35発目 仁義抱きましょ男女の世界
♪学びの校舎~、その堂々たる美しさ~我等の心に~、聖なる鳩に~オリーブの枝~、理想は高くとも~その志は決して消えない~お~お~木槿高校~♪
ドドンッ。
「木槿高校、生徒会会則、第3項第5条! 色んな繋がりを持った君なら、いくらでもヤ・れ・る!!」
(背後にホイッスルを咥えた千恵と小太鼓・枹を持った正士が揃って三三七拍子)
「色んなところを含めてこれアウトです!!」
と、ツッコミの剛君。
そんなやり取りを木槿高校の生徒会室でしているトラたちを、同じ空間で眺める俺と実央。
「これがいつも通りのワイワイ?」
「そう。いつもワイワイやってる」
トラたちはいつもこんなふうに生徒会をワイワイしているのだ。
今はどの高校も試験シーズンではあるが、生徒会の仕事はある。
今日は木槿・菫楼高校交流会という名目で勉強会でもやろうかとの提案の下、菫楼高校生徒会会長の倉田先輩と書記である実央に、付き添いで暇だった俺と剛が招かれていた。
「まあ我々東西の高校として有名ですし、お互いの校風を話し合って今後の学校作りに活かしましょうか。にしても1年で生徒会会長に当選できるとは驚きですね~」と倉田会長。
「彼、カリスマ性でいえば学校一なもので」と千恵。
「あ~この切、そういう堅苦しいのはナシにしましょう?うちは平和で楽しい校風が売りですし」と正士。
「あ、そう。じゃあ遠慮なく~」
と、寝そべる俺。
「「「「お前は少し堅くしろ!」」」」
トラたち&剛に怒られちった。
「まあ態度とか気にしても意味ないと思うよ?僕らの場合、年長者としての立つ瀬すらないし・・・・」
と、項垂れる2年の庶務さんと広報さん。・・・・・頑張れ。
「ではせっかくだし、校内の案内と行きますか。勉強会はその後で」
「そうですね」
さっそく全員で校内を移動だー。
次々と校舎の代表的なところを紹介していくトラたち。
「ここが保健室だ」
場所変わり、
「ここが女子更衣室です」
また場所変わり、
「ここが普段使われていない無人の教室です」
またまた場s、
「「「うん、STOPしようか。てかこのネタ使っちゃダメでしょ!!」」」
と、ブレーキをかける倉田会長・実央・剛。
「ええ~?会長さんも男ですし~、こういうところに興味がおアリでしょ~?」
口を尖らせ、気を遣ったのに予想外の反応受けてしまったという反応をするトラ。
「いや、後輩女子がいる手前でそういう気遣いいらないですから・・・」
「そうですか?んじゃ次は部活紹介でもしましょっか」
「始めからそれをチョイスして下さいよ・・・・」
また移動するみんなだが、俺は何も言わないぞ?
さっき紹介してた女子更衣室の中でドキッとして息を潜めていた二人組がいたことなんて!!
いやん!!
部活紹介も終わって生徒会室に戻り、勉強会を始めた。
「根号計算はイメージがしにくい計算の一つだ。平方根の概念自体も多数存在していて時々ごちゃごちゃになりがちで試験でもなナメてると痛い目に遭う。気をつけろよ~」
義四先生のお時間でもある。
「んで結局お前が指導するんかい!」
「ツッコミはいいからとっとと練習問題解けよ~剛」
「うぐ・・・・」
何も言い返せない剛は、渋々と意識をワークブックに戻す。
「トラさんは勉強は得意なんですか?」とふいに実央が聞く。
「得意とは言えないが好んでやるタイプだな。歴史は知り尽くしたんだが、こういった一般的な教科に関することは何もかもが初体験だからな。毎日の授業そのものが楽しみの一つになってるもんだ」
「今の言葉、日本中の同年代の勉強嫌いな子たちに伝えていきたいですね~」
「あ、あと最近●●ルファ●●に男装●●●っていうのも知って、今度初体験しようかなと楽しみにしてるんだ~」
隣には顔を赤らめる“乙女だった”千恵。
「あっはは~。今の言葉、知り合い以外に言っちゃダメですよ~」
実央も慣れちゃったもんだな~。・・・・あ、俺のせいか。
教科が変わって世界史。
「それにしても、未だに解明されていない歴史の謎も多々ありますよね。王ツタンカーメンの死、モヘンジョダロ遺跡、アトランティス大陸の有無。どれも記録がチラチラあるだけではっきりしないですし・・・・」
「おいエーブ。明らかに出題範囲外のところ読んでるだろ。やめろよ」
「でも確かに気になりますよね~。実は俺、はっきりしない物事を探求する冒険心って憧れますんで~」とちょっと自分好みの話が出てウキウキな倉田会長。
「あ~わかりますよ~。好きな女の子の意外な性癖を探る時の冒険心も溜まりませんな~」とニヤりなトラ。
「そんな冒険心ゴミ箱にポイしなさい」とすかさずツッコむ剛。
「あ、女の子といえば学校指定水着に関して、今ウチで検討中なんですよ」とトラ。
「え?何か問題でも?」と倉田会長。
「今ドキ感を取り入れようと、もういっそ女子は全員ビキニでって!!」
「「「それどこが今ドキ感?」」」
とツッコむ剛・実央、そして俺も。
「ちなみに、この議題は男子生徒500名の意見書によって成り立っている!!」
この学校の男子生徒はみんな思春期真っ盛りなようだ。
そんなこんなで勉強会は過ぎていき、
「さあ、時間も遅くなったことだし、お開きに」
「あー、では会長。私たちはまだ用があるのでお先にどうぞ」と実央が倉田会長に促す。
「先輩方、私たちも用事があるのでお先にどうぞ」と千恵も庶務さんと広報さんに促す。
「そうそう。他人には言えなくてコッソリヤることがあるからな!!」
「このタイミングでいちいちボケなくていいから」
とボケまくるトラにブレーキをかける剛。
「そ、そっか。じゃあお互いテスト結果が良いことを願いますね~」
「ではでは~」
何かを察した会長・庶務さん・広報さんらは自分たちの荷物をまとめ、生徒会室を去っていった。
