41発目 “初めて”と“ダブルショット”と“メリーゴーラウンド”。
前回までのあらすじ。
1日かけて10人の女性たちと一人ずつデートすることになった。
「ぐふふふふっ。これで俺も一端のクズ人間だな~」
「なんであんたは楽しげなんだい?」
「前世では何の取り柄もないどこにでもいるモブ人間だったからな~、俺。Mじゃないがこう自分を悪い印象で周りからヒソヒソされるのも悪くない・・・・あっダメだ。それでもまこ死展開だけは嫌ぁぁぁぁぁぁ・・・・」
「意外とそこは卑屈なんだね。それにモブでも気を感じ取ったりだとか、何の専門もない偽退魔師とかで主要人物並みに喋ってストーリーを盛り上げる重要な役割を果たしてたりするじゃん」
「・・・・・元ネタを察せるあたり、お前日本の漫画も読むのか?てっきり任侠モノ一本かと・・・・」
「任侠モノのパロディをしたアニメを見つけたことでアニメも漫画も結構イケる方なのよ。きっかけは・・・・そう!『ルパン三世~ナポレオンの辞書を奪え~』!!」
がっ・・・!それは俺が任侠モノを知るきっかけになった作品・・・!ラスティったら、それの逆のパターンだったのか!!
「ところで、あたいと一緒にここに来て大丈夫なのか?」
そう、最初のデート相手:ラスティとは象の鼻パークに来ているのだ。
ただいま象の鼻の像の下の芝生に寝転がっているところだ。
「あのホテルから10kmは離れてるのに・・・・今日シーパラダイスで自由行動じゃないかい?」
「大丈夫だって。ジェットパックを使えばあっという間だ・・・・いや、それじゃ何度もやってて物足りないから別の方法で・・・」
「あとグループ行動だから本人がいないと教師たちが混乱するんじゃ?」
「それも大丈夫。駒なら、用意した・・・」
「駒・・・?」
その頃、シーパラダイス正面入口。
「よし!それじゃあガキ共ぉっ!園内に入って楽しめぇっ!!!」
「宮田先生!今朝のが誤解だったのは分かりましたから!!その恰好だけはやめて下さい~!!」
今朝のヤり先疑惑が尾を引いているようでまだあの某組織の殺し屋のまま怒り狂っていた宮田教師が、全員がいることを確認してシーパラダイスに入ろうとするところを、蜜森先生やその他の教師に止められていた。
そんな様子を2組の列の中から窺う偽ギラとギラ杉ガールズたち。
「妖怪決戦の時は作戦中だったから何も言わなかったけど、ギラって自分どころか他人も変装させることができるなんて驚いちゃったよ。しかも今回はロザリアさんを自分に変装させて替え玉にするなんて」
「私も今、自分の声が彼の声になってるんで何か変な気分・・・」と変装をさせられた中身はロザリアのギラ。
「「おお、ギラの声で“私”だなんて・・・」」とヒナと好華。
「ともかく、彼が戻ってくるまでは代わりを務めるから」
戻ってギラサイド。
「事の発端は理解したけど、肝心の愛し方ってのはどうしたんだい?」
「たしかに、このまま芝生でゴロンチョしてるだけじゃよくない~なっと。それにしてもお前さんの恰好、時間的に全然似合わねえな。如何にも夜の街へ~的な目的の服だ」
「突然デートしようって誘ってきたのはそっちでしょ。あたいはあの子たちを含めて一人ずつだなんて聞いてないし、1時間とちょっとだけとも聞いてなかったんだから!・・・せっかく服も本気で選んで着てきたのにさ」
「そんなけしからん服を着てくることはねえだろ。俺だけじゃなく全てのケダモノたちがお前に群がるぞ」
彼女の服装はというと、なんと紫のボディコンドレスだった。こりゃあドキッとしない方が変に決まってるわ~。
「!・・・・それってつまり~、あんたもこの服にドキドキしてるんだね?」
「うむ、滅茶苦茶飛びついて引き裂いて犯したい」
「何で欲望は剥きだしにできるんだい!?卑屈はどこ行った!?」
「卑屈な思いがあろうともなかろうとも、雄の行き着く先は皆同じ!!」
「草食気味の日本人とは思えない強気・・・ってこのフレーズどっかで聞いたことある!!そっちだってあたいの服装に合わせてるくせに。本当はヤる気満々だったりして~♥」
たしかに、俺は彼女と待ち合わせした時に、感知能力で相手のセクシーな服装を確認し、ならばと青いカッターシャツ赤い薄地のジャケットを着こんでいるのだ。
「一応言っておくが、ここからだと神奈川県警の本部は目と鼻の先だぞ」
「What's!?嘘マジで?」
「お?どうした。ドキドキしてきた?」
「これは悪い意味でのドキドキ・・・って知ってて今質問したねあんたぁっ!」
「だーはっはっはっはっはっ!そんじゃ建前は置いといてっ」
「建前?・・・っうわっ!?」
俺は彼女の肩に手をかけ、俺の胸に引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
「え?こういうのって・・・やらないんじゃ・・・?」
「こんな破廉恥な展開は、嫌いか?」
彼女の耳元で優しく丁寧に囁いた。
「いえいえ!!全然好みですっはい!!」
赤面して大喜びのラスティ。
よしっ狙い通り!!
