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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
41/63

37発目 未来は常に、人類個々の行動で形作られていく、それを忘れるな。








 突然ながら、自己紹介させていただきます。

 私は桜田さくらだ美津子みつこ。総理大臣:内匠栄介の秘書官を務めています。

 俗に言う“総理秘書官”です。

 内閣総理大臣秘書官は二種類あって、政務担当と事務担当に分かれています。政務担当は総理に最も信頼を置けるに足る人物が就きます。事務担当の方は外務省、財務省、防衛省、警察庁、経済産業省の各省庁から出向する形で5人が当番して就いています。ちなみに私は後者で防衛省からの出向で、今日がその当番日なのです。

 さて、その当番日に総理の部屋を訪ねたところ、総理と政務担当秘書官の露木ろぎ康太こうたさん、そしてあの世間を騒がせているBULLETSのメンバーであるフォース・トルーパーが話し合っている現場に居合わせるという、私の人生で最高の瞬間になってるのです。

「おや、たしか桜田君だっけ?今日は君が当番か~」

「あ、し失礼しました!総理!おはようございます!!本日の臨時会の為の日程を確認したいのですが・・・」

 それよりもなぜフォース・トルーパーがいることを聞きたいですが絶対に聞きません!プロですから!!

「あ~ごめんね~。昨日まで組んでいた日程は全部キャンセルにして今露木君と相談して改めて作ることになったから」

「は、はあ・・・」

 え?全部キャンセルって・・・、一体なぜ?

 これまで所々予定変更をすることはあったけど、全部キャンセルするなんてことはなかった。

「臨時会の議題:武装ゲリラ対策に関して何か変更でも?」

「それに関してもだ。そのために私は今日、議事堂で宣言をするつもりなのだ」

 何を?ま、まさか防衛省うちで噂されてた海外派兵の積極的政策?いやでも、5年前の事件で海自の出動を一番にダメだと言っていた人がそんなこと言うはずが・・・。

「ところで、彼があの有名なBULLETSのメンバー:フォース・トルーパーなのは知っているね?」

「・・・はい・・」

「今朝がた彼と会ったばかりでね。近いうちに妖怪の軍勢が東京を襲うとの忠告をしてくれたんだ」

「よ、妖怪の軍勢!?」

 次から次へとワケがわからない・・・。妖怪ってそもそもいるの?いるかもわからない妖怪の軍勢が東京を襲うって。そんなこと信じちゃうんですか?っと聞いてみれば総理はこう。

「彼らは日本での事件を何度も被害最小限に解決してくれてきたんだ信頼するには十分だ。さあ議事堂に急ごうか。彼らと共に」

 そう言って総理が部屋のドアを開けると、外には他のBULLETSのメンバーがいた。あの中継映像通り、モザイクを被っていた。

「全員モザイクじゃないですか!!」

「いや、よく見ればちゃんとモザイクじゃないメンバーもいるよ?」と総理。

「だから何ですか!?」

 ツッコみつつ私は部屋をあとにする総理たちに付いて行くのだった。



 しかしこの時、私は気づかなかったのだ。総理の机の下に総理・露木さんと同じ靴・靴下・ズボンを履いた足がロープで縛られたまま見え隠れしていたことを。






 モザイクを被ったメンバーたちには色んな恰好をした人たちがいる。巫女姿にサラシ特攻服姿、モザイクの上に“禅”の鉢巻を巻いた男、メタルなスーツを着た少女、巨乳マフラーっ娘、レイピア使い、刀差し男が二人、銃剣付き長銃持ち、ちっこいヨーダっぽい剣士、二人のくノ一、濃い緑のジャケット男・ロングコート男、月のマークが入った丸い盾を持った人、立派な十字が彫られた四角形盾と十字剣を持った大男、デカい手みたいな何か・ハンマー・大鎌をそれぞれ持った三人の女性、歪な鎧を着てガチャガチャ言わせる二人。

 一部を除いたメンバーがモザイクを被っている理由が、秘密を守るために最初は映像をハッキングしてのモザイクだったが市民の目もあるのでいっそのこと自分たち自身もモザイクを被ろうかという結論に至ったとのことだそうだ。

 ・・・・そのうち“モザイク団”って言われそう・・・。

 そんな話をしているうちに官邸の正面玄関内に来てみると、そこはいつも以上に記者で一杯一杯になっていた。彼らの狙いはもちろん武装ゲリラ対策に関しての情報だろう。

「予想はしていましたけど・・・、すごい熱気ですね・・・・」

「これからこの熱気がもっと上がることになるのさ」

 そう言って総理は堂々と歩き始めた。BULLETSたちを伴って。

「総理!!お話を・・・あれ?フォース・トルーパー!?それにBULLETSのメンバー!?とうとう本当のモザイクに?総理、これは一体どういうことでしょうか!?」

 記者たち全員がザワつき、手に手にマイクを総理に捧げながら口々に特ダネだ!と叫んでカメラマンたちにもっと取るように指示している。

「記者の皆さんも映像をご覧になっています視聴者の方も驚きでしょうが、事態は一刻を争う状況に入っています。詳しいお話は後ほどの議事堂にて行いますので、この場では手短に言わせていただきます」

 総理は一呼吸を終えると、声明を続けた。

「武装ゲリラによる大事件:“アシュボーンの戦い”の際に、彼ら“BULLETS”の活躍により解決しました。そしてつい最近にも武装集団による騒動がいくつも起き、また彼らの活躍がありました。しかし彼らも戦うだけじゃなく、ここ一連の事件が繋がっていることを突き止めました。事件の黒幕である妖怪が実在し、その妖怪が軍勢を率いてこの国家を乗っ取ろうと画策しているのだと、フォース・トルーパーから真相を告げられました。そこで私は、政府がいつでも自衛隊の東京都での出動可能ができるよう指示を今日中にも発令すべきだという結論に達しました。続きは議事堂で」

 そして一礼をして、BULLETSと露木さんを伴って外で待っている車に向かって歩き始めた。もちろん私も付いて行く。

 総理の声明に記者たち全員が驚愕していた。

 日本、動乱に突入か? 妖怪って本当にいたのか? ついに総理が自衛隊出動を!? こいつは非常事態だ!!

 誰もが携帯で各本社に問い合わせたり、中継カメラを通して視聴者に話しかける素振りをしながら大慌て。

 そんな騒ぎを背に、総理と露木さん、そして私は車に乗って議事堂へと向かい始めた。

 BULLETの皆さんはというと、なんと車を追いかけて走って来ているのだ。てゆーか怖っ!!?

「あの~、彼らはあれで良かったんでしょうか?」

「大丈夫さ。彼ら自身も了解はしている。そもそも戦いばかりしているんだから走るくらいどうってこともないんだろう」

 ・・・彼らは良くても、周りからしたら申し訳ない気持ちになるんじゃ・・・・。

「もうちょっとだ・・・。もうちょっとであの場所に戻れるんだ・・・・。露木君、勢子せこたちの様子はどうだ?」

「ええ。確認しましたが、皆狩りが待ちきれないとのことですよ。にしても早朝から東京都とは思えない濃霧ですな」

「うむ、気象庁も夏場の都市とは思えない霧が立つとは言っていたが」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だか変な気分だ。

 


 私の中での総理の印象は、・・・こう、政治上どころか内面もどこまでも内匠栄介なんです。

 彼は誰と接しても気楽に会話をする柔らか頭をお持ちだった。

 正直言って、早朝から深夜まで仕事漬けになってしまう職務ですが、彼を見ているとむしろ楽しくなるので全く苦にならない。

 ですが、今私の後ろにいる総理はどうも変だ。

 姿、形、そして声もなんら変わらないはずなのに雰囲気が違う。

 口調もいつもなら元気いっぱいなのに、今日は温和な感じが漂っている・・・・。

 それに・・・、何か黒い空気もあるような・・・。

 誰?

 私の知っている総理なら戦いに備えるなんてことすら言わないはずなのに・・・。

 私が帰省中に何かあったの?

 ついさっき言っていた“せこ”って一体何のこと?

 そんな思考を自分の頭の中で巡らせながら、私たちは車を降り、議事堂に入り、記者の質問攻めを潜り抜けていく。



 その頃、首相官邸内の総理の部屋にて。

 机の前にブチブチに切られたロープが置かれていたと。




 衆議院議場までの廊下を歩き、ドアまで来ると総理は突然止まった。

「フォース君、議員たちが自衛隊出動の許可を認めない場合は、頼めるね?」

「お任せを、陛下」

 フォース・トルーパーは背中に背負っていたブラスターを手に、他のメンバーたちも武器を構え始めた。

 ・・・・・・・・え?まさかっ。

「総理!これって・・・」

「もう一つの手段なだけだ。心配ない、彼らなら死人を出さずに事を運ばせてくれる」

「でもこれはっ、明らかなクーデターですよっ!?そんなこと・・・・っ」

 途中、甲冑男の斧で遮られてしまった。


「桜田君。今の日本はこの機を踏み台にして更に高みへと昇る必要があるんだ。この国の発展のためにも、私が先導すべきなのだ」

 

 総理は覚悟を決めた顔でそう言って、議場の入口のドアを衛視が開けるなり入っていく。

 私も仕方なく露木さんのあとに付いて行き議場内に入る。


 すると・・・・、



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「にっ!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



 総理たちが、こっちを見て一斉に笑顔を送ってきた。

 総理たちが。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


 何これ?

 え?

 議場に総理がいっぱい・・・・・・・・・・。え?

 え・・・・・え・・・・・え、

 総理が一人、総理が二人、総理が三人、総理が総理が総理が総理が総理が総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理ソウ理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総り総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理ソウリ総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理そうり総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理そう理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総リ総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理総理

「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」」」

 私に露木さん、そして入ったばかりの総理までもが揃って頭を抱えて絶叫した。

 何故に議場が総理の姿でいっぱいに?議員どころか議長に副議長、常任委員長、仮議長、事務総長、参事までもが総理だ!よく見ると氏名標まで全部総理の名前「内匠栄介」と丁寧に記されて各議席に置かれているしっ!