「さて、お暇なギラがわざわざこんなところにまで顔を出しに来たってことは、何か重要な仕事ができたのか?」
これからの話の為にプロジェクターをテーブルの真ん中に置いて起動しながら、俺は喋り始めた。
「仕事になるかは今後の経過次第だがな。まあ、この話はちゃんと耳に入れて置いた方が良いと思うぞ?先日強盗事件が起きたのはみんなも知ってるよな?俺と実央は当事者だからわかっているが、武利越太兄弟団と名乗っていた強盗団は部下30名以上、能力者の用心棒を雇い、さらにはでっかいトレーラーにオスプレイまで用意してやがった。やろうとしていたこと自体がデカい分では当然の下準備なんだが、問題はそれを実行した強盗団が今まで大した犯罪も犯していない駆け出し犯罪グループだってとこだ。あれほどの準備をするにはちょっとやそっとの金じゃまず無理だ。大金はいつどこで入手できたのか?またその大金でどこからあんなデカブツたちを手に入れたのか?」
「俺以外でもわかるかもしれないが、トレーラーとオスプレイに関しては大体察しはつくな」
トラの指摘に俺はそれなばりに指差しをした。
「トラの言う通り、オスプレイと言えば当然アメリカを想像するだろう。警察も既にその線での調査を進めている。行き詰まっているのは大金の入手元の情報収集だ」
「強盗団の主犯格らには何も聞き出せていないんですか?」とエーブ。
「いや、むしろその逆だ。欽と阿㑍の言い分はこうだ」
俺はプロジェクターを操作し、彼らの事情聴取映像を映した。
『ある夜、俺達のアジトに足の長い爺さんが突然現れ、アタッシュケース一杯の大金を三つもくれた。見返りはなんだ?と聞けば、“何も。これをどう使おうと構わない。ただ存分に暴れろ、パァーっとな”と言い残して姿を消した。以来そのじいさんとは会っていない』
「だそうだ」
「えーえー、まさにあしながおじさんってか?」と皮肉を放つトラ。
「犯罪者の話を素直に信じろと?」と疑心暗鬼な剛。
「その意見はもっともよ、剛君。でも駆け出し者の言う事ならまだ信じれる方なのよ。犯罪を重ねている者ほど、嘘に馴れてしまっている」と千恵。
「それに、彼らの言った通りの人物でしたら、例の野生動物大量出現を踏まえて繋がりが見えてくるし・・・」
エーブが出そうとした答えを、
「その“足の長い爺さん”は妖怪である可能性がある、ですね」
実央が導き出し、それをエーブはニコニコしながら頷いた。
「じゃあ、この一連の事件みんな妖怪が唆したものだってことなのか?」と剛。
「ああ、そうなる・・・な・・・?」
「どうした?ギラ。お前にしては歯切れの悪い返事だな」とトラ。
「いや、な?その唆した奴に心当たりが浮かんできたんだが、そう考えた上での面倒なことが起こりうる可能性が・・・」
ビーッビーッ。
プロジェクターを通して携帯の入電が来た。ブラッキーからだ。
「どうしたブラッキー。例のマフィアの特定ができたのか?」
『ああ、特定はできたんだが最悪のタイミングだ』
「「「「「「???」」」」」」
ところ変わって、こちらは東京都葛飾区小菅にある拘置所、つまり“東京拘置所”。
『お前たちにわかるよう、日本語で単刀直入に言ってやる。今すぐ武利越太兄弟団を引き渡せ!!そいつらが犯した罪状の通りならこの国では死刑にならないのは分かっている!!ならば我らラスティ一家の手でこの場で処刑してやる!!欽!アメリカのマフィアを騙したらどうなるか、思い知らせてやる!10分やる!その間、要求をのまない場合拘置所を襲う、所内にいる公僕だろうが容赦なく撃つ!!いいな!!』
と、入口手前で日本語流暢なアメリカ人がスピーカーを使ってそう叫んでいた。後ろにはH&KモデルMP5A5やらVz 61 スコーピオン、Kriss Vector、Spas12、おまけにロケットランチャーまで装備しちゃってるマフィアが勢ぞろいしちゃってる。
もう戦争する気満々だ。
「何だってそいつらわざわざ日本にまで来てあの兄弟団を殺しに来たんだ?」
現場に急行中のウィリスで、トラが刀を手入れしながら聞いた。
「ボニータにもそこんとこを確認したんだがよぉ。その一家、ここんところ事業に失敗ばっかしてるらしくて衰退の一途を辿ってるらしいんよ。昔はカジノとかで結構稼いでたんだが、せっかく所有してたデカブツが今じゃ宝の持ち腐れ状態だったんだとよ」
アーマーな俺は運転しながらレクチャーする。
「そっか。今経済情勢もドル高だし、強盗団が持ち掛けた日本紙幣の大金を手に入れたのなら力を盛り返せると踏んだわけね」
トラと同じく刀の手入れを俺の隣でしている実央が言い当てる。
「さっすが実央。飲み込みが早いのは良いことだ」
「では、そのマフィアがここまで来るほど怒るということはその大金は・・・・」
スプリングフィールドをイジる正士。
「偽の金」と千恵。
「強盗団、マフィア、どっちも担がれちゃったってこった。あの足長ジジイに」とトラ。
「いや、もっとピッタリな言葉があらぁな」
そして、俺の指摘にみんなが声を揃えてその言葉を口にした。
「「「「「「“狸ジジイ”」」」」」」
奴さんは相当な頭をお持ちなだけでなく、厄介な勢力も抱えているようだ。
「それにしても、そのマフィアたち。一体どうやって武装しながら日本に来れたんだ?」
「・・・・こいつだよ」
「何だ?これ」
俺はテレビに映っている現場の映像をヘルメットのディスプレイに映し出し、自分で見たまんまの景色を創造した写真に写して剛に見せた。
写真の内容はこう。
件の武装したマフィアたちおよそ50名程、先頭には副官らしき男がスピーカーを持っている。そんな彼らの背後には曲線的なでっかいシルエットがふんぞり返っていた。
