33発目 馬鹿な考え相手には、まず原点を忘れずに行動せよ。
浅草の雷門屋根上にて。
はいどうも。服部雛です~。
ただいま期末テストに向けてぶらぶら歩きながら元素記号の暗記中。
あれ?元素記号習うのって中学2年じゃ?って思う人もいるかもしれないけど、私は飛び級で一人前のくノ一になって先に世界へ出張しちゃったから中学に入ってやるはずだった勉強はほとんどしていないのだ。自分で言うのもなんだけど、学習能力はちゃんとあるから今のうちに覚えて期末テストの化学問題を解けるよう進んでいる途中だ。
まあ場所が場所なんで、雷門の周りには人が集まってきて、屋根の上で仮面(正体がバレないように)にナノテクスーツを着て歩いてる私を携帯でカシャカシャ撮りまくっている。
学校の帰りにちょっとだけ遠出して勉強をしているワケは、ここを自分だけの自警活動拠点にしようと考えているからだ。一例はもちろん“あのクイーンズ”だ。
ちなみに好華は渋谷を選んだそうだ。スイングしてて絶対絵になりそう・・・・。
「お~い!誰か捕まえてくれ~!どら焼きをかっぱらったぞそいつ~!」
なんだと!?
ここでドラ焼きと言えば・・・・やっぱり亀十の店員!
あの名物を盗むとはいい度胸!ならばその下郎、私が退治して見せようぞ!!
ちょっと変なテンションになりつつも私は早速逃げている犯人を確認し、雷門からジャンプ、両脇部分のナノテクスーツから布状のものを張ってムササビのように標的に向かって滑空。
「お、俺のそばに近寄るなああーッ」
犯人は後ろを向いてそう叫んだ。・・・・イタリアのギャングボス?
そこで私は気づいた。万引き犯が滑空して追ってくる私に対してではなく、地上で竹刀を持って追っていた黒髪ロングヘアの子・・・・・ん?
「待ちなさい!!」
バシィッ!!
「ぐはっ!」
ようやく犯人に一撃をくらわせて捕らえたその子は、すぐさま後から追いかけてきた警官に引き渡した。
私はというと、着地地点で捕らえるつもりが標的がその前で倒されたので地面にズザザザーッ。
「あっははー、手柄取られちゃったね~。これじゃ浅草の隣人を名乗れないかも~」
「・・・・・あなた、誰ですか?ヒナさんのお仲間?」
「そのヒナです」
仮面つきは初めてだったね、実央ちゃん。
どうやら、部活帰りに部員と一緒に寄り道をしていたらしい。で、あのどら焼きを買って食べ歩きをしていたらかっぱらいが起こったとのことだ。
「いや~店長さん喜んでどら焼きサービスしてくれたね~」
今はその部員たちとはもう別れ、サービスしてくれたどら焼きを私と一緒に食しているところだ。もちろん人目を避けて、路地裏で。
「ヒナさんはここで何を?」
「自警活動しながら勉強中」
さて、予期せぬ遭遇ではあるが、正直私はまだこの子と知り合ってからそこまで距離を縮めていない。むしろ自分が離れている感じだ。
何せ、彼女はギラに初恋を与えた張本人だからだ。あの日のベットでもギラは彼女を最初にちゃっかり指名してたし・・・・。
何が特別なんだろ?
