で?学校のみんなが夕食を取っている間に二人して怪しげな取引現場を押さえてヒナと好華に追跡を頼んでいた黒づくめの男たちを警察署送りにしたと」
「いや、何かっつーと『黒ずくめ男パニック』に興じていたと言った方が和むんじゃないかと」
「それか『黒ずくめ男叩き』とも言えるな」
お互い近しい意見を出し、見合わせて指差し。
「「うぃ~」」
「それはいいけど、10人目の相手のエリとはどうやってデートするの?このあと『肝試し大会』なのに」と唯。
「そのことに関しては何の問題もない。もう仕込んでるからな」
「・・・・・お前、何か企んでんのか?」
「いやいやいや、俺なんかよりもこの後にクズな企みを抱えてる奴なんざいくらでもいるんだよな~、今夜は」
「「「「「「「「「「「???」」」」」」」」」」」
『さあやってまいりました~!!肝試し大会です!!』
指令台に立つ運営側である生徒会メンバーの一人がマイクを使って進行役を務めていく。
うちの肝試し大会は、男子がそれぞれ自分の名前を書いた紙を夕食時間の直前に全て集めて置いて、大会の始めには女子がその紙を箱から選び当たった男子とペアを組んで肝試しコースを行く、という内容だ。
「まあ俺が出した紙は自分で創造した紙だったからとっくに消えてるけど」
「「「「「「「「「「「ズルじゃん!!!」」」」」」」」」」」
「お前ら、『バレなきゃあ、イカサマじゃあないんだぜ?』と『問題は問題にしない限り問題にはならない』だぜ」
「ドヤ顔で言えることじゃないだろ」と剛。
「俺にとっての注目点はな、唯たちとペアを組む男子たちの末路がどれだけ悲惨なのかだよ」
「うわ、コイツ他人の不幸を楽しんでるぞ」と剣。
「俺だってな、逆の立場で唯たちの誰かとペアなら絶っ対意識して肝試しすること間違いなしだって断言できるんだからよ!相手が別の男を意識してて表面上は気を遣ってくれるという現実は非情な話」
「つまりあいつら、この大会で男を一人ずつ弄んで最終的には捨てる気であると?」
「ちょっと、人のこと勝手に悪女扱いしないでくれないか?」とクレア。
「じゃあ海の女神カリプソ?」
「結局男弄んでるじゃんそれ!8人も女神いたら世界中の海が毎日大荒れだし!」
そんなボケ&ツッコミをやっている俺達がいても大会の進行はなされている。
『さあ最初にくじを引くのは・・・・・あ、あれ?あなた何組女子ですか?』
『『2組女子で~す!匿名で行かせてもらいま~す!希望の相手は、す・・・・・』』
赤髪女子とどう見ても大人の女性が菫楼高校指定夏用セーラー服で高台に立ってコメントしていた直後に俺と奈々によるツッコミ兼退場の蹴りを、尻で受けた。
『『いぎいぃぃっ!!?』』
コメント中だったからかマイクにはしたない声が入り集まっていた男子たち全員が反応してしまう。そんな男子たちを白い目で見る女子だが、その中で尻を蹴られたロザリアとラスティを見て赤面しながら静かに自分たちの尻を押さえるポニーテールっ娘とバンダナっ娘がいた。
「「お前ら学生じゃねえだろ」」
「あたいらにもやらせてくれよ~」
「日本の“肝試し”やってみたい~」
そんな特権はお前らにはない、ということで俺たちが強制退場させた。
1年女子がくじ引きをやっている中、ゴール地点の称名寺では大会運営及びお手伝いをしに来ていた者たちが集っていた。
「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふ、ついに、ついに!あの杉田義羅に鉄槌を下す時が来たあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「せっかくのテスト明け休みだってのに、何で俺達の使用人まで駆り出されなきゃいけないんだ?」
「脅かし役にはバイト代が出るって言うけど、俺達そもそも金なんて間に合ってるのにな~」
「こらそこぉ!ここまでやっておいて今更愚痴るな!例え奴を相手に能力者100人投入しても足りないんだぞ!!?ついでにこの臨海学校で浮かれて大量発生しているカップル共にもピンクな思い出に黒いシミを与えてやる!!!」
「だからってたかが肝試しの為に称名寺の公園に千人以上も動員するか?」