「B—2スピリット。年代モンだがステルスの類さ。コイツは多分マフィアが垂直離陸できるようわざわざ改良したバージョンだろうな。奴らの最後の財産と言ったところか」
「いや~大した執念だな~。恨みを持つ女に負けず劣らずって感じだわ~」
「ぐふっ、かーはっはっはっはっはっは!!」
トラが放った言葉に、俺はたまらず大笑いしてしまった。
「そんなにツボだったか?今の」
「いやいやいや、お前がピンポイントなこと言っちゃうもんだからっはは」
「ピンポイント?」
「いやそれがよ?そのマフィアを仕切ってるボスのラスティって奴が、実は女なワケよ」
「「「「「えぇっ!!?」」」」」
その頃、東京拘置所では。
「お嬢、もうじき10分経ちますぜ?」
「OK. 最近の日本は派手さが足りないと思ってたところだ。まあ武利越太兄弟団ちょっとばかし暴れたみたいだが、あんなの映画に比べればただの花火だ。あたいたちの一家をコケにした代償をきっちり払って貰おうじゃないの!日本風に言えば、この国に爪痕を残して、死に花咲かせたるわぁーっ!!!」
と、日本語ぺ~ラペラでUSモデルM60機関銃を担いで息巻いているスタイル抜群な金髪美女こそ、一家の若女ボス:ラスティ・ハーロである。
そんなムカつき女の下にいるマフィアたちの心境はというと、
(この人、日本の任侠映画に影響受けすぎなんだよな~)
こんな感じである。
「それじゃ行くよ、あんたら!」
「はいはい、“ご一緒させていただきます”~」
いやいやながら前進を始めた彼らの歩みは、改造型スピリットの上に立ったある者の呼びかけによってすぐ止まるのだった。
「待ちなさいっ!!何の目的があって日本まで足を運んだのかは知らないけど、あんたたちの命運もここまでよ!!」
「「「「!!?」」」」
また戻って、現場急行中のウィリスにて。
『ラスティ・ハーロ。父親であったマフィアのボスの下、英才教育を受けながら大学まで行き卒業。しかし、父親をがんで亡くし、残されたマフィアたちをまとめるため自らラスティ一家を立ち上げました。組織は既に衰退しており、ここ数年は事業の経営を立て直そうとしていたそうです』
ボニータが車ん中で女ボスに関してデータを読み上げてくれていた。
「苦労して一家の立て直しの最中に大金を持った客人。これ幸いと思って取引した矢先にそれが全部使えない偽の金ときたら、いくら何でも怒るわな」
剛も納得の声を上げる。
「ヒステリック女は面倒だな~。まあその女の相手は任せたぜ、ギラ」
「あいよ~っておいトラ。女ときたら俺ってどういう意味だよ?」
「一番女の扱いに手馴れてるだろ?現在10人以上も手籠めにしてるんだから」
「おい剛。てめー自分が無効化人間だからって調子に乗ってねえか?今度ふざけたセリフ抜かしたら、てめーの●●●●をウィリスのエンジンに突っ込んでやるぞ?」
ゾゾッと悚然な剛。
すると、千住新橋辺りまで車を進めた頃、
ボンッ。
目的地の方から爆発音が聞こえてきた。しばらくすると煙が立ち上ってきた。
「なんだ?ALIVEの奴ら先に作戦行動に移ったのか?」
「いやそんなはずは・・・。ブラッキー、状況報告を。何があった?」
『あ~、それなんだがな・・・混沌状態に突入したってところかな?』
「「「なんだそりゃ?」」」
面倒なんで感知能力を使って自分で確かめることにした。
拘置所前では戦っている集団がいる。一方は銃を持ったマフィアたちなのだろう。だがもう一方の集団一人一人のシルエットに見覚えが・・・・・・・・・。
『なあギラ。お前たしか“マドリード騒動”に参戦してたよな?』
面倒臭い相手を思い出しながら俺は、
「Holy shit....」
そう口にするしかなかった。
現場はというと、こ~んな感じだ。
既にマフィアたちの移動手段だったスピリットは破壊されていて、立ち昇る炎の周りでは銃撃するマフィアたちに、それを防弾盾で防ぎながら素早く動き、木剣を片手に切り込んでいく・・・・シスターたち。
「・・・・まさに混沌・・」
現場近くでその様を見たトラがそう呟く。
「なぜ中二風?」と剛。
「これはいよいよ狂ってきましたね・・・」
やれやれ気味になりながらも戦闘準備に入る千恵。
「その狂いを正す為にも、アイツらをここで鎮めなきゃいけねぇからな」
「あの聖職放棄したシスターたちは何者だ?アニェーゼ部隊か?」とトラ。
「いや、信仰心の下に集まった修道女集団、とは名ばかりの生きるために結成した賞金稼ぎチーム:レッド・クローバーだ。境遇としては巴やペティと同じ奴らさ」
「なーる」
「ところで、何でアーマー脱いだの?せっかく着てたのに」と実央。
「それがよぉ、俺あの修道服ちゃんたちとは昔の商売敵でな。特に今先頭で木刀を振り回してるシスターには一騎勝負で負かしちゃったのよ。だから今アーマー姿であそこに飛び出しでもしたら、さらに地雷を踏んじまうんだ」
「俺達も知らないとなると・・・・、賞金稼ぎ時代か?」
「そ」と俺は適当に答えた。
するとトラはあとのメンバーに振り返るなり、
「つまりあのシスターたちもこいつの毒牙に?」
「「ありえる、ありえーる」」
「きっとあいつのことだから尋問プレイで堕としたものと」
「いえ、彼はまだ目覚める前ですから甘い言葉責めをやったものと」
「ヒソヒソ声にしてるけど筒抜けだかんなー。あと仕事しろツッコミー」
というわけで、今日の俺は黒ハンチング帽子を被り、茶色のワイシャツに濃い緑のジャケット、そして灰色のズボンだ。厚着?に思うかもしれないが、ちゃんとこれら全て薄生地でできているので涼しい。夏場での熱中症対策もバッチリだ。ちなみに今回は拳銃だけに頼るつもりだ。
今いるメンバーも既にスーツの衣替え済みだ。替えたところを上げてみよっか?