「こ、これって一体・・・・」

「・・・・よ、妖怪だ!!間違いない!これは妖怪たちの仕業だ!これは奴らの化け術なんだ!まさっつ・・・あいやいやいや!!フォース君!は、早く捕まえろ!!でないと大変なことになる!!」

 総理(私と一緒にいた)が大変取り乱しながらフォース・トルーパーに指示した。

「はい!直ちに!!おい!片づけるぞ!!」

 フォース・トルーパーが従順な部下の如く返事をし、他のメンバーと共に行動を開始して議場に押し入ってきた。


「「「「「「「「「「「「大変だ!総理がクーデターを起こした!!総理のみんな!逃っげろー!!!」」」」」」」」」」」」

「何この混沌カオス!?」

 私の大人気もない渾身のツッコミも消されるかのように、議場にいる全ての総理がわらわらと逃げ出し始め、それを追いかけるBULLETSたちで大混乱に陥ってしまった。そして、BULLETSたちに追い立てられたたくさんの総理たちが各出入口に向かい始めた。当然、私たちがいる出入口付近にも総理たちの波が押し寄せてくる。

「「「うぎゃー!!」」」

 あっという間に飲み込まれて、もうだれが本物の総理なのか分からなくなってしまった。

 さらに、BULLETSのメンバーたちもやっとの思いで捕まえても相手が、

「馬鹿者!私だ!他の偽物を捕まえろ!!」

「いや!私が本物だ!他を捕まえろ!」

「いやいや!私が総理だ!!」

「いやいや!私がアイアンマンだ!!」

「お前も総理だろが!そして私も総理だ!!」

「私だって総理だ!!」

「私がそりだ!!」

「だから何だ!?私が総理だ!!」

「I am Batman!(私はバットマンだ!)」

「「「黙れDCヒーロー!私たちが総理だ!!」」」

 こんなバグ入りの一点張りじゃ意味がない。

「偽物でも構わん!全員ひっ捕らえよ!!」

 フォース・トルーパーの一声でメンバーたちは総理たちを引き続き追いかけていく。私は総理の波に呑まれながら見ていると、全員が姿形声違わずというワケではなく、身長や体格的に違う者もいる。それにほとんどの総理が基本笑っているが、ある者はやれやれな顔、楽しんでいる顔、居心地が悪い顔、何故か不機嫌な顔、何故か泣いている顔などがあったりでもうめちゃくちゃだ。そしていつの間にか議場の外にまで追いやられて、心なしか総理の人数まで増えているような・・・・。

 いや!本当に増えているんだ!よく見ると記者たちにカメラマン、それに衛視たちまで総理の恰好に変えて波に加わってい・・・・・・。

 ズボッ。

「!?」

 突然、目の前が真っ暗になった。

 何かを被せられた?

 誰に?

 しかも、どうやら自分が誰かに抱えられているようだ。

 一体誰?

 てゆーか蒸し暑っ!!?

 出してー!!



 御休所にて。

 一人の内匠総理が一息ついていた。先ほどメンバーが誤って自分を捕まえた際に巻き付けてきたロープを自力で解いていた。そこへ露木康太が駆け寄ってくる。

「陛下!もう議事堂内だけじゃなく外にまで総理の恰好をした輩で溢れ返っています!!」と露木。

「うぐぐ、奴ら我々の作戦を読んでいたのか・・・?もう一刻の猶予もない!主菜の用意だ!!勢子たち全員に応援を要請するのだ!!」と内匠総理。

「はっ!!」

 指示を受けた露木が急いで無線機を耳に当てながら現場に戻っていった。

「奴らめ・・・、かくなる上は、やりたくはないが皇居を襲うことも・・・」




 国会議事堂のてっぺんにて、とある二人の総理。

「んほほ~。奴さんとうとう溜まらず部下たちに行動開始の合図を出したみたいだな?」

「ああ、団体様がお着きだ~ってか?」



 彼らが見るそれぞれの先には、議事堂の前や皇居内と赤坂御用地にある霧がかかった木々からおびただしい数の獣たちが、巣から地上に飛び出すアリの如く出てきた。次いで木々に潜んでいたみのや偽装服を纏って武装した勢子たちまでもが姿を現し始めた。

 更には何かが空へと飛び上がっているようにも見える。



 ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ。

「おっ、朗報か?」

「そんなところかもな」

 一人の総理がスーツの胸裏ポケットから携帯を出してメッセージを確認した。

 “ゲッツ~♪”と。

 携帯を手にした総理が不敵な笑みを浮かべ、

「待ちかねたぜ。そんじゃっ、前菜オードブルのメイン、“ワイルドな重大局面”へと行くかぁっ!!」

 そう叫んで、一緒にいたもう一人の総理と共に議事堂のてっぺんから大ジャンプ!!

 見事に着地すると、二人とも、

「「10点♪」」

 と自画自賛。

「総理だ!捕まえろー!!」

 獣や勢子たちが二人に気づいて、取り押さえようと群がるが、総理たちはものともせずひらりひらりとかわしまくり、そして逃げだす。

 ジョンッ!ジョンッ!

 二人の総理を仕留めようとフォース・トルーパーがブラスターを撃ちまくり、そのまま獣(アナウサギ・二ホンノウサギ)・勢子たちを連れて追いかけ始める。




 こういった状況が、国会議事堂を中心に半径2.2km圏内の千代田区・港区中に総理たちが各地に広がっていったことによって起きている。



 例えば、赤坂迎賓館にて。

「うっひゃ~、あの迎賓館のドアとか窓ガラスとか壁も壊しまくってるけどなんか楽しー!・・・あ、ヤバい。なんか目覚めちゃいそう!!なんかキちゃう!!!」

「破壊神に目覚めちゃダメ!ちゃんとした逃走手段なんだから逃げ続けることに集中しろ!」

「そうそう!お楽しみは後にしなきゃな!」

「現・破壊神はShut up!(黙れ!)」

 館内の色んな所をぶち破りながら刀差し男が二人に銃剣付き長銃持ちのモザイクたちを筆頭に獣・猪たちに「待て~!!」と追いかけられている、一部highになりかけている総理3人組。

 というか猪たちも館をさらに荒らしている。




 新橋駅前のSL広場にて。

「場所は把握しているとはいえ、こいつはうっかり建物に突っ込みそうだな~」

「間違っても“まだ”壊すなよ~?」

「だったらせめて・・・、この自分を破壊したら?この鞭で」

「「それ別のもの破壊してるじゃん」」

 そんなやり取りをする一人だけデカい総理3人組を、サラシ特攻服女に“禅”の鉢巻を巻いた男を筆頭に勢子たちと『おにぐま』数匹が「待て~!!」とズンズン追いかけている。




 虎ノ門ヒルズにて。

「訓練のおかげで以前よりは体力の維持に自信は持てるようになったけど・・・、これはこれでなかなかどうしてキツい・・・・」

 理由ワケあってエレベーターが使えないこのビルに逃げ込んだ総理は、ぼやきながらも人間の足をナメるなと言い切って非常階段だけで52階を目指して34階まで到達中。

 その13階下の21階辺りでは、そんな総理を追ってちっこいヨーダっぽい剣士と二人のくノ一のモザイクたちを筆頭にした猿たちがひ~こらひ~こらとゾンビ状態で階段を上がっていた。




 東京タワーにて。

「まさか本当に撃たれつつ追いかけられながらこれを上ることになるとはな・・・・」

「でもあれ一応“東都”のってことになってるから別モンだぞ?」

 そんな他愛もないやり取りをしながら、タワーの周りの空を『網切あみきり』たちが飛びながら背中に背負ったブローニングM2重機関銃による攻撃を受けながらえっさほいさと上っている。

 歪な鎧を着た二人も飛んで網切りたちを指揮している。




 江戸城跡にて。

「あいつ後で絶対に蜂の巣にしてやる!!」

「まあまあ、きっと将来実るって。昔は私もぺったんこだったんだから~」

「「それ、絶対嘘だ!!」」

 わけのわからない争いをギャーギャーしながら、巨乳マフラーっ娘、レイピア使いのモザイクたちを筆頭に勢子集団&『婆娑婆娑ばさばさ』数匹から逃げる、小・中・大と身長差がめちゃくちゃな総理3人組。




 増上寺にて。

「俺達の偽物がないとは・・・」

「残念・・・・」

「そりゃ仕方がないよ。二人はあの時白兵戦に出てなかったんだから」

「まあ本来有名になるってのも危険が伴うからな。あんまりそういうのに憧れてもロクなもんじゃないからな~」

「にしても、早く鳴らしてみたいな~あの鐘・・・」

「それよりも今はこの状況をなんとかしないといけないはずでは?」

 平然としゃべっている総理たちが、何故増上寺本堂の柱にしがみついているのかというと、『おお蝦蟇がま』3匹による口から虹色の気を吐き出して獲物を吸い寄せる能力で身動きが取れないからである。

「いいぞ!その調子だ!!」

 丸盾を持ったモザイク剣士にデカい手みたいな何か・ハンマー・大鎌をそれぞれ持った三人の女性たちによる指示で、それぞれ武器を持って待ち構え中だ。




 どこも総理たちを明確に捕まえることができていない。

 それもそのはず、今ここは早朝から濃霧がずっとかかっていて遠くの物を認識することができない。おまけに妙な匂いで鼻が遮られている。だからメンバーや勢子、獣たちは目につく総理たちを追うことしかできないのだ。




 とある機体の内部にて。

「そちらの準備の方はどうだい?」

『セットは完了しました。あとは全員が予定の位置について時間を待つだけです。オヤジさんの出番は合図のあとなんでまだしばらくお待ちを』

「そうか、待ってるぞ~」

 総理の声で返事をする相手と無線で交信し終わる大道。

 そして機体の中を歩いて指揮官座席に座り込んだ。


「しかしまさか、またコイツに乗り込む日が来るとは思わなかったな・・・・」

 大道は独り言を呟きながら、機体の窓をポンポンと軽く叩いた。


「・・・・今度はちゃんと最後まで運んでくれよ?」






 警視庁本部庁舎の屋上にて。

 足をぶらぶらさせながら座り込み、オーディオプレーヤーで『WILD CRISIS』をイヤホンで聞きながら口ずさむ総理。

「ダランッ♪ダランッ♪ダラダラーッ ダラッ♪ッパ!・・・・お、おーっと、やあどうも、読者のみんな。ここまで読んできた君たち、こう考えてる?“始めっから総理総理総理って言いまくってて怒られない?”“迎賓館とかも派手に暴れちゃって壊しまくってるけど大丈夫?”大丈夫さ、だって今回自体最初っから謝りっぱなしだもの。ここまでで238回も総理《Sory》総理《Sory》って言ってるんだし。あ、今の二つも入れて240回な。何?“それ意味違う”?“無責任”?“そんなんで迎賓館の中を壊したことは許されない”?まあこの先を読めば君たちもきっと納得するって。それと・・・おーっと、別のお客さんが来たようだな」

 桜田通りを見下ろすと、勢子や獣たちがここにいる総理に気づいて群がって、庁舎の中に入り始めている。

「それじゃ、後でな☆ ヤッフ~!」

 そう言い残して、命綱をベルトに付けながら屋上から飛び降りる総理。






 ここは、どこ?

 さっき総理たちの波に呑まれていた途中、誰かが頭に布を被せてきてさらに何かで包まれて運ばれていた。今はもう包まれてはいないけど、布はまだ顔に被ったままだ。

 風が当たる。

 エアコンとかではない、自然の風だ、

 ということは今自分がいる場所が屋外だということは間違いない。

「そろそろいいかな?」

 誰かがそう言うと、私に被せていた布を取り上げた。すると、目の前にはあのBULLETのメンバー:四角形盾を持ったモザイク剣士がいた。辺りを見回すと、ここは国会議事堂の屋上だった。

「あ、あの~これは一体、何故私をここに?」

「いや~すまなかったね、突然。君を安全に保護するためにはあの混乱に乗じるしかなかったものでね」

「保護?」


「俺が頼んだからさ!」


「!」

 この元気に満ち溢れた喋り、今日聞いてきた中で一番しっくりくる声、その声の主はやっぱり!