「それに最後の、世のリア充たちに八つ当たりしてるだけじゃね?」
「じゃあお前らはイチャつくカップルが目の前にいても平気なのか?」
「「それとこれとは話が別だ」」
「なら協力しろ。順番だけはこちらで決めて置いた。奴が回るのは最後、その頃にはフォーメーションを変えるつもりだ」
「フォーメーションを変える?使用人たちのセット見たけどあれ十分怖がるんじゃねえか?」
「あいつから一方的に手紙が来たんだよ。『脅かし役やるなら本気出せよ?言っとくが俺はそういうのに耐性があるから。生半可なホラーだったらお前をブラジル送りにしてやる』ってな」
「「本人に筒抜けな時点で詰んでなくね!!?」」
「とにかく!俺は今度という今度こそ!あの絵に書いたように無造作にモテるなろう系主人公みたいな奴に」
「「・・・・・みたいなじゃなくてそういう主人公だからだよ、あいつは」」
そんなやり取りを見ていて、名目上大会の主催を務めているはずの倉田会長率いる生徒会2年生メンバーたち。
「あの~君たち、脅かし役を懸命にやってくれるのはありがたいけど、やり過ぎないでくんない?」
「「「はい~、もちろん承知の上です会長様~」」」
「“様”を付けないでくれない?ホント腰が低くなったよなお前ら」
戻ってスタート地点。
「ええ!?あの3人組が脅かし役を!?」
「そ。この頃出番が中々来ないから、俺達と絡む為にわざわざバイト募集に志願したらしいんだ」
「出番言うなって」と剛。
「いや、絶対何か仕掛ける気でしょ、あのスリーアミーゴス。なんだか嫌な予感がするよ・・・・・。ギラだってそう思うでしょ?」
若干以前のことを思い出していたのか口調が嫌々な感じの唯。
「いいや?むしろ俺は期待している方だ。どんな手を使って俺達リア充を脅かしに来るのか超楽しみだ」
「うわ~、もう自分のことリア充だって認めてるよコイツ」
「世の中な、主観的にも客観的にも見通すことができなきゃ世渡りできねぇんだよ。まああいつらの狙いは俺達だけじゃなく、カップルが確立してしまいそうなペアも標的だろうから妖怪は作り物でも本業のお化け屋敷並みのクオリティを使ってくるだろうからそのつもりでいろよ。ちなみにこれは余談だが、肝試しとは本来霊的なモノによる恐怖に耐えれるかを試すものだが最近では妖怪の作り物で脅かすことが多い。では!解散!」
まずはギラの手引きで剣とペアを組むことができた五十嵐。
「・・・・・・武器がないと、落ち着かないな。」
「・・・・・・うん、私もこういうのは苦手だし・・・・・!?」
脅かし役の『大百足』がさっそく一頭ずつ両端の木陰からのそっと現れた。
「「うおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」」
ボゴオォッ。
二人共咄嗟の行動で、武器が無ければ素手で攻撃をと訓練で染みついていた習性で作り物の大百足を一人ずつで一発粉砕してしまった。
「「お、俺達の大百足えええぇぇぇぇ!!」」
茂みに隠れて操作していた使用人たちが自分の大百足が壊されてシャウトした。どうやら自分たちで作った余程の力作だったようでかなりのショックを受けていた。
「「あ・・・・・すいませんでした」」
この二人はこれ以降もこの調子で、偽物妖怪たちを殴っては謝るを繰り返すこととなった。
次に、ヒナとペアを組めたオタクな3組男子。
「初めまして。自分前から気になっていたんですけど、服部さんがくノ一だって噂に興味津々で。実際のところ事実ですか?もし本当なら忍装束姿、見せてもらえませんかね、えへへ」
彼女に関するネタを追うファンだったらしく、コースを進み始めてからはずっとこのように一方的に質問しているのだ。
そこへ脅かし役の『転ばし』が通り過ぎたばかりの木々から突然出て、本来の速さより遅くゴロゴロと転がって二人を追いかけてくる。オタク男子は少々恐ろしく感じて逃げるがヒナは立ち止まって『転ばし』の大玉を異空間から出した鎖分銅を両端にある木々に網のように張り巡らせて止め、さらに鎖鎌の鎌を刺し込んだ。
「ひっ!」
中身の使用人が悲鳴を上げた。当たりこそはしなかったが。
「今見たことを絶対誰にも話すな、な~んておっかないことは言わないけど、言っても誰も信じてくれないのがオチだからやらないでおくことをオススメするよ?Don't you?」
