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BULLETS(ブレッツ)  作者: 砂川 武
40/63

36発目 お化けにゃ学校も試験もある!!






『先日の東京拘置所前騒動にて、マフィア、シスター、そしてBULLETSのメンバーが入り乱れての銃撃戦が行われました。この事件で存在が確認されました、BULLETSの新メンバー。例の如く彼らの顔は中継映像及び、一般人が撮影した動画・画像にはモザイクがかかって人物特定ができないとのことです。遠くから望遠鏡などで覗いた人々の証言から、ネット上では新メンバーを“ガンマンX”“リボルバー”“ヤング二代目次元”などと体験談から色んな呼び方がされており、まだ名前がはっきりしていない模様です。さらにこの事件で世間に議論を呼んでいるのが、BULLETSのメンバーと謎のシスターたちが戦闘終盤に倒したマフィアたち全員を攫うという異例の行動に出たことです』

 葛飾区の会社に勤めるサラリーマンのインタビュー。

『自分も同僚と一緒にビルから覗きましたよ~。BULLETSたちが人攫いをするなんて、一体何を考えてるんでしょうかね~?』

 小菅駅前アパートに住む主婦たちのインタビュー。

『しかも新メンバーのガンマンって呼ばれてる人、マフィアの一人である女性を俵担ぎにしてたって話でしょ?女を手に入れたって感じですよね~』

『そうそう、なんか怪しいよね~』

 そんな報道ニュース番組を警視庁総監室のソファーで鑑賞するおやっさんと俺。

 ちなみに俺は顔を抑えてまで大ウケ。

「だーっはっはっはっはっはっはっは!!新メンバー負のコメントだらけだこと~こりゃ傑作!」

「ギラ・・・・、お前あのガンマンが自分のことだってこと忘れてないか?ネット上では他にも“女だけ、泥棒”“女性の肌を触って堪能中”“このあとめちゃくちゃしっぽり”な~んて色んなワードができてるぞ?」

「おやっさん・・・・、あんたもどうやってそのワードを検索したんだ?」

 そう聞くとおやっさんったらそっぽ向いちゃった。こらこら~。

「まあとにかく、事情が事情だからな。私も公安に頼んで、ラスティ一家の情報追求を一切させないよう警視庁全体へ呼びかけておいたから、死人も出てないんだし、そのうち誰も気にせず忘れることになるだろう。問題は妖怪たちの悪だくみの件だ。お前が言う黒幕の妖怪とは一体どんな妖怪なんだ?」

 おやっさんが言いたいことを聞く間、俺はソファーから立ち上がって総監室のテーブル上に置いてあった湯呑み茶碗に急須からコポポとお茶を注いだ。

「そいつはまだ確信が無いからはっきりは言えねぇんだわ。それに今回情報共有は慎重にやらないとな。奴さんの目的が厄介なモンだからよ~」

 そう言いながら俺は出来立てのお茶にアチアチしながらもひと口に飲んだ。

「化け狸たちが絡んでいることは間違いないんだろ?だったらその化け狸の中でも有名な大妖怪:刑部きょうぶだぬきが黒幕だってことになるのでは?」

「たしかに単純に考えればそうなるな。でもよ?おやっさん。時には小さな出来事が、核心に繋がっていることもあるんだぜ?」

「小さな?」

 おやっさんの疑問に答えるつもりもなく、俺はお茶を飲み干す。

「さてと、そろそろ具材の取引に出かけないとな。情報操作ありがとな~」

 俺はジェット・トルーパーになって、窓から部屋をあとにしようとする。

「取引ってなんだ?また天然の女口説きか?」

「・・・あんた最近俺にどんなイメージ持ってんだ?」

「先日の騒動といい、たくさんのシスターがお前にメロメロだとエリがLUMEでそう言ってきたんだが、間違ってるか?」

「あんにゃろ!何つー余計なことを!!」

 少々キレながら飛び立つ俺。



「警視総監と気軽に話してる高校生が言えたモンじゃないけどな・・・ん?」

 ギラが飛び立った窓には一枚の紙きれが。それにはこう書かれていた。

『察庁内にいるねずみならぬ狸には、何もせず泳がすように頼みます。 Foursより』

 内容を見て大道は表情を少し曇らせた。

「おいおい・・・。今回の件、意外とデカいのか?」







 時は数時間ほど経ち、


 俺はウィリスを東京の西へと走らせていた。

 隣席にはエリ、後部には奈々と広子を乗せている。ただ、エリと奈々は俺をジーっと見つめながらむくれているのだ。

「お前ら、まだ怒ってんのか?せっかくドライブ楽しんでるのに」

「そりゃあ怒るだろ!いきなり何の知らせかと思ったら、シスターだらけの賞金稼ぎチームに金髪美女ボスが取り仕切るマフィアたちと手を組むだぁっ!?しかも、本人たちと接触してみれば一部を除いてギラにメロメロときた!どんだけ女の心を盗みまくってんだてめぇっ!!」

「その反応をもっと前からするべきだったと常々思ってたんだが今更?」

「私は10人ちょっとならまだ許容範囲だったから良かったけど、この期に及んでさらに品を取り揃えるなんてね~。張り合う相手がいないのもつまんないけど、これは多すぎ。後のかりが先になっちゃう可能性を心配する私たちの気持ち、分かるでしょ?」

「心中お察しします・・・・」

 俺も経験したからな~・・・・。

 先日の拘置所でのことはもうみんなへ伝達済みだ。みんなの反応はというと、妖怪の件はそっちのけでラスティとロザリア率いるシスターたちのことについて俺に問いただそうと詰め寄ったもんだ。エリや奈々みたいにむくれたのは唯とアイラ、そしてシオリ。マドリードで俺と同じ当事者だったペティたちはレッド・クローバーたちとすぐ打ち解けたことと、俺が謝罪英文を書いたことを踏まえて薄々感づいていたらしくあまりプンスカはしなかったが、ラスティのことではウリウリしてきた。

「ギラ君は彼女たちをどうしたいの?やっぱり彼女ら全員に入れるの?」

「広子ちゃ~ん、そういうワードはやめなさ~い。今は妖怪の件が優先なんだから~」


「「「だって私たち、体の関係でしょ♥」」」

「ごばあぁっ!!」

 キキイィィ―ッ!!