こんなぽっと出のシチュエーションでも、相手の度肝を抜くようなことをすれば好意を持ってくれている女なら尚更イチコロよ!!知り合いじゃない女性の場合は・・・・・・考えたくない。
とにかくっ、デートで一番大切なことは、男が女をエスコートすること。これ、大事!!だからこそムードもちゃんと作らなくちゃいけないからな・・・ってありゃ!?
俺は突然ラスティに抱き付かれたまま押し倒されると、彼女は覆いかぶさりながら俺を見つめてきた。
「あんたのファーストキスは・・・・・・もう誰かに取られてるだろうけど、あたいは・・・・その、本当のキス・・・・まだなんだよ♥」
「お、おう」
おっとこれは一本取られたな~。良いムードになったのがきっかけで彼女ったら、発情しちゃうのかよ。完全に上手取られちゃってるな。だがこれも悪くない。
たしかにラスティとは“ほっぺにチュー”は何度かやっているが、口同士のキスはしてなかったな。
・・・・・・・・・・・・・・・ここは俺もノってやるか。
「なら、俺がお前さんの初めてを・・・っ!?」
バキュドンッッ。
キイィンッ。
ぼとっ。
突然の二つの銃声に、公園にいた数人の一般人たちがどよめく。
何が起きたかというと、俺達の方へ357マグナム弾をぶっ放してきた不届き者がいたのだ。
俺はそいつの殺気を感知し、早撃ちで同じ357マグナム弾を撃つことで“かちあい玉”をギリギリ成功させて防いだ。
「I finally ... met you.(ようやく・・・会えたな。)」
銃口から煙が漂っているデザートイーグルを持った逆立てた金髪男が立っていた。後ろにはこれがまたここが日本であることを無視するかの如くピストル・サブマシンガンやらを持ったアロハ~な服を着た外国人だらけの集団がいる。
そいつらの存在に気づいた一般人たちはさっそく怯えて逃げ出していった。
「Rusty・Haro. I will take away the soul of our Moaro family who lost in the conflict with you!(ラスティ・ハーロ。貴様ら一家との抗争で敗れた我等モアロ一家の仇、取らさせてもらうぞ!)」
どうやらラスティの昔の商売敵の一家らしい。あるよね~、こういう落とし前つけたるわ!的なこと。でもな、お前らの登場で俺も彼女も、嬉しくない共通の感情が漲ってるんですよ?
ほらほらぁ、俺達は起き上がり、俺は無言で彼女に創造したM60と般若の面を投げた。彼女もまた無言でそれらを受け取って装備する。俺もS&W M19コンバット・マグナムを強く握りしめた。
「「Fuck you!!!(くたばれこの野郎!!!)」」
ムードぶち壊しじゃクソ共がぁっ!!!
ドガガガガガガガガがガガガガガッ!!!
ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!