「Y...Yes I do.」
彼が答えた直後にもう次の脅かし役『雪女』が木陰から登場した。
「せめて可愛い風に作ってくださいよぉ!!」
作られた雪女の顔があまりにも無表情だったので切に訴えたオタク男子。
「そこツッコむの?」
大事なトコなんです、はい。
実央と組んだのは2組男子。
「自分もう相手がいるので、そういう期待はしていないのでご了承下さい」
「・・・・・業務上の挨拶みたいね。こちらもどうなるかはわかりませんが好きな相手がいるので、了解しました」
お互い好きな相手がいることを打ち明けながらコースを進んでいく。
「お相手の人とペアになれなくてやっぱり残念ですか?」
「ええ。でもシーパラダイスではそれの埋め合わせ以上の贈り物をもらったので全然気にしてません」
「贈り物・・・・・それは良かったですね~。自分も相手に何か贈った方が良いですか?」
「きっと喜ぶと思いますよ。でも選ぶのには十分注意するように。間違ったら彼女さんの機嫌を損ねることになるからね」
「ご教授、ありがとうござい・・・・・うわっ!!?」
急に現れた脅かし役は『ろくろ首』だった。だがしかし、本物の妖怪を既に見たことで平気になっていた実央は素手で顔を掴み、そいやっと出てきた木陰に押し戻した。
「さ、先に進みましょ」
「あ、はあ・・・・・」
彼女の冷静な態度に少し呆けながらも付いて行く男子。
続いて巴と組んだのは、チャラい1組男子。
〈この子は強気だから、ちょっと弱気になってれば俺のこと先導してくれる感じで〉
「ちょっとあなた。これを装備してなさい」
「へ?装備って?」
何故か巴から2丁持っていた電動マシンガンを手渡された男子はワケが分からずに
「!何やってるの伏せて!!」
「え?何・・・うわっ!」
巴は脅かし役の『百目』を木陰から出る前から察知して男子を押し倒し、自分で装備していたマシンガンでBB弾を撃ちまくって退散させた。
「モタモタしてたら命を落とすことになるのよ!ここは戦場なんだから!!」
「これ肝試しだよな!?」
その頃、くじ引きも終わらせてエリと一緒にスタートの順番を待っていた俺。
「唯ちゃんたちはともかく、昔馴染みの子で苦手な子はいないよね~。夜間演習普通にやってたし」
何気ないエリの呟きに俺は本当のことを教えた。
「・・・・・言っとくが、巴はこういうのに臆病だぞ?」
「へ?」
巴はたしかに夜間演習自体は平気なのだが、肝試しだとかそういう催しとして脅かされるのは嫌なのである。本人もそのことに自覚があり、今回の大会では察知するもの全てを敵と見なしてBB弾の雨を降らせることで恐怖を塗り潰しているのだ。こんな風に。
「そこの茂みに!」
「はい!」
『野槌』の人形3体を出して脅かす使用人に攻撃を。
「次は左奥木陰から!」
「はい!」
『狼男』に扮した使用人に攻撃を。
「頭上の木の枝からの奇襲!!」
「はいぃっ!!」
突然垂れてきた『馬の足』を模した機械仕掛けに当てるも効果はない、なので操作していた使用人に攻撃を浴びせた。
ペアの男子もいつしか彼女の調子に乗せられて上官の指示に従いながら撃っている一兵士状態になっていた。
戻ってスタート地点にて。
「妖怪は平気だったのに?」
「俺もそのことを気にして聞いてみたんだけどよ、『脅かしに来てなかったから平気だったんだと思う。多分彼らが言うように人を暗闇で脅かすようだったら間違いなく私暴走すると思う』だとよ」
ゴール地点に到着した巴たちは運営側に、
「シューティングは他所でやりなさい!!」
注意を受けてしまった。
すると次のペアが早い段階で終えてもうゴールをしてきた。やってきたのは好華のペアだった。
「?好華、もうコース巡ったの?」
「ああ、もう終わったぞ~」
誰から見ても、彼女が本当に肝試しコースを通ったのか?と疑問に思う程平気だったのに対し、ペアになった男子は頭を捻りながら運営側の人にあることを聞いていた。
「あの~、脅かし役っているんですよね?来る途中何も起きなかったんですが」
「はい?そんなことはないはずですよ?」
男子はコースで何も起きなかったことでムフフな展開が何一つなかったのが不満だったらしい。