トラは陣羽織をやめて半袖コンバットシャツを着用、その上に防弾チョッキっと。
エーブは丈の短い袖を捲った薄着で緑のフロックコートを着用。
千恵は半袖緑ワイシャツを着用。
実央は袖なしの巫女装束だ。ただ、脇が見えてしまうってエロいよな。
剛はー・・・・、あいつ元々薄着だったから何にも変わってないな・・・・。
「さて、ほんのちょっとだが開催といきますか、混沌な騒動を!!」
腰に差していたマグナムを抜き取り、グルグルと回しながら俺は言う。
「「「「「Sir,Yes sir!!」」」」」
メンバーの返事と同時に、俺たちは騒動現場《パーティー会場》に向かって駆け出した。
走ってくる存在に気づいたマフィアたちが、各々が持っているサブマシンガンで迎撃してくる。
敵の銃撃を持前の感知・身体能力・刀・十字剣・翼・長銃・霊波・衝撃無効化で避けたり防ぎながらマフィアたちに切り込んだ。シスターたちはあくまで稼ぎになるマフィアたちが狙いだ。しかし、商売敵の邪魔はしても、巷で有名になっている俺たちの邪魔を考えることはない。アイツらはそういう奴らだから今もこの通り、俺たちがマフィアを次々に倒しても怒ることはなく、それどころか時々銃撃を盾で防いで援護してくれちゃったりするのだ。なので俺達も仕事がやりやすく、大暴れできるわけだ。
実央は今回あまりドンパチは控えるようにと俺の指示を真に受けて刀のみを使ってマフィアたちに峰打ちしまくり。エーブも、銃弾はスタンバレットに変換不可能なので銃剣ナシのスプリングフィールドを振り回すのみ。千恵はいつもの旗を振り回しながら台風の目役ばりに立ちまわっている。剛はー・・・・・、ありゃりゃこれはまたいつもと変わらず、良質タックルであった。
トラは元々銃火器の種類に関しては、ブラスターを除けば俺と同じくらい所有している。ただ、俺とは違って色んな種類の銃を毎回変えて使用している。しかも気分で選んでる。今回はというと「サブマシンガンの射撃がなってない!こうやるんだ!!」と言いたいが為に、あらゆるサブマシンガンを使ってマフィアたちに手本を見せながら倒している。おい待て、UZIはよせ。それだと巴の存在価値を奪ってるようなもんだぞ? あ、もちろんスタンバレット使ってるよ?あいつ。
さて、感知能力を持っているとはいえ、銃撃を避け続けるのは俺にとってもキツい。マグナム一丁だけを頼りにする俺が取る手段は二つ。まず、獣になりきって走りまくれ。奴らは全員俺にとってのハンターたち。ハントされたくなくば走り続けろ。そして、マグナムを使って一気に敵全員にヘッドショットをきめて制圧するべし。これを繰り返す。まあ主観的にも客観的に見ても、今の俺の戦闘は獣の中でも限定されるだろう。
「あのモンキーを撃ち殺せー!!」とキレるマフィア。
猿に。ウッキ~!!
俺くらいになればどんな態勢でも狙い撃ちができる。腰撃ちでも、銃撃を避けながらでも、ジャンプして空中でも、体が上下逆に落ちながらでも、片手で逆立ちしながらでも、背後にいる敵でも、
ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!
バタバタバタバタバタバタッ!
命中である。
すると、黒髪オールバックなマフィアが俺に近づいてきた。
「悪いですが、こっちも義理ってのは重んじる方なんで、お嬢の邪魔立てするって言うのならお相手しますよ?BULLETSの新メンバーさん」
どうやら今の俺はBULLETSの新入りだと思われているようだ。おそらく少し遠くで飛んでいる中継ドローンを通して見ているであろう視聴者たちも、同じ心境なのだろう。結局はモザイク付けてるけど・・・。
「義理か・・・。その言葉を知ってるとは驚きだねぇ、ロン・ミッシェルさんよ。だが生憎、俺の用はそのお嬢さんのみだ。あんたの相手は・・・・」
俺がロンに背を向けるのと同時に、彼の相手が刀とベレッタ・モデルMX4ストームを持ってそこへ颯爽と現れた。
「俺だ」
「っ!“橙千砲”か・・・!」
「やれやれ、お前結局女の相手するんじゃんかよ」
「これも因果かな~。ロンを頼むぜ、うつけさん!」
「っはは、抜かせ足軽!」
そんなやり取りを残しながら俺はその場をあとにし、お嬢=ラスティ・ハーロの元へと向かった。
「随分と信頼し合ってるご様子で。一体どれだけの戦場をくぐってきたのか聞きたいもんですねぇ」
そう言ってロンは腰から三段式警棒とFNモデル・ハイ・パワー・キャプテンを出し、臨戦態勢に入る。
「その願い、近いうちに叶えてやるよ。場所は独房だけどなぁっ!!」
トラが声を荒げるのと同時に、彼らの刀と警棒が火花を散らす。
ガギンッ。
で、そのラスティ・ハーロはというと、
「失せろ!邪魔するなロザリア!お前らエセシスター共を殺すのはまだ先の予定だ!!」
「マフィアが強盗団に処刑だなんて、笑いものね!でもそんなの国に関係なく通用するわけない!直接下したいのなら、この国の死刑執行人になることね!!」
「黙りな!この国の執行人には侍がもうついてんのさ!あたいもだが、木刀使いなだけのお前には絶対になれない役目だ!このモンスターに襲われがちなイメージ女共が!!」
「それはエロDVDの見過ぎでしょうが!!あなただってダイナマイトボディを持ってるからって油断してんじゃないわよ!どうせ男と結婚してもそのうち夫に逃げられて、ショックでスケベジジイ共の餌食になるのがオチに決まってるわ!!」