本日の午前にて、象の鼻パークそれも神奈川県警察本部のすぐ近くにて銃撃騒動が起きるという事件が、リアルタイム検索数のトップになったそうな。
その後、騒動を鎮圧しよう為結成された神奈川県警察本部の機動隊員たちが出動するも事態はもう片付いており、署の正面入口にはモアロ一家が全員パンツ一丁のみにされ(ボス:モアロ・ピッキャラだけは頭をカミソリで剃られたように縦に一本道だけ坊主にされた)縛られたまま放置されていた。
そんな警察に連れていかれるマフィアたちの様子を、警察署手前のビル屋上にて見届ける俺。
「よし、あとは銃刀法違反やらあいつらの過去の犯罪が暴いたりとかは警察がやってくれるだろうな・・・・・っておい、まーだいじけてんのか?お前。俺だってマグナムであのデッキブラシ野郎の頭を一本坊主にするほどイラっとしたけどよ」
ラスティは見届けず、背を向けて体育座りしちゃっていた。
「だって・・・・・ムードぶち壊しだし、あいつら懲らしめたせいであたいのデートタイムあっという間になくなっちゃってつまんないし・・・・・」
「おいおい、いい大人が台無しじゃねーの?」
「・・・どうせあたいは・・・」
歳を重ねる数程人間ってのはいじけると結構面倒なもんだ。酒の席でも愚痴をこぼす大人ときたらそりゃあもう惨めな姿もあったりするもんだからな。
・・・・・・・・・やれやれ、ここは一つプレゼントしてやるか。
「・・・・・ほら早く行きなさいよ。次はロザリアとのデートでしょ」
「お前もいつまでも座り込むなよ。ほら立ちな」
嫌々言いながらの彼女の手を引っ張り上げ立たせた。
「いいって。もうあとはあたい一人で帰るんだから・・・・・・・・・え?あの・・・んむっ!!?」
いきなりだが、俺は彼女のあごを引いて自分の方へ向けさせて、そして顔を近づけさせ、唇を重ねた。それだけじゃない、舌だって入れたのだ。入れたんだ!!大事だからな!!
十数秒間だけで名残惜しくもあったが、俺は彼女から遠のいた。
ラスティは完全に不意をつかれて、ドギマギしている。そんな彼女に俺は言う。
「良いことを教えとくぜ。たしかにさっきお前さんが言った通り“ファーストキス”自体はもうエリに奪われてるが、俺は生まれてこの方誰に対しても“自分から”キスをすすんでしたことがなかったんだ。まだ“最高のキス”じゃあないが、ラスティ。“初めての俺からのキス”いかがだったかな?」
「・・・・・はい。とっても嬉しいです」
彼女の性格からして似合わないほど優しい笑顔で返事をしてくれた。満足そうでなにより☆
「それじゃ、行ってくる」
そう言ってガチャガチャとアーマー&ジェットパックを装着し、俺はビルから飛び立った。
しばらくぽや~っと見送ったラスティは、はっと気づくとLUMEを通じて他のガールズたちにデート内容を包み隠さず全て書き込んだ。
そして、彼女らの反応はというと。
シーパラダイスにて。
「「「「「「「「「羨ましいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」」」」」」」」」
園内中の各地から彼女たちの叫び声が轟いた。
その内の一人:ギラに変装させられたロザリアも。
「・・・私まだ間接キスしかしてないのに、完全に先越されちゃったな~。今日ねだったところで全く良いキスできる気がしないし。ところで何でここで待ってろなんて言うのかな、あいつ」
彼女がいる場所は、アトラクションの一つ:『アクアライドⅡ』が近くにある海岸沿いだ。ここにいるようにと彼からのメッセージを受け取っていたのだ。
待つこと数分。
「おい、あれ帆船じゃね?」
「ホントだ。ウッソマジ!!?」
他の一般客たちが海の方角を見て騒いでいる。
は?何言ってるんだろあの人ら。
この現代社会にそんなものがあるわけ・・・・・あった!?
東北東のヘリポートがある埠頭の影から黒い帆をつけた全身真っ黒な船体の帆船が追い風に乗りながら航行して、こっちに向かっていたのだ。
「「「「ブラック○ール号は存在したのか!!!?」」」」
それ言っちゃダメ!!てゆーかあれやってるのが誰だかもうわかっちゃったし!!