 赤信号で止まった。だが3人のアブノーマルな発言もあって大げさに急停止してしまった。

「お前らなあ!人が運転中にそういう精神攻撃やめてくんない!?」

「あら、ご主人様はお気に召さなかったの~?私たちとのつ・な・が・り♥」

「無論、お気に召すどころかおかわりを続けたいに決まっている!」

「「言い切ったな~」」

「だって男だもん☆」

「そう言うわりには2回戦に誘ってくれないよな?」


 奈々の一言と同時に、みど・・・いや、青信号になったのでウィリスを走らせた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

 待ってんの?誘ってくるのを待ってたの?

「そうねえ。一夜を過ごしてから大分経つし、どうせなら今夜・・・」

「やらねーよ」

「ええー?いいじゃな~い。私だってSMプレイの方はすっかりご無沙汰なんだから~。ねっ♥」

「どんな理由があっても今夜だけはダメだ。それにこんなことに慣れちゃ絶対にダメなんだよ・・・」

「あ、その心配ってこれ?」

 ジョーク気味に言ったエリは、自分のバッグからのこをチラ見せ・・・・。

「ぎいやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 驚愕のあまり俺はハンドルを切ってしまい、ウィリスを少し歩道へ乗り上げてしまった。急いで車道に戻したので大事には至らなかった。だがエリのおかげで俺の心臓はバクバクよ。

「随分な反応だけど、その鋸になんか悪い思い出でもあんのか?」

「ああ~、実はね。彼前世のある日、雑誌の1ページで気に入った内容を知らないアニメがあって、数年経ったあとにネットが普及したての頃で何のアニメだったのかな~?ってウィキな兄貴さんに頼ったところ、結末がImpossible!!な感じであることを知って大ショック。以来こういった恋愛関係ではそういうルートは絶対回避!ってよく言うのよ。“バッドエンドは嫌っ”て言ってたでしょ?あれがそう。この鋸は偽物だけど、鋸自体がそのアニメの中で使用されたから・・・」

「もういい!もういいからやめて!!!今の俺の立ち位置だとトラウマシーンが再現されてもおかしくない状況なんだぞ!?」

「「「10人以上相手しちゃったから?」」」

「そう!だからやめて!!」

 俺は絶対に、あのバッドエンドだけは御免被る!!!

 そんな俺の心境はそっちのけで彼女たちは愉快にコソコソする。

「・・・・・この小説のキーワードってなんだったっけ?」

「日常・青春・男主人公・ハーレムだったはず」

「う~ん、ギラ君は心配性だね~・・・」

 だがやっぱり筒抜けなんで言わせてもらおう。

「いいよな~お前らは気楽で~」

 まあ、俺は前世の方で気楽に生きちゃったんだから、今は苦労するべきなのだ。

「そういや今日はどこ行くんだ?まだ行先を聞いてないぞ?」

「・・・・今はあきる野辺りか。タイミングが良いからここから話そう。奈々と広子はこの前じっちゃんの家に行った際に妖怪の存在意義を学んだよな」

「「そうだけど?」」

「妖怪は生物としては曖昧な存在で彼らに死という文字は無い。だけどその逆である誕生はちゃんとあるの。妖怪の魂は元々死んだ人間の魂の中で成仏しなかった一つが宿ってできるの」

 と説明を手伝ってくれるエリ。

「・・・・・ん?ってことは妖怪もギラやエリみたいに生まれ変わりの存在ってことか?」

「そこんところは区別したほうがいいな」

「?どういうこと?ギラ君」

「魂を得て現実世界に生まれた妖怪たちはみんな生前の人間としての記憶・人格を一切持っていない。彼らはその過程を転生って呼んでいる。だから生前の記憶を有している俺達とは違うんだ。まあ極たま~に人格だけは少々残ってたりするそうだが」

「なるほど・・・。それは分かったけどだから何?」

 ありゃりゃ、奈々ったら・・・・。

 広子は話の核を察して奈々に小突いた。

「奈々、さっきエリが言ってたでしょ?妖怪が生前の記憶・人格もなくただ誕生するだけだってことはつまり」

「・・・・あ、妖怪も人間のように成長が必要、じゃあそのために・・・・!」

 奈々がようやく気づいて言い切る前に、答えである目的地に近づいていた。

 住宅地を抜けた先は森になっている。

「「ええっ!?ちょ、ぶつか・・・」」

 りはしない。何故ならそこは本当の森じゃないからである。

 次の瞬間、森に見えた場所は広大な平地と化し、中心には立派な赤レンガで建てられた校舎が存在している。


「そう。妖怪とて学び舎も必要というワケよ」

 



 ここは妖怪による妖怪のための妖怪の学園の一つ、竹千代学園である。


 


「・・・・なんか、今のフレーズどっかで聞いたような・・・・」

「それ以上は踏み込むなよ~奈々」

「にしても妖怪に学校って・・・。聞いたことある曲では無いって言ってるのに」

「それがよ?その有名な曲がきっかけで世の妖怪たちが学校を作ろうって考えたんだと」

「マジかよ、それ」

 マジです。

 それに都心への移住もできる手段を心得ておかないと正体がバレ、妖怪の存在も公になり、世界中が大パニックになってしまう。そうさせない目的もあって、ここのような学び舎が建てられていったワケだ。