「すまなかったね~、まさか君が帰省していたとは知らずに・・・。俺はてっきり官邸内にいるものとばかり・・・・今度アドレス交換する?ってうぉっ!?」

 総理大臣:内匠栄介首相だ。

 私は安心の気持ちで思わず総理に抱き付いていた。

「やっぱり・・・私が一緒にいた総理は偽物だったんですね?」

「あいつだけじゃなく、俺以外君が今日見てきたモノ全てが偽物だからねぇ、ここも、この景色も。なあ?旦那」

「これ全部の発案者の底が知れんからなぁ」

 そう言ってモザイク剣士はモザイクを取って髭を生やした狸の顔を露わにしていた。





 一人の総理が自分の腕時計を見て時間を確認中。

「・・・そろそろかな?」

 不適な笑みを浮かべながら呟く。






 議事堂内の御休所にて。

「ぐぐぐ・・・・、1時間半も超えて一人も総理が捕まらんとは何という体たらく!しかも二人の総理を見失ってのこのこと帰ってくるとは何たることだ!フォース・トルーパー!!」

「申し訳ございません、陛下!しかし、ここはやはり皇居を落とすべきかと・・」

「まだだ!それは最終手段として残すのだ。私の命令が無い限り、皇居への勝手な攻撃は許さないからな!!」

 総理がフォース・トルーパーに向けて怒りをぶつけている最中であった。

「陛下、一つ思ったのですが・・・」と露木。

「何だ?」

「これだけ我々が騒ぎを起こしているにも関わらず、自衛隊が何も行動しないのがどうも引っかかって・・・」

「どうもこうもテレビを見てみろ!今ここの濃霧のせいで入り込むのは困難であることから国会議事堂から半径3km地点で待機中であると、報道しているではないか!」

「ですが・・・」

 露木の物言いも、突然のある勢子による無線報告で消されることになる。

『こちら、衆議院議場!たった今総理が現れて・・・ドンッ!!・・・・・どうも~総理さ~ん』

「「「!?」」」

 無線報告が途中、総理の声に変わってこちらに飄々と話しかけてきたのに全員が反応した。

『いつまでも御休所なんかいないで、おたくも議場に来たらどうよ?偽物さん☆』

 そしてザザッと向こうが無線を切った。

「・・・・おのれ・・!」

 




 衆議院議場への扉の前にたどり着いた総理と露木、フォース・トルーパー、メタルなスーツを着た少女、そして武装した勢子たち。

 タイミングをはかってドアをバンッと開け、全員が一気に中に押し入ると、

 議場の議長席辺りに「内匠栄介」と書かれたたくさんの氏名標が積まれ、羽布団ならぬ“氏名標布団”にして寝そべっている3人の総理がいた。

「一度こういうのやってみたいとは思っていたんだけどよ。感想は?総理」

「ガサガサしてて布団としては0点。そっちの感想は?総理」

「謎の安心感もあったりで一時のやってみました感は味わえそう。20点」


「いい加減にしろ貴様らぁ!!」

 氏名標布団の評価をする総理3人に、大声でキレる総理。

「これはどうも総理。随分とご立腹なご様子で」

 不適な笑みを浮かべながら一人は喋りながらズボンのポケットに手を突っ込んで氏名標布団の上に立ち、もう一人は同じく立って腕組みをし、もう一人は座り込んだままあぐらをかく。

「貴様らのどれかが本物か?」

「いいや?少なくともこの議場にいる者が見せている姿全てが偽物ですよ」

「っは、何を馬鹿なことを。貴様らが相手にしているのは我等BULLETSだぞ?本物の総理の部下だか知らないが、本気で勝てると・・・・」

「首謀者の計画は、1週間ちょっと前から始まっていた」

フォース・トルーパーの傲慢な男っぽい喋りを無視してポケットに手を突っ込んだ総理が喋り始めた。


「化け狸が“足の長い爺さん”に化けて武利越太兄弟団のアジトに赴き、中身が化け術で葉っぱから大量の札束に変えられていたアタッシュケース三つを強盗団のボスたちに提供。これで大いに暴れろと念を押すことで、予想通り派手に暴れてくれた強盗団たち。さらには本物じゃない金を使ったことで別の組織をも日本で暴れさせることにも成功した。どの騒動もBULLETSたちの活躍により即時解決に至った。だがこれこそが、一連の騒動を引き起こさせた首謀者が狙っていた通りのシナリオだったってワケだ」

 総理は長々と喋りながら氏名標布団の山を滑り降りて、それから議席の間を通って入口付近にいる総理とフォースたちに近づく。



 そんな総理の説明を無線越しに聞いている各地の総理たち。

 例えば江戸城跡では。

「・・・・彼、こういうことをよくするのかい?」

「「たまに」」

 そんな感想を言いながら逃げ続ける総理たち。




「首謀者の狙いは“日本人社会の混乱”じゃない、“日本国民からのBULLETSのメンバーへの信頼度上げ”だった」

「っく!」

 図星をつかれた反応をする入口付近にいる総理。

 歩く総理はフォースたちから見て2、3m先辺りで歩みを止めた。

「そこへそのBULLETSたちに自分の部下たちがなりすませば、自分が総理に化け、自分が所有する妖怪の軍勢を東京で暴れさせ、国民が信用するBULLETSと協力するともなれば支持はもちろん十分獲得でき、首相の地位を使って自衛隊を出動させることも可能になる。これで両方の勢力を表裏で操ることになり、ゆくゆくは権力と武力の下で法律までをも改正し、776年ぶりに自分が政治世界の頂点に返り咲く、と言ったところですかな?」

「っ!?まさか・・・、貴様、私の正体を!?」

 衝撃の顔をする総理と、その反応を見てニヤりと笑う総理。


「お互いそろそろ、仮面舞踏会は閉会にしようや。尊治たかはるさん」






 同じ頃、増上寺本堂では。

 大蝦蟇たちと総理たちの攻防が続いて、今まさにモザイクたちが柱にしがみついている総理たちを捕まえる寸前だ。

「総理大臣、ゲットだぜ!!」

「「「「「「いやそれテレ東に怒られるからやめなさいって!!」」」」」」

 6人の総理たちのツッコミが早かったのか、ポンッポンッポンッと三方から40mmグレネード弾が発射されて大蝦蟇3匹にそれぞれドカドカドカーンッと命中し、吸い寄せ能力が強制的に中断されて総理たちもギリギリでモザイクたちのロープ縛りから逃れることができた。

『頃合いだ!前菜オードブル終了!主菜メインディッシュに移行だ!合図を!!』

 総理の声による無線報告を受けた総理たちは、相槌をすると一人の総理が寺の鐘:梵鐘がある場所に向けて駆け出した。

「あ、こら待て!」

 止めようとするモザイクたちを阻止する残りの総理たち。

 鐘に辿り着くと、撞木しゅもくを動かす為の縄を掴むと、

「“ゆく年くる年”ならぬ“ゆく料理クチーナくる料理クチーナ”ってな!」

 撞木を後ろに引いて、そう呟ききるのと同時に思いっきり前に引いて鐘を鳴らした。


ゴオオォォォーーーン!!!


 国会議事堂を中心に半径2.2km圏内の千代田区・港区中に鐘の音が響き渡り、各地にいる総理たちの耳に届く。

 


 議場にて。

「な、何だ?この鐘は!?」

 入口のドアが開いていたので、外で鳴っている鐘の音も議場の中まで届いたのだ。

「閉会の合図ですよ」

「何?」

 さっきまで長々と説明してた総理が言うと、体中から電流がビリビリと走り始め、服が焼けているのかと思えば気づかないうちに別の服装に変わっており、服だけじゃなく顔までも焼けてるように見えて服装と同時に別の顔に変わっていた。


 

「改めまして、BULLETSのメンバーでありリ―ダ―を務めております。フォース・トルーパーこと杉田義羅と申す者でございます。かつての陛下殿」


 黒Tシャツと濃い緑のズボンに身を包み、腰に軍刀とコンバットマグナムを差した杉田義羅が立っていた。


「ほ、本物・・・?」

「お、おのれ!!」

 本物に登場されて、早めに片づけようと慌てたメタルスーツのモザイクが隠し持っていた銃で撃ちこんできた。

 それらの弾丸を、ちょうど氏名標布団から滑り降りていた総理が手から電流を飛ばして防いだ。

 するとその総理も、首に手をかけるなり引っ張り、変装を解くと、

「こちらも改めまして、同じくBULLETSのメンバー所属、杉田義羅が妹、杉田愛羅と申す者であります!」

 本物のメタルスーツに身を包んだ杉田愛羅が現れた。

 そして、さらに後ろの氏名標布団であぐらをかいていた総理も立ち上がり、首に手をかけて変装を解き、

「さらに改めまして、同じくBULLETSのメンバー所属、杉田義羅が妹、杉田枝折と申す者であります!」

 黒Tシャツに短パンに身を包んだ杉田枝折も現れた。




 鐘の音を聞いた各地の総理たちが次々に変装を解いていく。



 迎賓館では、

 猪たちに追われながら、

 唯、ヒナ、そして奈々が。



 新橋駅前のSL広場では、

 鬼熊&勢子たちの前で、

 広子、リーク、そしてデニーが。



 江戸城跡では、

 婆娑婆娑&勢子たちの前で、

 巴、ロザリア、そしてラスティが。


 


 増上寺では、

 剣、五十嵐、エリ、ブラッキー、ジェイク、ペティ、正士、そしてトラが。




 東京タワーのてっぺんでは、

 空中にいる網切りたちの前で、

 剛とスターリンが。



 虎ノ門ヒルズでは、

 ヘトヘトな猿たちの前で、

 クレアが。


  

 そして、その他の場所に散らばっていたマフィアたち、シスターたち、ALIVEの隊員たちが。



 脱いだ!!


 変装を。




 各所に居合わせた者全員が驚いていた。

 本物だ!本物のBULLETSが総理に変装していた!! と。




 するとクレア、スターリンはそれぞれの場所から突然飛び降りたのだ。

 二人がそれぞれの場所に上ったのにはちゃんと理由がある。それは変装を解いたあと、誰の邪魔をされずに鎧を着るためである!

 東京タワーと虎ノ門ヒルズの屋上に既に配備してあった鎧が、二人の遠隔操作により飛び立ってあとを追い、それぞれ変形しながら落ちていくクレアとスターリンの体を包み込み、地上から約十数辺りで飛行能力を起動させて急上昇。そのまま飛び去って行った。その間に剛も自身の体を無重力状態にしてフワ~りと地味に飛び去る。



 迎賓館からは唯たちが飛び去り、逃げていた最中館中に仕掛けた爆弾を起爆させて猪たちごと吹っ飛ばした。続けて各地に散らばっている仲間たちにヒナが空間の穴で預かっていた特定のメンバーたちの武器を届けに空を移動し始めた。






 また議場では。

「まさかっ、今朝官邸で縛り上げた総理も・・・!」

「ご名答~、あれも俺の変装さ。ちなみに露木の変装は橙千砲だ」

「・・・・どういうことだ・・・?何故我々の狙いが分かった!!」

 興奮気味の偽フォースが吠える。

「まずは、さっき説明したおたくらの計画を考え付いた策士と、その彼が付き従う上司が誰なのかを当てるところから始まったのさ。獣系の妖怪たちの動きが活発になったのはつい先月末だ。こんなぽっと出だがうまい計画をこんな短期間で出せるとしたら単なる妖怪じゃなく、生まれ変わりの妖怪だってことは明白だ。となると過去の奇策に長けた歴史上の人物から探せば良い。諸葛しょかつ孔明こうめい豊臣とよとみ秀吉ひでよしみなもとの義経よしつね、他にもたくさんいるが忠誠を誓う上司もセットとなればさらに絞り込まれる。その上司の手がかりを掴むためにボニータと一緒に日本各地で起きたここ数週間の事件をしらみつぶしに探したところで見つけたのさ、奈良の吉野の博物館に保管されていた、ある物が盗まれたってな」

 場所の名前が出た途端、偽総理は瞳孔を開く反応を見せた。

「2056年に出土した所有者不明の一つの法具:金剛杵こんごうしょ。こいつを持ったまま描かれた肖像画の中でも有名でその場所にゆかりのある人物に辿り着いたってワケよ。ですよね?