帆船が『パラダイスクルーズ』のミニクルーズ船なんかほっといてメチャクチャ目立ちまくって停泊すると、船からしゅたっと降り立ったのは18世紀の海賊の恰好をしたギラだった。
「悪ぃ悪ぃ、待たせたか?」
「やり過ぎ!なんでわざわざ海賊になって登場したの!?」
「いや~せっかくの海だから、もっと海らしいことやろうかなと思い立った結果、海と言えば船、船と言えば帆船、帆船と言えば海賊しかない!ってわけでコスプレしてみた~」
「いや、帆船を創造してる時点でコスプレの域超えちゃってるから!てゆーか部下の船員たちはいないの?」
「みんな船長の言う事聞かないから全員大砲に繋いで海にぶん投げた~という設定だ」
「人望無さすぎ設定な海賊船長だこと。ところでこの変装、そろそろ解いてもいいかな?読者は絶対わからないだろうけど、さっきからあんたの声で喋りっぱなしで違和感あり過ぎなんだけど・・・・」
「俺はこの状況を楽しんでたんだけどな。まあたしかにそうだ。船に上がれよ。船室に服を用意しといたから」
「え、なんか嫌な予感・・・」
数分後。
甲板上にて。
「どうだ?」
「どうだってあんた・・・これ、コートはあるけど下の方は案の定布地少ないじゃん。これもう男の欲望丸出しなエロコスプレ衣装でしかないよ」
そう。俺が用意した彼女の服はというと、バンダナ・海賊帽子・コート・左にだけハートマークがついた黒ビキニブラジャー・レザー短パン・ブーツ、そして付属にカットラスを一本、だ。
「そう文句言いつつも着てくれたシスターには深く感謝、感謝いたします!!今だけならキリスト教に改宗してもいい!!」
「しなくていい!しなくていい!それに私もキリスト教徒とはいえ、真っ当な信者とは言えないんだから。それで?これで何がしたいのあんたは」
「それはもちろん、俺と剣で勝負だ!!」
と、俺は腰に差していたカットラスを引き抜いた。
「デートどこ行ったぁ!!?」
「まあまあまあ、3年前お前と対峙した時はブラスターで対抗してたから、今回でちゃんとした剣と剣での勝負をしてみたいんだよ。ルールはこうだ。お互いこの刃のないカットラスでこのハートマーク型ブザー器に一撃を与えることでブザーが鳴って自分に20Pが加算される。100Pが勝利条件、つまり5回そのマークに当てることでそいつの勝ちだ。俺はこのマークを左肩に付けとくぞ~」
「・・・・・ちょっと待って、その為にこの衣装を用意したの!?道理でアンバランスにマークがついてるな~と思ったら!!」
慌ててつつかれたくない場所からハートブザーを外そうとするロザリアだが。
「無駄無駄ァっ!そのマークは決してビキニから外れない!お前はこの勝負で左胸を俺につつかれる運命なのだぁっ!!ウワハハハハハハハハハハッ!!」
「・・・・Pirate.・・・(・・・・海賊め・・・)」
「は~い、今だけは海賊ですが。何か?」
「じゃあこっちからも追加ルールを一つ!キスを相手から奪ったらその場でそいつの勝利ってことで!!」
「・・・・・・何だぁ?そのいかにも世界中の童貞たちから死ね死ねコールを浴びせられるような追加ルールは」
「はいもう始めるよ、行くぞーっ!!」
「っておい!わわっ!!?わーっ!!?剣構えろって!!」
ロザリアはさっさとこの勝負を終わらせて普通のデートをしたいあまりに、追加ルールを使ってキスをしようと飛びついてきたのだった。別に俺は彼女を嫌がってるわけでもないしむしろこういうのは真正面から受け止めてやりたいところだが、この勝負は元々彼女へのエスコートの一環だ。ここで簡単に終わっては味気がない。
なので俺は、逃げます!!
ロザリアの飛びつきキスをひらりひらりとかわしつつ距離を取り、すでに用意していた32ポンド砲の砲架に括り付け上の帆ヤードに通していたロープを握り、火縄付き棒を創造して持った。
「へ!?」
「ほらほら~そこにいると危ないよ~」
慌てて大砲の砲線上から離れるロザリアを確認してから、導火口に火をつけた。
バシッ、ドオオオォォォォン!!!