 今は車から下りて中へ入り、エリたちを伴って校舎の廊下をぶらりぶらり。

「でも、見た目は普通の学生しかいないね?教師も」

「そりゃそうよ。人間社会に溶け込めるよう普段から人化術を使っているからね。一応校則としてそうするよう定められてるけど別に絶対!ってわけでもないからね~」

「まあ必要もないのに『俺は○○だ~!』とか名乗る妖怪だって白い目で見られるのがオチだからよ。要はお互いの距離感を保てれば良いってことよ」

「ねえギラ君。それじゃあ人間である私たちがいたらマズいんじゃないの?」

「『秘密を知ったものは生きては帰さないべ~』ってか?そんな古臭いことを考えるほど、妖怪たちの順応性は遅れちゃいねえよ」

「そもそも私たちが何でこんな簡単に秘密にされているはずの妖怪たちの為の学園に入れているかわかる?」

「「いや全く」」

「一部の人間は妖怪たちの存在を認識しているからこそなのさ。世界中にある妖怪の学園には結界が張られている。その結界の性質は次の通り」

「『あやかしを知る者は通れ、知らぬ者・悪しき事を謀りし者は通さず』ってね」

「だからここに入れた俺達は彼らにとっても危険じゃない者だってことを認識してくれているワケよ」

「ふ~ん。ところでどこに向かってるの?」

「決まってるだろ?他所の学園の敷居を跨ぐんなら、まずはそこのトップのところへ挨拶に行くのが筋ってもんよ」

「・・・・言い回しがいちいちジジイ臭い・・・」

 だってジジイだもん☆



 学園のトップ=学園長の部屋に到ちゃ~く。

 コンコンコンッ、ガチャッ。

「失礼しま~す。学えn・・・・・・・」

 部屋に入ると、小太りな男性が前のめりに倒れていた。フロート式の床には赤い液体が・・・・。

「「わ、わああぁぁぁぁぁっ!!」」

 奈々と広子が揃って恐怖の叫びを上げる。

 広子はともかく、何故奈々《お前》も?

「え、え、えと・・・。こ、これて警察?いや、妖怪警察!?それとも忍者!!?」

「落ち着け広子。妖怪の前提を忘れちゃいけない。それにこれはっ!!」

 そう言いながら俺は倒れた男に近づきながら普通の刀を出し、そのまま男の肛門にぶっ刺した。

 ズブッとな!

「んぎょほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!おほっ」


 ・・・・・・・最後のは、聞かなかったことにしよう。

「「あ、生きてた」」

「妖怪だからね」とエリ。

「全く、冗談の通じない奴だねぇ。反応がキツ過ぎるわい・・・あいだだ」

 と言いつつ、ケツからピューピューと血しぶきを出している割にはまだ余裕なジジイ。

「人間的に今のは冗談として通用しないんだよ、げんじい

「コナン君は飛び込んでくれるじゃろ?」

「あの死神がここに来ることは絶対にない!俺が断言する!!」

「いやコナン君のことはもういいから・・・・」

 とストッパーのエリ。

「この方が、学園長さん?」と広子。

「そ。この人がこの学園の長であり創設者でもある大妖怪、刑部狸の元康もとやすさんよ」

 エリの紹介で頭の回転が一瞬止まってしまった二人。

「刑部・・・」

「狸・・・?ってことは化け狸!!?」

 ようやく答えに到達した二人は慌てて臨戦態勢に入った。奈々は普段通り拳を構え、広子は護身用の鉄拳をはめて構える。

「待て待て。元爺はたしかに化け狸だが例の件とは全く関係ないぞ~」

「そうだよお嬢さんたち。わしゃ人間世界に干渉するほど馬鹿な真似はせんよ」

 と言いながら四つん這い状態で人化術を解いて本来のまん丸な刑部狸の姿になる元康。

「いや、刀を肛門に刺したまま言われても説得力が・・・」

「おおそうじゃった。ギラ、そろそろ抜いてもらえんかのう?あ、抜く時は優しくの?優しく・・・」

「知るか。血のり用に玉袋を変化術で変化させてたのを俺が見逃すとでも?」

「はりゃっ!?やはりバレてた?」

 俺の指摘にアワアワする元康だが、エリは冷めた態度、奈々と広子はピンとくるのに少々かかった。

「・・・・あ、じゃあさっき流れてた赤い液体って・・・」

「ああ~、〇ンタマ袋」

「奈々よ。お前はもっと慎め」と一応ツッコミを入れとく。

 そんな時、学園長室の扉が開いてあの二人が制服姿で入ってきた。

「学園長、さっき大声上げてましたけど何か・・・」

 俺はタイミングとかを気にせず、元康のケツから盛大に血をぶっしゃああああっと出しながら刀を引き抜いた。

 ズボッとな!

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!・・・・あへっ」

 元康はケツから血を出しながら前のめりに倒れた。

「お、久しぶりー、リーク、デニー」

 この現場を目撃した二人の感想はこうだ。

「ギラ・・・・ついにそっちの嗜好にも目覚めたのか・・・」

「衆道・・・だっけ?エリたちとはどうする気なんだい?」

「お前らのその謎思考はどうにかならないの?」

 俺達のやり取りを見たエリたちの思考はこうだ。

(((これを見て冷静でいられるだとう?)))





「リークさんとデニーさんがここに通学?」と広子。

 状況が落ち着いたところで、元康はケツを抑えながら自分の椅子に。俺たちは客人用のソファー二つに分かれて座った。

「そうだ。ギラやトラ、菊也たちが高校に通うとなると、俺達もこの際あやかって日本のどこかで通学しようかって思い立ったワケだ。ただそうなると既にペティや巴の為に動いた五十六のおやっさんの手をさらに煩わせることになるから少しでも和らげようと考えて、その辺をギラに相談してみたら・・・」

「この学園が浮かんだってことだ。ちょうど知り合いも通ってたし、何より元爺とも縁があったもんでな」

 リークに続いて俺も奈々と広子に説明する。

「編入試験に合格というのを条件に入学させてあげることにしたからね。しかし、さすがは中世のイングランド王にイスラム王。現代にも順応して試験を満点合格とは、あいや恐れ入ったものですな~」

「いえいえ、全てのきっかけはギラなのですから。我々だけが凄いというワケではありません」

「・・・・あんがとよ、デニー。ところであゆむはどうしてる?」

「缶詰だ。術の開発にのめり込み中さ」

「そっか~。じゃあせっかく来たんだし、校内を回ってみるか」

「「「賛成~」」」

「それじゃあ」「我々が案内するよ」

 というわけで校内を移動だー。




「「ここが保健室」」

「そのネタもう前回やったから」

「ありゃ。ってことはトラが?」

「先越されたねぇ~」

「そもそもお前ら生徒会でもないんだから・・・」

 妖怪の学園は人間のように小・中・高・大ではなく、段階は一つで5年間で人間界に溶け込められる最低の知識を覚えるように制度が仕組まれている。ちなみにリークとデニーは3年生としてこの学園に編入を果たしたのだ。