彼女は学校で生徒会書記兼剣道部所属、しかも最近ではあの長門君指導の下で剣術も磨いてるそうであっという間に剣道部のエースになったそうだ。おまけに能力者として目覚めちゃってるし。
ギラは彼女の双子の姉:泉に出会って、柳田昴(中身は加藤清正)から事情を聞いた上で彼女にアプローチをかけていた。しかし恋は実らず失恋した。私はその後で彼と仕事仲間になったのだが、未練たらたらだった。
「・・・・・スタイルが良いから?」
「へ?」
しまった、つい声に。
「スタイルが良いって・・・、私たちお互いに良いと思うけど?」
「そ、そうだね!どうもありがとう。大したことじゃないけど、ギラの好みのタイプが実央ちゃんと一致してるのかな~って思ってね」
「あ~そういえばそうだね。やっぱり一目惚れとは言ってたけど好きなタイプだとは言ってなかったからね~」
「やっぱり、お尻が好きなのかな?エリたちのことそう呼ぶし・・・」
「それだとペティさんをへそとも呼んでるのはどうなのかな?」
「ん~、ペティは元々大人びた性格だったからなんか普段から話しやすい間柄だったってだけらしいよ?」
ギラはどんな相手が好みなのだろう・・・・ってあれ?私たち一線を越えたはずなのに今更こんな話してるって不思議だ。そして複雑。
そこで、実央ちゃんが思い出したかのように聞いてきた。
「そういえばヒナさんって、ギラとはどんな出会いだったの?彼が仕事で合流したって言ってたけど」
・・・・うぐ。
「?どうしたんですか?」と実央ちゃん。
・・・・答えづらい。
「ええっ!?家出してた!!?」
「うん、そうなの。私が飛び級で一人前のくノ一に昇格したのは知ってるよね?服部半蔵の子孫にして才能にも恵まれてたもんだからもうちょっと小さい頃の私は超がつくエリートな自信家でね。よく伊賀の里でやんちゃしてたよ。当時憧れてた一人前くノ一の仕事をやって外に出たいなんて言ったものの、当然そんなの里が許すわけがない。そこで私は自分が持てる全ての技術を使って里を抜け出しちゃったの。しかも海外に!」
「・・・・・それ、当時のことを今どう思ってるの?」
「・・・・・すっごく馬鹿やってたなーって」
私はそう答えながら疲れた表情を取る。
「もしかして、自分を捕まえにきた人物がギラだったり?」
「そ。厳密にはエリたちも一緒に。あの頃はよくギラと口喧嘩してたよ~。私よりすごい奴がいるなんて!ってよく突っかかってね」
「結果は?」
「私の全敗。いや~ギラってやっぱパナいわ~」
「そんなに仲が悪かったのに、一体いつどこで惹かれたの?」
「ああ、それは・・・・」
私が答えかけたその時、どこからかサイレンの音が鳴り響いたのだ。パトカーのサイレンだ。
「ありゃりゃー、こりゃ出番が来たみたい?」
「・・・・・ヒナさん、たしかみんなの分の戦闘服をギラから預かってるって前に言ってましたよね?」
「そうだけど・・・・・!行くの?」
「これが今の私だから。ならとことん弾丸になってどこへでも駆けつけるつもりなの!」
そう言って彼女は改まった表情で見返し、そして手をかざした。
ああ、こういう顔、あの時も見たっけ・・・・・。
私はその昔、泉が暴走した現場に居合わせていた。だがそのしばらく前から彼女と仕事を共にしていた。彼女は芯のある女剣士だった。だからこそ彼女が今も生きていたらと時々思うこともあった。
たった今見せた実央ちゃんの表情を泉と重ねたことで、ギラが惚れた理由もなんとなくだが分かった気がする。
「・・・・なら、私も。その弾丸を貫通させる勢いでご一緒しちゃうからね!」
「それでこそ私たちBULLETS!」
と同時にようやく実央ちゃんの刀も彼女の手に収まった。
「よっしゃー!!大成功だぜー!!このまま欽の兄貴たちと合流だ!」
「「「「あいあいさー!!!」」」」
よし、今度は順調だ。先月では三蛇の大兄貴が強盗を途中までは成功させてたのに妙な二人組のバイカーのせいで刑務所行きになってしまったもんで、残された俺たち武利越太兄弟団は一旗揚げて世界中で大暴れするという大きな夢に向かっているところで早速脱線してしまった。
ならば今度はより大胆でよりメチャクチャに引っ掻き回しつつ強盗をやればいいという考えの下、この全長25m幅5mの大型トレーラーであの日本銀行に向かってそのまま突っ込み、部下30名を動員してありったけの金をそのまま積み込み、そしてそのまま東京の道路を派手に突っ走りまくる。当然いつまでもそうしてちゃ、いつかどこかで警察に止められる。もちろんその心配もない。実はもう一人の兄貴が渋谷で強盗しているのだ。その兄貴が逃避行のために“あれ”を用意してるんで途中で俺たちをトレーラーが積んでるコンテナごと拾い上げる予定だ。そのためにも合流地点の橋へ向かわなければ。
「アレのリーダー!」
「その呼び方やめろっての!何だ!?」
「後方に何かが追って来やすぜ!」
「警察か?まさかもうALIVEの連中が!?」
「いや、そうじゃなくて・・・ヒューマノイド?」
何だそりゃ?