「お前のそれこそエロDVDの見過ぎだろうが!若さだけが良いってもんじゃないってこと、おどれの命取って分からせてやらぁっ!!」
「私には玉はないはずだけど、こっちだって世の中はぴちぴち娘を求めてるってこと、あんたのボディをボコボコにして証明してやるわぁっ!!」
こんなやり取りをしながら、M60からNATO弾を撃ちまくり、それを特別頑丈な防弾盾で防ぎ、木刀を振り下ろすも足に装着した防具で防いだり、とにもかくも過激なアクションを拘置所入口前でやっているわけだ。ま、過激なのは口の方だと思うが。
「おいおい~、戦場で別な戦い始めてんじゃねえよ~。そういう女の醜い争いはな、銀魂でやれって話なんだよ」
「「っ!?」」
「お、ようやく俺の存在にお気づきか?」
「・・・・・誰だいあんた。ロンの無線でBULLETSが来てるとは聞いたけど、あたいの記憶が正しければ、あんたみたいなガンマンはメンバーにいなかったはずだけど?」
「ついさっきまではな。ここに来る途中ネットも調べてみたんだけどよ、おたくのロンの考えと同様俺のこと新メンバーってことになってるらしいよ?」
「で何しに来たってんだい?はっきりしたらどうなんだ!」
「実はな?ラスティ・ハーロさんよ。俺はお前さんらがどういう事情でここへ来たのかは予想できてんだ。正直言うと予想した上で内心同情もしてるワケよ。でもよ?襲おうとしてるそこは日本中で色~んな特別悪さしちゃった犯罪者たちを見張る為の場所の内の一つなんだ。そんな大事な場所から多くの犯罪者たちが抜け出しちゃった日には、せっかく守ってきた国民のみんなに申し訳が立たなくなっちゃうのよ。だからさ?ここいらで引き下がってくんねーかな?」
「その気持ちはあたいにもよく分かる。いかにも義理堅い日本男児って感じだね。でもね、ここであたいが立ち止まっちゃ、一緒に歩んできた手下達にも義理を立てれなくなる。あたいの道では、引き下がるなんてことはない、前に進むのみよ!!」
そう言って彼女は、来ていた上着を脱いだ。露出度が高過ぎというか上半分は水着一枚で豊満な胸が・・・あいやいや!背中には入れ墨で日本語が書かれていた。
“人生走ってそのまま”と。
「やれやれ、こっちの誘いは断られちゃったか~。そちらさ~ん、悪いけど協力してくんないかな~?」
「どこの誰だか知らない男にホイホイ付き従うほど、私の尻は軽くないけど?」
「うっさいぞ二人とも!!」
ラスティは怒鳴り、まず俺に向けてM60を撃ってきた。俺はその銃撃を右に避けながら、マグナムを一発ぶっ放す。どれ程の訓練を積んだのかは知らないが、彼女は俺の弾道を読んで重い装備を持っているとは思わせない程早い動きで避けた。ファミリーの為に努力を惜しまなかったのが伝わってくる。だが俺もただ右に避けただけじゃあない。彼女が避けた隙を突いてロザリアが斬りかかるのを予想した上での行動だ。だがラスティも粘る。足の防具で剣戟を受け止める。それを見越して俺は左に移動しながらさらに2発撃っていく。彼女も苦しい態勢でも機関銃で迎撃する。ロザリアはなんとか相手を崩そうと盾でアタックをしかけるも、逆にいなされその勢いを利用され、自分が前のめりに倒れてしまった。ラスティは彼女に銃口を向けて撃つが、すんでのところで撃った俺のマグナム弾一発をM60の銃身に当てて無理矢理弾道を下げることで、NATO弾数発はロザリアじゃなく地面にめり込んだ。
「ちっ!」
舌打ちしたラスティはポケットから何かを出し、そしてこっちに投げた。
あ、たしかデータによると彼女はたしか・・・!
「ロザリア!盾を構えろ!」
「命令しないで!!」
口では反発しつつも、彼女はすぐさま盾を構えた。俺もちゃっかりとその影に隠れる。
ボンッ!!
ラスティは自然の能力者なのだ。内容は、自分のDNAを染み込ませた物を任意で爆発させる。規模は物の大きさによるが、あまり派手な爆撃はできない。
「んじゃちょいと借りるぜ。お前の体」
「ってちょっと!どこ触って・・・!」
俺は盾を握っている彼女の左の義手を握り、腹に拳銃を持ったままの右腕を回して彼女ごと盾を伴ってラスティにタックルをくらわせた。
ドガッ。
まさかそう来るとは予想もしなかったラスティはタックルを受けて膝から落ちた。
「木刀握れよぉっ!!」
ラスティは俺の掛け声を聞いて警戒するが、盾のせいで俺達が次に何をするのか読めない。一旦距離を取った方が良いと考え、後ろにジャンプする瞬間。
(瞬間よ、俺が狙ったのは!)
俺は左腕を力を入れて、ロザリアごと木刀を勢いよく振り下ろした。
「「でりゃぁーっ!!」」
木刀の切っ先は見事ラスティのM60を直撃、そのまま銃身を折り曲げた。ジャンプしてまだ足が地面に着地していないラスティは為す術もなく、すかさず撃った俺のマグナム弾(電磁弾丸製)を受けて行動不能となり、倒れた。
「ふう、ようやく鎮まったか」
「ええ。っ!でもまだロンが!」
「心配ねえさ。あっちには天下の大うつけ様が相手してるんだ。じき片付く」
「・・・うつけ?」
彼女は日本語はできるが、そこまで通じる程ではないらしい。
数分遡ったトラたちの対決はというと、
ガギャッ!ドンドンッ!ゴギャッ!ダダダダッ!