 鎌倉幕府を打倒し、建武新政を行った、後醍醐ごだいご天皇陛下」


「・・・・・・・」

 俺の指摘に間違いがないことを沈黙で答える偽総理の尊治(後醍醐天皇の真名)。


「そしてその天皇の忠臣である武将:楠木くすのき正成まさしげ殿。今回の奇策に俺のフォース・トルーパーに化けるとは恐れ入ったよ。だが・・・」

 ドンドンッ!

 続けて俺は偽フォース:正成に向けてマグナムを2発ほど早撃ちし、ブラスターをへし折り、ヘルメットにひびを入れた。

「DC—15からはターボレーザー砲と同じ砲声は出ないんだよ!!よく学習しとけや!!」

「「キレるとこそこ?」」

 少々怒る俺にさりげなくツッコむ妹二人。だってSWファンとして許せないんだもん。

 ひびの入ったヘルメットは次第に崩れ、中身である刑部狸:正成の苦い表情をした素顔が露わになった。

「そんで露木さんに化けてるのは、流れ的にもう一人の忠臣:新田にった義貞よしさだ殿とお見受けするが?」

「・・・・当たりだ。っ!?」

 ドンッ、ボンボボンッ。

 新田が返事をする直後に、突然外から数々の爆発音が響き渡り、議場を揺るがす。


 

 チームのみんなが戦闘を開始したのだ。



 新橋駅前のSL広場では、

 リークが早速能力を発動して超獣人:リヨンになって、広場の名物:C11形292号を持ち上げてそのまま、突撃してくる鬼熊たちへと投げつけた。

 デニーは他のモザイクと勢子たちに盾をゴンゴンゴンッと当てて交戦中。

 広子は、今回正真正銘の白兵戦デビューで、黒ランニングシャツと緑のタクティカルパンツに軍靴、自衛隊も使う5.56mm機関銃MINIMIを軽々と振り回し、ドガガガガッと派手に撃ちまくりながら突き進み、二人と共に作戦通りに移動を始めた。



 増上寺では、

 同じく白兵戦デビューの剣と五十嵐はタッグを組み、近接と防御を剣のアイラに鍛えてもらった完全鉄製の薙刀で、中距離攻撃を五十嵐が使うKriss Vectorで息の合ったコンビネーションで次々に来る敵を倒していき、エリたちと共に戦いながら議事堂に向かい始めた。

 

 そして空中戦では、唯、スターリン、そしてクレアが群がる網切りたちを叩き落しまくっている。



 

「っく!仲間に攻撃を命じたか。今に見ていろ!こっちにはまだ副菜が残っているんだ!ここで正体を明かしたことを後悔するがいい!!」

 そう言って尊治はスーツの中から金剛杵2本を取り出して見せつけてきた。

「さあてそれはどうかな~?言っておくがこっちは主菜メインディッシュの一端を見せただけに過ぎねえぞ?」

「ははっ、減らず口も程々にしておけ!行くぞ!!」

「「「「っは!!」」」」

 部下を引き連れて議場を出ていく尊治たち。

「ま、あの大物を俺達が相手しなきゃ、仲間がヤバいのは事実だけどな。行こっか!」

 妹二人を連れて俺も彼らを追う。

「あの金剛杵、やっぱりもう一本は吉野山の祠から?」とアイラ。

「らしいな。とにかくさっきの挑発を受けてこのまま計画を前倒ししてくれれば、俺たちが奴らを一網打尽さ」





「やむを得ん正成、私が許す。部下と共に皇居を襲え!!」

「っは!仰せのままに!!」

「義貞!化け狸たちと獺たちに化け術を解くよう命じ、目につくBULLETSのメンバー全員と人間共を片っ端から討ち取れ!!」

「はい陛下!!」

 国会議事堂の中央玄関を出たところで二人の武将を行かせ、自分は玄関の屋根の上へ自力でジャンプした。

 そして2本の金剛杵を両手で掲げ、

「我が同胞たちよ。今こそ集い、我がつるぎとならん!!」

 呪文をとなえるようにそう叫ぶと、金剛杵がビリビリと電流を走らせ、空の雲が黒くなって次第にゴロゴロと鳴り響き、ついには大きな稲妻が彼の所に落ちた。


 ピカッ、バリバリバリィッ!!


 稲妻による強い光が消えると、国会議事堂の周りに数えきれないほどの『らいじゅう』が群れをなしていた。




 江戸城跡にて。

「ギラ、あたいだよ。今妖怪たちが皇居?に向かっていくのを確認したよ。そっちは大丈夫なのかい?議事堂に大きな雷が落ちたみたいだけど」

 状況報告をしながらM60を正体を現した元勢子だった化け狸・獺たちに撃ちまくるラスティ。

『心配ない、読み通りに事が運んだだけさ。それより巴は何してんだ?何か誰かを執拗に追い回してるみたいだが・・・・』

「ああ、自分の偽物に化けてた狸に制裁を加えてるのよ」とロザリアが答える。

『あらら~、そっちにもカミナリを落としてる奴がいたか~』

 UZIを撃ちまくりながら一匹の化け狸を追いかける巴。

「なんっで偽物は巨乳になってんのよ!嫌味か?嫌味なのか作者ぁっ!!」

「もう堪忍して~!!」

 と、涙ながら逃げ続ける狸。

『・・・・なんか、怒りの方向おかしくね?』

「「ごもっとも」」





 俺たちは遅れて前庭に辿り着き、玄関の屋根に立つ尊治を見上げた。

「その姿を見ると、政治世界への執念深さを感じさせますな」

 もはや総理の変装は不要となり、彼は腰に刀を差し、文官束帯に身を包んだ本来の姿である雷獣:人間形態で本人の怒りを彷彿とさせる電流がバチバチと垂れ流しになっている。

「抜かせ。この姿を見て臆さない人間はいないと思っていたのに。今この時、目の前にその人間がいるということが腹に据えかねないわ!だが、その余裕もすぐ崩れるであろう」

「へえ~?一体何をやるってんだい?」

「正成たちを皇居に向かわせた!もはや高貴な人質を確保できるのも時間の問題!さらには総理の秘書官一人も既に人質に取っている!呼び出した雷獣たちも参戦させて有利な形勢、貴様らさえ潰せば後はこの国を蹂躙するのみよ!!」

「あ~あ~、最後の切り札まで使っちゃって~。完全に俺たちの思惑通りに動いてくれちゃったもんだな」

「?これを見て何故平然としていられるんだ?貴様は」

「あんたの金剛杵が最後の切り札ってことはとっくに知ってるんだよ」

「!?何故それを・・・」

「わしじゃよ」

 尊治から見て議事堂の左方向の屋上から、どっかの博士の声かと思いきや、竹千代学園長:元康による声だった。

「も、元康!?裏切ったのか!!」

「いやいや、元々わしがあんたの計画が気に入らなかったのは重々承知のはず、致し方なく協力していたところを縁のある彼に見抜かれたのを機に表返らせてもらったんじゃよ。それに、あの娘まで巻き込むのは些かやりすぎだと実際感じたしの」

「き、貴様~、あの娘も逃がしたのだな!」

「元爺だけじゃないぜ?な、シャッキー」

 俺が一声かけると、庭の茂みに隠れていたアナウサギが一匹出てきて俺の肩へとジャンプした。

「アナウサギの経立ふったち・・・!貴様間者を送っていたのか!!」

「ああ、大久野島で仲良くしてたこいつとは連絡し合っててな。あんたの正体と金剛杵の能力のこともシャッキ―のおかげでわかったのさ」

 そしてシャッキ―も『謀りまくったのさ!!』という内容のプラカードでコミュニケーションを取ってくる。

「だ、だから何だというのだ!どうせ新たな人質だって・・・」

『陛下!大変です!皇居内に突入したところ、人が見つかりません!!』

「な、何!!?」

 部下からの無線報告で悪いニュースを聞いた尊治は驚きを隠せなかった。




 同じ頃、皇居では。

 正成率いる妖怪たちによる突入が行われたところ、中に人影が一つもないことに大慌て状態であった。

「もっとよく探せ!!いくらBULLETSといえども、ここから人を立ち退かせるほどの影響力はないはずだ!どこかに隠れているのだ!!」

「と申されても、いないものは仕方ないのでは・・・」


 そんな妖怪たちの様子を富士見櫓の屋根からロンが双眼鏡で覗きながら左手に持った装置のボタンに指をかけながら待ち構えていた。


「こっちの間にはいるかな?」

 とある化け狸二匹が襖を開けてみた。

「ダメだ。やっぱ誰もいないや。包み紙の箱がいっぱいあるけど、『C-4』って書いてあるぞ?」

「お前『C-4』を知らないのか?プラスチック爆弾のことだろうが!」

「ああ、プラスチック爆弾ね・・・」

「「爆弾だって!!?」」


 それを確認したロンが、

「お疲れ」

 と言ってボタンをポチッとな。



 ドオォォォーン!!!



 

 議事堂から北北東の方角からきのこ雲が立ち上るのを見て尊治は、今目の前で起きている状況が信じられないくらいに驚いた表情になっていた。

「お前たち・・・、何をしているのかわかっているのか!?皇居を丸ごと破壊するなど!!」

「あれだけじゃないさ。よく見てみ?」

 そう言われた尊治はドンドドンッと鳴る音に反応して、再び遠くを見ると、


 

 ドンドドンッドンドンドンドドドンドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンドオォォォーンッ!!!



 まだ霧がかかっていてはっきりは見えないが、国会議事堂を中心に半径2km辺りにある主なビルが次々と爆破され倒壊し始めた。


 さらに、


「つぇあっ!とぅあっ!やああああああああああああああっ!!!」

 バシッビシュッビシビシッ!バシュシュッ!ガシャンッ!!


「でやっ!だぁっ!どぅああああああああああああああっ!!!」

 ガガギッガコンッゴギャッゴガギィィィンッ!!!