 俺達のやり取りを後ろから見ながら廊下を歩くエリたちは仲良く女子トーク中。

「そういえばあの3人の関係性ってまだ知らないね?エリ、あの二人とどこの国で会ったの?」と、ふと思い出したように聞く広子。

「バルカン半島で。年は・・・2107年の2月辺りだったはず」

「ああ、たしかイギリスが議会統治に戻った年の次だっけ?」と奈々。

「そう、ブリテンがね」

「その半島で何してたの?」

「それは・・・・」

 次の瞬間、答えようとエリが出した声は教室からある者の怒鳴り声でかき消されることとなった。



「この野郎!!俺の宝をよくも!よくもおおぉぉぉっ!!!」



「何だ?」

「揉め事みたいだな」

「出番ですね」

 すると二人は腕に『公安』と書かれた腕章を付けて現場に急行した。

 教室の中に入ると、男妖怪二人いがみ合っていてそれをなんとか宥めようとする腕章を付けた女妖怪が数人。

「お、クリフ!良かった~。こいつをなんとか止めてくれよ~」

 一目で正体が鬼女だってわかるように金棒を背負った女妖怪がリーク達の到着にいち早く気づき、駆け寄った。

「どうした?お前らなら力技で解決できるんじゃないのか?」

「いや・・・その、性別の枠は超えられないからよ・・・」

「「「???」」」

 事情を聞いてみるとこんな感じだ。


「こいつが俺の『眼ちゃん●●●●大暴走特装版』DVDを借りてたのに雑誌に混ぜてゴミに出しやがったんだ!!」

「だからうっかりなんだって言ってるだろ!」

「うっかりで問題じゃないだろがぁっ!!・・・・コノ恨ミ・・・・・・ハラサデオクベキカ・・・!」

 要するにエロDVDを失ってしまった悲しき男妖怪がいたということだ。これはたしかに女では鎮められない。被害を訴えている男はそれはそれはもう血涙を流すほどであった。いつの間にか人化術も解けて彼の正体:ヒダル神(旅人に取り憑き、相手を空腹にさせて動けなくさせる妖怪)の姿になっていた。だが、

 ポンッ。

「その気持ちは、うぐっ分かる・・・!」

 俺も前世では隠してたAVが全部親に取り締まられてばかりだったし・・・。よよよ・・・・!

「「「何共感しちゃってんの!!?」」」

 3人はツッコんでくるが、俺は遠慮なくビシバシ進言していく。

「これは男にとっては重要なことなんだぞ!?彼女どころか相手してくれる女すらいない男性にとってAVがどれほど重要なことか・・・・くっ!」

「「「泣くほど!!?」」」

 泣くほど大事なんだ!大事なんだよぉっ!!俺にとっちゃ、さらに特別だ・・・!

「あ~、水を差して悪いがギラ、そいつ彼女いるぞ?」

 ヒダル神がギクリ。

「この話はなかったことにしよう」

「「「切り捨て早っ!!?」」」

「見捨てないでくれ~」とすがるヒダル神。

 彼女にでも慰めてもらえ!ぺっ!!




「オスカー。誰なん?この人たち」とボブカットの小柄な女妖怪が聞く。

「彼が僕らがよく話す人間の侍、杉田義羅だよ。そしてあの3人は、彼にとってのイイ人たちの一部さ」

「Wow.本当にモテモテね」と黒髪ブロンドヘアで目が赤い女妖怪。

「たしかにイケメンだけどよ、一体どんな魅力で10人以上女をメロメロにさせたってんだ?」と鬼女。

「草食系ではなさそうですけど・・・・」と三つ編みの女妖怪。

 デニーと話している女妖怪たちは多分腕章からして同じ公安の仲間なのだろう。俺の紹介はすでにされているらしい。

「それじゃあこっちの紹介はしておくか」

 リークの提案によって、公安委員たちの自己紹介が始まった。

「はじめまして、私は4年所属、愛乃あいの。よろしゅうな~」

「俺は3年所属、剛馬ごうまだ!よろしく!!」

「同じく3年所属、ポーラよ」

「2年所属、日陽乃ひよのです。お見知りおきを」

「あ~どうもどうも~。リークとデニーがいつもお世話になっておるようで~」

「「「ギラ、老けてる老けてる」」」

 おっと。つい前世でやっていた近所付き合い風の挨拶をしてしまった。


 と、その時。


 ドオオォォーン!!

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」


「ええ!?今度は何!!?」

「発声源は一階みたいだな・・・」

 感知能力で確認するところ、一階のある部屋の壁が決壊し、中から巨大な妖怪たちがゾロゾロと出ていた。変だな?シルエットだけだと知ってる妖怪ばかりなのだがどれもデカすぎるぞ?

「「「「「「一階・・・・ま~た化学部か~・・・・」」」」」」

 おや?公安の方々がすんごく肩を落としているぞ?そのご様子だとなんかその部活、嫌なことしかしてなさそうだな・・・・。

 ともかく現場へ急行だ。するとさっきの巨大妖怪たちはいなく、室内は化学系の道具などがめちゃくちゃになっており、部員の研究員らしき妖怪たちが数体倒れていた。

「お~い智弘ともひろ~お前今度は何やったんだ~?」

「お~クリフ殿~。いやはや、今回は全く意図せず完成してしまった代物で・・・・」

 ここに来る前にリークから聞いた話だと、妖怪たちは人化術の為に消費する妖力が一日で使い切られるのだが、一部では妖力が足りない妖怪もいるだとか。そんな妖怪の為に妖力増強剤を開発したのがこちらの智弘と名乗る化学研究部長だそうだ。ただ、薬の開発に対して向上心が高過ぎるのと本人が調子に乗って別の用途での薬を開発したりでこの学園での研究が許されている分、問題が絶えないとか。リークたちはその後始末をよく任されているらしい。ごくろうさん。