「「でっか!!!」」
パトカーのサイレンが遠くで鳴ってたもんだから、ネットで調べると案の定強盗事件があった。しかも二件も!近くに強盗犯はと探し回っていたらビンゴ。浜町辺りで日本じゃまずお目にかかれない大型トレーラーが道路を他の車なんかお構いなしに突っ走っている。昔、海外での任務で何度か出くわしたことはあるが、こんな狭い国で直径3mありそうなタイヤを転がしちゃダメでしょ!
私はというと、戦闘服に着替えた飛行中の実央ちゃんの背中に乗せてもらっている。ちなみに、彼女も正体がバレないよう黒マスクを着用。
「中身はどんな感じ?実央ちゃん」
「魂の数からして、ざっと40人はいるよ」
と、彼女は片目式ディスプレイを通して敵の数を確認。
「どうやって止める?」
「普通日本でならバリケードを張って逃走車を止めるんだけど・・・・・」
「・・・・・どう見てもこれ、無理よね」
規模がデカ過ぎる。日本警察が張るバリケードじゃ難なく突破されるだろう。
「タイヤをパンクさせるにしても左右一列ずつやらないと、あのトレーラーがスリップでもすれば周りがとんでもないことになるし・・・・」
「!四の五の言ってる場合じゃなさそう!」
そう言って実央ちゃんは体を左に大きく傾けさせた。トレーラーのコンテナから強盗団たちが私たちを撃ってきたのだ。
「H&KモデルHK416かー、意外と良い銃持ってんじゃん」
「感心してないで、早くトレーラーを止めないと!」
「OK.それじゃあ私は左のタイヤをパンクさせるから、実央ちゃんは右をお願い!」
「了解!」
私は実央ちゃんからジャンプしてコンテナの上に降りようとした。途中強盗団の銃撃による妨害もあったが、そこはベテランの見せ所、クナイを使って弾丸を斬って防ぎながら着地。そしてすぐさまコンテナの扉を閉めて奴らが撃てないようにした。
「そういや今更だけど、タイヤ斬れる?実央ちゃん」
「問題ない!あともうちょっと修行をつめれば鉄も斬れるって長門師匠が言ってた!」
「ならばよし!じゃあ最初は・・・」
このでっかいタイヤは左右合わせて10個。適当にパンクさせようものなら即スリップしてしまう。
私はフック付きのロープでコンテナの左に張り付き、実央ちゃんは飛行しながら刀を構えて待機中。
「前から二番目のタイヤを斬るよ!合図に合わせて!1、2、今!」
バシュッ!バシュッ!パパンッ!!
ほんのちょっとだけトレーラーはよろめいたがまだ大丈夫だ。
「次!後ろから二番目のタイヤ!1、2、今!」
バシュッ!バシュッ!パパンッ!!
「良いよ!この調子で・・・・・!」
その時、突然私がいる左側コンテナの表面がバタンッ!と開き髭面の強盗犯が顔を出してきた。どうやら隠し扉みたいだ。強盗犯は私を見つけるとH&KモデルP30ピストルを撃ってきた。
「失せろ忍者女!!」
もちろんロープでぶら下がりながらも銃弾を避ける私だけど。そして相手が弾切れを起こすと同時に銃声に気づいた実央ちゃんが飛んできて刀で拳銃を弾いた。
「アレのリーダー!もうすぐ勝鬨橋ですぜ!!」
運転席の強盗犯がそう叫んできた。
「「・・・・・何そのネーミング」」
「黙れぇっ!!俺だってこんな名前嫌いだわ!!」
あらら、敵に怒鳴られた。
でも妙だ。確かあそこって・・・・・。
「曲がりやす!!」
トレーラーは少し傾きながらも左方向に大きく曲がった。そんな時でも奴らは銃をぶっ放して私たちを遠ざけようとしてくる。
「どうするヒナさん!このまま続ける?」
「いや、どうせなら周りの人間を隔離できるところで止めよう!あそこで!」
そう、このままトレーラーが直進する先にある勝鬨橋で!あの橋を渡りたいのならその途中で止めてやる!