刀・ハンドガン・警棒・サブマシンガンの乱舞の真っ最中。
ロンはハンドガンの弾倉をすでに三つも消費している。俺なんかは最初のMX4ストームからOTs—22ビカール、FNハースタル・モデルP90と機種をとっかえひっかえなこった。今はイングラム・M10に落ち着いているところだ。
「ボス攻略もそう時間はかからない。こっちもそろそろケリつけようじゃねえか?」
「ウチのお嬢がその辺の男にやられるとは思わないが、早めに終わらせて加勢に行かなければ!!」
最後の一騎討ちが始まった。お互いが相手に向かって走り出し、刀・警棒を後ろに構えて銃を撃つ。
だが、この時ロンは俺より一枚上手の技術を披露した。奴は俺のイングラムの銃口を狙って9mmパラベラム弾2発を放った。一発はイングラムからすでに発射されていたバラべラム型スタンバレットと“かちあい玉”の如くぶつかり、もう一発はイングラムの銃口に入り弾詰まりを起こさせて使用できなくさせた。
(く・・・!漫画見てえなことやりやがって!あ、これ小説か・・・)
ロンはそんな新しいサブマシンガンに替える余裕を俺に与えることもなく、容赦なく撃ち、そして警棒を振り下ろす。
弾丸を弾いてなんとか警棒を止めるが、相手のハンドガンはまだ余裕だった。
「もらった!」
ズギューンッ!
勝敗は、決した。
一方は立ち、他方は倒れる。
しかし、倒れた他方の両手から離れたのは刀とサブマシンガンではなく、警棒とハンドガンだった。
さっきの大きめの銃声は拘置所前の建物の屋上に俺の能力:本能の魂である火の玉を置き、設置させておいたレミントン・M700スナイパーライフルによるものだ。
狙撃手は俺の部下、蘭丸だ。
「こいつは俺の元部下からの受け売りだが、戦いで真っ当にやるというのは捨てろ、肝心なのはどれだけ策を弄するかだ。よくやったぞ、蘭丸」
『ロン・ミッシェルとの接戦お見事でした、御屋形様』
「ギラ、片付いたぞ~。そっちはどうだ?」
『問題ない、こっちも終わってる。そんじゃま、ブラッキーに手伝ってもらうとするか』
無線で連絡を取っているBULLETSの新メンバー?な男を見つめる私、ロザリア・ルキーラは戸惑っている。
あのガンマン、初対面なはずの私の実力を何の疑いもナシに買って、協力を申し出てきていた。
なぜ?
それに私の義手に何の反応も見せずに掴んできて、そのまま私ごと木刀を振り下ろしたし。
なぜ?
私を知っていた?
なぜ?
あんな軽快そうな男、会ったこと・・・あ、一人だけいた。
「あんたも大した女だよ。その実力、こんな所で散らすには惜しいぜ全く」
倒れたラスティの近くでそう呟くその男。
たった今の彼の言い回し、さっき見せた私が立ち回れるよう援護してくれた正確な射撃能力、それにあの漂う不適な雰囲気、何もかもが懐かしく感じ始めてきた。
あのDC—15ブラスターを振り回し、アーマーを身に着けているとは思わせない程素早いトルーパー。
その賞金稼ぎを思い出しながら、私は木刀を持ちながら左の義手に右手を添えた。
とある独房にて。
「・・・・・・、っは!」
あたいは、たしかあのBULLETSのガンマンに撃たれて・・・・!
「っ、お嬢。お目覚めですかい?」
隣の部屋から?
「!ロンか!?ここはどこだ!?」
「窓の外を見れば、お分かりになるかと」
言われるがままに窓を覗くと、そこには眠る前に自分がそこにいたはずの東京拘置所前の広場の景色が広がっていた。太陽は真上に、昼?ということは少なくともあの騒動から1日はもう経っているのだ。
「なるほど。あたいたちが襲撃するはずだった独房にぶち込まれたってことかい」
「アメリカのブタ箱よりかはマシだと思いますよ?あっちの方は酷い場所だった。でもこの国の独房は狭いものの中々清潔感があって良いです」
「赤い着物は着せられてないのか?あんた」
「?別に衣服は変えられてはいませんが、武器を没収されただけで。何か?」
「だって言うだろ?“どうせあたしたちは赤い着物か白い着物”。刑務所に入れば赤い着物で、死ねば白い着物を着るって」
「お嬢・・・、拘置所と刑務所では状況的に違いますよ?それにそれは任侠映画の見過ぎですから・・・・」
『まあたしかに、そいつは表現的な言葉だからな。俺も任侠モノで気に入ってる言葉を上げるとしたらこれかな?“親か女か仁義を取るか、仁義抱きましょ男の世界”、お前さんからすれば、女でも仁義抱きたいってか?俺から言わせればどっちもありの世界だと思うけどな。おはようさ~ん』
「「!?」」
部屋に取り付けられたスピーカーから声が。
この軽快な言い回し、あのガンマンか!
「スピーカー越しでご挨拶とは、随分なご身分のようね」
『あの~俺そんな大層なご身分じゃないんだけど・・・。それにスピーカー越しじゃなくてここだよここ~』
じゃない?言ってる意味が・・・・あ。
よく見るとあたいがぶち込まれてる独房のドアの覗き窓に、あのガンマンのニヤついた顔があった。
「結局良いご身分じゃないかい。そっから人のあられもない姿を覗こうってんだろ?」
『Oh! なんて破廉恥な発想をするんだい君は!・・・・マジでやってみる?』
『やめなさい・・・』
パシッ。
『あたっ』
ここからじゃ見えないが、彼の隣には誰かがいてその人物に軽く叩かれたようだ。スピーカーのから漏れた声から察するに女だ。
「さて、あたいたちの裁きはどうなるんだい?強盗団の罪状だけしか調べなかったからこの国ではどうなるかまではわからないんだけど?」
『う~ん、まずはスピリットによる不法入国罪、全員が銃火器類で武装していたことによる銃刀法違反罪、東京拘置所前での器物損壊罪、戦闘による暴行罪、活動拠点だったアメリカでの武器密売行為の疑いなどなど、言い出したら止まらないの何のって。まあ全員が終身刑に決定だろうな~』
・・・・・この道に入って、いつかは来るって覚悟はしていた。
でも、ちょっと早すぎな気もする。
『とまあここまでは常識的な見解上での話なんだがな。こっからは、未知の領域だ』
・・・・・何を言ってるんだ?