「実は妖怪たちに頼まれたんですよ~、非力な自分たちも少しは力が欲しいと。そこで妖力増強剤にテストステロンを少々混ぜてみた結果がこれでして~。多分あれ妖力増強剤の成分に比例してテストステロンも倍増した挙句、脳の知能も著しく低下しちゃってるらしくて、本能のままにしか動いてたみたいだし・・・・」

「「「「もはやそれハルク状態ってことじゃね!!?」」」」

「・・・・妖怪でも知ってるんだな。ところでテストステロンって何だ?」

「・・・ドーピングの一種、筋肉増強によく使われる」

「おいそこ~、ツッコミと質疑応答してないでとっとと事態の収拾に取り掛かるぞ~」

 と、仕切るリークに付いていく公安女たちと釣られて付いていく奈々と広子。

「「「「「「「ほ~い」」」」」」」

 俺も一緒に行くが、リークとデニーと並んでだ。

「お前らいつもこんな感じか?」

「段々巻き込まれていくうちに公安委員にもなっちゃって、この様さ」

「逆に、これはこれで退屈しなくて良い!!」

 俺の日常と変わらなさそうだな。

「そりゃ満足そうで何より!!」






 最初の妖怪は、どうやら女子トイレに入ったそうだ。

「早速変態妖怪の登場か?男って力を付けるとすぐ女を狙うんだから・・・」

 と、ふ~やれやれな気分の奈々が愚痴を零す。

「ぼやくな。・・・・中にいるのは『垢嘗あかなめ』だな」

「「垢嘗あかなめって?」」

 妖怪を細かく知らない奈々と広子に、エリが説明してくれる。

「名前の通り垢を主食にする長い舌が特徴の妖怪よ。一応妖怪としての本能だから変態じゃないんだけど・・・・、どうなの?ギラ」

「明らかに男だな。息も荒くしてるし」

「「有罪だな。よしシバこうか」」

「待ちいや、二人とも!いくら公安やからって男が女子トイレに入るんはアカンて!!」

「とはいえ私たちだとトイレを吹っ飛ばしかねないしね。ここは日陽乃に頼むか」

「お任せを」

 そう言うと彼女は首に巻いていたチョーカーに付いているボタンをポチっと押す。すると制服の下で全身を覆うオレンジ色のタイツが現れた。よく見ると所々光っている部分がある。伊賀の代物かな?次に彼女は突然、首を引っこ抜いたのだ。ポンッとな!

「「おわっ!?」」

 あまり耐性がない奈々と広子はびっくり。

「なるほど、『抜け首』か~。もしかして起動したのってパワードスーツ?」

「はい。首だけなら自由自在に動かせるんですが、体の方は動かなくなってしまうので伊賀の里製のナノテクパワードスーツを着せて、弱い電磁波を使って信号を送って操作するんです。後はゴーグルを使って体に取り付けたカメラを見ればお互い離れても別行動が可能なんです☆」

 と説明しながら首と胴体で面白いポーズを取りまくる日陽乃さん。

「それじゃ、ヒヨ28号レッツラゴー!!」

 ネーミング古いなぁ・・・。

 ヒヨ28号が女子トイレに入って10秒切った頃。

「どうだい?日陽乃」

「居ました、個室トイレに。容疑者は男性190cm、筋肉モリモリマッチョマンの変態です」

 ・・・・まさかあの大スターなワケないよな?

「あ、私に気づいて・・・うわっ!?舌を巻き付けてきた!!」

「連れてこられる?」とポーラ。

「抱き付いてますけど・・・、なんとか・・・」

 数秒後、ヒヨ28号と共に舌ごと抱き付いた一回り大きい垢嘗が出てきた。

 筋肉はモリモリなのに有効活用してないな・・・・。

 はい、現行犯逮捕っと。

 日陽乃はというと自分の胴体がよだれまみれになってしまったことにショックを受けていた。

「首、戻しづらい・・・・」






 ズンッズンッ。

「今度はどこだい?」

 デニーに聞かれたポーラは、目を閉じて靴底をコンコンッと鳴らす。

「・・・・・3階だね」

「お、エコーロケーションってヤツか?随分と聴覚に自信アリと見たねぇ」

「お褒めの言葉どうも」

 エコーロケーションとは、音の反響で周囲の状況を把握する方法のことを言う。

 階段を上って3階廊下に来てみると、巨大化した『瀬戸大将』と『泥田坊』が教室の窓やら引き戸やらを壊しながら暴走中だった。

「それじゃあ私たちの!」

「出番だな!!」

 喧嘩慣れしてそうなポーラと剛馬が先立って行った。

「あの二人はどんな妖怪?」と広子。

「剛馬は普通の鬼、ポーラは鬼でも『吸血鬼』・・・で正解?」

「「正解~」」とリーク。

「吸血鬼って、お尻が九つもあるっていうあの?感度も9倍に・・・!」と顔を赤くする広子。

「そりゃ“九ケツ鬼”!!古典的なボケだし、今何の想像をした!?」

 そんなやり取りをしている間に、ポーラは手の平を思いっきり突き出すことによって強烈な風圧を起こし、泥田坊の泥を吹き飛ばす。剛馬は携えていた金棒で瀬戸大将の瀬戸物を完全粉砕!!

「「おりゃあっ!!!」」

 ・・・・・鬼たちに慈悲はナシってか?




 次のターゲットは、何故か運動場にいた。

 見たところ、どっしりと構えた状態で目を閉じて座り込んでいる。

「「何故に?」」

 ワケがわからない状態の奈々と広子。

「相撲の円を敷いてるところを見ると、ありゃ『芝天』だな」

「かなりパワーアップしているねえ」

 リークとデニーはもう慣れてしまっているので納得の様子だが、奈々と広子は違う。

「「誰か説明をプリーズ~」」

 この始末だ。さっきはエリがしてくれてたから今度は俺がやろう。

「人間が相撲を取っていると入ってくる妖怪だ。最初は幼児並みに弱いんだが負けても何度でも勝つまではやめないっていう不屈の精神をお持ちだ。ちなみに負ける度に強くなるらしい」