 菊也が虎ノ門ヒルズの支柱を全て斬って、窓ガラスから脱出。

 実央が菊也直伝の剣術で、東京タワーの鉄骨を斜め45度に斬り、飛行して離れる。


 さらに、増上寺にいたペティがすぐ近くの慶応義塾大学施設に向けて如意棒を30m程伸ばして、

「そうりゃああっ!!!」

 フルスイングした。



 それぞれが斬り、振り、破壊した建物がズズズズズッと崩れていく。


 その場に散らばっていた妖怪たちも次々に瓦礫の下敷きになり、そして消滅していく。

 そう。俺は妖怪たちと戦う唯たちのチームとビル群に爆薬をセットする菊也、実央、好華、千恵、濃さんのチームに分けて動いてもらっていたのだ。

 この爆破で敵は必然的に中心である国会議事堂の方角に逃げ出す。

 信じられない出来事の上を更に超える360度の光景を目にして、尊治はさすがに呆けた顔になっていた。

「貴様ら・・・正気か?何故こんなことができるのだ!?守るべき都を壊滅させる気か!!?」

『陛下!こちら新田です!外縁部を調べたところ、我々がまんまと嵌められたことがわかりました!!』

「何だ?何がわかったのだ!?」



『ここは本物の東京じゃありません!!浮遊大陸です!!我々は今、海の上を飛んでいる浮遊大陸の上にいます!!!』


「な、何ぃっ!!?」



「ありゃりゃ、もうバレちった?まいっか、歩~もうバレたから霧を払ってくれ」

『了解です!!』


 歩は今、さっき氏名標布団で隠していた議長の席の裏でこっそりと妖術の発動に集中しているのだ。ここら一帯の霧は彼の妖術によるものであるため、無線を通して頼んだ。

 すると段々霧が晴れていき、ビル群倒壊による土煙が立っていて見えにくいが、その先は町どころか山さえない真っ青な空だった。


「こ、これはどういう・・・」

「俺と妹たちで創造した疑似霞が関の浮遊大陸さ。シャッキ―のスパイ情報のおかげで敵の内情は分かったものの、相手が多すぎたこと、味方は増やせどそんな大戦を都市でやるのも危険。なら敵さんを騙して俺たちのフィールドに招けば良いことよ。すなわち!チーム乱闘だ!な~んつって☆」

「・・・・一体どうやって?今朝、我々は確かに港区から入ったはず・・・・」

「答えはあの“霧”さ。前日までに俺とアイラで決行日に霞が関周辺に本物の霧がかかるよう天候を操ったのさ。そんであんたらが来たところでお友達の妖狐に妖術を使って霧でごまかしつつ同じく霧まみれの浮遊大陸へと招待したんだ。んで、雷獣以外の妖怪たち全員が乗ったのを確認したあとは、大陸丸ごとを太平洋へ移動させておく。今頃大陸はもう海面からは8000~9000m、そして一番近い本土の千葉県勝浦市からでも20kmは優に超えてるだろうな~。だから下を気にすることもないしこの大陸にある施設がぜ~んぶ偽物だから壊し放題なワケよ。ぐふふふ」

「総理の変装は移動の為の時間稼ぎに過ぎなかったのか!?い、いや!嘘だ!テレビ中継でもちゃんと報道されていたぞ!自衛隊も動いていると!」

「ああそれね~、俺が作った偽のニュース映像さ。この大陸にあるテレビ全部にその動画しか流れないようにしてただけ~」

「・・・っ!おのれぇ!!」

 吐き捨てるように言うと、尊治はジャンプし、部下たちがいる戦場へと向かって行った。

「よっしゃ、これで先手を取られた分キッチリ化かしてやって五分五分だな。あとは、逆転に向けて暴れまくるだけだ。元爺、桜田さんと歩の保護を頼むぜ」

「任せなさい、わしの“袋”でちゃ~んと包んで・・・・」

 ドンッ。

「それはすんな」

 俺の弾丸ツッコミが変態狸ジジイの股の間をすり抜ける。

「・・・はい・・」

 と、ガタガタち震えながら自分の股を抑えて守る元爺。

「ほんじゃまっ、いっちょ派手に味付けしてやるか!二人とも!!」

「「あいさー!!」」



 さあさあ、大戦場でのチーム大乱闘の始まりだ~!!


 READY,


 GO!!



「「「でりゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」



 ようやく参戦し始めた俺達は、迫りくる雷獣軍団など恐れもせず、俺は軍刀:雷龍にビリビリと電流を込めて、アイラは全身にバリバリと電流を纏って、シオリは能力で出現させた2本のトンファーにジジジジと電流を込めて、数々の妖怪たちを薙ぎ払っていく。

 外観的には一人一人が竜巻のように暴れている感じだ。



 もはや敵を倒すのみとなった味方も暴れに暴れ、暴れまくっている!!



 例えば、リークと奈々は久々に思いっきり暴れることができて上がっているのだが、唯や広子、剣たちは疑似とはいえ、地元で暴れることもあってか謎の背徳感も相まって今まで以上に意気揚々と戦っている。

 実際、俺も同じ境遇だからスンゴく分かる。

 雷龍でひとしきり倒したあと、戦闘スタイルを変えてハンチング帽子と緑ジャケットに身を包み、走りながらマグナムをドンドンドンドンッと少し距離を置いている妖怪たちへ次々に撃ちこんでいく。

 アイラは、

「あんたたちの貧弱の攻撃なんか恐れやしないわ!私たちの弾丸は誰にも阻止できない!!貧弱貧弱ゥッ!!」

 そう叫びながら両手から電流をバリバリと放っている。

 ・・・・悪役が混じっていますな。

 シオリは電流トンファーを振るいに振るいまくっている。



 南南東へ数十m進むと、内閣府辺りで増上寺から来たエリたちと合流した。

 俺のコンバットマグナムM19、エリのベレッタM92FS、ブラッキーの2丁のグロック19、ペティのモスバーグM590、ジェイクのSPAS12コンバット・ショットガン、それぞれの銃口が交差し、妖怪たちに火を噴く。


「この作戦を今朝初めて聞かされた時、あたしたち正直あんたのイカれ始めが本腰を入れたと感じたよ!」とペティ。

「敵には有利な作戦だろ?」

 スピードローダーで弾込めしつつまた撃ちながら俺が答えると、

「敵の心境を思うと、かわいそうだと思う」と剣。

「正義の内にギリギリ入っていて良かったと思う」と五十嵐。

「つくづく味方で良かったって思わされるよ」とエリ。

「「家族で良かったと思ってる!」」と、アイラとシオリ。

「お前が裏切りの家臣だったら絶対そのまま天下統一してただろうな」とトラ。

「また海賊をやらなくて良かったって思うな」とブラッキー。

「前世での南軍にいなくて本当に良かったと思いますよ」と正士。

 みんなこんな反応だ。ひでぇ言われようだな。

「将来闇落ちしないことを祈ってるよ」

「どうもな、ジェイク」


 だが、敵さんもまだまだ迫ってくる。そんな中、妖怪の一団を斬りまくる者がいた。


「おりゃおりゃーっ!!現場復帰の侍だ妖共ぉぉっ!!」


 3、4年ぶりに刀を振り回し、戦場に返り咲いた明治維新の元暴れん坊志士:板垣退助こと、スーツジャケットを乱した内匠栄介現首相がご登場だ。

「ははは、つい昨日まで言論を武器にしていた人間とは思えないセリフだな~」

「たまには体を思いっきり振るわないと健康にも良くないだろ?」

「たしかに、健康は一番だからな。ラスティ、そっちの状況は?」

『こっちは今のところ大丈夫だ。大物さんたちやロンと合流できて迎撃はできてるんだが、数が多すぎやしないかい?』

「もう弱音か?格好がつかなくて山中正治に笑われるぞ?」

『そこは任侠ファンとして嫌だからちゃんと格好はつけたいけど、何かぽっと出の良い作戦があった方が良くないかい?』

『そこでだけど私に、いい考えがある!!』

 おや、久々に司令官が登場・・・、いや、ただのキャプテン・ベイカーの声だった。

「どんな案だ?唯」

『実行はギラに頼みたいの。一番適任だと思うから』

 唯の提案を無線で聞いてみて、俺はうまくいくと確信しニヤりとほくそ笑んだ。

「OK。それで行こう!もう一通り倒したらやるぞ!」

 そして今度はヘルメットとトルーパー・アーマーへと簡単コーディネートし、Z-6ロータリーブラスターキャノンを創造・回転させ、

「ようしブリキ・・・あいや、妖共。You want a piece of this!(これが欲しいんだろ!)」

 引き金を引いて大量のレーザーを浴びせ始めた。

 波のように押し寄せる妖怪たちがどんどんブラスターの餌食になっていくのを見て、

「Make them eat heat!(熱くなってきたぜ!)」

 ハードなケースのスイッチが入った。

 そんな変なテンションが入った俺をチラと変な人を見る目のメンバーたち。見ちゃいやん。

 自分たちと比べて明らかに少数なはずの俺達が、数で勝っている自分たちを相手に怯みもしないのを見て、段々勝機を見失っている妖怪たち。中には怖気づいて逃げ出す妖怪もいる。

「そらそらどうした!どこ行く気だ?戻って来いよ!!てめーら妖共でも、このスーパースギタブラザーズの登場でもう戦意喪失か?」

「「そのネーミングはやめて!!」」

 やっぱダメ?

「駄目に決まってるだろがぁぁぁぁぁっ!!」

 突然大声でツッコミをしながら突っ込みをして妖怪たちを吹っ飛ばす人間重機関車は、やっぱり剛だった。

「ボケに敏感な奴だこと。ツッコミの為にわざわざ来たのか?」

「そう、ツッコミこそ俺のアイデンティティ!って違うわ!!マフィアたちとシスターたち、ALIVEの隊員全員の誘導を済ませてきたところなんだよ。ちゃんと作戦通り市ヶ谷方面にな!」

「おう、ご苦労さん。ではボニータ、敵をさらにびっくりさせてやれ!」

『了解です、ギラ様。大道総監、お待たせしました。出番です』

『OK。待ってたぞ~』



 


 

 浮遊大陸は今、霧はなくなってだいぶ外観がはっきりしてきたが、爆破によるビル群の倒壊で土煙がドーナツ状に広範囲に立ち込めている。

 ビル群の倒壊の前に、この相手の思惑に気づいた義貞が確認の為に疑似浜松方面、浮遊大陸の外縁部まで来ていた。大陸の外に出ようにも何やら結界のようなものが張られていて部下の狸たちもそれに阻まれて既に数匹が消滅していた。

「これは、尊勝陀羅尼そんしょうだらにの類か?」

 

 『尊勝陀羅尼』。それは、唱えるか書き写すことであらゆる災いから守られるお経のことである。



 は~い、久々にここで俺が補足説明しちゃうよ~。

 実は今回の作戦で、BULLETSの一部メンバー、ラスティ一家のマフィアたち、レッド・クローバーのシスターちゃんたち、そしてALIVEの隊員たちが装備している銃火器の弾丸全てに、その尊勝陀羅尼のお経が刻まれているんだ。だから、妖怪たちに弾を一発当てただけでも確実に仕留めることができるのさ。製作者はもちろんオ・レ・だ☆ ちなみに刀や剣、近接用の武器にはお経を記した紙を巻き付けるだけで十分。とは言っても妖怪あいつらそれでも数日後には復活してるだろうけど。

 この大陸も尊勝陀羅尼を含めた結界で“ほぼ”包んでいるから、妖怪の出入りは難しい。たった一か所だけ、その結界がない場所があるんだ。それがさっき剛が言っていた疑似市ヶ谷方面の端っこだ。

 はい、ここまで!