「っち!黒部の旦那ぁっ!!あいつら叩き落としてやってください!!」
「おう」
何やら私たちに銃撃が効かないことを悟ってか、誰かに頼み込んでいるようだ。すると、左の隠し扉から大柄な何かが現れて私たちに襲い掛かってきたのだ。
「「熊!!?」」
首の周りが白い、きっとツキノワグマがモデルの変貌能力者だろう。リーダーの口振りからして対ALIVEのために用心棒を雇ったんだろう。
黒部熊はまずコンテナに張り付いてる私を叩き落そうと手を振り下ろす。もちろん避けるが、その熊男のパワーは風圧も起こすほど強力だったので対応が遅れ、私は少しその風圧にあおられてコンテナから落ちかけた。寸でのところで実央ちゃんが助けてくれたが問題ができてしまった。
「あの巨体はマズイね・・・・」
倒すことは容易だ。厄介なのは倒したあと、あの巨体が車が走ってる道路に落ちでもしたらそれはそれで大混乱になってしまう。
「先にあいつを行動不能にしなきゃね。態勢を崩そう!」
「了解!」
実央ちゃんに放してもらい、コンテナの上に降り立つ。まず、黒部熊の顔を狙って十字手裏剣二枚を投げて翻弄し、相手が腕でガードしたところを狙って“目潰し”(すぐに破れる材質の小袋に石灰や唐辛子、山椒などの粉を詰めた物=催涙弾の類)をヒットさせた。問題なく効いたようで黒部熊は涙・鼻水が止まらない顔を手で抑えた。
その隙に実央ちゃんは敵の背後に回って膝裏に峰打ちをくらわせ、膝から崩れさせた。あとは私がかかと落としを・・・・・おっと。
ガンッ!!
「あがっ!!?」
膝崩れをしていてもデカすぎた黒部熊は道路案内標識に頭をぶつけてしまい、コンテナの上に倒れ、気絶してしまった。
「黒部の旦那ぁっ!奴ら追っ払えやした!?」
中から他の強盗団のアレのリーダーが呼んでいるが放っておこう。
「セメント付けといてっと!」
空間からセメントチューブを出して黒部熊を固定し、
「残りのタイヤを一気に斬っちゃおっか!」
「了解!」
“橋の開閉部”につく前に!トレーラーも勝鬨橋に差し掛かっている。もうすぐそこだ!
再び二人で左右の配置に付き、真ん中のタイヤをバシュッ!lこれでコンテナ引くためのタイヤが無くなり、コンテナの前部分が道路表面にギギギーッと触れて火花を発し始めた。続けて後ろのタイヤも斬って支えを失ったコンテナが完全に道路に落ち、運転手もコントロールができなくなり、止まらざるを得なくなった。しかしブレーキだけでは間に合わない、そう感じた私は実央ちゃんに頼んでトレーラーを前から押してもらうことにした。
実央ちゃん頼まれた通りにトレーラーの前に飛んで両手を付け、足から霊気ジェットを噴射してトレーラーの推進力を相殺して何とか止めた。ギリギリ開閉部に入りかけたところだ。
勝鬨橋の開閉部は揺れや振動が起きやすくて、特殊車両の通行が40トンまでになっているのだ。このトレーラーは40トンは優に超えている。なのにこいつらはわざわざこの橋を目指したのは何故だろう?