もちろん空砲、砲弾は入っていない。だが大砲が後ろに吹っ飛んでいくのを利用して俺はロープに引っ張られる形で上へと飛び、帆ヤードに掴まった。
「今の俺の唇は安くはないぞロザリア。剣で挑んでればいくらかは隙ができるかもしんないけど。Hahahahahaha!!(ジェフリー・ラッシュのような笑い声)」
「・・・ハァ、メチャクチャなんだから・・・」
ところかわってベイマーケットD棟から出る巴。
〈次は私の番。・・・だけど、あの二人どんなデートしてるのかしら?〉
ついさっき東エリアの船着き場から大砲の音が鳴って、園内中に聞こえた為学校生徒はもちろん一般客まで何事かと東に向かっている。この遊園地には大砲とかを使うイベントはない。なのにそのような音がするということはありもしない大砲を持ち込む・または創造すると言えばヒナかギラのどちらかだ。だがヒナは仕事が絡まない限りはそんなものを使ったりはしない。この場合、ここに来ているメンバーの中で一番自由人でこういうところでも大砲をぶっ放すような奴といえばあいつしかいない。
船着き場に着くと、大砲どころか大砲10本以上を搭載した真っ黒な海賊船が停泊していて、そのメインマストの帆ヤードの上で、18世紀の海賊の恰好をした二人・・・・いや、一人が海賊の恰好でもう一人はエロ海賊コスプレの恰好をしているんだった。その二人が何故かカットラスで決闘をしていたのだ。どう見てもあの二人、ギラとロザリアで間違いない。
〈デートはどうしたの!?〉
もはやロマンチックの欠片もない。本当ならロザリア本人が真っ先に嫌がるべきなのだろうが、本人までもがすっかり斬り合いを楽しんじゃっている。お互い時には飛び跳ねて避けたり、ロープを切ってぶら~んと3本のマストとの間を行き来して追いかけて追いかけられたりしている。こんな決闘してて通報されないかと思ったが、よく見ると船に『撮影中』と日本語・英語の両方で表記された看板が付けられていた。納得・・・。
と、その時。
ビビーーッ。
私の意識が看板にいってた間に、二人の各々付けているハートマークからブザー音が鳴り響いた。二人とも一瞬距離を取ってハートマークを抑えたと思ったら、再び斬り始めた。どうやらあのマークに当てることでポイントを奪い合うかなんかそんな感じの勝負になっているらしい。
するとギラの方があるロープを切ったかと思うと、ロープを伝って私や一般客たちがいる船着き場に降りてきたのだ。ロザリアも同じようにロープを切って降りてきた。ギラは撮影中である体を装う為にスタンド付きカメラを担ぎながらどことなく“スズメな男”っぽい走り方で逃げ始めた。彼女もそんな彼の後を追いかける。そして釣られるように周りの人も私も追いかけ始めた。
シーパラダイスタワーのキャビンに乗って八景島を360度見渡し中の剛・剣・五十嵐の三人。
「「1日かけて唯たちと一人ずつでデート!?何それ!!?」」
「な?イカれてるだろ?あいつ、唯たちとの今の関係に疑問を抱いたことがきっかけで、愛情表現の探究の為にそんなことをやってるんだと。しかも今回これを提案したのが奈々らしくてな、最終的には正式な彼女を決めるらしいんだよ」
「ああたしかにあいつ、自分で誰とも付き合わないだとか『リア充死ね』とか言ったりするクセ、自分は“彼女がいないから非リア充じゃない”って言い張ってたしな」
「きっと今回のデートではっきりしたいんだね。唯たちは決まったらどうするか聞いてる?」
「俺が聞いたところ、あいつらそれでも愛人志望するからどんな結果でも受け入れるつもりだとよ」
「「うわ~緊張感ゼロなラブコメだな~」」
「お前らがそれ言うのか?」
自分たちだけ先にゴールインしてたくせに・・・。
お、そろそろ地上に着く頃・・・何だ?あの人だかりは?
キャビンを降りた俺達は、すぐさまイベントでもやっているかのように人が群がっているベイマーケットA・B棟に向かった。
すると中心にいるのは、薄々察した通りの人物:ギラと今デート中なはずのロザリアが剣を交えていた。傍には『撮影中』と表記された看板付きのスタンド付きカメラが。いや、デートは!?