 どうすればこの大陸から抜けられるのか画策していたところ、ある音が耳に入り、それが段々近づいてくるのを感じ取った義貞は、浮遊大陸の外に目をやった。

「今度は何だ?」

 すると、

 周りに広がっていた雲の平原から上昇し姿を現したのは、旧日本陸軍が所有していた機体“深山”だった。垂直飛行用に改良を施され、機体のペッティングも完全な緑にされている。それだけじゃない。浮遊大陸の周り360度に旧日本軍の飛行機たちが次々に浮上してきた。

 九三式重爆撃機、九三式双発軽爆撃機、中島 キ19爆撃機、九二式重爆撃機、九七式重爆撃機、キ74偵察爆撃機、 四式重爆撃機“飛龍”、九六式陸上攻撃機、銀河11型双発爆撃機、そして大道為五郎を乗せた一式陸上攻撃機。

 これら全てに深山同様、垂直飛行改造に完全な緑ペッティングが施されている。

 爆撃機の登場による風圧もあって、大陸で立ち込めていた土煙もようやく晴れて各地で戦っていた全員が空の景色を確認することができた。

 改めてミリタリー、または飛行艇マニアの方に申し上げます。数々の名機を勝手に改造して、すいません・・・・。



 ボニータの遠隔操作による爆撃編隊の登場だ。


 今の今までは大陸の裏側に張り付いて待機していたのだ。



「ボニータ、爆撃の標的ターゲットは疑似市ヶ谷を除いた外縁部と議事堂から半径1kmの間にいる妖怪たちだ。容赦するな、いいか?」

『Yes sir.』

 そしておやっさんが機体の中でホロマップを使って監視の目の役を担ってくれる。

「おやっさん、始めてくれ」

『任せろ』

 無線で俺が指示すると、爆撃編隊が円形状に前進飛行し、爆撃が開始された。

 

 ヒューッヒューッドンドンドドンッヒューヒューヒュードンドンドンドドドンドドドドンッ。



 爆弾の雨が妖怪たちに降り注ぎ吹き飛ばしていく。

 そんな中を果敢にも走り抜けながら議事堂に向かおうとしている義貞たち。

「網切り部隊!あの怪鳥どもを叩き落せ!!」

 無線で指示を送り、それを受け取った網切りたちも慌てて機銃を伴って爆撃機を撃ち落とせるよう射程距離内に近づこうと向かった。

『網切りたちが複数、いきなり私が乗っている機体に集中してるよ』

 おやっさんが無線でそう告げる。

「それじゃ“目にもの見せてやれ”によろしく、お先に出番だぞ~」



 網切りたちの内、ニ体が背負っていた機銃に突然の攻撃を受け、中の弾薬が引火して爆発した。

 自分たちの上を見上げると、刀を抜刀して飛んでくる緑の巫女が。


「でやっ!!!」

 数匹の網切りたちを、菊也直伝の剣術で一瞬で斬り倒す実央。引き続き、肩の前後に具現させている零戦の機銃で網切りたちを駆り立てていく。

「おやっさん、ご安心を。今度の飛行は私が護衛します!」

『エース・ゼロの登場か、歓迎するよ』

『おいおいおい、護衛機一機だけじゃ物足りないだろ?俺達だっているんだ』

『『『その通ーり!!』』』

 俺のジェットパックミサイルにDC—15Aによるブラスター攻撃、唯のファイアーレイ、クレアの剣撃、スターリンの投げ斧が更なる網切りたちに炸裂し撃ち落としていく。

『あの時と同様護衛機5機か。なのにどうしてか当時と違って危機感が足りないな』

「そりゃあだって、あんたの存在に奴ら気づいてないんだから。大物相手じゃあるなしで敵も気合いの入れ込み具合は違ってくるからな」

『だが結局は、今も昔も狙われる運命なのか私は・・・』

「まあ心配すんな。“日本のケツ”があんたのケツを守ってくれるんだからよ」

「次にその言葉使ったら、強制的に夜のスキンシップを上げさせてもらうからね!」

「でも唯の場合は、スキンヒップだよね」と実央。

「「「『うまい!!』」」」

「ってこら!」

 そんなやり取りをしながら向かってくる網切りたちと戦う俺達。

「・・・あっちキツそうだな。三人とも、おやっさんを頼む!俺はちょっと抜けていく!」

「「「Yes sir!!」」」





 市ヶ谷方面外縁部では。

 元々人数合わせのために協力してもらっていたマフィア・シスター・ALIVEの隊員・スパイだったアナウサギの経立たちには先にチヌークで安全圏まで避難してもらうよう急いでもらっている。現に、彼らを狙って妖怪たちが押し寄せている。

「こちら好華!敵と交戦中!!協力者の収容を急いでるんだけど数が多すぎる!!こっちにも応援が欲しいんだけど!!」

 ビルの瓦礫を弦で引っ張り上げて、迫りくる鬼熊たち目掛けて放りまくりながら報告する好華。

「ギラ、あなたの力が欲しいです!できればトラにもお力添えを頼みます!」

『そう言うだろうと思ってな、今ちょうど向かってるところだ。トラとセットでな』

「御屋形様のハッピーセットですか!それは楽しみですね!」

 鬼熊一体をいつもの棒:マオウで掴み、そのまま振り回し他の妖怪たちを蹴散らしていく濃さん。

『おい、俺をファーストフード店のメニューにすんなよ。この料理対決まだ主菜メインディッシュの途中なんだからよ・・・・!ギラっ、危ない!!避けろ!』

『っ!?』



 バリバリバリィッ!!



 何が起こったのか。それは、俺の存在を疎み始めた尊治が俺に奇襲の電撃体当たりを繰り出したのだ。

「目障りな奴め」

 寸でのところで巻き込みをくらいかけたトラを投げるが、俺は尊治に連れられ、そのまま爆破で既に屋根が破壊されて開放状態になっていた疑似日本武道館の中心に落とされた。

 トラはというと、駆けつけた千恵が空中キャッチを決めてくれた。

「ありがとう。お前に抱かれるのはいつ以来だっけな。今はベッドで俺が抱きまくってるのに、ははは」

「はいはい、そういうのは帰ってからにしましょうね。それよりギラは大丈夫でしょうか」

「あいつなら大丈夫だろ。キャプテンの作戦もきっとうまくいく。俺達はあいつらの収容を終わらせるために踏ん張ろう」

「了解!」

 千恵はトラを運んで疑似市ヶ谷へ向かっていった。



「無様な姿だな」

「あんたよりは笑いの一つは取れるけどな」

 俺は今、尊治により地面に叩きつけられたことでヘルメットがめり込んでいて逆立ち?状態になっているのだ。

「斬り捨てる前に聞いておこうか。この浮遊大陸はどうやって飛んでいるのだ?」

 質問をしながら腰に差していた刀を鞘から引き抜き、雷を刀身に込めながら構える尊治。

「それ喋って何の役に立つって言うんだ?」

「貴様らBULLETS共をまとめて始末したいと願う私の役には立つ」

「・・・たしかに。こりゃ一本取られちゃったな~」

「つべこべ言うな、早く吐け。でないと貴様の内臓を腹から抉り出してやるぞ」

「喋ってもそれやるだろ?そういう脅し文句は俺には通用しないからっな!!」

 俺の返事にムカついて刀を振り下ろすのを感知能力で見計らって、俺はヘルメットとアーマーから脱出し、バックステップしながら本日最初の戦闘スーツに戻り、雷龍を構える。

「ほう、私と一騎打ちをしようというのか?戦の超一流である正成たちから稽古をつけてもらった私の剣術を受けて立つのだな」

「そちらこそ、戦国の世を生き抜いた猛者たちの近くで戦ってきた俺の戦闘力を甘く見ちゃいけないぜ?」

 そして次の瞬間、バリバリと電流を帯びた二本の刀が激しくぶつかった。


 バキイイィィィィンッ!!!




 収容場所では、トラの加勢で防御戦がだいぶ楽になり、収容も残りわずかとなっていた。

 シャッキ―が『あともうちょっと』のプラカードで収容状況を好華たちに知らせる。

「あいよ、ごくろうさん!あんたも早くチヌークに乗りな!」

『俺も残る!』のプラカードを見せるとすぐ捨てたかと思うと、そのまま迫ってくる猪の経立に強烈なライダーキックを決めていく。

「男らしいウサギだな。なんでギラと友達なのかがわかるよ」






 二人は思った。互いの刀が性質状相手のどこにかすっただけでもタダじゃ済まないことを。

 強烈な剣撃を受け止め、かわし、飛び跳ね、反撃を繰り出すの連続だ。

「教えろ、この浮遊大陸の動力源が何なのかを!」

「そんな仲間を売るような行為を俺がするとでも?」

「いくら策を弄しても我等の数を相手に完全な勝利は得られないはずだが?」

「お言葉を返すようだが尊治さんよ。勝ち目もない戦いにこんな大舞台を作ってまで挑むほど、俺は愚か者じゃないんでね。それにこの大陸には色んな人間がいる。裏切りを受けて天下統一を果たせなかった者、分裂仕掛けた国を立て直そうと志半ばで暗殺された者、魔女と罵られ処刑されても信仰心を失くさず持ち続けた者、国そのものに殺されかけても再び立ち上がり故郷を取り戻した者、自分の能力を恐れながらもその使い道を誤らないよう努力する者、殺されかけて一人で生きてきたがやがて仲間の大切さを知って共に生きようとする者、俺はそんな人間たちがどれほどの努力をして生きているのかを知っているからこそ、この作戦を立て、数など気にせずあんたたちに挑むことができたんだ。かつて鎌倉幕府を倒すという御旗を掲げたあんたならそこはわかるはずだ」

「・・・たしかに、あの頃は王政の復活に向けてかつてない志を胸に宿していた。正成たちにも感謝していた。だが今はどうなのだ!王政はなくなり、民が選んだ政治家などに任せておいて!王がやらねば誰が国を守れるものか!」

「そういう古い考えは今じゃNGってヤツで、今まさにあんたはそういう理屈が通用しない現代っ子にぶっ飛ばされるんだよ。な?」

 最後の一言が誰に向けてなのかわからなかった尊治は、一瞬で目の前に漂った殺気にようやく気づいた時にはすでに拳を顔面にくらっていた。

「オラァッ!!」

 番長の拳が。

 そしてまだ終わらない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ、オラアーッ!!!」

 奈々のラッシュが決まり、最後の重い一撃で尊治は客席へと飛び、さらにはその衝撃で天井爆破で今にも落ちそうだったステージライトがついにガシャガシャーンと落ち、尊治を下敷きにした。

「もうちょっと、早くても良かったんじゃねえか?奈々」

「贅沢言うなよ。唯から作戦を聞いたのが敵を潰しまくってようやく国会図書館辺りだったんだから。何を聞き出そうとしたんだ?あの雷獣」

「大陸の動力源が何なのかを聞き出そうとしてた。おそらく議場にいる歩を襲って俺達が逃げる前にこの大陸を落とそうって腹だったらしいな」

「・・・・そうか、あの妖狐がこの大陸を浮かせているのだな!!」

「「!?」」

 ステージライトの山をガシャガシャとかき分け、ボロボロになった服に拳の跡が残った顔面を出し、その辺に転がっていた刀を拾い上げる尊治。

「ありゃりゃー、奈々のラッシュをくらってまだ立てるとは、タフだこと」

「わざわざ場所まで教えてくれて感謝するよ。今からあそこに全兵力を送り込めば全てが逆転する・・・!見ていろ杉田義羅とやら、貴様らの勝機はもはや無いという事を」

 ドカーンドンドドンドオォォォーンッ!!!