「一般の方は急いでこの橋から離れて下さ~い!!慌てずゆっくりと~!!」
空間から取り出した拡声器を使って橋にいる一般人に向かって避難するよう呼び掛けておいた。
コンテナからは強盗団がよろよろしながらも銃を構えて続々と出てきた。
「もう諦めなさい。もうじき警察も来る大人しくしていれば痛い目には遭わないから」
と実央ちゃんが例の零戦機銃をガチャガチャと構えて強盗団に警告した。
「っく!お前らBULLETSか・・・。ヒーロー気取りのお前らに邪魔されて黙って捕まるわけねえだろ!それにここにはサツよりも先に兄貴たちが俺たちを迎えに来る!それまで粘らせてもらうんだよぉっ!!」
そう叫んで強盗団たちは最後の抵抗として撃ってきた。
私たちは流れ弾が逃げていく一般人に当たらないよう上に飛んで狙いを誘導しつつ、私はシュガガガガッと大量のクナイの雨を、実央ちゃんはドガガガガッと機銃の雨を降らせた。彼女の弾は霊気で形成しているのでギラのマグナムやALIVEが使用している弾丸『スタンバレット』のように相手を傷つけずに行動不能にできる。私のクナイではそういうことはできないのでひるんだ相手の隙を突いて地上に降り立ち、得意の足技でバキッボゴッ、さらに鎖分銅を巻き付けて拘束してまたバキッボゴッと一気に制圧していく。
連中も大多数がやられて私たちの無双ぶりを見て戦意を喪失しかけた頃、さっき間抜けにも道路案内標識に頭をぶつけて気絶していた黒部熊が目を覚まし、自分を固定していたセメントをバキバキと怪力で壊して復活しちゃった。
「貴様ら~、ただじゃ置かないぞ!!」
あららら、怒りんぼさんだこと。
「はいはい大物さん。そろそろ日が沈むよ~」
黒部熊の後ろにシュタッと降り立つ実央ちゃん。
「なんだとこのコスプレ巫女が・・・」
ドンッ!
実央ちゃんが技仕込みの押し出し張り手を相手の胸板に一発打ち込んだと思ったら、何かを言いかけていた黒部熊は眠り込むようにまた倒れた。
「あれ?今何したの?」
「この男の体に漂ってる霊気を操作しながら、魂だけを外したの。彼の魂は目の前にいるよ?」
確かこの技どっかで・・・・、至高の?
『おい!俺の体返せ!この●●●●●●!』
実央ちゃんが指差してる方には何も見えないし聞こえもしない。多分霊感が強い人じゃないとわからなさそうだ。ただ、失礼なことを言ったみたいで実央ちゃんが顔を赤くしてギャーギャー騒いでいる。
だが私の後ろには戦意を喪失していない敵が、私はすぐさま構える。
いつ如何なる時でも相手をナメてはいけない。
8年前のあの時のように。
「・・・・ぐぐぐ、てめーら。このまま終わってたま」
チョンッ!!