しかしそれもそのはず。なぜならば好華がコースを巡る際に脅かし役の使用人たちの動きを自分から伸ばした弦を使って全て封じていたからだ。
クレアと組めた男子は、優しい奴だった。
「君はその青髪、染めているのかい?」
「いや、ちゃんと地毛だ」
「地毛?そんなはず・・・・・・・おわっ!?」
脅かし役の『ろくろ首』に驚く男子。
「ほらほら、日本男児がこれくらいの脅かしに怯えてちゃ恥ずかしいぞ?」
「君は、平気なんだね・・・・・」
「体も鍛えるなら心も!」
「鍛えてるんだ・・・・・・・けど抵抗虚しくねじ込まれる~、な~んて」
男子のちょっとしたフリに少し迷ったが、クレアはノリのいい女ぐらいは見せようかと合わせてみた。
「・・・・・・・えっと~、くっ肉ののべ棒なんかに、絶対負けない!」
さすが現役女騎士。本物感があってすごい。ちょっとの間が空いたがにこやかに笑う男子、それに続いてクレアも笑う。
「あいつら、絶対雰囲気ぶち壊しにしようか」
「おう」
このペアだけはくっつけさせまいと殺意を抱き隠れて二人の一部始終を見た使用人たちであった。
唯と組んだのは屈強そうな3組男子。
「よっしゃー!相手は神田の使用人たち!遠慮はいらないから片っ端からぶっとばしていこう!!」
「お、お~?」
以前に誘いを断ったことで友人の一人をボコボコにされたこともあって、その時の鬱憤を晴らそうと息巻いていた。
ある使用人はオレンジの紙・ライト・小型扇風機で再現した『火の玉』を二人が近づいた瞬間に釣り竿で出すも、
西部劇のガンマンのように放たれたにより破壊された。
他にも『ぬりかべ』には目からビームで中身の使用人の顔擦れ擦れで穴を開けたり、『大首』には飛んでからのおでこ目掛けてファイア・ジェット空手チョップで凹ませた。ペア・・・・というより付き添ってるだけの存在になっていた男子も『鬼熊』のぬいぐるみを着た使用人に腹にも伝わるボディブローを決めて中身で嘔吐させるという大惨事にしたり、彼女のテンションに乗っていた。
ゴール地点に着くと二人は、
「肝試し大会だっての!!妖怪退治大会じゃないんだから!!」
また注意を受けてしまった。
奈々と組んだのは、いつの日かギラに勝負を挑んで軽くあしらわれた経験がある“サイ”の獣人化能力を持った4組男子だった。
〈いや~、まさか憧れの奈々ちゃんとペアになれるとはな~。こういう勝気な女の子程、実はホラー系が苦手っていうパターンがありそうで期待してたんだよって・・・・・・あれ?何でこの人、開始早々俺を担いでるの?〉
「あたしな、妖怪とかそういう存在には慣れっこになってるからこういうイベント好きじゃねぇんだよ。ギラとペアを組めたら少しは楽しめるかもって思ってたけどそれも叶わなくなってな。だからさっさと終わらせたいんだよ」
「あ、あの~北野さん?まさかとは思うけど今の呟きからして、これって有名な“あの移動方法”だよね?いくら終わらせたいからってこんな・・・・ってあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
ペア相手の男子の言葉に耳も貸さずに投げ、そして飛んでいく男子に乗ってゴールの称名寺にあっという間に到着した。
もちろん着地は男子に怪我がないよう抱えての着地だった。当人は気絶してたけど。
ゴール地点にて。
「ちゃんとコースを通りなさい!!」
ま~た注意されちゃってる。
剛とペアを組んだ女子。どうやらお化けには耐性がある子で、二人共脅かされても動じないで進むし、コースを始める前に女子の方が「タイプじゃないんで」と割り切った一言を言い残すだけで肝試しコースを終わらせた。
女子が離れていくのを確認すると、大声で天に向かって叫んだ。
「俺だけこんな扱いって何だあああぁぁぁぁぁっ!!?」
とある無線交信での会話。
『坊ちゃま!今の丸刈り高校生のペアはともかく、一体何者なんですか!?あの杉田義羅の取り巻き女子たちは!!脅かしの妖怪に攻撃を加えるなんてどんな教育受けてるんですか!!』
『俺が知るか!・・・・・まあ良い、そろそろ奴の順番が回ってくるはずだ。全員予定の位置に移動しろよ』
『りょ、了解です』