「あ、ここも爆撃範囲だってこと忘れてたな」

 変態・・・いや編隊による爆撃によりまた下敷きになった尊治。

「そんじゃ行こっか」

「え?行くってうわっ!!?」

 簡単コーディネートでジェット・トルーパーになった俺は、奈々を抱えて武道館の上空へ飛び上がった。

「まんまと引っかかってくれたな~。大陸は自動でそうなるように俺が創造したのに、いくら歩でも浮遊大陸を動かす妖術を一人でなんか使えるわけないっての」

「は?あれ嘘なのか?」

「唯がとっさに考えたシナリオさ。こうすれば敵は一点に集中して大軍で押し寄せてくれる。そこを俺たちが結集して全力で倒していく。やってくる方向が分かれば狙いやすいってワケさ。みんな!作戦がある!」

『こちらジュディ!収容は完了しました!安全圏まで離脱します!』

「了解!千恵!濃さん!菊谷たちを連れて国会議事堂に向かえ!おやっさん、ボニータ!爆撃も頃合いだ。爆撃編隊を連れてジュディたちと一緒に安全圏まで行って待機しててくれ!」

『『了解』』



「BULLETS!!主菜メインディッシュの締めくくりだ!最後のスパイスを奴らにぶっかけるぞ!!」



『『『『『『Sir,Yes sir!!』』』』』』






 その頃武道館では、爆撃で大量の瓦礫を被り、それらをよけるのに時間がかかっていた尊治に、それを手伝う遅れてやってきた義貞と部下の化け狸たち。

「陛下」

「もういい、あとは自分で抜け出せる。義貞、残った全兵力を持ってして、議場にいる妖狐を討ち取れ!!」



 衆議院議場に戻ると、議長席に元爺、歩、そして桜田さんがいた。

「ギラ、唐突な作戦に驚きましたよ。まさか私が敵の標的になろうとは。あなたが承知の上で遂行したのなら勝機はあるんですよね?」

「もちろんだ。なぜなら・・・」

「“勝ち目もない戦いに挑むほど、自分は愚か者じゃない”、じゃろ?」

「ああそうだ」と、歩の肩をポンポン叩く俺。

「挨拶は手短に。この度は作戦に巻き込んでしまい申し訳ありません、桜田さん」

「いえ良いんです本当に。聞いた限りあなた方がいなかったらこの国は内乱状態に陥る寸前だったと。総理を助けていただき感謝しています」

「ぐふふふっ、まあ・・・その代わりに今日本の霞が関が混乱状態に陥ってるでしょうけど・・・」

「え?」

 それはさておき、議場には次々とみんなが集まりつつあった。

 菊谷たちを連れた千恵と濃さん。ラスティにロン、ロザリア、巴たち。そしてエリたち・・・あり?

「おいシャッキ―、他のアナウサギたちと一緒に避難しろって言ったろ?」

 すると彼の返事はこう。『ご一緒させていただきます!』のプラカード。誰の入れ知恵だ?ああ俺か。

「ところで何で剣と五十嵐がまだあんな遠くに?」

 感知能力を使ったところ、あの二人が議場じゃなく外にいたのだ。

「ああ、途中猿の経立の群れに襲われてな。ちょっとした殿しんがりをあの二人がやってくれたんだ」とトラ。

「なるほど。剣、五十嵐と隠れてイチャついてる場合じゃないぞ」

『わかっててからかうのやめてくんない?こっちはジェットパックすらないんだから』

 文句を言う剣は、一応風景ように俺が大陸と一緒に創造した自転車の荷台に五十嵐を乗せて、自分でこぎながら薙刀で妖怪たちを蹴散らして議事堂にようやく到着した。

「でキャプテンの作戦って何だ?」

「歩を守るんだ。奴は妖狐を殺せばこの浮遊大陸が落ちて俺達を殺せると思い込んでいる。そこを利用するんだ」

 そして最後におやっさんの護衛を終えてきた唯と実央が来た。で、ちょうど義貞と尊治が議事堂内に入り、議場の御傍聴席に現れた。

「いよいよお出ましか。ギラ、一人何体倒せば良いんだ?」

「ここでそういうことは考えない方がいいぜ剛。たとえ知ることができてもな」

 なぜなら、

 大陸中にいる猿・猪の経立、鬼熊、婆娑婆娑、大蝦蟇、網切り、化け狸、獺、雷獣、残り全ての妖怪たちが、江戸城跡の堀を超えて憲政記念館方面から、桜田門を通って警視庁方面から、有楽町、日比谷、銀座、新橋、浜松、虎ノ門、六本木、赤坂からとにかく全方位から中心である疑似国会議事堂に迫っているのだから。

 俺が感知能力でさらっと確認しただけでも・・・・おっとやめとこ。

 しかしあの二人がもう勝ったぞ!みたいな顔をしているのちょっと嫌だな。

「・・・・This is not good.(これ、マズいかも。)」

 俺とは違って、感知能力で相手の数を確認しちゃったらしいアイラが呟いた。

「追い詰められたことを認める気になったようだな。この兵力を以てすれば大陸を落とす前に貴様らを葬ることもできる。今降伏する者がいれば丁重に扱うことを約束するが、どうだ?」

「・・・・・誰かあの勘違い妖怪さんにピッタリな言葉を贈れるヤツはいるか?」

 俺はZ-6を構えながらみんなに聞く。

「ならあたいが。『そがな考えしとるとスキができるぞ』ってやんでいっ!!」

 弾丸の装填を終えたラスティの啖呵に合わせてリークと仮面をつけた奈々が雄叫びを上げる。

「「ウオオォォォォォォ――!!」」

 二人の雄叫びに一瞬怯んでしまった尊治たちは慌てて部下たちに攻撃開始の命令を下した。

「か、かかれ!!」



 妖怪軍団が、議場の出入口全てから湧き出る水の如く入ってきた!



 迎撃、開始!!



 俺のZ-6、ラスティのM60、広子のMINIMI、実央の具現:零戦機銃、トラの火の玉からのミニガンによる弾幕張り。

 唯のファイアーレイ、剣の薙刀、正士の銃剣付きスプリングフィールドM1903、アイラの電流放出による範囲攻撃での一掃。

 

 巴のUZI、五十嵐のKriss Vectorによる低めの経立の狙い撃ち。

 

 ヒナのまきびし投げ・焙烙ほうろく火矢ひや・手裏剣による敵の足場の混乱引き起こし、好華の弦での足縛りで敵を翻弄しながらの中距離援護。

 

 ペティのモスバーグM590、ジェイクのSPAS12コンバット・ショットガン、トラの指示を受けた蘭丸のバレットM82三丁による大柄の妖怪たちへの狙い撃ち。


 トラとロンの刀・警棒・FNモデル・ハイ・パワー・キャプテン二丁によるコンビネーション、ロザリアの木刀と俺が用意したデザートイーグル10インチモデル、エリ、ブラッキー、シオリ、デニー、千恵、濃さんたちによる、弾幕を潜り抜けて襲い掛かる妖怪たちの対処。


 剛のミドルキックとフライング・ニールキックとその他格闘術、クレアのバルフォア、スターリンの斧三本、耐久力無限大の3人は戦車役を担い、味方の弾幕の中を走り、、敵を一体ずつ倒していく。


 奈々とリークはバーサーカー役に徹し、とにかく暴れまくる。



 偽物とはいえ、本来言論による争いの場である議場が、今や本物の武力によって説明が面倒になる程メチャクチャになっていく。

 だが本当にメチャクチャになっているのは妖怪たちの方だ。

 少なくともアシュボーンの戦いの3000人の倍以上の数を、今だけでも俺達は相手をしている。


 が、


 全くのスキもない。

 逆に攻め込んでいる妖怪たちの数がどんどん減る一方。

 残り5000を切ったところで、尊治がたまらず歩を自らの手で討ち取ろうと、義貞と共に御傍聴席から飛び出してきた。

「猪之助ぇっ!!」

「おう!!」

 俺はヘルメット・アーマーを脱いで雷龍で尊治と再び対峙、猪之助は義貞と対峙した。


 ガキィッバギャッゴギャッギキイイィィィィィッ!!


 どっちも譲らぬ激しい斬り合いも、鍔迫り合い中に放った俺(この時、左目を閉じていた)と猪之助による頭突きで一転、相手の怯んだ一瞬を逃さず、二人を再び御傍聴席へと吹っ飛ばし、その際に尊治の体に付けたC—4をリモコン操作で

 ドカーンッ!!

 と爆破させ、議事堂の外へ飛び出させた。


「・・・ぐ、おのれ・・・!!?」


 まだまだ!


 俺は吹っ飛んだ二人を追いかけて外に出て、雷龍から風と雷を放出して二人に浴びせる。

 尊治はそれを自分の雷で相殺できるほど、まだ余力があった。

 だが、あとから来たアイラの電流放出、シオリのトンファーを交差させることによってできる小規模電流放出によって押されていく。

「陛下!」

 主君を助けようと必死に背中を押す義貞のおかげで踏みとどまったが、唯のファイアーレイ・炎眼えんがん、実央の霊気レイの加勢で万策尽きた。


 三位、いや、五位一体攻撃だ。


 十分放ったところで、5人とも攻撃をやめた。


 俺達の攻撃で尊治もとうとう疲れを隠せずに至った。さっきまで保っていたほとばしる電流もそれによる輝きもなくなり、服ももはや下半身のみでボロボロ。

 義貞は、もはや自分の実体も維持できなくなり、やがてサラサラと消滅していった。


「・・・・・マフィア娘の言う通り、スキができたよう・・・・」

 

 ゴンッ!!!


 彼が喋りながら顔を上げた瞬間、奈々の更なる一撃が決まり、木々がバキバキと、ビル群の瓦礫でズズズズンと、まだ壊れてなかった建物にぶつかってドドドドドドドドドッと、尊治は大陸外縁部へと飛ばされていった。

「言わせねーよ」と胸をばるんと張る奈々。

「良い眺め~」

「「「「こらこら」」」」



 その頃、吹っ飛び中の仰向けな尊治は。

「間抜けな奴め、番長!不幸中の幸いとはこのことよ!貴様が飛ばした方向が我が逃走経路になるとはなぁ!国立劇場が左に見えたということはつまり!議事堂を中心とした大陸地図上の北北西!その先は、あの寝返りのウサギ共も通れた市ヶ谷方面だ!!いくら貴様らに大半を削られようとも、本土まで戻れるくらいの余力はあるはずだ!!」


「そういうの、フラグというものですよ。陛下殿」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?



 突然目の前にのっそりと現れたのは、腕組みしながら自分と同じ速度で飛んでいる獅子頭の大男。


「初めまして、超獣人:リヨンこと、クリフォード・レッドフィールドと申す者でございます。番長本人があなたを疑似市ヶ谷方面に飛ばしたことは承知の上でやったんですよ」

「なに!?」

 くそっ。この獅子もどきを殴りたいが、まだ自分は番長に吹っ飛ばされてる身、体を動かすことができない。

「あなたとて妖怪、一度消えてもらわなければその残った妖力だけでも日本国民にとって脅威となる。よって自分があなたに止めを刺させていただきます」

「何を・・・・っは!やめろ!やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 あることに気づき、必死に叫ぶも、リヨンが両手を組み、振り上げ、


獅子リヨン流星メテオッ!!!」


 自分たちが結界の穴を抜けて大陸を出た瞬間を狙って、渾身の一撃を放った。

 それをもろにくらい、尊治は8000~9000m下へと一気に落とされ、


 ドオオオォォォォンッ!!