あ、この聞き慣れた発砲音は。
「Checkmate.もう詰んでるんだよ。お前らの夢は」
ジェットパックで滑空しながらDC—15Aでアレのリーダーを撃ったのは誰でもない、彼だった。
「「ギ、フォース!!?」」
二人揃って呼び間違えかけた。
その後、強盗団を警察に引き渡し、プラザタワー勝どきの屋上にて落ち着いたところで聞いた話だと、彼らは武利越太兄弟団と名乗る駆け出し犯罪グループで、アレのリーダーが言っていたもう一人の兄貴:欽が引き連れていた一団が渋谷の銀行を弟のチームと同じタイミングで襲い、そして用意していたオスプレイを使って飛ばしてそのまま勝鬨橋で弟たちを盗んだ金と一緒にコンテナで釣って運ぶ算段だったそうだ。
「「オスプ、オスプレイ!!?」」
「そうそう。正式名称はBell Boeing V-22 Ospreyだけどな」
「いやいやそうじゃなくて!何で駆け出しの強盗団がそんなもの手に入れられたのかってところに驚いたの!!」
「そこには俺も引っかかってな。二人が相手していた大型トレーラーも然り、盗まれた金額以下とはいえかかった金も相当あったはず。ブラッキーにそこんところに調べを入れてもらうつもりだ。同時に決行、さらには大胆にもデカい車で派手に強盗とは、今の警察には効果てき面な作戦だったわな~。ま、選んだ場所の一つが渋谷だったのが運の尽きだったかもな。好華には効果なしってか?だーっはっはっはっはっはっ!!!」
寒っ。
突然のおやじギャグ発言に、私も実央ちゃんも肩をブルブルッ。
「ギラも好華と同じ?」
「ああ、ちょうど渋谷であいつと一緒にぶらぶら自警活動しながら勉強中だったところで事件勃発よ」
「「つまり二人っきりで勉強デート中だったと?」」
「うひょ~、女の嫉妬怖~い」
いいな~、今度私も誘っちゃお。
「あ、そういえば二人は昔仲が悪かったって聞いたけど、どんな風に惚れさせたの?」
「おいヒナ。今度は何を吹き込んだんだ?」
「何も吹き込んでないよ?ありのままの事実を言っただけ。でもどう繕ったってギラがフラグを立てまくったっていう事実はみんなわかってるんだから」
「ん~、否定の仕様がないなこりゃ。だったらこっちからも、そういうのは語るまでもないことだ。俺の口からは絶対に言わないぞ。じゃなっ!」
そう言い残してギラは飛び去って行った。
「要するに?」
「男は口で語るんじゃない、背中で語るってヤツらしいよ?」
「さすが90年代生まれ。時代遅れの人間って感じで渋いね~」
「ホント、でもそこんところもひっくるめて惚れちゃってる私だけどね~」
「右に同じ」
そう言って私たちは、沈みゆく太陽の中で飛んでいく彼を見送りながら笑い合った。
今日は実央ちゃんと、少しだけ距離が近くなった気がする。
2104年、アメリカのとある荒野にて。
無数のオークの死体が転がっていた。
その中心にクナイを握った少女がいた。
少女は疲労し、仰向けに倒れていた。
度重なる戦闘に耐えられなかったのだ。
思い上がっていたのだ、自分ならこんな奴らに負けないと。
甘く見ていたのだ。
何とかギリギリで全員倒したものの、まだピンチを脱したわけじゃなかった。
人間が馬を乗りこなすならば、オークはワーグ(狼のような生き物)を乗りこなす。
そのワーグの生き残り3頭が遠くでの戦闘から生き延びてこの荒野まで逃げてきたようだ。
少女も確認できている。
いつもなら自分の空間から道具を取り出して迎え撃つところだが、体は疲弊しきっていて言う事を聞いてくれない。
なんとか左腕だけを動かして空間からUSモデルM79グレネード・ランチャーを取り出す。
彼女の匂い、そして左腕を動かした際に地面を引きずった音を感じ取ってワーグたちが少女の場所に気づき、向かい始めた。
片手でのランチャーはまだ危険だ。
撃てるのは一度っきり。
左肩を痛めるのは必須。
この体では装填の余地はない。
それに、この距離では一発で3頭をまとめて仕留めるしかない。
少女は呼吸を整え、左方向から向かってくるワーグに狙いをつける。
照準を合わせ、誤差も修正し、40mmグレネード弾を発射した。
ポンッ!ドオォォン!!!
手応えありと、安堵する少女。
だが、それも束の間。
爆発による煙から1頭だけ少々燃えた状態で走ってきた。
どうやら危険を察知して一旦脚を止めてギリギリで爆死を逃れたのだろう。
もう駄目だ。
少女は打つ手がない。
できるとすれば絶望の表情だけだ。
ワーグは少女に向かって、飛び掛かる。
が、同時にそのワーグは自ら見て左方向から飛んでくる影に意識が向いていた。
軍刀を持った少年に。
服部雛。彼女が作り出す空間は体の箇所によって分けられている。
その中で大切な何かを収納している空間がある。
場所は首の後ろ部分。
そこには当然弾丸のネックレスも。
そして、
白い何かをチェーンで通したネックレスも。