ちょうど同じく見ていた巴を見つけ、彼女に聞くと二人がそれぞれ付けているハートマークの部分をどっちかが先に剣で5回当てた方が勝ちという勝負をやっているのだという。ちなみにどちらもすでに4回当ててリーチだそうだ。
満身創痍・・・というわけでもないがあの二人、どっちも剣術に関しては互角らしくやっとの状況にこぎつけたという感じだ。
「・・・・やっぱあんた最高。3年前ブラスターを使われたのが幸いだったって思えるよ」
「だからってこの勝負を諦めるわけじゃない、そうだろ?」
「もちろん。最後の一手は、私が決める!!」
そう言って放ってきたロザリアの連撃を、ギラは剣も体もうねらせながら全て受け、最後の右から左への横払いを膝を崩して避け、スライディングして彼女の懐ちかくまで迫り、左胸にあるハートブザーに剣突きの一撃を入れてきた。だがロザリアが間一髪のところで体を左回りに一回転したことでギラの一撃をずらすことに成功。そこでギラは反撃を恐れてなのか、一旦距離を置いたのだ。
と思ったら、左手に紐みたいな何かを握っている。ギラが手を開くと何とそこにはロザリアが今の今まで付けていたはずのハートブザー及びビキニがあったのだ。よく見ると真ん中の紐が切れている。彼女が回って一撃を回避された時に剣で切り、一回転し終わる直前に目にも止まらぬ早業で奪い取ったのだろう。
〈や、やりやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?〉
野次馬たちは当然カシャッカシャッと携帯のシャッター音を鳴らしていく。
「ああっ!!?ちょっと!返してよそれぇ!!」
少し遅れて自分のビキニが盗られたことに気づき、顔を赤らめ慌てて目立っていた胸をコートで隠しながらロザリアは、ビキニを取り返そうとギラに食って掛かる。しかし、近づいたところでギラがハートブザーを上に思いっきり投げたせいでうっかり意識を反らした為、その隙に剣をはじかれ、捕まった。
「お前が出した追加ルール、忘れちゃいないよな?」
「・・・・あ・・・」
何やら二人で言葉を交わしたかと思ったら、ギラはついさっき投げたハートブザー目掛けて剣も投げた。するとロザリアの顔を両手で優しく抑え、ハートブザーが剣先に当たって鳴るのと同時に引き寄せ、
ビ―――ッ!!!
キスをした。
周りの群衆がおおーっとどよめく。
そして俺は、唇を離して一歩引くと投げたビキニと剣が落ちてくるところをキャッチした。
「“俺の唇”は安くはなかったが、“俺からのキス”は初回限定無料で豪華特典付きだ」
ギラはそう言いながら剣を納めビキニを持った左手を前に出してハンカチをかける、右手でパチンッと鳴らしハンカチを取るとビキニの上に赤いバラの装飾が施されたイヤリングが二つあった。
「ねだらなくたって、ファーストキスぐらいやるさ。おまけ付きでな。にひっ」
「・・・・・これで彼女が今までいなかったなんて不思議ね」
と、受け取ったロザリアも満面の笑みを浮かべていた。
周りは撮影中だとかそんなの関係なしに、ギラの立ち回りに拍手していた。
俺達の反応はというと、
「「「まさかこんな感じでデート続けんの!!?」」」
こうだ。
ちなみに巴は、
「・・・・ずるい・・・」
こうだ。
ロザリアのターンが終わり、次の巴のターンの始まりだ。
場所も変わり、サーフコースターリヴァイアサンへと向かう途中の俺たち。
「・・・・ねえ・・・ギラ」
「ん?どうした?催したんなら言って来いよ。待つからよ」
「いや、そうじゃなくて・・・・・ごめん、絶叫系はお断り」
「・・・・ありゃ?」
はい、計画変更!!