 巨大な水柱と共に海面に叩きつけられた。

 大陸の縁につかまり、太平洋の水柱を見届けたリークは呟く。

「塩水は電気を流す。そしてここは太平洋。果てしなく広い海に落ちたあんたの妖力の元である電気も全てなくなる」


 尊治は力を完全に失い、意識も消え、やがては体も消滅した。





 その後、


 大将を失いもはや烏合の衆と化した妖怪たちを、俺達はついに逆転し、全滅させた。

 


 仕事を終え、和気あいあいとするメンバーたち。だがいつまでもこの大陸に長居してはいけない。

 みんなを二式大艇に乗せ、疑似市ヶ谷外縁部を抜けて大陸を脱出した頃。

「んで?あの浮遊大陸どう処理すんだ?まさか派手に爆発させる気じゃ・・・」

「『爆発オチなんてサイテー!!』な~んてこと俺がすると思うか?これで・・・」

 操縦中の俺が指を鳴らすと、浮遊大陸はパッと消える。

「スッキリよ」

「・・・・地味だな」

「疑似東京タワーから地味に飛んだ奴に言われたかねーよ」

 俺の一言でメンバー全員がどっと笑いだした。

「しっかし驚いたな~、まさかこの前ギラがわざわざ学園長のケツを刺したのが仕掛けられた盗聴器に細工するためだったなんてよ~」と奈々。

「ああ、俺も妖怪が絡んでるんならまさかそうじゃないかってな。元爺と音声なしの連絡をやってみたら大当たり。あの日にこっちの動きが向こうに悟られないよう元爺の尻尾に仕掛けられた盗聴器をいじったワケさ」

『決着はついたようだな』

『ではホームカミングと行きましょうか、ギラ様』

『リーダー、お疲れ~』

 安全圏にいたおやっさんたちが出迎えの無線を入れてきた。

「・・・・・そんじゃ、プチカラオケでもしゃれこみながら日本に戻るとしますか」

「「「「「「「「「『『『YEAHhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!』』』」」」」」」」」」



「あの~、良いんでしょうか?総理、私たちまでこんなことを・・・」

「今だけはこの流れに乗せておいた方が良いぞ!俺達公務の人間は帰ってからが地獄だから、ここでストレス発散しとこう!!」

「・・・・そうですね!!」

 そんなやり取りをする猪之助と桜田さん。




 ちょうど今は夕方、太陽が10時方向で赤く染まってやがる。


 ・・・・俺だったらこの景色にはこの曲に限るな。

 そう思いながらチョパリーを口に咥える。

「砂川!音楽!!」



 そしてこの日、太平洋上空で爆撃編隊を伴ってチヌーク・一式陸上攻撃機・二式大艇の中から俺を含めたBULLETSのメンバー全員による『Super Hero(by ルパン三世)』の大合唱が響き渡った。









 数日後。


『先日、臨時会を予定していた日にちに突如、霞が関上空に現れた浮遊大陸はその後、雲と同じ速度で南南東を進んでいき、千葉半島を超えて太平洋へと消えて行ったあと、消息不明になっております。これにより当日の臨時会が中止になったものの、数十時間程行方を眩ませていた総理が一枚噛んでいるのではないかと世間でも話題となっており、野党内からは激しい追及が目立っています。これらに対し総理は』

『いや~濃霧の中、厄介な狸、猪、獺、おまけに猿にまで追い掛け回されたものでどうも議事堂にどうしても行けなくて。あとこの通りその時スマホも壊れてしまったもので、誰とも連絡できなくって本当に大変でした。しかしBULLETSのメンバー数人が助けてくれたので事なきを得ました。その時、彼らから聞いたのですが、あの浮遊大陸はある秘密任務の際に予期せずできたものだそうです。処理は自分たちで済ませたとのことだそうです。では!』

『と、新たな内匠節で述べています』

 というニュース映像が都内の電子掲示板やホログラム画面で流れていた。





 菫楼高校の校舎屋上にて。

「てなわけで副菜サイドディッシュってのはな、主菜に足りない栄養分を補う為の枠なのさ。尊治らはその枠である金剛杵を必要でもない時に慌てて使ってしまった。そこで奴らの敗北は確定になったワケさ」

「それで・・・言うと何か?俺達が出した料理は・・・・敵にじゃなく、俺達自身で堪能して・・・・楽しむってことなのか?」

「そゆこと、副菜サイドディッシュには煮物・和え物・漬物・酢の物とかが用意される。俺的には今回の料理対決は酢を少々強めに使った酢の物に例えるな、この副菜サイドディッシュを」

「うん・・・、この際はっきり言わせてもらうよ。私たちからすればこれは・・・・」



「「「「「激辛料理・・・・だ!!!」」」」」




 と、唯、剛、奈々、剣、五十嵐の5人が大声を上げたと思ったら、フェンスに寄りかかって眠りこけてしまった。

「あらら~、戦いではあんなに頑張りを見せる奴らなのにもうリタイヤときた」

「無理もないよ。この子たち三日三晩も寝ないでテスト勉強を頑張ってたんだから」とエリ。

 たしかにそうだ、5人とも目の下にクマができてやがる。

 そう、あの大戦場乱闘のすぐ翌日から俺達学生は期末テスト初日だったのだ。

 猪之助と桜田さんにとっての副菜:キツめの酢の物は政界での後始末、俺達学生にとっての副菜:酢・・・・いや激辛キムチは期末テストの勉強の仕上げ。

「まあこいつらにとっちゃ、仕事の上に副業を入れて両立をやってみて酷い目に遭ったってところだろな」

「もうちょっと時間さえあれば、3人も楽に行けたかもしれないのにね」

「おいおいヒナ、簡単に言うな。世の中年数を重ねてやっと天才って呼ばれる奴もいるんだ。その辺の土からポンポンと簡単に引っ張り出される天才がいてたまるかってんだよ」

「誰がピクミンだバカヤロー!」

「ヒナミンだよコノヤロー!」

 そして、みんなで顔を見合わせて。

「「「「「だーはっはっはっはっはっはっはっは」」」」」


「そういえばギラ。あの親玉雷獣、どうなったの?」と巴。

「あいつらはちゃんと大人しくしてるさ、大物狸の下でな」






 竹千代学園の学園長室にて。

「それじゃ、二人とも。期末テストお疲れ~」

「「お疲れですっ!」」

 リークとデニーが出ていくのを見計らって、『嘉泉』と記された酒壺に手に取り、お猪口を4枚用意する元康。

「さて、お互いもう争う必要も理由もない。ここは美味い酒でも飲んでゆっくり話しましょうかの」

 お客用のソファーには、電気を失くしくたびれたまま復活した尊治、戦いにより妖力を消耗し痩せたまま復活した刑部狸:義貞、対してC-4爆破によりあまり爪痕がなくて逆に二人に申しわけない心境で復活した刑部狸:正成らが座っている。

 次々と自分たちのお猪口に注がれる酒。義貞と正成は主人より先に飲むまいと留まるが、尊治は。

 お猪口を丁寧に取り、くいっと飲んだ。

「よい、お前たちも飲め」

「「・・・・はっ」」

 二人も続いて飲んだ。

 それを確認した元康も尊治と並んでソファーに座り込むと。

「・・・・貴様はなぜ、今の世を見て享受して、このようにのうのうと生きているのだ?たしかに私とお前は違う。生まれも、育ちも、辿って行った運命も、時代も、全て違う!・・・・だが、一度は日本を手にした身としてなら同じなはずであろう?



 家康よ」



 竹千代学園。

 この学園の名は長である元康の前世での幼名から取ったものである。



 そして、学園長・刑部狸:元康の前世は、1543年から1616年。

 戦国時代のさなか、小大名の下に生まれた為幼少・青年期は人質生活を送り、様々な苦難を耐えに耐え抜き、天下分け目の戦:関ヶ原の戦いを経て征夷大将軍となり、江戸幕府を開いた戦国大名。

 そして、織田信長、豊臣秀吉と並ぶ三英傑の一人、

 徳川とくがわ家康いえやす


 尊治に問われた元康は腕を組み、口を開いた。

「・・・・ふむ。たしかにわしも一度は日本の頂に立った身。あんたと同様、王政が消えてしまったことにはショックを受けてたかもしれん。だがあんたの言うように、わしは境遇が違う。京生まれではない、公家の生まれでもない、三河で武家の生まれだ。学問・芸術の天才でもない、単なる武将だった。時代もある程度勢力が整っていた鎌倉時代ではない、裏切り・戦が毎日交差する戦国時代じゃ。わしはあんたと違って日本を手にし、足場を固めることがちゃんとできたからの。じゃがそれは全て物事に慎重派であったがゆえの結果じゃ。信長の命令で裏切りの容疑がかかった妻・息子を処刑し、秀吉の命令で住み慣れた三河の地を離れ関東の臭い田舎に放り出されるも、それでも裏切らずに時期を待ち続けた結果がこれなのじゃ。じゃから今でもわしはこの慎重さを保って世を見続けている。今は王政はなくなったが、気づくこともまたある。誰も彼もが理想の指導者になれるというわけではない。信玄もまた部下の団結を固めたよき武将、じゃが息子:勝頼はその団結を崩してしまう。イギリスの国王:リチャードも人々から称えられていた、じゃが次の国王:弟のジョン王は政治に失敗し国民の信頼を失った結果、大憲章マグナ・カルタを認めるに至った。それに比べ、現代は一国の代表を決めるのが国民だ。あんたの目にはどう見えたのかは知らんが、わしはいついかなる時の代表たちが日本が混乱に陥らないよう頑張っているのをちゃんと感じておる。日本はそうやって167年間も平和を守れてきたのじゃからな。わしは悟ったよ。大事なのは血ではない、受け継がれる意志が続くかどうかだ。誰しもが自分で考え始めそれが周りから同意を得られるとは限らん。肝心なのはどれだけ先人たちが成したことを見習えるか、どれだけ自分の間違いに気づき受け入れられるか。そしてそれはたまたまこの世に生を受けたわしら老いぼれではない、今の世を生きている若い国民の権利であり義務じゃ。それらを以てして明るい未来の為に新しき代表を生み続けることが、歴史を踏まえた上での人類が導き出した答えじゃよ」

 元康の話を聞いて3人は俯く。言われたように自分らの行いを顧みて。

「まあもっとも、日本を立て直そうと踏ん張っている老いぼれもいるがの」

「・・・・・・だがいつまでも妖怪の存在を隠すことはできないはずだぞ?たとえ何千年経った今だとしても」

「じゃろうな。今やファンタジー?な世界も入り込みつつある時。いずれは我々の存在も明かし、人類と堂々と歩む時が来るであろう。それは近い。じゃがあんたらは急ぎ過ぎたし、そのために王政復古は必要ない」

 喋りながら元康は立ち上がり、窓の外を眺めながら新しく注いだ酒をもう一口。




「その役目はわしらじゃない、BULLETSかれらじゃ」


























 どうも皆さん!こんにちは!

 32発目から始まる長編『妖化かし合いの乱』、いかがでしたでしょうか!!

 今回の37発目は今まで以上のものを作ろうと詰込みに詰込んだ結果!執筆に2週間以上もかかってしまい、お待ちになっていた読者の方々、申し訳ございません。しかし!30発目を超える文字数を誇る投降とあいなりました!!またまた想像力を豊かにして本編を読んでいただけると幸いです!!

 そしてここ最近では、読んで下さっている読者の中に『BULLETS』に評価ポイントを入れて下さっている方がいる模様です!感謝!感謝!感謝しています!そしてきっと紹介もしてくれているであろう読者の方にも感謝いたします!ありがとうございます!ありがとうございます!

 いつまでも喜んでいたい気分ですが、そんな読者の方々の為にも、執筆を続けるつもりです!!

 では!まだまだうがい・手洗い・執筆に怠りなく続けていきます!!弾丸の如く!!





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