「じゃあ、あいつを大人しくさせるにはこっちが負けるしかないのか?」

「多分な。如何にも強者求むっ!的な構えだし」

「・・・誰が行く?」

「私がやってみるよ。久しぶりにやりたいし、相撲」

 とエリが早速相撲の円に入るが、芝天は一度肩目だけ開けて彼女を見ただけで何も動じず、再び目を閉じて座り込んだままだ。

「あそっか、回しだ回し!それ身につけないとダメなんじゃないか?」

「へあっ!!?ってここでさすがにそれは・・・・」と赤くなるエリ。

 ああたしかに、人目は避けたいよな・・・・。

「大丈夫だよ~エリ君。そんな時はこれ、タラリラッタラ~、『個室カーテン』!(ダミ声)」

 まあ俺が普通に創造して出したただの隔離空間だけど。

「この中に入れば、杉田義羅君が注文通りの服装に手取り足取り着替えさせてくれるんだ~(ダミ声)」

「「「「それ君専属の着せ替えプレイなだけじゃね!!?」」」」

 公安妖怪っ娘たち全員にツッコまれた。剛にも負けず劣らずの鋭さだな。

「それじゃあSコースでお願いしま~す」

「了解~」と鞭を携えながらエリと入る俺。

「「ドSコースいったぁぁっ!!」」



「相撲かー、小学校時代にやって以来だな~」

「・・・・ギラ、本気で着替えさせる気?」

「何を言うておる。わしら年寄り同士がお互いの着替えを見ても何も問題は起こらんじゃろうて~」

「年寄りぶっても端から見たらあの娘たちの言う通りだよ?」

「どうせ何もエロいことはしないんだから、黙って脱がされなさい」

「・・・・“2回戦”の時にもお願い!」

「ぐふふっ。あいよ、元女王陛下」

 で早速彼女の服を脱ぎ脱ぎさせていく俺。

 こんな時になんだが、やっぱり彼女も素敵な女だ。唯たちだってちゃんと可愛いが、エリからはペティと同じく相手を理解しながら接してくれる気構えを併せ持った魅力が漂うのだ。俺を、俺の心を、俺の過去を、俺の信念を理解した上でみんなで一緒になる提案をしてきた。


「・・・・・・・・・・・あんがとな」


「ん?何か言った?」

「・・・・いや、リークとデニーの仕事。落ち着ける場所のはずなのに、結局わざわざ誰かの為にやってるな~ってな」

「ん~結局あの二人。いつまでもヤンチャしてたいのかな~」

「・・・・あとでさりげなく本心を聞いてみるさ」





「相撲勝負!エリ・ブーリン 対 まさ(芝天の本名)!はっけよぉい!のこったぁっ!!!」

 なんやかんやで俺が行司役となった。

「うりゃぁっ!」

「むんっ!」

 ガシガシィッ。

 お互いの回しを掴むと動かなくなった。

 エリも能力者、パワーは奈々やリークほどではないが常人以上にはある。だがさすがは芝天。彼女が相手の挑戦を受け入れられるだけのこともあってかなりのパワーだ。本来なら芝天に勝たせるべきなのだが、エリ曰く『勝負に八百長を持ち込むなんてできない。全力でやって負けてくる』とのこと。

「そいっ!!」

 押し出しは拮抗したが、回しを掴み上げられてそのまま円の外へドサッと放り出されるエリ。

「あやっ」

 まあ、体格的には芝天が有利だったしな。

「投げ出し!投げ出し!将の勝ちィィィッ!!」



「・・・・・・悔いナシ・・・」

 そう呟きながら相撲式の礼をし、本来のサイズに戻る芝天。

 そのまま、真っ白になった。・・・・まあ、死なないけどな。

 多分この妖怪は誰かと良い相撲勝負をしたくてあの薬を欲しがったのだろう。最近の子供は中々外で相撲を取ったりしないもんな~。




「「「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」」」



「!?今度は何だ?」

「・・・・わからない。校舎の中のあちこちからすごい風の音が・・・・!?」

「風?風って言えば・・・『風狸ふうり』か、『一目連いちもくれん』か?」

「とにかく行ってみよう!」

「「「「了解!!」」」」

 ほとんどがリークたちに付いて行ったが、俺は中の様子を確認すると、

「!?待てお前ら!今中に入るのはダメエェェェェッ!!!」

 入ってはいけない程アカン状況なので必死に止めようと追いかけた。

 エリは、

「ちょっと!私の着替え持ってかないでぇぇぇぇ!!?」

 相撲の恰好のまま追いかける羽目に。





「こ、こいつは・・・・!」

「驚きだな・・・・!」

 そう、一階の廊下を見ると生徒たちが転んでいて、そして制服、下着、靴、着ていた衣服全てを切られて男女問わずあられもない姿になっていたのだ。

「「この学園に裸族がこんなにもいたなんて・・・!!」」

「「「「違う!明らかに被害者たちでしょうが!!」」」」

 顔を真っ赤にしてツッコむ公安妖怪っ娘たち。

「転ばされて切られるといやあ、こりゃ『かまいたち』だな」

「あ、それならあたし知ってるぞ~。三位一体の妖怪で、一体目が人を転ばして二体目が皮膚を切り裂き、そして三体目が痛み・出血の為の薬をつけて去っていくんだよな?特に風が強い日に出現しやすい!」

「奈々!服 服!!」

「へ?・・・・!!?」

 奈々は珍しく自分が説明していることが嬉しかったのか、つい得意げになってしまい、説明している間に自分が鎌鼬の餌食になっていることに気づかなかった。

 はい、君も裸族の仲間入りだねー。

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 裸になってしまった自分の体を必死に隠そうとする奈々。ご馳走様~。

「だが、今のはたしかに速すぎる。例の薬でとんでもないスピードになっている・・・な!?」

 あら、リークもやられちゃった。

「あ、僕も・・・・」

 あ、俺も。

「「「「「「「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」」

 女子たちも大慌て。しかしその隙を突かれて、彼女たちも餌食になってしまい、全員が全裸になるのに数秒かからなかった。





「しっかし参ったな~。相手は速い上に3体もいる」

「まず俺はパワー系だから無理だし」

「僕は盾を使ったとしても死角へ簡単に回られるからやっぱり無理だ」

「まあ考えていこう。三人寄れば文殊の知恵だからな」

「「うむ」」

 と、堂々と全裸のまま話し合う俺達生まれ変わり男子三人組。


「「「「「「「寄る前に何で平気なの!?早く隠して!!!」」」」」」」

 俺が創造したタオルを巻いた女子たちが騒ぐ。

「んなこと言ったってどうせ見つかればまた切られちまうんだから。逆に着ない方が良いんだよ、風俗嬢ちゃんたち」

「「「「「「「誰が風俗嬢だ!!」」」」」」」

 

「それに挿絵もないんだし」とリーク。

「あったとしてもモザイクで隠せるだろう?」とデニー。

「うう、どうでもいいところで男らしさ出しちゃって・・・」とポーラ。

 3人の下半身にどうしても反応してしまう女性たちは、顔を隠しながら内心こう考えていた。

(・・・・ご立派・・・・!)