エリとのコース巡り中、お互い昔のことを思い出しながら進んでいた。
「夜間演習の時のこと、覚えてる?」
「ああ、最初俺が途中空砲とは言え銃を鳴らしてもっかいやり直し!になってトラたちに睨まれたっけか。カエルにびっくりするなんてこと前世を合わせても初めての経験だったんだけどな~」
「そういう言い訳が通用しないのが演習だけどね。そういえば『スター・ウォーズ』のストーム・トルーパーって大事な時に“演習かな?”って雑談してるのが多いけどなんでかな?」
「平和ボケした連中はそうやって重大な騒動が起きて欲しくないって心の中で考えてるから、きっと無意識にその発想が浮かぶんだろうよ。あの世界でそうしてたら死亡フラグだけどな。その発想で言えば俺たちの世界だって今もそうだ。だがそれでも構わない。それでこそ平和の世界だ」
「・・・・・・・今まで聞いたことなかったけど、ギラってこういうのは前世ではどうだったの?さすがに何かはあるでしょ。だってあっちの類に関しては『あのアニメ』で怖がってるんだから」
「心の傷を抉るな。でもたしかに、俺にもそういう時期があったな。何かが本当に見たくない程怖い!って思ったのは2001年の時だな。『ハリー・ポッター 賢者の石』のラストのヴォルデモートの断末魔のモヤを劇場で見てすごく怖く感じたよ。あ、でも音楽はもちろん気に入ったぜ?『クイディッチ・マーチ』とか『ヘドウィグのテーマ』とかも」
「やっぱり映画の話に戻っちゃうんだね・・・・・お化け屋敷は行ったことないの?」
「小学校の文化祭で一度だけなら行ったことあるんだけどな。だがそれがよ?さっき言った『ハリー・ポッター』を見たせいで耐性ができちゃった上に、使ってるBGMがまんまハリー・ポッターの気に入ってたテーマ曲だったもんだから逆にペアで組んでた女の子連れてテンションMAX!になってた」
「へ、へ~それで屋敷内でお化け役が出てきても平気で通ったってこと?」
「それどころか殴ってたな。お化けの中身全員年長者だったのに」
「こらっ!!いけません!!」
「ぐふふふっ、あの頃は思い切った行動があったもんな~。どっかのレジャーランドでは家族とはぐれても平気で遊んでたよ」
「・・・・・・うん、やっぱりギラを普通の人間って考えるのはおかしいと思うよ」
「いや~それほどでも~」
「褒めてな・・・・・」
その時、俺の感知能力を使ってなくとも、エリと同様研ぎ澄まされた危険察知だけで飛び込んできた何かに気づき、
「「っ!!?」」
地面に伏せた。
すると頭上を何かが通り過ぎ、後ろの方でべちゃっと音を立てた。振り向いて見ると、地面に塗料がベッタリと弾けていた。匂いはしないがおそらくはペイント弾の類だろう。
脅かし役のはずの使用人たちが如何にも戦闘をする気満々のミリタリーな恰好でペイント弾入りの銃を装備して狙ってきているのを見て、スリーアミーゴスの意図が分かった瞬間俺達は、高らかに笑った。
「だーはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!・・・・・・普通に脅かすのは無理と見てその手で来たか。たしかに!普通のカップルなら雰囲気ブチ壊しでそりゃあ怒るもんな~」
「でも、甘いね」
「ああ、甘い」
「「甘い、甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘いぃぃっ!!!」」
叫び終えると同時に、俺は肩からスリングで下げたドラムマガジン付きブローニングM1919重機関銃と左手にM202ロケットランチャーを、エリにはXM29 OICWを。臨戦態勢に入った俺達を見た使用人共はびっくり仰天、中には最初に俺と戦った奴もいたようで戦意喪失してすぐ逃げ出す者も。
そっちがその気ならこっちも好きにさせて貰うぞ。
「「俺(私)達のデートを邪魔したな、Big Mistake!(大間違いだ!)」」
バシュッ、シュボッ。
まずはランチャーで大量の塗料が弾けるペイント弾でご挨拶。オレンジ色の塗料がぶっかかって大混乱の使用人共。
「そんじゃ、どっちが多く奴らにペイント弾を当てれるか勝負と行くぞぉっ!!」
「楽しくなってきた~!!」といきり立ちながらバンダナを締め直すエリ。