『お前さんらは武利越太兄弟団が持ち込んだ日本紙幣が実は偽物だって分かって、仕返しに来たんだよな?せっかくドル高の情勢、換金すれば倍の金が手に入って一家の運営も大回復~って思ってたのにな』
「・・・そうだよ。だからなんだ!?今更犯罪者の声を聞いて、何が変わるって言うんだ・・・」
あたいはたまらず逆ギレしてしまった。
くそっ。柄にもなく涙まで・・・!
『いいや。その声だけでも変わる可能性は十分にある。俺の目が見ているうちは、届かない声なんてねえよ』
「「へ?」」
男はニヤついた表情から、あたいのことを真っ直ぐ見るそいつは、まさに仁義を抱いた漢の顔をしていた。
『一つ聞かせてくれ。お前さんらが見つけたその偽金は何だったんだ?』
「・・・・・“葉っぱ”だよ。大金がたくさん入っていたはずのアタッシュケースの中身が全部葉っぱに変わっていたんだ・・・」
『・・・・ビンゴ。これでやっとピースが揃ったな』
「何が?」
『お前さんら、こっからの話をよ~く聞いとけよ?』
それからあたいたちはたくさんのことをそいつから知らされた。
妖怪が実在していること。
彼らの存在意義が人間を脅かすこと。
だが日本にいる妖怪が厄災級の何かを企み、世間を騒がせていること。
そしてあたいたちを騙した真犯人がその妖怪の部分勢力であること。
『強盗団にマフィアたち。お互いここまでのことにはならないはずだったってワケなんだ。奴さんが唆さなければ』
「つまり俺達は担がれてたってことか!」とキレるロン。
「・・・・だが結局のところ、騙された方が負けってことさね」
『たしかにそうだな。だがこれだけははっきりしただろ?お前さんらが本来仕返しするべき相手が誰なのかが』
「・・・・あたいたちに何を求めてるんだい?」
『奴らに先手を打たれまくってるのは俺達BULLETSも同じってワケよ。こんな後手後手な作戦はこっちもウンザリだ。覆すにはお前さんらの協力が欲しい』
「見返りは何だ?法の裁きを軽くしてやるとかか?」
ロンが皮肉たっぷりな質問を返すと、男は不適な笑みを浮かべて指を鳴らした。
すると、あたいたちを囲んでいた独房の壁が次々に倒れていった!見渡すとどこかのスクールのジム施設の中のようだ。なぜかレゴでできたあのクローンウォーズのジオラマセットがあったり、ジープにハーレー、あのデロリアンがあったりしている。
「こ、ここは一体・・・・拘置所じゃないのか!?」
「にひひ、ワケもわからず暴れられたら困ると思ってな。とりあえずは拘置所の独房に見せかけることにしたんだ」
見せかける?ということはここは拘置所じゃない?
それに、男もジャケットじゃなくて和服だ。
「「「「お嬢~、兄貴~」」」」
「「っ!!お前たち、何で!?」」
よく見ると、部下達はごちそうになっていた。奥ではあの“橙千砲”に他三名が次々に部下たちへの料理を作っていた。
「なぜだ?どうして、俺達を・・・」
「お前さんらは実質、被害者にも相当する。だが妖怪が絡むとなると残念ながら公表はできん。そこでBULLETSが匿うことに決めた。お前らの人数のこともあってちょーっと元の大きさから拡張した地下室なんだけどな?これでしばらくはここに居れば安全だ」
「・・・・とりあえず、感謝する。ファミリーを全員助けてくれるなんて」
「その辺の礼なら最もすべき相手がいるぜ。ほら」
すると彼の影から現れたのは、憎きレッド・クローバーのリーダー:ロザリア・ルキーラだった。
つい反射的に身構えてしまったあたいとロンだが、彼女に戦う意志がないことに気づいてすぐ解いた。
「事情は彼から全部聞いたわ。大変な時に追い打ちをかけるような真似をしてごめんなさい。償いになるかどうかはわからないけど、黒幕を倒すのに協力を惜しまないわ!」
「俺もお前さんらの関係性を聞いた。最近の事業に失敗してたのは彼女らに非合法カジノを潰されたからなんだってな。だが今回の追撃は正しくなかったと俺の話を聞いて悟ったとのことだ。まあもともとこの国に来たんで不殺でお前らを捕まえようって気だったんだとよ。だから今回の騒動で一人も死者がでなかったのも彼女らのおかげってワケなんだ」
・・・・でも、今まで全てのカジノ経営摘発に際しても、手を下したロザリアたちは誰一人殺しをしていない。
「・・・・どうしたい?ロン」
「俺に聞かないで下さいよ。いつでもあんたについていくだけですよ、俺達みんな」
そうだった。昔っからそうだったね。あたいの家族は。
意を決して、ロザリアとガンマン男の手を握り返事をした。
「へっ!だったらその黒幕の妖怪に爪痕残して、今度は相手に死に花咲かせてやろうじゃないの!!」
「っはは、さっきの話聞いてたか?妖怪は死なねーってのに」
「ならそいつに死ぬこと以上の恐怖を与えれば良いでしょ?」とロザリア。
「・・・それもそうか。ほんじゃま!ラスティとロンはファミリーに混ざってランチ食って来いよ~」
「あ、その前に!あんたの名前、せっかくだから教えてくれないかい?」
「俺か?俺はだなあ・・・」
何やら一瞬戸惑ったみたいだが、彼はまあいっかと言わんばかりな顔つきで答えてくれた。
「俺の名前は、杉田義羅だ」
「じゃあギラ・・・」
「なんだ・・・・!?」
チュッ。
彼の唇を奪い、続けて
「Thank you♥」
耳元でそう囁き残し、驚いた顔つきのロンを連れて一家のところへ向かった。
(あのガンマン男、意外と女にモテてそう♥)
「アッハッハ~、ガイジンハア~ユ~アイサツガオオイヨナ~、んぐっ!?」
あのラスティに突然の口づけをされたことで、場の空気を和ませようとカタコトで喋っていたらこれまた突然、ロザリアからChoparyChopが包み紙を外して俺の口に突っ込まれたのだ。
「女にモテるのは相変わらずのようね、フォース」