 そしてその隙を突いて鎌鼬が一吹き、彼女らが巻いていたタオルが切られて振り出しに戻った。

「「「ほらな」」」

「「「「「「「もう嫌っ!!!」」」」」」」

 女性全員が脱力してしまった。

「う~ん、愛乃君。ここは頼めるかい?」

「え、うち!?でもまだ校内にいるとは限らんし・・・」

「なら、絶対に来るよう仕向ければいいさ」




 廊下から生徒を退避させ、服を着直した愛乃ただ一人だけを置いた。

『鎌鼬ちゃ~ん♥もしうちを見事丸裸にできたら、あんたのお嫁になってもええで~♥』

 という内容の看板を背に。

「誰やぁっ!!こんな頭悪い挑発文書いたアホはぁっ!!?」

 愛乃さん、正座しながら怒り心頭中。

 俺で~す。ひっひっひっ。

「「さ、さすがドSに目覚めた男・・・容赦ない」」

 とゴクリンコなリークとデニー。

「・・・おたくの彼氏さん大丈夫?」とポーラ。

「「「すみませ~ん、うちのギラ君がご迷惑をお掛けしまして~」」」とペコペコするエリたち。

 うっさいよ~、オカンたち~。

 あんな内容の看板でおびき寄せられるワケがない、とみんなが思っていた矢先に鎌鼬の前触れである風が一吹き。

「「「「「「「「「相手もアホやったっ!!?」」」」」」」」」

 呆れすぎて全員が思わず関西弁でツッコんでしまった。

 だが愛乃はもう集中モードに入って鎌鼬が一番近づく瞬間を狙っていた。

 そして、自分の両手の爪をシャキンッと尖らせ、

「んにゃあっ!!」

 バババシュッ!!!

 鎌鼬三体を一気に一閃し、見事引っかき倒した。

 よく見ると愛乃の頭には猫耳。

(あ~、『化け猫』か・・・)

 彼女の服は犠牲になったが。

「・・・・ぐ、でも、絶対領域は守ったで~!!」

 よく見ると、彼女ったら絆創膏張ってまで丸裸を防いでいた。

 エロいことには変わりないけど。

「「「く、くそ~!嫁ゲットならず!!!」」」

 そこかよ・・・。

 その事実によほどショックだったらしい変態鎌鼬三体は、涙ながらに最後の力を振り絞って逃げようとする。

「あ!こら待ちいや!!」

 バババンッ!

 しかし、薬も切れてヨレヨレだった鎌鼬は突然ある者によって振り下ろされたブリキでできたデカい蓋みたいなもので逃走を阻止された。

「何ですか?この状況・・・」

「お、歩~久しぶり~」

「ギラ殿?お久しぶりってあああああ何故に全裸!!」

 昔馴染みである『妖狐ようこ』の歩。どうやら騒ぎに気づいて背中に背負っている人一人が入れる大きい缶詰から出てきたようだ。

((モ、モノホンの缶詰に入ってた!?))

 と奈々と広子は心の中でそこだけに驚いていた。



 


 その後。

 暴走してた妖怪は鎌鼬が最後で、あとは制服を切られてしまった妖怪生徒全員の為に俺が全員のサイズに対応して制服を創造しまくったことで、事態はようやく収まった。






「やはりあの化学部が原因でしたか・・・」

「ああ、毎回トラブルの原因の大体があそこだもんな~」

「でもあの増強剤も結構重要だからな~」

「それで罰を与えるにしても増強剤の生産の為に手は動かし続けるから結局トラブルは続くと?」

「「「そ~」」」

 とまあトラブルが収束した後、校舎の屋上でリークとデニー、そして歩とでチョパリーによる一服中だ。ちなみに、リークはチョコバナナ味、デニーはプリン味、歩はレモンスカッシュ味が好みだ。


「何で二人は公安委員になったんだ?」

 エリと話して聞いてみようかと思っていたことを二人に質問した。

「ん~大体は成り行きなんだけどな・・・・・」

「僕は最初、清掃委員をやっていたんけどね~」

「なるほど。学園に不和をもたらす妖怪たちを秘密裏に掃除すると?」

「「それは掃除屋!!」」

 ツッコまれた。

「・・・・お二人が公安委員に入った理由はポーラさんたちにあるんですよ。4月に入った頃、留学してきたポーラさんと剛馬さんが仲がとても悪くってですね、そのせいで学園もあまり良い雰囲気じゃなかったんです。そんな様子を見かねたお二人が仲介人を名乗り出てポーラさんと剛馬さんを仲直りさせたんです。その後、例の戦いがあったゴールデンウィークでしばらくお二人がいない間にポーラさんが考慮し、自分たちで一緒に学園のトラブルを解決していこうと思い至り、学園長に懇願して公安委員を設立してもらったんです。お二人もウィーク明けで少々驚きましたが、喜んで受け入れてくれました」