ドドドドドドドドドドドドドッダダダダダダダダッドドドドドドドドッダダダダダダダダダダダダダダッドドドドドドドドドドドドドッダダダダダダダダダダダダダダダダダッシュボッドドドドドドドドドドドッバシュッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ。
1時間に及ぶエリとのデート兼肝試しならぬハンティングコース巡りは、ゴール地点でギラとエリが大暴れする音と使用人たちがやられる叫びを聞くスリーアミーゴスとコース巡りを終えた者全員を待たせる結果に。誰もが夜の公園内で鳴り響く銃声を聞く中、
「・・・・・・肝試しとは?」
剛だけはその一言を添えていた。
全てが終わった後の称名寺で。
「「いや~、すっきりした~!!」」
「じゃねえよ!!よくもうちの使用人たちをペイントまみれに!!最後の最後であいつらが狩られてたじゃねえか!!」
「いやいや、俺達は“ペイントまみれ”にはしてないぞ?」
「何を言ってる!無線報告であいつらが・・・・・」
神田が何かを言いかけたところで
『坊ちゃま。我々に付いていたはずのペイントが綺麗さっぱりなくなりました』
それもそのはず、俺が創造した塗料だもの。指パッチン一つで消えるのだから。
「はあ!?お前らさっき自分たちで言っただろ!塗料をベッタリと・・・・ってこら待て!話はまだ・・・・・聞けや!!」
「ところでそっちは何人当てれた?」
「俺は519だ。それでお前の方は?」
「・・・・・520。私何か貰える?」
答えを聞いた瞬間に俺は、マグナムで神田の頭にペイント弾をベチョッと命中させた。
「「ああ!神田ぁ!!」」
顔に付いた塗料をなんとか剥がそうと退散する神田とそれに付いて行く二人の財閥っ子。
「これで520。同点だから何も貰えない」
「まあ!いじわるなんだから」
俺の意地に不満を言うエリだが笑顔で言う当たり、いつも通り許してくれているようで安心だ。
寺の辺りを見渡してみると、知り合いがペアを組んだ相手と親しげになってる光景ができていた。例えば実央は、
「彼女さんが魚座ならバラのモチーフ付きの何かを贈ると良いわよ、鶴田君」
「ご助言ありがとうございます!」
会話からして男子の恋愛にアドバイスを。巴は、
「任務に付き合ってくれてありがとう!相楽二等兵!」
「こちらこそ!細川軍曹!」
なんか死線を越えて生き延びた上官とその部下みたいなノリを楽しんでいる。唯は、
「鬱憤晴らしに付き合ってくれてありがと!谷木!」
「いや良いって、こっちも楽しかったからな」
こっちは戦いに勝利して戦友と喜び合っている感じに楽しんでいた。ヒナは、
「良い?私は警告したからね?口外したらあんた白い目で見られるよ。やり過ぎたら」
「はいはい!了解しました!」
オタクっぽい男子にクナイの切っ先をチラ見せしながら警告してる。・・・・・脅してるようにも見えるが、くノ一バレたか?クレアは、
「後半は大分慣れてきたみたいだな」
「うん、今度は好きな人を連れてお化け屋敷にでも連れて行ってみるよ。そして・・・・・告白する!」
「おお、がんばれがんばれ~」
普通に仲良くなっている。普通にコースを巡った結果だろうな、多分。
そんな俺が知らない男たちといる彼女たちをふと見た俺は、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もや。
〈ありゃ?今のって・・・・・・・まさか?・・・・・・・いやいやいやいや!そんな!〉
最後の一瞬、感じた何かに俺は首を捻った。
そんなムムムなギラを見て、彼が抱いた感情が何かを見抜いたっぽいエリは、くすっと静かに笑った。
今回の44発目の投稿から次の45発目の投稿までにはいつも以上に日数がかかることをお知らせします。スピンオフ作品の『暁のブリテン ~ The First Bullet~』Part4の執筆に力を入れるためです!一つの作品のラストを飾るに相応しいストーリーを書き上げようと頑張っています!
『BULLETS』か『暁のブリテン』もしくは両方を今も読んで下さっている読者の皆さん!Part4ができ次第すぐに投稿しますので是非ともご覧ください!!