彼女だけじゃなく、いつの間にか勢ぞろいしていたレッド・クローバー全員がニヤりと俺を見ていた。
「・・・・・その名前呼びにChoparyChopを俺に突っ込むってことは、・・・・いつから確信を?」
「昨日の騒動が終わってから。冷静にあなたを見ていたら、あのヘルメットから漂っていたのと同じ不適感がチラついたからね」
・・・・・・バレテーラ。
「それで?ここで俺を殺すか?」
「何?私が3年前のスペインでのことをまだ引きずってるとでも?」
「女の恨みは怖いからね~。それにお前らを出し抜いてまで賞金首を奪ったんだぞ?おまけにお前さんの義手を破壊しちまったし、恨まない方が逆に変だろ?」
「丁寧な謝罪英文に新しいバイオニック・アームを添えてまで送ったことで私たちみんなの心に十分伝わったよ。もう恨んじゃいない。それに、このアーム気に入ってるし・・・・うわっ!?」
すると、後ろにいたシスターたちが我慢しきれず、ロザリアを押しのけて俺に詰め寄ってきた。
「まあ~、あのヘルメットの下にこんなイケメンが隠れてたなんて~♥」
「あの時の仕打ちは忘れてないからね・・・(頬染め)」
「昨日のガンマンスタイル、カッコ良かったよ~」
「八咫烏の3人は元気~?」
「ウォルフィは?最近、噂すら途絶えちゃったんだけど~?」
「ペトラたちとはうまくイった~?(ニヤニヤ)」
各々が俺のまじまじと見ながら色んなコメントを投げかけてくる。近いし遠慮がない・・・・。
「これは篭絡?それとも本当にプライベート?」
「「「「まっさか~、素に決まってるじゃな~い」」」」
あざといあざといって。
「まあ私たちはともかく、彼女はアームに“4”って書き込んじゃう程だからね♥」
この栗毛が帽子から見え隠れしてるこのシスターはたしか・・・・、副官のジュディ・ボッシリーニだっけ?
そんなことを言われた本人も普段から帽子から赤毛が見え隠れしている上に顔を赤くし、俺の視線に気づくとそっぽを向いちゃった。
・・・・・・・・・・・・・マジ?
「・・・・・俺はてっきり、全員に嫌われてるものかと・・・。それに変わったなお前ら~、スペインの時は殺伐とした感じがあったのに」
「あなたとその仲間が逆に軽快過ぎたんだから。おかげで拍子抜けて仕事も追い抜かれちゃうし、全員が影響受けちゃったんだから」
「う~ん、しかしなあ・・・」
「リーダ―と私たちをこんなのにした責任、あなたたちで取ってよねっ☆」
そういってジュディは他のシスターたちを連れて、トラたちにランチをたかりに行った。
ジュディが“あなたたち”と言った意味は分かっている。スペインでの仕事中、彼女の相手をしていたのはアディだ。彼のことを含んで言ったのだ。読者のみんなはまだそいつが誰なのかは知らないと思うが、いずれまたな☆
・・・・・俺は良いけど、アイツと彼女を引き合わすのは面倒なんだがな~。
「ま、まあとにかく。あの子たちも私も、アーマーを着込んだあなたを見ても怒ったりしないから安心して」
「チョパリー(ChoparyChopの略)マンゴー味をどうも。俺の好み、覚えてたのか」
「アームだけじゃなく、これまで気に入っちゃったからね」
そう言って彼女はポケットから新しいChoparyChopを出し、包み紙を外して口に運んだ。
俺はあの謝罪英文に添えた物でバイオニック・アームともう一つ、チョパリーのリンゴ味を贈ったのだ。
包み紙を確認して分かったが、今彼女が食べているのもそうだ。
「歯磨きはちゃんとしてるか?」
「怠りなく」
「ならばよし。でもランチも食べろよ?糖分だけじゃなく、たんぱく質も・・・んん!?」
さっきチョパリーを一本突っ込んだのに、ロザリアは自分が口に含んだチョパリーをまた俺の口に突っ込んだ。
(おい、これって、間接キス・・・・)
そして彼女はそのチョパリーを引き抜いて、自分の口の中に戻した。
「これでおなかいっぱいになったとしても?」
そう言い残して、シスターたちの下へと向かっていった。
「はぁ、キュートなことしやがって・・・・・」
そう言って彼女の背中を見送りながら頭をかく俺。
「「やっぱ毒牙立ててたじゃん・・・・」」
ギクリ。
恐る恐る後ろを振り返ってみると、ニヤニヤな剛にジト力全開な実央が俺を見ていた。
「あ、いや、俺も予想外だったし?それにアイツらの本性は知ってたワケだから、当時ブチのめしたことに後ろめたさがあってよ?だからせめて謝罪英文をと」
「そういう気遣いが、逆に女を堕とす手段にもなる可能性は考えなかったの?」
「・・・全然」
二人揃って俺にウリウリと指でつついてきやがる。あ~れ~。
「それで?黒幕である妖怪の件はどうすんだ?計画があるなら教えてくれよ」
「それに関してはまだ秘密だ。黒幕さんらにとっては」
「これまでの事件は前菜、次に何かが起こるとしたらそれが主菜ってか?」
休憩を取ったらしく、調理場からこっちの話の輪に入り、調理姿のトラが俺が言いたいことを補足してきた。俺は正解であることを笑顔で表した。
「まだ秘密ってことは、計画は想像済み?」と実央。
「ああその通りだ。こっから先は、どっちが一番化かせるかが勝負所よ」
そう。
相手は化かすのが得意な妖怪、“化け狸”たちがいるからな。
「あっちはもう料理の準備を済ませて出し始めてる。現料理人の立場から言わせてもらうと、これから出すには手遅れだと思うが?この料理対決」
「世の中な、一番食べ物をどう堪能するかを選ぶお客さんが幸せ者なんよ。相手はレストラン風に段階を踏んで食事を用意している。ならこっちはご家庭風に一気に全ての料理を出せば言いワケよ。グフフ」
頭ん中での料理《作戦》の想像をしながらニヤりな顔をする俺。
「さあ、前菜・主菜・副菜。すべての料理の用意に取り掛かるとするか!!」
「「「Sir,Yes sir!!」」」