「いいのか?せっかく穏やかな日常を手に入れたのにすぐ手放しちゃって・・・・」

「いいのさ、これが俺達人間のさがってやつだからな」

「困った者がいるなら僕達が手を差し伸べる。それに、あの娘たちの傍にも居てあげたいし」

「へへ、やっぱりあいつらそういうクチか。英雄はやっぱりモテるねえ」

「ははは、あなたがそれを言えますか?」

「お前さんには負けるよ」

「一番のお人良しは君だろう?」

 そして3人は声を揃えて言う。

「「「こんの、女のハート泥棒が!!」」」

 あーヤダヤダ。事実ほど否定し難いものはない。

「お~いギラ~!そろそろ時間じゃぞ~」

 と、屋上の入口から顔を出して呼ぶ元爺。




 同じ頃、公安室にてエリたちは女子会中。


「・・・・やっぱり、あの二人をそういう対象として?」と奈々。

「そ、厳密にはあたしと日陽乃はクリフに。ポーラと愛乃がオスカーに」

「好きになったのはしょうがないですけど、相手が人間であることを承知の上で?」と広子。

 そう。妖怪には寿命が無い、だが人間にはある。彼女たちがあの二人と過ごせる時間は限られているのだ。

「・・・・たしかに最初は抵抗があったね。人間に対して劣情を抱くなんて、私たち妖怪にとって自分の心を将来壊しかねないものだってね。でもね、それでも妖怪と人間が結ばれることだってあるのよ?」とポーラさん。

「「本当ですか!?」」

 と驚く奈々と広子。

「そいつらみ~んなお互いの住む世界を理解した上で一緒になったりするしな~」

「そういう人たちから生まれた子供でも普通に妖怪としてだったり半妖として生まれたりで色々あるそうですよ?」

「それに、二人が言った言葉があたしらの心に響いたから、踏ん切りが付けられたんだ」

『妖怪とて、元は人間の死んだ魂が宿った存在。その人間が限られた時間をどう生きるのがどれだけ肝心なのかを知らなきゃ、妖怪として生き続けるのは難しいぞ?』

『だから、どうせなら僕らを見ていてくれよ。中世ヨーロッパの動乱を生き抜いた僕らが、人類進化の世紀にどう生きるかを』

 さすが十字軍遠征時代の英傑たち。

「あの杉田っていう人間のことは聞いてたけど、想像以上に衝撃インパクトな人間ね。3人は彼にどんな印象を?」

「命の恩人」

「同じ強い共闘者」

「新しい世界を教えてくれた調教師」

「「「「待って、最後のは一体どんな印象?」」」」

 ポーラさんたちが広子にもっと詳しく聞くのを他所に、私はさっきの質問に対する答えでちょっと考え事をしていた。

 まあ、私の中じゃ“命の恩人”以外にもあるんだけどね。今じゃ“天然すけこまし”“スター・ウォーズ好き”、まだまだ色々あるけど。

 でも、一番最初はこうだ。



 2101年、爆破テロによって、新しい両親を一夜で亡くしたフィアは、首謀者の手下に追われ、雨の中森林をさまよいそして力尽き、ついには倒れる。もはやこれまでと意識まで途切れてしまった。だが次に目を覚ますと、とある部屋のベッドの上に寝かされていた。

 暖かい。

 誰かいる?

 寝惚けていた目を擦り、灯りの近くをもう一度よく見るとそこには。

 新しい両親が教えてくれた、かつて“ジパング”と呼ばれていた“日本”の伝統衣装:着物を着た自分と同じ5歳児がいて料理をしていた。


 “初めてのサムライ”。


 まあ、今でも彼は侍だけどね。

 そして、さっきの相撲の前で着替えていた際に、ちゃっかり聞き取った彼の感謝の言葉を思い出していた。

 ・・・・・こっちこそありがとうよ、武士もののふさん。



 女子会も終わり、集合場所の学園長室に着いた。

「失礼しま~す。ギラ、そろそろ帰・・・」

「うがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!・・・・うふっ」

 中に入るとまた元康さんが、ギラによる肛門ぶっ刺しが行われていた。

 あり?デジャヴ?

「おお~お前らちょうど良かった。今サヨナラの挨拶に刀ぶっ刺してたところだ」

「「「それ絶対挨拶のうちに入らない!!!」」」



 ・・・・今は“ドS侍”のイメージかもしれない・・・。





 帰りのウィリスにて。

「歩さんを連れ帰る為にわざわざあの学園に?」と広子。

「そ。歩は元々自分の妖術に自信が無かったことであの学園に通い始めてな」

「昔は精々他人をへんてこな存在にする程度だったんですが、現在は鍛えて色んな妖術を駆使するようになれました」

「今回奴らには先を越されてばっかだったが、そこはそこ。奴らへの打開策として、俺はハムラビ法典を応用するワケさ」

「・・・・・ハムラ、何?」

 こらこら奈々ったら、もう!

「ハムラビ法典。メソポタミア文明で有名な法典よ。“目に目を、歯には歯を”ってね」とエリ。

「奴らには厄介な“目”である化け狸たちがいる。なら俺達の“目”は歩だ」

「じゃあ“歯”は?」と奈々。

「そいつはまだ言えねえな・・・、お!」

 携帯がブルブル震えている。

「あー、運転中だから広子、頼むわ」

「「「また女?」」」と女の冷たい視線ズキズキ。

「違うからな」

 頼まれた広子が俺のポケットから携帯を抜き取り、起動して返事を読み上げた。

「大当たり!・・・って?」

 誰もが、何それ?と感じたが、俺には分かる。

 ニヤリ。

「モヤは無くなったな・・・。そんじゃ、“歯”の下準備を整えるか!」

 







 数時間後の、ギラたちが居なくなった学園長室にて。

「いだだ、あ奴Sに目覚めたどころじゃないじゃろ・・・。もう完全にドSじゃわい」

 すると、しっぽに括り付けていた無線機がビービーと鳴る。元康は後ろに手を伸ばしてそれを取り上げて応答ボタンを押す。

「はいもしもし~?そちらさんの進捗状況はどうですかな~」

『滞りなくだ。いよいよ決行の日は近い。おたくもそっちに着いた時のガイドも忘れぬようにな。我等が“あそこ”を牛耳りし時こそ、第二次王政復古大号令の実現が可能なのだからな』

「はいはい。大日本帝国をも超える国家構築、頑張りましょうね~」

 と、普段閉じ気味な目を開けて、口元をニヤリとさせる元康。

『ところでだ。おたくさっきまで尻で何を・・・・いや、何も聞くまい』

「そこは聞く前にやめて欲しかったね~」





 数日後、東京都に忍び寄ることになるであろう、



 影が。









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