ここは四つの小規模アトラクションが密集するエリア。
「参ったな・・・まさか巴がジェットコースターを断るとは。いや、どうせなら彼女の泣き叫ぶ顔を俺の脳内メモリーに保存する意味では無理矢理連れて行けば良いのかな?よし!!」
「よし!!じゃないわよ。デートにサディズム持ち込んだら『トムとジェリー』に出てくるチーズみたく穴だらけにするわよ」と、ジャギゴッとUZIを構える巴。
「久々だな、その笑えないツッコミ。だけど良いのか?こっちので」
「私はゆったりできるアトラクションの方が良いの。だから早く行きましょ」
と彼女は俺の手を引いてドランケン・バレルへと歩き出した。
ふと、そんな彼女の小さな背中を見て俺は思った。
〈・・・・・ホント普通になったもんだな、巴も・・・〉
その後、俺達はここの小規模アトラクションを巡ることとなった。
ドランケン・バレルでは酒樽に乗ってぐるぐると二人で回していく。
レッドバロンとピーターパンでは巴が手を握ってきたので、ちょっと甘酸っぱい空気になった。
バイキングでは絶叫系じゃないと巴は言い切ってて乗ったものの、やはり抵抗があったようで傾斜45度の時点で俺にしがみつくほどだった。俺得だったけど。
最後はオープンマーケットにあるメリーゴーラウンドだ。
このメリーゴーラウンドは全部アメリカ・サンフランシスコで作られた木製なのだ。だから時代が進んだ今でも木のぬくもりを感じながら乗れるというのは数少ないだそうだ。しかし1世紀も超えてもまだ現役なのはさすがだ。木馬もどれも手製だから顔も違う。
「ギラ、これに乗って」
突然巴が俺に大きい木馬に乗るよう指示してきた。
「?馬車じゃなくて良いのか?」
「良いから!」
「・・・・わかった」
俺は言われた通りに大きい木馬にまたがった。するとなんと巴も同じ木馬に乗ってきたのだ。俺の前に。
「・・・・それでいいのか?」
本人はウンウンと答える。
メリーゴーラウンドが始まって木馬上下に動き出す。
正直、俺はこのアトラクションに興味は無かったのだが、巴がこんなに喜んでいる顔を見たのは初めてだ。あの何事にも無表情でキツいツッコミや胸が小さいことを気にする時だけ感情が高ぶる女の子が!
「今なんか失礼なこと考えてなかった?」
「・・・・・お前、もしかして王子様に連れられるお姫様に憧れてたとかそういうやつ?」
ドキンヌな巴。
あ、これズバリか。
「こりゃまた驚きだなぁ。この時代にまだそういう願望を持つ現代っ子がいたとは」
「・・・・・うるさいわね、悪い?」
「いいや?かわいい女の子の願いがわかって俺も嬉しい」
「かわっ・・・・・!?」
と赤面する巴。
ほっほっほ、かわゆいの~。
そして俺が右手を回して抱き寄せると黙り込んでさらにかわゆい。
「まあ、エスペランサにいる喋る馬たちに頼んで、今度行く時に乗せてもらうってのも手だがどうだ?」
「・・・・・まずはそこからで良いけど、最終的には向こうの世界で馬を走らせたいわね」
「思う存分にな」
巴はもう先を見据えている、3年後のことを。良いことだ。俺も3年後の大事業に備えてここでやるべきことをやっておきたいもんだ。
これは大人になってから気づくことだが、人間は過去を振り返ることで“あの頃に戻りたい”とか“あの頃が一番自由だった”などの考えを持つようになる。
義羅の場合は、高校の時を思い浮かべた。前世では部活に入っていたりで色々と忙しい時期もあったが、それらを抜けば人と接したり割と自由にしていたことが分かった。今ではその日々以上に楽しくやっている。非日常的ではあるが、あの時にはなかったモノがあるからこそ楽しいのだ。
だがこの3年間が終われば、さらに非日常的毎日:異世界遠征が始まる。
そう考えるとこの3年間が終わるのが嫌になってしまう。
メリーゴーラウンドはそもそも『楽しく回ろうよ』の意味。
今、巴と一緒に乗っているメリーゴーラウンドと自分の楽しんでいる3年間をどうしても重ねてしまう。
このメリーゴーラウンドは俺の人生の一部を表しているのかもしれない。
そして、このアトラクションが終わるのは俺の3年間が終わるのを表しているのかもしれない。
理由はわからない。
けれど、寂しそうに物思いにふけている後ろの彼を、私は見逃さなかった。
本日!『暁のブリテン ~ The First Bullet~』のPart1を投稿いたしました!!
『BULLETS』の世界線と同じで2101年の“あの事件”を描いたスピンオフ作品です!!
気になる方はぜひ読んでみてください!!




